2.羞恥はまな板の上で
そして夜…。
「くっ…!や、やめてッ…!」
復讐兵団のアジトの一室から漏れる女の声。
捕らわれた上村莉菜の拷問が既に始まっていた。
群がる男たちに対し、
「ア、アンタたち…!こんなことして許されると思ってるの…!」
と牽制する莉菜だが、元々、気の強いタイプではない上、肝心の声が震えていては迫力に欠ける。
そんな莉菜の制止も聞かず、身体中を這い回る絵筆の大群。
操る男たちは、皆、莉菜に恨みを持つ連中ばかり。
かつて莉菜の幼い容姿と甘い声に誘われ、まんまと捕らわれて弄ばれた元・奴隷の面々が、その当時の怨念を引っ提げて勢揃いし、まるで緊急オペを行う執刀チームの如く、仰向けに寝かされた莉菜を円になって取り囲み、それぞれが配置された自分の持ち場で手を下す。
「んっ…!くっ…!」
身体中の際どいところを這い回る絵筆に眉を寄せる莉菜。
振り払うことは出来ない。
なぜなら両手両足をベッドの四隅に縛られているからだ。
それも、手足ともに限界まで伸ばされたガチガチの拘束で、筆のくすぐったさに身体をよじるだけでも関節に痛みを伴うほどだ。
「へへへ。ほら、どうした?お前さんに散々やられたことをそのまま再現してるだけだぞ、こっちは」
「なにピクピク震えてんだ?ここか?ここがくすぐったいのか?えぇ?」
「おら、何か言ってみろよ。可愛いツラして男にイタズラするのが大好きな上村莉菜ちゃんよォ!」
「う、うるさいっ…!」
下衆な男どもの煽りに対し、唇を噛みながら睨みつけ、同時に、
(く、悔しい…!)
と頬を真っ赤な染める莉菜。
弄ばれる屈辱も勿論だが、より身体を熱くするのは、今、自分が着せられている衣装が原因だ。
目が覚めた時には着ていた服と下着は既に脱がされていた。
そして代わりに、この、見覚えのないハイレグ水着が着せられていたのだ。
ハイレグ水着といってもパンストのような薄手の生地でほんのり肌が透けているし、何より、サイズが小さい。
小柄な莉菜でさえピチピチ…そのせいでボディラインが鮮明に浮き出て強調されるほどのである。
そんな卑猥な格好で手足を繋がれて微動だに出来ず、好き勝手されるがままの様は、まさに、まな板の上の鯉…。
その証拠に、男どもの操る絵筆は、無防備に全開になっている腋や、へそ、首筋を容赦なく責めてくる。
「んっ…!あっ、あっ…!」
ぷるぷると震える肉付きの良い二の腕、そして太もも。
わずか数ミリの遊びの中でしか動けず、ギシギシとベッドを軋ませながら、くすぐり責めに耐える莉菜。
たまらず、
「い、いいかげんにして…!」
取り囲んだ男どもをぐるりと順に睨んだ目が、一人の男のところで留まる。
見覚えのある元・奴隷たちの中に紛れる、一人だけ見覚えのない不気味な男…。
(さ、さては…コイツが首謀者…?)
目を合わせているうちに、その冷たい目に、だんだん莉菜の背筋にも緊張が走る。
そんじょそこらの男とは違う何やら危険なニオイ…いかにもワルの、女をオモチャとしか思っていないような不気味なオーラを女の第六感が敏感に感じ取った。
そして、その男…鮫島はニヤリと笑って、
「どうした?何か言いたそうだな?」
「ア、アンタは…いったい…?」
「ククク…別に名乗るほどの者ではない。しいていうなら、貴様らのような男を支配した気でいる生意気な女どもに身の程をわきまえさせてやるために参上した正義の使者。…かな?」
「ふ、ふざけないで…!」
怒りを込めた目を向ける莉菜。…だが、その強い目を維持できたのは一瞬だった。
「はうぅッ…!」
耳に腋、脇腹、内もも、膝、そして足の裏まで、人間がくすぐったいと感じる部分に次々と絵筆が這わされ、それとともに、
「おい、コラ!ウチのボスに軽率な口を聞いてんじゃねぇぞ!」
「もっと言葉を選びやがれ!」
と声が飛び交い、男たちがくすぐり責めをさらに強化する。
「ひっ…!はぁッ!や、やめっ…んんっ…!」
反応して身体を揺するたびにガチガチに固められた手足が痛い。
そして、ふいに鮫島が前のめりに身を屈め、莉菜のぷよぷよした二の腕から腋へと顔を近づけると、
クンクン…
「くっ…!こ、この下衆…!」
突然、鼻を鳴らして匂いを嗅がれ、罵ると同時にカァッと赤くなる頬。
鮫島は顔を上げると、
「ククク…だいぶ汗をかいてきたな。酸っぱいニオイがしているぞ?」
「だ、黙って…!」
反射的にそのツラに一発ビンタを見舞おうと身体が動くも、もちろん出来ず、無理に捻ったぶん、肩に痛みが走っただけ。
「どうだ?くすぐられるのは辛いか?」
「━━━」
「返事なし…か。まぁ、いい。では、このままレベル2といこう」
と鮫島が言って目配せしたのを合図に、身体を這う絵筆が、それぞれポイントを変えた。
次に狙われたのは胸の膨らみの周囲と脚の付け根…これまでの“くすぐったい”ところから“性感を誘発する場所”にターゲットを変更されると、
「くっ…あぁッ…!はぁッ、んんッ…!」
と、一際、莉菜の声が大きくなる。
「ククク…いいザマだ」
と、鮫島は、やけに耳障りな特徴的な笑い声を上げ、
「お前さんも知ってるだろう?くすぐりというのは全身の神経を過敏にする。よって、その後の性感責めは効果が倍増するのさ」
「くぅっ…!」
「さぁ、どうせなら、この際もっと神経を研ぎ澄まして、さらに効果を高めてもらおうか」
と、極めつけに鮫島はポケットからアイマスクを取り出し、それを無理やり莉菜に着けて視界を奪った。
「やぁっ…!や、やめてっ…!」
暗闇に覆われると同時に、さらに全身の感覚が増す中でリスタートする筆責め。
まずはその、小柄なわりに張りのある乳房を狙われた。
骨董品の埃を払うようなソフトタッチで、まずは右の胸の山をなぞる複数の筆。
「んんっ…んっ!あぁっ、くぅっ…!」
視界を奪われたせいで相手の出方が読めず、予測して身構えることが出来ない。
そして、
「おら、こっちもだよ」
「んはぁッ…!」
ぷるんぷるんと弾む乳房を左右とも責められ、脂汗を滲ませながら苦悶の表情を浮かべる莉菜。
同様に身体も汗だくで、薄手のスケスケ水着には、へその窪み、そして胸の上に豆粒のような突起が二対、くっきりと浮かび上がっている。
「へへへ。これだけ透けてちゃあ、狙いも絞りやすいぜ」
「次は当然ここだよなぁ…?」
と、数本の絵筆が、その豆粒…すなわち乳首をかたどるようになぞると、
「はうぅッ♪や、やめてぇ…!ひゃぁッ♪」
「おぉ、これはこれは、すごい反応だ」
「そんなに喜んでくれたら、もっとしたくなっちまうぜ」
と面白がってしつこく嬲る男たち。
「あぁっ、んんっ…♪や、やめっ…!はぁぁッ♪」
身体を揺するたびに手足に痛みが走る。が、今はその痛みも無視して、とにかく身体を揺する莉菜。
もちろん、執拗に乳首をつけ狙う絵筆から逃げるため…だが、逃げられない。
拘束が緩まないかぎり、莉菜は男どもにされるがままだ。
そして視界が暗闇の中、ふいに耳元で囁かれる羞恥的な言葉。
「ほぉ…これはすごい…!生地を突き破る勢いで、乳首がみるみる尖ってきたぞ?大きさ、そして形も、汗で透けて丸見えだ…!」
「や、やめてっ!言わないでっ!」
顔から火が出るほどの恥じらいに包まれ、取り乱す莉菜。
…そう。
彼らが莉菜に着せたスケスケ水着は、こういう下世話でマニアックな楽しみ方を狙ってのものだったのだ。
身長は小柄ながら肉付きの良いムチムチした身体の莉菜には、まさにうってつけの責めといえる。
唯一、自由に動く首をぶんぶん振って拒絶の意を示す莉菜に、
「何を嫌がってるんだ?勃ってきたのは事実だろう?」
「ち、違う…そ、そんなワケ…」
「そんなワケあるんだよ」
と一蹴し、なおもねちっこく、
「ククク…ここまで透けてしまえば、綺麗なピンク色ってことも、乳輪が少し大きめってことも全て丸分かりだ。試しにそのデカい乳輪に沿ってなぞってもらうか?」
「嫌ッ!や、やめてっ!んあぁっ…!」
毛先が五円玉ほどの円を的確になぞる。
「まったく、エロい勃たせ方をしやがって…この乳首の勃ち方、自分でも確認してみろ」
「ひ、ひぃっ!?ダ、ダメぇっ!」
摘まんで上に引っ張られ、少しだけ浮かされたアイマスク。
その隙間から莉菜が目にしたのは、彼の言った通り、自分でも恥ずかしいぐらいビンビンに勃起したシースルー越しの二つの乳首だった。
(ウ、ウソ…!こんなに…!?)
自分でも呆気にとられるほどの隆起…。
「ククク…これだけ硬くなれば、生地の上からでも摘まめそうだ。摘まんでやろうか?」
「い、嫌ぁっ…!」
浮かせたアイマスクを元に戻され、視界を奪われたところで、
「ほら、摘まむぞ?摘まむぞ?」
「やぁっ…!んっ、んっ…」
暗闇の中、襲いかかってくるであろう刺激に身構える莉菜だが、そうかと思えば、なかなか来ない。
「くぅっ…!」
「ククク…じれったいなぁ?触るならとっとと触ってほしいなぁ?えぇ?」
「う、うるさいぃぃっ…!」
明らかに弄ばれていることに腹を立て、
「ア、アンタたち…!いいかげんにしないと後でどうなるか…ああぁぁっ!?」
まさに野球でいうところのチェンジアップ…タイミングを外し、莉菜がムキになって声を上げている最中にビンビンになった乳首を弾いた鮫島。
まんまと虚を突かれ、悲鳴を上げる莉菜。
さらに、
「ほれっ…ほれっ…一回こっきりなワケがないだろう?ほれっ…ほれっ…」
「んはぁっ♪や、やめっ…はうぅッ♪」
「ハハハ!どうだ?逃げられないし、隠すこともできないぞ!ガチガチに固定してあるからなぁ!」
「ひぃっ!?ひゃぁぁっ♪」
「ククク…いい声で鳴くじゃないか。チビのくせにこんなエロい身体しやがって。いくらでもしてやるよ。おらっ…おらっ…」
「んはぁぁっ♪」
絶えず悶える莉菜だが、まだ摘ままれてはいない…ただ指先で弾かれているだけだが、それでも神経が過敏になった身体には効果絶大。
「ほら、そろそろ摘まんでほしいだろ?『摘まんでください』ってお願いしてみろよ」
「そ、そんなの言うワケない…!んひぃっ!?」
「そうかい。なら、素直に言えるようになるまで続けてみよう」
「ひゃぁっ!?あぁっ♪んんっ♪」
莉菜のピンコ勃ちの乳首を断続的に弾く鮫島と、そのたびに声を上げてベッドを軋ませる莉菜。
もちろん、その間、部下の男たちの絵筆攻撃も依然として続いている。
「ほら、片意地張ってないで、さっさと言えよ。もっといじめてほしいんだろ?ここを…♪」
「ふぁぁっ!?」
追い詰められる莉菜の身体に、また新たな刺激が訪れた。
苦しむ莉菜の乱れたロングヘアーを左右に二対、束ねて持った鮫島が、その毛先を特大絵筆にして、ビンビンの乳首を覆った。
「や、やめっ…!はうぅッ♪んんっ、あぁっ♪」
あろうことか自分の髪を使って責められる屈辱…。
「ほら、言えよ。『乳首、摘まんでください』って言えよ」
「い、言わないぃっ!んっ、はぁっ♪あっ!あっ…!あぁぁぁっ…♪」
復讐兵団の陰湿な責めで、あっという間に窮地に立たされる莉菜。
しかも、まだ標的にされてるのは上半身のみという事実…。
戦々恐々とする下半身を残し、彼らの攻撃は、ここからさらに激化していく…!
(つづく)