1.転落の始まり
「くっ…くっ…!」
先ほどまで男の絶叫が響いていた室内に、今度は女の焦った声が聞こえ始めた。
その声の主、ねるを傍らで見下ろし、
「ククク…悔しいか?画になる格好だと思うがな」
笑いかける鮫島に対し、不貞腐れたように顔を背けるねる。
つい先ほどまで連れ込んだ男を拘束して嬲っていたねるが、乱入した屈強な男たちの手によって、あろうことは自分も同様にベッドの上で「X」の字に拘束されてしまった。

隣のベッドと瓜二つ…違いがあるとすれば性別と、あとは裸かどうかだけ。
そんなねるに、
「ほら、どうした?何か言ってみろよ」
「━━━」
「だんまり決め込んでると…」
鮫島の手が、ねるの羽織るバスローブに伸び、ゆっくり帯を引いて緩めにかかる。
「さ、触らないで…!」
迫る手を払いのけようと身体を揺するねるだが、それによってバスローブがはだけそうになる本末転倒…慌てて身体を止めると、その滑稽な様を男たちは笑って、
「どうした?自ら脱いでくれるんじゃないのか?」
「もうちょっとだったのによぉ!」
「う、うるさい…!」
四方八方から見下ろされ、自然と頬を染めるねる。
そして、
「ほら、見せてくれよ。男喰いが趣味の自慢の裸体をよ!」
と一人の男が人差し指を突き立て、その指でねるの腋をバスローブ越しになぞった。
「んっ…!」
くすぐったくて、つい身をよじると、またバスローブがはだけそうになる。
(やぁっ!ぬ、脱げる…!)
と、ねるの身体が慌てて硬直するのをいいことに、男の指は、続いて耳、首筋、脇腹と次々になぞり始める。
「やぁっ…んっ、くっ…!」
「ほぅ。なかなか過敏だな。だが、あまり暴れるとバスローブが脱げてしまうぞ?」
と鮫島はニヤニヤしつつ、男には、
「おい、首だ。首を狙え」
と的確に指示をする。
その指示通り、首筋をなぞられ、
「んっ!あっ…!」
と声を漏らすねる。
今のほんの一瞬…わずかな反応の違いを見ただけで性感帯を見つけ出す鮫島の眼力。
(コ、コイツ…只者じゃない…!)
と、まだ身体に触れてもいないのに、それがひしひしと伝わり、警戒心を強めるねるだが、一方で、
「くっ…くっ…!ひゃあっ…!」
敏感な首筋をなぞられ、ピクッと身体が震えたことではだけてしまうバスローブ。
(し、しまった…!くすぐったくて、つい…!)
と我に返って悔やんだ時には、
「おぉー♪」
観音開きのように開いたバスローブから現れた美乳…そして童顔のわりにはしっかりと生え揃った陰毛を目の当たりにして、男たちから歓声が上がる。

「くっ…み、見ないで…!」
頬を赤らめ、顔を背けるねる。
だが、鮫島は、そんなねるの裸体を舐め回すように見渡し、
「ククク…なかなかいい身体をしてるじゃないか。こんなエロい身体をして男に飢えているというのもギャップがあってまた良い」
「う、飢えてなんか…ない…!」
と言い返すも、
「これはこれは、ご冗談を。飢えていなければ、男をこんな目に遭わせたりしないだろう。それに…♪」
ふいに鮫島の手が伸び、ねるの股の間、陰毛で覆われた花弁を、そっと撫で上げた。
「んっ…!」
電気が走ったようにビクッと震えるねるに対し、鮫島はニヤリと笑って、
「ククク…どうやらこっちの男のチンコを嬲りながら自分でも興奮していたようだ。しっかり濡れているぞ?ここが」
「━━━」
今の一瞬でもしっかりと指先に絡め取った愛液を見せつけ、
「尋問なんてのは、所詮、口実だ。さっさと口を割らせた後は、ココにアレを咥え込んで好き放題するつもりだったんだろう?えぇ?」
「んっ!あっ…!さ、触らないで…!」
花弁を二度、三度と指先でなぞられて声を上げるねる。
反論も出来ずに黙り込むのは、悔しいかな図星…精力剤を飲ませて上に跨ろうとしていたのは紛れもない事実だからだ。
鮫島は笑って、
「だったら、ちょうどいい。こんな貧相な男に代わって、俺たちが溜まった性欲を発散させてやるよ。ただし、主導権は握らせてもらうがな」
「い、嫌っ…!」
抵抗すべく手足を揺するねるだが、拘束が外れない。
その間に鮫島は、しゃがんで、カーペットに落ちた錠剤を拾い上げた。
ねるが、男に飲ませようとしていた強力な精力剤だ。
鮫島は3秒ルールのように、フッ…と息を吹きかけ、
「おい、女。こいつは何だ?」
「……」
「ほぅ。まただんまりか…」
鮫島は肩をすくめると、突然、手を伸ばし、ねるの顎を鷲掴みにした。
「んぐっ…!」
「教えてくれないなら仕方ない。どんな効果があるか知らんが、試しに飲ませてみるとしよう」
(…!)
咄嗟に掴む手を払いのけようと首に力を入れるねる。
だが、がっちりと下顎を掴んだ手はびくともしない。
それどころか、無理やり口をこじ開け、開いた隙間に錠剤を近付ける。
「や、やめて…!」
欅ハウスで精製、生産されている奴隷用の精力剤…。
性ホルモンを活性化させ、男性器の硬度、および精液の生産性を一定時間、高める効果がある秘薬だが、女尊男卑の環境下で使用されるため、女性が摂取した際の効果はいまだ実例がなく、まったくの未知数だ。
(じょ、女性に使ったらどうなるか分からないッ…!)
その未知の恐怖で必死に抵抗するねるだが、鮫島は、冷酷にその錠剤をねるの口の中に落とすと、すぐさま、ポケットから取りだしたペットボトルの水を口に突き刺した。
「んごぉっ…!げほっ、げほっ…!」
流し込まれた水を吐き出し、むせるねるだが、時すでに遅し…。
その激流に飲み込まれ、錠剤はひっそりと喉奥へと落ちていった。
(くっ…ど、どうしよう…!飲んじゃった…!)
青ざめるねるを尻目に、
「さて…」
(あッ…!)
ふいにアイマスクをつけられたねる。
小顔のねるには大きすぎて、アイマスクなのに顔の半分以上を覆ってしまった。
「くっ…!」
四肢の拘束に続いて視界を奪われ、為す術がないねる。
はだけたバスロープを直すこともできずに全裸で、胸も陰部も男たちには丸見えだ。
「ククク…さっきのクスリがいったいどんな効果を示すのか、楽しみだな…♪」
と笑う鮫島。
暗闇の中、先の読めない恐怖がねるを包み込んだ…!
(つづく)