3.青天の霹靂
そして半時間後。
室内に、
「ぎゃぁぁぁッ!」
と男の絶叫が響き、その声とともに握られた竿の先端から透明の液体が噴射し、ベッドのシーツを広範囲にわたって濡らす男…。
それに対し、
「あれぇ?何これ?精子?精子じゃないよねぇ?アハハ♪何だ、これぇッ♪おもしろーいッ♪」
と無邪気な笑い声を響かせる小悪魔ねる。
それは「男の潮吹き」と呼ばれる現象で、射精した直後の亀頭をアライグマみたく無茶苦茶にこねくり回したねるの仕業だ。

それでなくても、既に四回連続で射精させられ、早くも瀕死状態の彼。
それにもかかわらず、ねるは、まだ握った竿を離さず、無理やり硬くさせてさらに嬲る。
「ほら、いつまで意地を張るつもり?」
と問い、
「早よ言わんと、またイカせちゃうよ?」
「うぅッ…も、もう出ないッ…!や、やめてくれぇ…!」
と男は許しを請うも、ねるはクスッと笑って一言、
「だったら言えば?言えば終わるのにさ…♪」
「━━━」
彼の頭に浮かぶ迷い。
言えば、ひとまずこの場は助かる…だが、その後に何やら恐ろしい報復が待っているような気がしてならない。…が、かといって、このまま黙って隠し通せるかといえば、それも無理だ。
(言っても地獄…!黙っていても地獄…!)
そして、こうして迷っている間もねるの手は止まらない。
亀頭へのタッチは、もはや気持ちいいを通り越し、ヒリヒリして痛い。
分泌するカウパー液の量が追いついていないのだ。
それにもかかわらず、過敏な亀頭をベタベタと触って、
「ほら、早く教えなよ。最近、スラム街で仲間集めをしていたのは何処の誰?」
「ひ、ひぃっ…!」
「なに?痛いの?じゃあ、ヌルヌルにして和らげてあげる…♪」
と、自らの唾液を垂らし、無理やり滑りを足すねる。

絶えず刺激を送り、萎える隙すら与えない快感地獄…。
そしてとうとう、
「わ、分かったッ!待ってくれ!一回、待ってくれ…!」
「なに?言う気になったの?」
と問うねるに、
「あぁ…い、言うッ!言うからッ…!言うから、一回、手を止めてくれぇっ!」
と、もはや半泣きで訴える男。
そこでようやく竿から手を離したねる。…だが、すかさず、
「その場しのぎのウソなんて、目を見たらすぐ分かるからね?もし、この状況でウソなんてついたらどうなるか…」
と釘を刺すように言って、手離した竿を再び指で包みかけると、
「わ、分かってるッ…!ウソなんてつかないッ…!」
すっかり青ざめた顔で約束する男…。
そして彼は、そこから、鮫島という悪魔の存在と、彼がスラム街を訪ね歩いた様子、復讐兵団の輪郭など、自身が知っていることを、洗いざらい、ねるに教えた。
それを聞いて、
「…なるほど。鮫島という男ね…」
ねるがその名前を頭に刻んでいると、男がモジモジと身体を揺すりだし、
「お、俺が知ってることはこれで全部だ…!は、早く解放してくれッ!」
と喚いた。
まるで、その足で雲隠れしようというような口ぶり…。
すると、ねるはクスッと笑って、
「残念。まだ大事なことが聞けとらんけん…」
「だ、大事なこと…?」
言えば終わりと思っていたのか、再び青ざめる男に、
「その鮫島って男と、その復讐兵団とやらの隠れ家。…それも知っとんやろ?」
「…し、知らん…」
「はい、ウソ!バレバレ!」
と、ねるはあっさり隠し事を見抜き、
「アンタみたいなスラムで幅を利かせてる男が、あのスラム界隈のこととで知らないことなんてあるワケないでしょ?それを教えてもらわないと話にならないから」
と言って、再び竿に指を絡め、今度はそのセクシーな唇を近づけていく…!
「うぅっ…!」
「さぁ、教えなさい。さもないと…!」
チロチロと舌を出し、亀頭…そしてカリを舐め回し始めるねる。
「ぐっ…うぅっ、か、勘弁してくれ…!」
「ダメ。教えるまで終わらんから…♪」
と言ったねるは、口を開け、勃起した竿を先端からゆっくりと呑み込んでいった。
「んがぁぁッ…!」
生温かな口内に包まれた男のイチモツ。
ねっとりとした尋問フェラにたまらず身体を浮かせて反応する男だが、腰の動きだけでは、ギュッと締まったねるの口から抜き取ることなど出来ない。
そして、
ジュル、ジュル…ズズズズッ…!
「ぎゃあぁっ…!」
吸引が始まり、悲鳴を上げる男。
既にカラッポの金玉から、いよいよ生気まで吸い出すのかというような男殺しの吸引力…おっとりした顔立ちは、意地悪な小悪魔を経て、いつの間にか立派な痴女と化していた。

その痴女はバキュームフェラを続けながら上目遣いで、
(ほら、早く吐きなさいッ!)
という目をするねる。
「がぁっ…!あぁっ…!」
ベッドのシーツを握り締めて悶える男。
さらにねるは首を沈め、今度は根元から一気に吸い上げてくる。
一向に威力が落ちない吸引に、たまらず、
「わ、分かったッ…!教えるッ…!教えるよぉッ!」
と絶叫する男。
すると、ねるは、一旦は口を離すも、
「さぁ、言いなさい!言い終わるまでしゃぶり続けてあげるっ♪」
と言って、再び根元まで咥えた。
「ひ、ひぃっ…!」
ジュポ、ジュポ…♪
「ス、スラムの一角に…ゆ、幽霊ビルと呼ばれている廃ビルがある…!不気味だといって、だ、誰も寄りつかないビルだ…!」
ジュル、ジュル…♪
「そ、そこに、最近、怪しい一団が頻繁に出入りしていると聞いたことがある…!お、おそらくら、そこがヤツらの隠れ家に違いない…!」
ジュルルルっ…♪
「ほ、本当だよぉっ!ウソじゃないっ!だから…も、もう勘弁してくれぇっ!んがぁぁぁッ…!」
断末魔のごとく絶叫した男。
その瞬間、腰が大きく浮いた。…が、口の中に閉じ込めたイチモツからは何も出てこない。
…いや、訂正。
出てこないのではなく、出すべきものの製造が間に合っていないのだ。
よって、
「あ…あ…」
と、一滴も出ないカラ撃ちながら確かにイッて全身を震わせる男。
一方、絶頂寸前の彼から「幽霊ビル」という有力な手がかりを聞き出し、そこでようやく、口を離したねる。
唾液で糸を引いて吐き出され、ピクピクと脈打つ完堕ちした肉棒…。
そしてねるは、ぐったりして動かなくなった男を薄ら笑いで見下し、立ち上がると、
「オッケー…これでひとまず“尋問は”終わりにしてあげる」
(じ、尋問“は”…?)
何やら気になる言い回し…そして目を開いた瞬間、男は声を失った。
スッと口元に近づくねるの指。
その指の間に、何やら怪しい錠剤が摘ままれていたのが見えたからだ。
「くっ…な、何をする気だッ!」
慌てて抵抗する男に、
「ふふっ…♪これは効き目バツグンの精力剤…これを飲んで、すっからかんのキンタマを早く再稼働してくれんと、私が楽しめんやろ?」
「くっ…!」
「聞きたいことは聞けたからもう充分…あとは私自身が少しばかり性欲処理させてもらうだけ…♪」
「や、やめろ…!やめてくれぇッ!」
背けた顔を追って近づく指。
男が唇を縛ると、ねるはその唇に精力剤をグイグイ押しつけ、
「ほらっ…早く口を開けて?これ飲んで、私と朝までエッチして気持ちよくなろ…♪」
と誘う。
とろんとした目の甘い誘惑だが、それを鵜呑みにしたら、その先に地獄が待っていることは一目瞭然。
必死に拒む男。
やがて、
「…もぉッ!強情なんだからっ…!」
と肩をすくめたねるだが、ふと、床に脱ぎ捨てられた彼の靴を見て、眉を寄せた。
一見、何の変哲もないメンズの靴…だが、その靴底が、一瞬、チカチカ光ったように見えたからだ。
(何だろ…?)
男の口に精力剤を押し込むのは、一旦、後回しにして、靴を拾い上げて確かめると、改めてそれが見間違いではないと分かった。
ボタン電池のようなモノが靴底に貼り付けられていたのだ。
(これは…まさか発信器!?)
と思い、急激に嫌な予感が押し寄せた瞬間だった。
部屋のドアを突き破るようにして、男が数人、飛び込んできた。
(なッ…!)
素早く出口を固め、ベッドを包囲する謎の集団。
すかさず、
「くっ…な、何者ッ!?」
と、その半円の中心、ベッドの上で身構えるねるだが、今の彼女の装備はバスローブ一枚…応戦できるような武器は何もない。
「━━━」
黙って男たちを見据えるねるに対し、
「へへへ。まんまとひっかかったなぁ?」
「お楽しみ中のところ、すいませんねぇ…♪」
「お前さんのターンは終わりだよ」
と笑みを浮かべる男たちと、その中で一人、
「ククク…」
と特徴的な笑い方をする男。
その周囲の他の男たちとは明らかに違う独特のオーラに、初対面ながら、
(さ、さては…コイツが鮫島…?)
と、存在を聞き出したばかりの黒幕ではないかと勘繰ると同時に、
(そんな…まさか、ハメられた…?)
と気付き、内心うろたえるねる。
どうやらねるが骨抜きにした彼は、本人も知らぬ間に囮として利用されていたらしい。
その囮にまんまと目をつけ、密室のホテルに連れ込んで尋問を始めたねると、その囮の靴の裏にひそかに仕掛けた発信器を元に、そこへ駆けつけた男たち。
どうやら獲物にされたのはベッドの上の彼ではなく、その彼にまんまと釣られたねるの方だったらしい。
(しまった…!私としたことが…!)
唇を噛むねる。
そして鮫島は、全裸で横たわる息絶え絶えの男の無様な拘束姿とシーツのシミを見比べて、
「ククク…随分、手酷いやり方で尋問したようだな」
「━━━」
「まぁ、いい。今に、この男にしたことが我が身に返るんだ。それでチャラになるだろう」
と鮫島は笑うと、隣の空きベッドをチラッと見た後、配下の男たちに一言、
「さぁ、お前たち!この女を、こっちのベッドでコイツと同じ格好に縛りつけてやれッ!」
と言った。
長濱ねる、罠に嵌まり捕縛…。
皮肉にも自分が楽しもうとしていた密室で行われたこの一幕は、当然、欅ハウスの仲間には伝わらない。
仲間の助けも来ない状況で、絶体絶命の危機に晒されたねる。
果たしてねるは、鮫島の毒牙に対抗することが出来るのだろうか…?
(おわり)