太陽戦隊ヒナタレンジャー ―虹色の戦士たち―












小説トップ
episode-7 『狙われた山ガール!赤い眼差しの恐怖!』
後編2
 翌日。
 麓の「日向山」駅の改札口から、新たに三人のハイカーが降りてきた。
 小坂菜緒、丹生明里、宮田愛萌。
 飲み物だけちゃんと準備し、早速、前日に史帆と紗理菜が歩んだのと同じ道を行く。
 この日も天気は快晴で絶好のハイキング日和。
 立ち並ぶ商店では店先で甘酒やソフトクリーム、さらには「日向山だんご」なる見るからに美味しそうな団子を出している店もあり、
「わぁ、美味しそう…♪」
 と、ついつい釣られて立ち止まる丹生。
 それを、
「ほら、行くよ」
 と諭す愛萌と、一言、
「寄るなら全て片付いた帰りにね」
 と声をかける菜緒。
 そう…この三人も、もちろん、ただ運動がてらにハイキングをしに来たワケではない。
 昨日、紗理菜から登山の経過について、仔細に聞き取りをした。
 それを元に、実際に自分たちも歩いてみる作戦だ。
 この日向山のどこかにヒラガーナの一味が巣食っていて、ひそかに暗躍しているのはもはや明白。
(二人の記憶がどこから消されているか…それが知れれば…)
 そう考えながら、沿道に点々と立てられた案内の看板に従い、黙々と歩く三人。
 昨日の二人はツアーに混ざって周りにペースを合わせて歩いたが、今日の三人は自分たちのペースで行けるので進行が早い。
 あっという間に登山道の入口に到着し、いざ日向山へ。
 今日は、陽の当たるところだと少し暑いぐらいだが、こうして登山道に入ると頭上の木の枝が日除けになり、涼しくてちょうどいい。
 数分して最初の広場に到着。
 昨日、史帆と紗理菜も、ここで小休止をしたという。
 それに倣って三人も小休止。
 ここまでは、まだ、子供でも簡単に登ってこれる道で、実際、今も子供たちが広場の中で鬼ごっこをして走り回っている。
 見たところ異変は無いし、ここで何か起きそうな気配もない。
(つまり、二人の記憶もここまでの正常…)
 そんなことを頭に入れながら、
「…よし、行こっか」
 と登山再開。
 広場を出発して少し行くと、麓から山頂を目指す三人に対し、山頂側から下りてきる対向のハイカーとすれ違った。
「おはようございます」
「おはようございまーす♪」
 知らない人でも挨拶を交わすのが山での流儀。
 そして特に振り返ることなく、登山を続け、足を進める三人。
 しいていえば、菜緒がチラッと腕時計を見た程度。
 一方、その対向のハイカーは、たった今、すれ違った菜緒たちの方をチラチラと振り返り、その背中が見えなくなると、何を思ったか、スッと傍らの木陰に隠れるように入っていった。
 そのまま雑木林の中を少し歩き、登山道から完全に死角になったところで、ポケットから無線機を取り出し、

「こちら偵察。女性ハイカー3名がAポイントを通過。繰り返す。女性ハイカー3名がAポイントを通過。あと15分ほどでBポイント到着見込み。…以上」

 流暢な報告口調で無線を飛ばし、再び登山道に戻るハイカー。…と、その時!

 …ガシッ!

(…!)
 ふいに木陰から伸びてきた手で腕を掴まれ、そのまま目にも止まらぬ速さで組み伏せられた。
「んぐッ…!」
 枯れ葉の散らばる地べたに押し倒され、呻くハイカーに、
「アンタ…今、そこで何をしていた…?」
 と制圧して問う女、渡邉美穂…!



「ぐっ…な、何のことだ…?」
「とぼけんじゃないよ。女性ハイカー3名とか、AポイントとかBポイントとか言ってたでしょ?」
 と詰問され、さらに別のところからもう一人、
「何て言ったか忘れたなら、この高性能の集音マイクで録れたての音を聞かせてあげるから確認する?」
 とガンマイクを手にした金村美玖の姿も…!



「くっ…お、おのれ…!」
 青ざめるハイカーに、
「正体を見せろ!ただのハイカーじゃないって、もうネタは上がってんだよ!てやぁッ!」
 自慢のボクサーパンチで殴りつける美穂。
 すると、そのハイカーは悲鳴を上げて倒れ、気絶と同時に変装が解け、本来のガーナ兵の姿に戻った。
 それを見て、
(やっぱり…!)
 と顔を見合わせる美穂と美玖。


 昨日、紗理菜から聞き出した話には、いくつか疑問点もあった。
 その一つが、登山中にすれ違ったハイカーがいたという話。
「私たちも朝に集合して早くから登りだしたのに、その私たちと対向ですれ違った人がいて、『あの人、何時から登ってたんだろうね?』っていう話を史帆とした。それは覚えてる」
 と紗理菜は言った。
 それに対し、 
「ヤツらが登山道のどこかで待ち伏せし、登ってくるハイカーを襲ってるとしたら、事前に下で次に来る獲物の人数を伝える役目の人間がいる筈…」
 と読んだのは久美。
 その読みが見事に当たったというワケだ。


「…了解」
 先ほどすれ違ったハイカーが、案の定、ガーナ兵の変装だったと美穂から無線報告を受ける菜緒。
 そして
「私たちも今から追うね」
「オッケー」
 とやり取りを交わして無線を切り、丹生と愛萌にも歩きながらそれを伝える。
「…ということは…」
「まもなく仕掛けてくるね…!」
 すっかり戦士の目になる三人。
 そして、
「その報告係は私たちのことを『女性ハイカー3名』と報告してたらしい。美穂たちが追いつくのを待って5人になってしまうと逆に怪しまれる。このまま進もう」
 と告げる菜緒。
 あえて罠にかかってやる…いかにもリーダーらしい気概だし、その決断が出来るのは、両隣の二人と、さらに、じきに追いついてくれる二人…頼れる仲間が傍にいるからだ。
 そして次の広場に到着。
 紗理菜の言ってた『自販機のある広場で二回目の休憩をした』の広場は、ここのことだろう。
(あれか。自販機…)
 と、その自販機も実際に確認。
 すると、その菜緒の隣に愛萌がスッと来て、
「確かに妙だよね…こんな山の中に自販機…」
 と訝しむ。
「うん…」
 と頷き、なおも睨みつけるように自販機を見つめる菜緒。
 紗理菜の話だと、ここでも15分ほど休憩し、登山を再開したという。
 特に何も起きなかったと言っていた。…が、
(本当に何も起きなかったのだろうか…?)
 さっき受けた美穂からの報告によると、そのガーナ兵が化けていたハイカーは、

『あと15分ほどでBポイント到着見込み』

 と無線で報告をしていたらしい。
 再び目をやる腕時計。
 あのハイカーとすれ違った地点から今でちょうど15分が経過。
 つまり、そのBポイントというのがこの広場のことを指している可能性が極めて高い。
 そして菜緒は周囲を警戒して見渡しながら、
(…やっぱり気になるな。あの自販機…)
 こんな山の中腹で、商品の補充の問題もあるし、何より、どこから電源を引っ張ってきているのか分からない。
 近寄る菜緒。
 側面に書かれているメーカー名を見て、
(トゥース‥?そんな飲料メーカー、聞いたことないな…)
 さらにその自販機の後ろに回ると、

(…何?この穴…)
 
 自販機の真後ろ、地面に見つけた小さな穴。
 菜緒の拳も入らないほどの直径で、なんというか…ちょうど“ヘビなら通り抜けられる”ぐらいの穴だ…。
(何だろう…?)
 と首を傾げていると、ふいに広場の方から、

「ぎゃぁぁぁッ!」

 と、つんざくような悲鳴がした。
(…!)
 慌てて目をやると、声の主は丹生で、
「ヘビっ!ヘビっ!ヘビが出たぁぁッ!」
 そういえば丹生は虫や爬虫類が苦手だったと思いだし、慌てて駆け戻る菜緒だが、いざ戻ると、その菜緒もさすがに顔が強張った。
 その現れたヘビというのが、一匹ではなかったからだ。
 さらに、
「待って!こっちにもいるッ!」
 と背後から愛萌も声を上げ、気付けばヘビの群れに包囲されていた三人。
「無理、無理ッ!ホント無理っ!」
 と思わず愛萌ににしがみつく丹生だが、一方で菜緒は、そのヘビの群れに、
(来たな…!)
 という確信があった。
 そして次の瞬間、そのヘビの群れが一斉に体を起こし、ガーナ兵に姿を変えた。
 それに対し、こちらは生身のまま、
「行くよッ!」
 菜緒の鼓舞で、たちまち広場内でハイキングルックの三人と乱戦が始まった。

「えいッ!やぁッ!」
 威勢の良い掛け声でチョップを繰り出す菜緒。
 
「てやぁッ!」
 華麗な太極拳で相手の攻撃を受け流しながら倒していく愛萌。

 そして、傍らに落ちていた枝を拾い、それで、
「めーんッ!」
 と自慢の剣道スキルをいかんなく発揮し、殺陣シーンばりにガーナ兵を一掃する丹生。

 そして、そんな三人の戦いぶりをじっと眺める一匹の色違いのヘビ…。
 次第にガーナ兵が倒されていき、配下の数が減ってきたところで、その目をチカチカ光らせ、擬態を解いて現れるスネーク。
「まったく…昨日といい今日といい、気の強い女がよく来る山だねぇッ!」
 と苛立ちまじりに吐き捨てるスネークと対峙し、
「出てわね、ヒラガーナっ!」
「なんとッ…!我々のことを知っているのかッ!だとしたらリキッドどころではない!秘密を知った以上、生かしては帰さないよッ!小娘どもっ!」
 と、しゃがれ声を荒げ、スッと取り出したのはヘビのように長いムチ…!
 自分たちの仲間に同じく専用武器でムチを扱う松田好花がいるが、彼女の使うムチより遥かに長い。
 それを、
「くらえッ…!」
 と打ち下ろすスネーク。

 ピシィィッ…!

「うぁぁッ…!」
 かわしたつもりだった。…が、そのムチは生きたヘビが動くように空中で不規則にくねり、軌道が変わったせいでまんまと直撃を喰らう菜緒。
 さらに丹生も愛萌も、相次いでムチを打たれ、地面に転がる。
「ヒーッヒッヒっ!さぁ、次はどいつに当ててやろうかねぇ…!」
 と三角形に陣取る三人を見比べるスネーク。
 一見、取り囲んで有利に見えるが、実際はリーチの長いムチのせいで思うように距離を詰められず、近寄れないならむしろ不利だ。
 ということで、
「丹生ちゃんっ!愛萌っ!変身よっ!」
「オッケー!」
 そして、

「ハッピー…オーラっ!」

 袖をまくってブレスレットを出し、身体の前で腕をクロス。
 赤、オレンジ、ピンクと、それぞれのモチーフカラーの光に包まれ、変身完了。
「ややッ!?なにやつッ!?」
 と、ただの女性ハイカーではなかったことに驚くスネークに対し、順に、

「ヒナタレッドっ!」
「ヒナタオレンジっ!」
「ヒナタピンクっ!」

 と、それぞれの決めポーズで名乗る三人。
 そして、
「ヒヒヒ…そうかい。お前たちがイグチ魔女様の言っていた目障りなお邪魔虫たちかい。…ちょうどいい。アタシの評価を上げる良い機会だッ!」
 と好戦的なスネーク。
 なおもムチを巧みに操る戦法を取るが、変身したことで対抗策が出来た。
「ヒナシューターっ!」
 と腰のホルスターからレーザー銃を手に取り、発射。
 赤色、オレンジ色、ピンク色のレーザー光線がスネークに直撃し、小爆発。
 悲鳴とともにもんどり打って倒れ、その爆炎の中から立ち上がると、
「ヒィィっ…!よくもやったね、小娘どもッ!これでもくらえッ!」

 パシャッ…!

「…くっ…!こ、これは…!」
 優勢になったかと思った矢先の不覚…スネークの赤く光った目を正面で見たヒナタピンクの様子が何やらおかしい…ヒナシューターを撃ち方用意で構えたまま固まってしまった。
 すかさず、
「愛萌ッ!どうしたの!?」
「か、身体が…動かないッ…!」
「ヒーッヒッヒッ!まず一匹!さぁ、次はどっちをヘビに睨まれたカエルにしてやろうかねぇ…!」
 と振り返るスネーク。
 まだ二人にはピンクの動きを止めたカラクリが分からず、警戒して後ずさりをするしかなくなる。
 そして、
「…決めたッ!次はお前だ!赤色ッ!」

 パシャッ…!

「…くっ…!か、身体が…!」
 スネークの必殺技、ヘビにらみによって、レッドも動きを封じられた。
「な、菜緒ッ…!」
「さぁ、最後はお前だ!…が、その前に…♪」
 再度、ムチを構え、
「お前はもう少しムチでいたぶってから固めてやるとしようかねぇ…♪それぇッ!」

 ピシィィッ…!ピシィィッ…!

「あうッ…!あぅぅッ…!
 ヒナシューターで撃墜しようにも、あまりに不規則な動きすぎて照準を定められず、撃ち落とすどころか自分がムチの乱舞に見舞われるオレンジ。
 そして、しまいには、

 シュルルル…!

「んぐッ…!」
 首に巻き付き、ぎゅっと締まるスネークのムチ。
 それを、
「ヒーッヒッヒッ…♪さぁ、いたぶってやるからこっちにおいで…ほーれ…ほーれ…♪」
 綱引きの要領でムチを引っ張られ、みるみるスネークの元へ引き寄せられるオレンジ。
「ぐっ…がぁッ…く、苦しい…!」
 女声とはいえモンスターはモンスター…首が締まる苦しさでたまらず膝をついたオレンジを、なおも怪力でズルズル引きずって引っ張り込む。
 それを無様にも動きを固められ、指を咥えて見ていることしか出来ないレッドとピンク。
「に、丹生ちゃんッ…!」
「頑張って…!」
 と言いながら、ヘビにらみの呪縛を振り払おうと四肢に力を込める二人だが一向に叶わない…。
 すると、そこへ、

「イエロースライサーっ!」

 聞き覚えのある声とともに黄色い円盤が飛んできて、オレンジの首に巻きつくムチを真ん中で切断。
 その反動で、
「ヒェェッ…!」
 と悲鳴を上げて後ろにひっくり返ったスネーク。
「お、おのれ…!」
 と起き上がると、そこには新たに二人…ヒナタイエロー(美玖)とヒナタブルー(美穂)が、オレンジ色の強化スーツを土まみれにして膝をつくオレンジを守る形で立ちはだかっていた。
 それを、
「ちッ…まだ仲間がいたのか!まぁ、いい!何人来ようが同じことだ!アタシの前では所詮カエルに過ぎないよッ!」
 と息巻き、早速、

 パシャッ…!

「くっ…!」
 駆けつけて早々、次はイエローが動きを封じられた。
「ヒーッヒッヒッ!せっかく助けに来たのに情けないねぇ…♪」
 と得意げなスネーク。
 イエローをじっと見据え、
「よくもアタシの大事なムチを切ったね?お前はあとでキッチリ落とし前をつけさせてやるから覚悟してなッ!」
 と吐き捨て、
「さぁ、青色!次はお前だ!そぉらッ!」

 パシャッ…!

「…し、しまった…!」
 とうとうブルーまで。…だが、それを後ろで見ていて、今のでようやくカラクリに気付いたレッド。
 そして
「さぁ、オレンジ。仕切り直しだ。そろそろお前も固めて終わりにしてやろうかねぇ…♪」
 と近づくスネークに対し、万事休すで後ずさりしながらも身構えるオレンジ。
 すると、そこで、変身した戦士たちの共通装備である“マスク間の相互無線”で、

(丹生ちゃん!そいつの目を見ちゃダメっ!私たちの動きを封じたカラクリはそいつが目から放つ光よ!)

 その場で声を張り上げて伝えると、それをスネークにも聞かれてしまう…そこで、四肢は動かなくとも口はまだ動くのを逆手に取ったレッドの機転、見事なファインプレー。
 それを受け、
「なるほど、そういうことだったのね!OK!ありがとう、菜緒ッ!」
「たわけッ!何を一人でブツブツと…!」
 と声を荒げるスネークを見据え、

「オレンジソードっ!」

 剣道有段者の彼女らしい専用武器、柄がモチーフカラーのオレンジ色になっている剣を手にするヒナタオレンジ。
 そして、
「とぉッ!」
 と飛び上がり、スネークの間合いへ突入。
「ヒヒヒ♪バカめっ!今、アタシに近寄ろうものなら、それこそ飛んで火に入る夏の虫なんだよッ!くらえッ!」
 ヘビにらみを発動させるスネーク。…だが、オレンジも、レッドのアドバイスを聞いた上で、わざわざ動きを封じられに飛び込んだワケではない。
 ヘビにらみの目を光る瞬間、その手にした剣の刀身をスネークの目線に突き出すようにして掲げると、

 パシャッ…!

「ぐっ…!こ、これは…!?何でアタシがっ…!」
 目を光らせた瞬間、こともあろうに自分の動きが止まってしまい、狼狽するスネークと、かたや、
「よしッ!上手くいった!」
 と思わずガッツポーズのオレンジ。
 鏡のように輝く刀身で反射させ、ヘビにらみを術者であるスネークに跳ね返す見事なドンデン返し。
 そして、中国剣術のように器用にオレンジソードを回し、
「ヒラガーナの怪人!覚悟はいい!?」
 突きつけられた切っ先にスネークは絶望…。
「くらえっ!必殺、五月雨斬りッ!」
 掛け声とともに、目にも止まらぬ太刀捌きでスネークの身体を滅多切りにするオレンジ。

「イ、イグチ魔女様…!お許しをぉぉッ!」

 という断末魔を遺言に五体バラバラ…最後に切り刻まれた頭部が地面に落ちるとともに、

 ドカァァァン…!

 モンスター撃破を示す爆発を背後に、勇ましく決めポーズを取るオレンジ。
 その瞬間、動きを封じられて四人も動けるようになり、それによって術者の死亡を確認。
 こうして、強敵スネークを倒した一行。
 すぐさま駆け寄り、
「やるじゃん、丹生ちゃん!」
「ありがとう!助かったよ!」
「いやぁ、危ないところだった…!」
 と安堵する戦士たちだが、勝利の余韻に浸るのはまだ早い。
 この近くにヤツらのアジトがある筈。
「そこも叩き潰さないと…!」
「アジトは入口はどこだろう?」
 と口にするブルー、イエローに対し、
「私が思うに、多分あそこよ」
 と指を差すレッド。
 その指の先にあるのは、例の不審な自販機。
 全員で駆け寄ると、さっき確認した後ろの妙な穴を示し、
「多分、ここからあのモンスターとその配下のガーナ兵がヘビに擬態して出てきたんだと思う」
「なるほど…」
「ということは…」
「この自販機の下にアジトが…?」
 改めて戦士たちの視線を一斉に集める自販機。
 そして、
「よーし!私に任せなッ!」
 と買って出たブルー。

「ブルーナックルっ!」

 と専用武器のトゲ付きパンチンググローブを装着し、

「おらおらおらおらぁぁッ!」

 ドドドドドっ!

 見ていて気持ちいいぐらいのボクサーパンチの猛ラッシュ。
 たちまちベコベコにへこみ、破壊されていく自販機。
 そして最後は痛快な左ストレートで薙ぎ倒すと、その自販機が立っていたところに、地下に降りるハシゴを発見。
 早速、突入すると、案の定、そこがスネークのアジトだった。  
 中に残っていたガーナ兵を一掃し、全て破壊。
 跡形も無く始末して、これでヒラガーナの企んだ「人類バーサーカー計画」はこれで完全に頓挫。
 そして…。


 戦いを終え、麓まで下りてきた一行…というより、他の四人を先導して丹生が真っ先に向かったのは行きしなから目をつけていた団子屋。
 しかし、いざ店の前に着くと、
「あれっ!?無い…無い…!行きしなにあったお団子が無いよぉ!」
 確かに行きしなにはガラスケースに沢山あった団子が今は一本もない。
 すると、その騒がしさに奥から亭主が出てきて、
「いやぁ、ごめんよ。ついさっき、たくさん買ってくれる人が来て、だいぶ売れちゃってね。で、あそこのお客さんので今日のぶんは最後だったんだ」
 と言われ、そしてそれを店先で座って食べていた女性も申し訳なさそうに会釈…。
「えーッ!ウソぉぉッ…!めっちゃ楽しみにしてたのにぃ…!」
 崩れ落ちるぐらい愕然とする丹生と、そのオーバーリアクションが面白くて売り切れの悲しさよりも笑いが勝ってしまう菜緒たち。
 仕方ないので諦め、歩き出した後も、
「うぅ…ぐや゛じい゛…!」
 ずっと言ってる丹生に、
「平和になったらまたみんなでハイキングしに来ようよ。で、今度は売り切れる前に、みんなで食べよう」
 と声をかけて慰める菜緒。
 そして、その楽しみはヒラガーナを壊滅させ、平和を取り戻すまでお預けだ。


 一方…。
 そんな彼女たちの声が遠ざかっていった頃合いで最後の一本だった団子を完食し、
「ごちそうさまでしたっ…♪」
 と可愛い挨拶で席を立った女性。
 店を出て駅の方を見ると、まだかすかに意気揚々と引き上げる戦士たち五人の背中が見えている。
 その後ろ姿を眺めて、

「へぇ…♪ヤツらがヒナタレンジャー…なかなか倒し甲斐がありそうなヤツらじゃない…♪」

 と不敵に笑ったその女性。
 まだ顔合わせすらしていないだけに、実はその女は小悪魔メミーが化けた姿だったとは菜緒たちはまだ知る由もなかった。
 

(つづく)


〜次回予告〜

モトクロスレースに出場することになった富田鈴花。
仲間内でもズバ抜けたライディングテクニックを誇り、優勝しか眼中にナシと意気込む彼女だが、そこにヒラガーナが送り込んだ凄腕のモンスターライダーも出場していたことでレースは思わぬ展開に!
混沌とする会場…応援に駆けつけた菜緒たちにも緊張が走る中、果たして鈴花は無事にゴールすることが出来るのか!?
次回『駆けろ鈴花!死のモトクロスレース!』に、ご期待下さい!



■筆者メッセージ
※今話以降における追加の補足設定

・1期生の戦闘力の目安→「モンスター>2人以上の1期生≧5人以上のガーナ兵≧1期生>ガーナ兵」

・4期生は「ヒナタベースの一般隊員」として従事

・マサヤスくん、レギュラー子役へ
鰹のたたき(塩) ( 2024/01/04(木) 02:38 )