太陽戦隊ヒナタレンジャー ―虹色の戦士たち―









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episode-6 『苦悩する久美!悪の戦隊ダークレンジャー出現!』
後編
 それは、ヒナタレンジャー結成以来の大ピンチ…。
 深手を負ってふらつくレッドに、サーベルを手に近寄り、
「さぁ、とどめよ。ヒナタレッド。最期はこのサーベルでサクッと心臓を一突きにして殺してあげる…♪身の程もわきまえずに我々に歯向かったことを後悔しながら息絶えるがいいわ…♪」
「くっ…うぅっ…」
 後ずさりすることしか出来ず、万事休すのヒナタレッド…。
 そして同じく、悪の戦士へと生まれ変わった先代レンジャーたちに追い詰められ、敗北間近の戦士たち…。
 そんな中、たとえ生身のままでも助けに割って入りたい久美はアモンの妖糸で手足を繋がれて動けない…。
「くっ…や、やめろッ…!殺るならまず私からにしなさいッ…!」
 と、女性ながら男気を見せる久美だが、アモンはせせら笑って、
「フフフ…そんな焦らなくても貴女は貴女で、この後、とっておきの処刑が待っていますよ。逃げ出し、勝手に亡命したその先で性懲りもなく我々に楯突く連中を養成した罪はとても看過できるものではありませんからねぇ…」
 と一蹴。
 そしてとうとう壁際まで追い詰められたヒナタレッド。
 もう後ずさりも出来ない中、
「さぁ…辞世の句は思いついたかしら?じゃあ、行くわよ…♪」
 サーベルを構えるイグチ魔女に、思わず、
「な、菜緒ッ!」
 と絶叫する久美。…すると、その時。
「…んん?何ですか?あれは…」
 ふいに、フラフラと空を飛んできた浮遊物…よく見るとそれはラジコンヘリで、それがゆっくりとアモンの元へ。
「フッ…どこかの子供の忘れ物か…」
 と苦笑したアモンだが、そのラジコンヘリはアモンの顔の前まで来て、突然、

 ドゴォォォン…!

(…!?)
 轟音とともに爆発四散したラジコンヘリ。
 それがまたなかなかの火薬量で、たちまちアモンは、
「ぬわぁッ…!」
 と声を上げて爆炎に包まれ、それと同時に、
(し、しめた…!)
 四肢を捕縛していた妖糸も爆炎によって切れたようで、動けるようになった久美。
 それと同時に、
「久美さんッ!無事ですか!?」
 と姿を見せたのは、なんと橋未来虹…!



 頭にヘルメット、手に鉄パイプを持って生身なりに武装した未来虹が見え、その背後には同じ恰好の森本茉莉、そしてラジコンのコントローラーを持った山口陽世の姿も見えた。
 久美からの緊急出動命令を受けた三人。
 未来虹は通信係で、茉莉と陽世はメカニック担当…変身ブレスレットを持たない彼女たちは、それでも何とか助けになるため、ヒナタベースの倉庫から武器を選別してきた。
 その中で、奇才・森本茉莉が提案した爆薬と偵察用ラジコンヘリの融合…それを手に、知らされた現場に駆けつけた三人だが、そこにいる筈のヒナタブラツクとヒナタホワイトは既にアモンによる強制テレポートで移動させられた後で、人っ子ひとりいなかった。
 そして、
(どこか場所を変えて戦っているのかも…)
 と街を彷徨っているうち、地獄絵図と化したこの場に辿り着き、間一髪、建物の陰から爆薬を積んだラジコンヘリを飛ばしたというワケだ。
 そんな三人のアイデアと勇気に、思わずグッドサインを掲げて称える久美。
 そして爆炎の中から、
「お、おのれぇぇぇッ!誰の仕業だッ!」
 とアモンの怒号が聞こえるやいなや、三人には「隠れて!」とジェスチャー。
 そして、ようやく自由になった久美が駆け出した先はヒナタレッド。…ではなく、ヒナタブルーのところ。
 絶体絶命、死の危機に瀕したレッドにすれば、そのあっさりと翻された隊長の背中は、一見、薄情に見えただろう…だが、久美は決してヒナタレッドを見捨てたワケではない。
(あともうひと踏ん張り…もう少しだけあがいてッ…!菜緒なら絶対に出来る筈…!だって…菜緒は私が見込んだリーダーだから…!あなたの、その、いつ何時も決して最後まで諦めない強い気持ちを私は買ったのよ、菜緒…!)
 と発破をかけるエールを念じながらヒナタブルーの元へ駆ける久美。
 すると、その念が通じたように、
「死ねぇぇぇッ!」
 と心の蔵めがけてサーベルを突き出したイグチ魔女よりわずかに早く、膝裏めがけて悪あがきの足払いを繰り出したレッド。
 それは見事にヒットし、油断をつかれたイグチ魔女は、
「がぁッ!?」
 と悲鳴を上げながら尻もちをついて転倒。
 それと同時に起き上がり、
「とぉッ!」
 とジャンプで再び間合いを取るレッド。
「お、おのれッ…こざかしいマネを…!」
 と言って起き上がるイグチ魔女に対し、疲弊して今にも折れそうな膝に喝を入れ、自身の専用武器…炎の槍、レッドスピアを構える。
 クルクルと身体の前で大車輪を見せつけると同時に、槍の切っ先にボワッと灯った炎。
「私たちが死んだら、この星はお前たちに支配される…それを思えば、そう簡単にやられるワケにはいかないのよッ!」
 と啖呵を切り、いざ、ヒナタレッドの反撃開始だ!


 一方、追い詰められたブルーの元へ駆ける久美。
 その途中、建物の陰に隠れた未来虹と目が合い、アイコンタクトで合図を送ると、久美の言いたいことを察した未来虹が久美の走る動線上めがけて手にした鉄パイプを放り投げた。
 それを走りながら顔の前で上手くキャッチし、追い詰められたブルーの元へ。
「んがぁぁあッ!」
 と追い詰めたヒナタブルーめがけて金棒を振り下ろすダークブルーの前に、間一髪、割り込むと、その鉄パイプを掲げて金棒を受け止めた久美。
「ぐっ…うぅッ…」
 すごい威力…掲げた鉄パイプが一瞬にして「く」の字にひしゃげ、勢いに押される形で片膝立ちになってしまった久美だが、さすがは元・戦士…しなやかな腕に筋を浮き上がらせながらかろうじて受け止めた。
 そして、その間一髪の助太刀に、
「た、隊長ッ…!」
 と驚くブルーに、
「み、美穂ッ…!ブレスレット…!史帆のブレスレットを破壊してッ!」
 と叫ぶ久美。
 それを言われ、一瞬、立ちすくんだブルーだが、
「美穂ッ!は、早くッ…!」
 久美が手にするひん曲がった鉄パイプがミシミシ音を立て、今にも真っ二つに折れそうなのに気付いて、慌てて腰のホルスターからヒナシューターを抜き、ダークブルーの手首のブレスレットを狙うブルー。
「シューター!」
 と口にして放たれた青色のレーザー光線がダークブルーのブレスレットに見事に命中。

 パリィィン…!

 ガラスの砕けたような音とともに小さな爆発が起き、それと同時にダークブルーは金棒を足元に落とし、そのままへなへなと脱力したように崩れ落ちた。
 それとともに、
「はぁ…はぁ…」
 命拾いをしたという顔で息を吐き、真っ二つになる寸前のひん曲がった鉄パイプを離す久美。
 あと少し遅かったら鉄パイプは真ん中から真っ二つに折れ、久美はそのままブルーの身代わりに金棒の餌食になっていただろう。
 そして卒倒したダークブルーは、たちまち変身時の同様の黒煙に包まれ、やがてその黒煙が晴れていくと、人間体の加藤史帆の姿に戻っていた。
 緊張したように息を呑みながら、その史帆の胸にそっと手を当てる久美。
 その手の平に、

(ドクン…ドクン…)

 と鼓動が伝わった瞬間、
「よかった…生きてる…」
 と、ここでようやくホッとした表情になった。
 一方、ブルーは、すかさずマスクに内蔵されたマイクで、
「みんなッ!そいつらの弱点はブレスレットよ!腕のブレスレットを破壊すれば相手は気絶するッ!」
 届いたその声で奮起し、真っ先に逆襲に出たのはヒナタグリーン。
 どうにか首に巻きつくダークグリーンの腕を払いのけ、距離を取ると、ブルーと同様、ヒナシューターを取り出し、ブレスレットめがけて引き金を引く。
 さらに、ヒナタパープル、ヒナタオレンジも、相対するダークレンジャーのブレスレットの破壊に成功すると、すぐさま、他の苦戦する仲間の応援に。
 突っ伏した背中をダークイエローに踏んづけられ、のたうち回るヒナタイエローの元に駆けつけたオレンジ。
 専用武器、オレンジソードの薙ぎ払いでダークイエローを退かし、倒れたイエローの腕を抱え上げて、
「美玖ッ!しっかりッ!」
「う、うん…ありがとう、丹生ちゃん…!」
 と礼を言うとともに、こちらもすかさずヒナシューターを抜き、
「シューター!」
掛け声とともに黄色いレーザー光線を発射。
 たちまち、優勢だったダークレンジャーたちは一人、また一人とブレスレットを破壊されるごとに数を減らし、ヒナタレンジャーが土壇場で形勢逆転。
 最後は、地面に倒れたヒナタピンクの上にのしかかってマウントを取っていたダークピンクを、イエロー、オレンジ、ブラックの三人がかりで引き剥がし、起き上がったピンクのヒナシューターでブレスレットを破壊。
 崩れ落ち、黒煙に包まれたダークピンクの素顔は、それまでの猛攻がウソのような美しく穏やか…まるで憑き物が取れたような寝顔だ。



 そして、ピンチを脱したのも束の間、ブルー、グリーン、パープルは、すぐさまイグチ魔女と一騎打ちのレッドの元へ。
「きゃっ…!」
 と、壁に叩きつけられるレッドに、
「まったく…まだこの力の差が理解できないとは呆れるわ。いくらあがいても、お前に勝ち目などないってこと、まだ分からない?」
 と再びレッドを追い詰め、肩をすくめるイグチ魔女。
 反撃に転じてもなお苦戦…。
 悔しいかな、彼女の言う通り、明らかな力の差はそう簡単には埋まらない。…が、そこに、
「グリーンウィップっ!」
 の声とともにイグチ魔女のサーベルの持つ腕に素早く巻きつく緑色のムチ。
 いち早く、ヒナタグリーンがレッドの援護に登場。…だが、
「フンっ…こざかしいッ!」
 とムチの巻きついた腕を振り上げたイグチ魔女によって、あっさり吹っ飛ばされてしまうグリーン。
 さらに、
「ブルーナックルっ!」
 と先端に棘のついたグロープを両手に装着してボクサーさながらにラッシュを仕掛けるブルーも、その自慢のパンチはことごとくかわされ、パープルにいたっては攻撃を仕掛ける前に、
「何人、束になってかかってこようが私の敵ではないッ!くらえッ!」
 と、お返しの火球攻撃によって、ブルー、グリーンもろとも吹っ飛ばされてしまった。
 それでも各自、起き上がるなりレッドの前で壁になり、
「菜緒ッ!大丈夫?」
「うん…何とか…」
 苦戦するレッドに加勢し、どうにか戦況を保とうとするヒナタレンジャーに肩をすくめ、
「アンタたち、そんなに仲良く死にたいの?…そう。だったら望み通り、まとめて始末してやるわッ!」
 と語気を荒げるとともに、これまで以上の特大火球を手元に作り出すイグチ魔女。
 それを見て一斉に身構える戦士たちだが、その時、まるで漫画のごとく、それまで晴れていた空が一瞬にして暗くなり、ゴロゴロと激しい雷鳴が轟き始めた。
(…!?)
 何事かと空を見上げるレッド、ブルー、グリーン、パープル…そしてイグチ魔女。
 そして、その天候を急転を見るや、ラジコンヘリの爆発に巻き込まれたことによって白衣が乱れ、メガネの割れたDr.アモンが、
「おぉ…ネルネル様が怒っている…ネルネル様の怒りが…」
 と恐れおののくと同時に、空から、

「この愚か者どもッ!ヒナタレンジャーを始末するどころか、ダークレンジャーを失うとは…今日のところはもうよい!意味のない戦いをやめて今すぐ戻ってきなさいッ!」

 その可愛い声色からでも十二分に伝わる憤慨の怒気。
 そして轟音とともに煌めいた稲光に、
「ひぃぃ…!」
 と、年長にもかかわらず、子供のように頭を抱えるアモン。
 一方のイグチ魔女も、それまでの高慢な顔から一変、いささか青ざめたような顔で、
「お、おのれ…今日のところはこれで勘弁してやるわッ…覚えてなさいッ…!」
 と捨て台詞を残し、テレポートでアモンとともに消え去った。
 そして数秒、またゆっくりと晴れ間が差し、元の快晴に戻る空。
 こうして、突然、打ち切られたように終わった激闘に安堵しつつ、
「今のが…」
「ヤツらのボス、ネルネル…?」
 と顔を見合わせるブルーとグリーン。
 そして、ここでようやくメンバーたちも人間体に戻る。
 全員、傷だらけ…だが、それでも何とか全員、無事だ。
 なおも空を見上げ、
「ネルネル…何か思ってた感じと違ったな…もっと威厳のある感じを想像してたけど、思ってたよりアニメ声だったし」
 などと呑気な感想を口にしている鈴花をよそに、菜緒の表情は堅い。
 むざむざと見せつけられた力の差もそうだし、

(ネルネルに対するあの二人の恐れよう…私たちが倒さなければいけない相手は、そんなにも強大な力を持つ相手だということ…?)

 まだまだ先が思いやられる…それが、今、菜緒が真っ先に頭に浮かべた感想だ。

 ……

 そして、その夜…。
 ヒラガーナの侵略船にて、
「…ぐっ…」
 怒り心頭のネルネルによって痛めつけられ、フラフラと廊下を歩くイグチ魔女。
 すると前方から、
(…!)
 この海賊団に似つかわしくないロリータファッションを身に纏い、歩いてくる女と遭遇。
 女は、ふらつくイグチ魔女を見るなり、
「あらぁ…♪久しぶりねぇ、イグチ魔女…ずいぶんネルネル様に絞られたようで…♪」
 と屈託のない笑みでナチュラル煽り。
 それを言われたイグチ魔女はキッとした眼になり、
「き、貴様…なぜここに…?他の星にいる筈じゃ…?」
 牽制するように口にしたイグチ魔女に対し、その女は、クスッと笑って、
「さぁ…?ネルネル様に呼ばれて、今、来たの。さしずめ、貴女が幹部として不甲斐なさすぎるから不安になったんじゃない?」
 と可愛い顔をしてド直球の嫌味を飛ばし、そうかと思えば急に、
「それより、どいてくれない?まずはネルネル様に到着した旨を伝えて、挨拶しないといけないから」
 と冷たい口調で吐き捨てる。
 その小馬鹿にしたように態度にムッとしつつも言い返す気力がなく、仕方なくスッと道を譲るイグチ魔女。
 せいぜい、すれ違った後に振り返り、上機嫌に鼻歌を歌いながら去っていくその女の背中に小さく舌打ちをするだけ。
 突然、現れた謎の女…彼女の名はイグチ魔女のライバル幹部、小悪魔メミー。



 その彼女がネルネル直々に招集されたと知り、イグチ魔女も心中穏やかではなくなってきた…。


(つづく)

■筆者メッセージ
(補足)
作者の朧げな当初案では悪堕ちした一期生は、今後、一話につき1人ずつ倒して順に正気に戻していく…みたいにしたかったんですが、そうすると執筆の速度的に全員を正気に戻すのにかれこれ二年ぐらいかかりそうなので、軌道修正してひとまず一気に取り返すことにしました。
そして今後の一期生の扱いですが、「変身能力は無くなったけどヒナタレンジャー側にいるそこそこ戦えるサブキャラ」ということにします。
たとえて言うと初代仮面ライダーの滝和也、RXでいうところの霞のジョーみたいな感じで(たとえ古くてすまん)、戦闘力はガーナ兵以上、怪人以下のイメージ。
今後はこの一期生メンバーが街をパトロール→怪人に遭遇し、レンジャーメンバーを呼ぶも到着までもたずに捕まって…みたいなパターンもアリかな、と。

あと、最後のメミーの登場は単に作者の思いつき&見切り発車です。
これも、幹部同士で手柄を取り合って足の引っ張り合いとかしたら面白いかな、と。

そんな感じです。

※なお、今回はいつもあった次回予告を省いてますが、別に思いつかなかっただけで次がないワケじゃないです。一応もう少し続けますのでその点はご心配なく。
鰹のたたき(塩) ( 2023/08/10(木) 01:27 )