太陽戦隊ヒナタレンジャー ―虹色の戦士たち―









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episode-5 『強敵エイ怪人!死を呼ぶ電流100万ボルト!』
前編

 それはある日の出来事。
 閑静な住宅地のとある一軒家。
 夕食を済ませた仲睦まじいファミリーが、旦那は晩酌、奥さんはキッチンで洗い物をする中、幼い兄弟息子たちがソファーに腰掛けてテレビを見ていた。
 ごく普通の一家団欒の光景…。
 その中で、奥さんと旦那がダイニング越しに週末の休みはどこに出かけようかと話していると、ふと、今年6歳になる長男が、突然、
「あ、光ったッ!」
 と声を上げた。
 それを聞いて、
「ん?何が?」 
「何が光ったの?」
 と揃ってソファーに目を移す夫婦。
「今、テレビが光った!」
 と長男が言い、続いて今度は4歳の次男が、
「ホントだ!光ったッ!」
 と続けて声を上げた。
「テレビが光った?」
「そういう番組の演出でしょ?」
 と笑った夫婦だが、今度は、その夫婦も思わず目を向けるほど、テレビ画面がピカッと閃光のように光った。
 そこではじめて、旦那の方も、
「何だ?今の…」
 と首を傾げる。
 番組の演出ではなく、テレビの液晶そのものが光ったように見えたからだ。
 そして、さすがに不審に思い、飲んでいたビールジョッキを置いた旦那が確かめに近寄ろうとした瞬間、

 バチバチっ!!

 という音とともに、突然、それまで子供向けのアニメが流れていたテレビ画面から花火のような火柱が噴き出した。
「うわぁッ!」
 腰を抜かす旦那。
 奥さんも、突然の出来事に、手に持って洗っていた皿を流し台の中に落として割ってしまった。
 たちまち目に見えて増す火柱の太さ。
 そしてそれが一本から二本になり、傍のカーテンに引火した瞬間、
「に、逃げろぉッ!」
 と死に物狂いで立ち上がり、次男を抱っこし、長男の手を引っ張って駆け出した旦那と、エプロン姿のまま、それに続いた奥さん。
 辛くもファミリーが家の外に飛び出す頃には、みるみる延焼して家族の憩いの場だったリビングを占領した炎。
 この後、消防車が連なって駆けつける大惨事になったのは言うまでもない。

 ……

 翌朝。
 その奇っ怪な事件に、早速、佐々木久美は着目していた。
 新聞やニュースによると、突然テレビが火を噴き、あっという間に建てて間もないマイホームを焼き尽くされたというのが逃げ出した夫婦の談話。
 そして、もう一つ、久美が気になったのはそこに付け加えられた旦那の証言…。

「火が出る直前、『バチバチっ!!』と火花が散るような音がした」

 新聞の、その箇所に赤線を引いて、それを小坂菜緒、渡邉美穂、金村美玖らに順に回す久美。
 それを見た面々も、口を揃えて、
「…妙ですね、この事件」
 と訝しみ、さらに、
「この、『バチバチっ!!』って音の正体は何だろう…?」
 と、回し読みを終えた宮田愛萌が首を傾げる。
 それに対し、
「漏電じゃないの?」
 と指摘する富田鈴花に、
「漏電でテレビが火を噴いたってこと?そんな話、聞いたことある?」
「いや…分かんないけど…」
 と苦笑いの鈴花。
 百歩譲って何十年も修理しながら使っているオンボロのテレビならまだ分かる。…が、家族の談話によると、先々月に買い替えたばかりの最新型だというから、その線は無さそうだ。
 しかし、実際にテレビが火を噴き、とあるファミリーの幸せな日常を奪ったことも事実。
 この時点で、戦士たち、そして久美は、頭の中に、うっすら、

(さては、ヒラガーナの連中の仕業なんじゃ…?)

 という疑惑を抱いていた。
 そして…。

 ……

 さらに翌日、今度は某オフィスにて使用していたパソコンが、突然、次々に火を噴き、ビルが半焼するという怪事件が起きた。
 幸い死者はゼロで、オフィスにいたOLたちも外に逃げ出して全員無事だったというが、戦士たちが注目したのは、この事件も、先日のマイホームを焼かれたファミリーと証言が酷似していたことだ。
 しかも今度は複数。
 こちらも、ディスプレイから火が噴き上がる寸前、『バチバチっ!』という火花を散らすような音が聞こえたと何人かが揃って証言した。
「やっぱり漏電だよ。それしかないと思うよ、私は」
 と自分の推理に確信を持った様子の鈴花。
「じゃあ、今回の場合、複数のパソコンが一斉に漏電したってこと?」
「だとしか考えられなくない?」
 と、昨日の自信なさげだったのと別人の口ぶりだが、そうなる決定打は、隊長の久美もその意見に同調したからだ。
「何らかの理由で瞬間的に過剰な電流が流れ、内部でショートして漏電したのかもしれない…」
 と、鈴花よりさらに具体的に推察して話す久美。

「となると、原因は…」
「発電所…?」

 ……

 市街地から見て北。
 半島の切っ先に位置する、この星の電力の要・ひなた発電所。



 建物後方は断崖絶壁。
 その下は海で、入り口は正面の一箇所のみという立地で、見ようによっては鉄壁の要塞ともいえる。
 それを、少し離れた小高い丘から双眼鏡で窺う戦士たち。
 彼女らの表情は、既に疑惑の目…というのも、この発電所では、普段、事前申し込みで内部の見学ツアーを実施していて、それが小学校の社会見学などで人気なのだが、調べてみると、先週から突然、それの受付が理由不明のまま全面中止になっていた。
 念の為、久美が電話で問い合わせてみても、
「都合により、当面、中止しております。理由は口外できません」
 と言って、話を終わらせるようにガチャ切りされる始末。
 それを受けて、
「ひなた発電所の中で何か異変が起きている可能性がある」
 と結論を出した久美。
 それを調べるために出動し、なおも双眼鏡で遠巻きに発電所を眺める美玖と鈴花。
 入口の前には門番のように警備員が立っている。
 関係者以外の立ち入りが固く禁じられているので当たり前といえば当たり前だが、その警備員たちの様子を眺めながら、
「ねぇ、鈴花。何か、みんなマッチョすぎない?あそこの警備員」
「確かに…それに、あそこであんなに人数いるかな?」
 二人の言う通り、双眼鏡で眺めるかぎり、立っている警備員は妙にガタイのいい男ばかりだし、それが五人も六人も、まるで軍用基地のごとく整列して立っている。
 一方、そんな監視に精を出す二人の後ろで、着々とハングライダーの準備を進める菜緒、美穂、愛萌。
 互いに仕上げのベルトを締め合い、
「…よし、オッケー♪」
 とグッドサイン。
 そして用意が整うと、揃って額に上げていたゴーグルを目の位置に下ろし、
「じゃあ、私たち行くから」
「作戦通り、頼んだよ」
「うまくやってよね」
 と言い残し、颯爽と丘の下り坂をダッシュして、軽々と飛び立っていった三人。



 雲ひとつない快晴に映える三羽の鳥…その優雅な滑空を見届けてから、美玖と鈴花も行動開始。
 用意したツナギの作業着に着替え、さらに軍手に長靴、キャップで装いに変えて、こちらは堂々と発電所の正面入口へ。
 近づくと、案の定、当然のように警備員に止められ、
「どちら様ですか?」
「どういったご用件で?」
 取り囲むように寄ってこられ、質問責めに遭っても毅然と、
「害虫駆除の者です」
「本日、作業に入らせていただくと事前にお伝えしていたと思いますが?」
 と言うと、屈強な警備員たちは顔を見合わせ、
「…確認する」
 と言って、一人が傍らの詰所に引っ込んでいく。
 その待っている間も、それこそネズミ一匹すら通さないというような鉄壁のガードを敷く警備員たち。
「あのー…そろそろいいですか?」
「後ろの予定も立て込んでるので、さっさと取りかかりたいんですけど」
 と文句を言っても、
「今、所長に確認をとっている。待ってくれ」
 と返され、そしてほどなく、詰所から戻ってきた男に、
「申し訳ないが、本日は立て込んでいるのでまた別日にしてくれと所長が言ってる。お引取り願おう」
「えー、そんなぁ…!」
「だったら、せめて来る前に電話で言ってくださいよぉ…!」
 と、しらじらしくオーバーリアクションで警備員たちの目を引いている間に、その背後の空…海側から華麗に旋回してきて敷地内に下りていく菜緒、美穂、愛萌。
 素早くグライダーを脱ぎ捨て、建物の壁に貼りついて侵入経路を探る三人。
「菜緒。あそこ…!」
 と美穂が指差した先に通用口が見えると、連なってコソコソとそちらへ移動。
 静かにドアを開けて建物に侵入すると、中は薄暗く、今のところ人の気配はない。
 なおも細心の注意を払って前進する三人。
 すると、その先に、事務室と思われる部屋を発見。
 素早くドアの左右を陣取り、そっと小窓から中を覗くと、そこには後ろ手に縛られ、口にテープを貼られた所長と所員たちが軟禁されていた。
 そして、その所員たちが少しでも身体を動かそうものなら、
「えーい!おとなしくしろ!」
「動くな!妙な動きをする者は殺す!」
 と叱りつける短剣を装備したヒラガーナの雑兵、ガーナ兵。
 その光景を見て、
(やっぱりヒラガーナの仕業だったのね…!)
 と、この発電所が連中に占拠されていることを確信した一行。
 そうと分かれば今すぐ踏み込んで所員たちを救出したいところだが、なにぶん、雑兵といえど武器を持っているし、中には身動きの取れない所員たちがたくさんいる。
 勢いだけで飛び込んで、その所員たちを盾にされては元も子もない。
 左右から小窓を覗いては突入のチャンスを窺う菜緒と愛萌。
 そんな中、ふと何の気なしに天井を見上げた美穂は、頭上に張り巡らされたケーブルの一本がチカチカと点滅しているのに気付いた。
(何だろう?あれ…)
 不審に思ってさらに目を凝らすと、どうもその光はケーブルに沿ってゆっくりこちらへ近寄ってきているようだ。
 そして、そのまま行き過ぎるのかと思いきや、その光は三人の頭上まで来たところでピタリと止まった。
 それで、ふと戦士の勘で嫌な予感がした美穂。
 咄嗟に、
「菜緒!愛萌!危ないッ!」
 気付いていない二人を突き飛ばし、その反動で自分も後ろへ下がる。
 突き飛ばされた二人も何事かと振り返ったその瞬間、三人がいたドアの前に大きな影がかかり、
「シェェェェっ!」
 と奇声を上げてエイのバケモノが上から降ってきた。



「な、なに?」
「どこから…?」
 とバケモノの降ってきた頭上を見上げて驚く菜緒と愛萌とは対照的に、現れたバケモノをキッと睨みつける美穂。
 これがファーストインプレッション…原理は謎だが、頭上のケーブルの中を移動してきて現れたことは明白だ。
「ヒラガーナの新手だなッ!」
 と凄む美穂に対し、
「そうとも!エイの遺伝子によって造られたコードネーム『スティングレイ』様だ!」
 と豪語し、
「ネズミども!どこから忍び込んだか知らんが、オレ様が駆除してくれる!」
 そう言って、左手の長い触手をムチのようにしならせ、襲いかかるスティングレイ。
「くっ…!」
 第一撃は間一髪かわした三人。
 続いて第二撃、廊下を転がってかわした菜緒に対し、体勢の悪さから受け止めることを選択した美穂。
 幸い、触手が太いぶん、見切るのは容易。
「はッ!」
 気合いの声とともに、うまく掴み上げた美穂だったが、次の瞬間、

 ビビビっ…!

「がぁッ…!」
 掴んだ触手を慌てて離し、呻き声とともに、もんどりうって倒れる美穂。
「美穂ッ!」
「フフフ、バカめ…オレ様の帯電触手に素手で触れるバカがいるか!」
 それを聞いて、
(帯電…触手…?)
 読んで字のごとく、電気を帯電させた触手という認識でよさそうだ。
「くぅっ…」
 廊下に倒れた美穂が、その帯電触手でやられた手の平を痛そうに押さえて苦悶する。
「さぁ、次は貴様らだ」
 と次は菜緒と愛萌の方を向くスティングレイ。
 二人めがけ、乱舞のように打ちつける触手を、今しがた見た美穂の二の舞はごめんだと、かわすしかない二人。
 そして空振りと空振りの間の一瞬の隙に、前転でスティングレイの横を上手くすり抜けた菜緒。
 すぐさま、
「美穂!大丈夫!?」
 と倒れた美穂に駆け寄ると、
「くっ…な、なんとか…」
 しかめっ面で返事をした美穂。
 そんな彼女を抱き起こし、二人で、

「行くわよ!ハッピー…オーラっ!」

 寸分の狂いもない同じアクションで腕をクロスし、ブレスレットの発光とともにヒナタレッド、ヒナタブルーに変身した二人。
 そして、
「現れたな、ヒナタレンジャー!」
 とスティングレイが変身した二人の方に振り返った隙に、一足遅れて愛萌も、

「ハッピー…オーラっ!」

 桃色の光に包まれたこちらはヒナタピンク。
 こうして左右から挟み撃ちの絶対有利の陣形にもかかわらず、
「フフフ、いいだろう。相手をしてやる!かかってこい!」
 と強気のスティングレイ。
 すかさずファイティングポーズを取るレッド(菜緒)の横で、ブルー(美穂)が、ボソッと、

「菜緒…あの触手に気をつけて。多分、この強化スーツ越しでも充分ダメージを食らう…!」

 実際に痛い目を見た美穂からの助言は説得力があった。
 そこに、
「くらえッ!」
 と再び飛んでくる触手ムチ。
「くっ…!」
 かわすレッドとブルー。
 その隙に背後から距離を詰めようとするピンクだが、あと少しというところで、だるまさんがころんだのごとく振り返られ、今度はピンクが触手の乱舞に遭う。
「きゃっ…!」

 ピシィィッ!

 身を屈め、顔の高さへの一撃を間一髪かわしたピンク。
 すると空振りが打ちつけられた背後の廊下の壁がスパークし、火花が飛んだ。
 それほどに電気を含んでいるということだ。
 そして、
「しめたッ!」
 と隙だらけとなった背後を取り、素早く飛びかかるレッドとブルーだが、スティングレイの背中にチョップした手が触れた瞬間、

 ビビビっ…!

「くっ…!」
「うぁぁッ…!」
 悲鳴を上げて後ずさりする二人に、
「ガハハ!愚か者め!帯電しているのは触手だけではない。オレ様の身体全体なのだ!」
「な、何ですって…?」
「身体全体…?」
 だとしたら、パンチやキック、ヤツの身体に触れる直接攻撃が一切できないということか。
 それを聞いて、
「くっ…どうする?菜緒」
 とブルーが聞くと、
「よーし。それなら…レッドスピアっ!」 
 と、専用武器の槍を取り出し、手にするレッド。
 接近戦は分が悪い…ならば、こうして槍のリーチで距離を取りながら攻撃だ。
「てやぁッ!」
 切っ先をスティングレイの土手っ腹めがけて突き刺したレッド。…だが、しかし。

 ビビビっ…!

「きゃぁぁッ!」
 なんと今度はレッドスピアを伝って、電撃がレッドの身体に走った。
 たまらず愛用の武器から手を離し、先ほどの美穂と同様、もうどりうって倒れるレッド。
 突き刺した先端の刃も軟体に埋まっただけで特段ダメージはなさそう。
「な、菜緒ッ!」
 慌てて駆け寄り、倒れたレッドを抱き起こすブルーに、
「バカなヤツらめ。通電の仕組みを学び直してこい!」
「くっ…!」
 この様子では、肉弾戦に長けたブルーも迂闊に手は出せない。
 となると、残る手段は遠距離からの間接攻撃。
 そこで腰のホルスターからヒナシューターを抜いたヒナタピンク。
 狙いを定め、
「シューターっ!」
 の掛け声でピンク色のレーザービームを発射するも、
「甘いわ!エレキバリア!」

 ビビビっ…!

「なっ…!?」
 直撃したと思ったレーザー光線が、スティングレイの体内に帯電する電気によって造られたバリアで、電気分解されてしまった。
 そして、
「放電ッ!」
 とスティングレイが叫ぶと、まるで跳ね返ったように放ったレーザービームがピンクの元へ一直線。
「きゃぁぁっ…!」
 爆発とともに廊下を吹っ飛ばされるピンク。
「愛萌ッ!」
 その身を案ずるレッドとブルー。
 すぐに立ち上がるところを見ると致命傷は免れたようだが、ヒナシューターも通じないとなると、これでは打つ手がない。
「くっ…!」
「フハハ!分かったか!お前たちの攻撃は何ひとつオレ様には通用せんのだ!どうする?やぶれかぶれで感電死と引き換えに三人がかりで飛びついてみるか?ん?ん?」
 勝ち誇ったような笑みで問いかけるスティングレイ。
 そして、
「さぁ、遊びは終わりだ!片付けてやる!ボルトアップっ!」
 と叫び、目をチカチカと光らせると、それまで白かったスティングレイの体色が、みるみる青みがかってきたではないか。
 どうやら体内に帯電する電力を増幅させている模様…こうなると、もう触れることすら危険だ。
「くっ…」
 挟み撃ちの陣形にもかかわらず、後ずさりを余儀なくされた三人に対し、
「さぁ…どいつから感電死させてやるか…」
 レッド、ブルー、そしてピンクを見比べ、触手を構えるスティングレイ。
「よし…まずは貴様だ!」
 最初に狙われたのはレッド。
 そして振り上げられた触手ムチをかわした瞬間、これまで壁に当たっても火花程度だったのが、

 ボカァァンっ!

 と小爆発を起こすほどの威力。
 その爆風でよろけながら、
(こ、こんなの…!)
(万が一、身体に当たったら…!)
(ひとたまりもない…!)
 戦慄するとともに防戦一方となる三人。
 そして、振り上げられる触手をかわし続けているうちに挟み撃ちの陣形も乱れ、いつの間にかひとかたまりになり、侵入してきた道を後退することを余儀なくされていた三人。
 さらにスティングレイは、触手攻撃だけではなく、
「くらえ!エレキビーム!」
 と口から稲妻光線を発射。
「きゃっ…!」
「くっ…」
 直撃した壁が次々に爆発する。
 この狭い廊下で戦っていては的にされるだけ…やむなく入ってきた通用口から飛び出した三人。…だが、そこには既に侵入者発見の一報を聞きつけたガーナ兵の大群が待ち構えていた。
 展開する乱戦。
 その最中にも、背後から追ってきたスティングレイの高圧電流を帯電した触手ムチが襲ってくる。
 危険を察し、組み合ってたガーナ兵を、
「てやぁッ!」
 と背後に放り投げるブルー。
 その投げられたガーナ兵がブルーめがけて振り下ろされた帯電触手に触れた瞬間、

 ビビビっ…!
 ボカァァンっ! 

 断末魔を上げることもなく、爆死したガーナ兵。
 そんな自分の手下への誤爆を意にも介さず、
「フフフ…次は貴様らがこうなる番だ」
 と勝ち誇るスティングレイ。
 なおも群がるガーナ兵たちを片付けながら、
「くっ…な、菜緒ッ!ここは一旦…!」
「分かってる!このままじゃやられる…!一旦、退散よ!愛萌ッ!」
「オッケー!」
 と、対策なしでは勝ち目のない戦況にやむなく撤退を決めた三人。
 何とかスティングレイの攻撃をかわしつつ敷地を囲む塀のところまで来て、そこからハイジャンプで敷地の外へ飛び出す目論み。
「とうッ!」
 と、まずレッドが塀を飛び越え、続いて、
「やぁッ!」
 とブルー。
 そして、最後にピンクというところだが、ここで、
「バカめ。逃がさん!エレキビーム!」

 ビビビっ…!

「きゃぁぁッ!」
 タッチの差の不運。
 先の二人に続いて飛び上がった背中に稲妻光線が命中し、空中で体勢を崩したピンク。
 塀を飛び越えれず、そのまま敷地の中に墜落してしまった。
 その瞬間、
「し、しまった!」
「愛萌ッ…!」
 と塀の向こうから声がして、同時に、
「捕まえろッ!」
 と叫ぶスティングレイ。
 墜落して這いつくばり、呻くヒナタピンクを素早く取り囲んだガーナ兵。
 そしてスティングレイは、塀の向こう側に向かって声を張り上げ、

「いいか、貴様ら!しばらくの間、ピンクは預かっておく!コイツの命が惜しければ今日のところは黙って退くのだ!拒否するのなら今からコイツの身体に高圧電流を流して骨にしてやるぞッ!」

 ……

「愛萌が捕まった…?」
 強制帰還を余儀なくされ、泣く泣くヒナタベースへ戻ってきた菜緒からの報告に思わず眉をひそめる久美。
 それに対し、菜緒は絞り出したような声で、
「はい…すいません…」
 そして、そんな菜緒を庇うように
「ハッキリ言ってどうしようもありませんでした。怪人に私たちの攻撃がまるで通じないし、その上、愛萌を人質にされてしまった以上、ヤツの言う通りにおとなしく帰ってくるしか…」
 と事情を説明する美穂。
 同じく引き上げてきた美玖と鈴花も、その心情は理解して、
「二人のせいじゃないよ」
「そうだよ。私たちも戦いに加わってれば…」
 と慰めようとするが、それを、
「いや…今の話じゃ、おそらく二人が加勢していても結果は同じ…こちらの攻撃が何も通じないんじゃ、何人いても勝ち目はない…」
 と現実的な見方で一蹴する久美。
 とはいえ、愛萌が捕らわれてしまったのは大きな痛手。
 大事な仲間というのはもちろん、これで迂闊に発電所に近づけなくなったのが痛い。
「とにかく…ヤツらが発電所を占拠して悪巧みをしていることは間違いないのね?」
「はい。所員たちを軟禁し、施設を完全に制圧しています。おそらく、あの電気を操る怪人を使って発電所から過剰な電流を流し、街をメチャクチャにしようと企んでいるのではないかと…」
 と話す菜緒に続き、
「隊長ッ!このままでは街が火の海にされてしまいます!それを指を咥えて見ているワケにはいきませんッ!」
 と訴える美穂だが、今のままでは打つ手がない。
「まず捕らわれた愛萌を無事に救出する方法。そして、その電気の怪人を倒す方法…この二つが作戦として整わないかぎり、迂闊には動けない」
 と口にする久美。
 そして、そんな矢先、スピーカーから通信係・橋未来虹の声で、

「事件発生、事件発生!三丁目の家電量販店にて陳列されているテレビから火が出て炎上、大きな火事になっているとのこと。現在、消防が駆けつけて消火にあたっていて、負傷者の数は確認中…繰り返します。三丁目の家電量販店で…」

「くそっ!これもヤツらの仕業に決まってる!」
 と地団駄を踏む鈴花。
「早く発電所を取り戻さないと…!」
 慎重を期したいところだが、悠長に模索している時間はない。
 果たして、打開策は浮かぶのだろうか…。


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2023/05/05(金) 00:01 )