太陽戦隊ヒナタレンジャー ―虹色の戦士たち―












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episode-2 『恐怖の吸血コウモリ!奪われた血が躍る!』
後編
「…なに?佐々木久美…?あの、我々に楯突いた女が…?」
「はい、間違いありません。目障りなヒナタレンジャーを率いているのは、あの佐々木久美です」
 と、ヒラガーナの侵略艦隊「アンビバレント」の船室にて、イグチ魔女から報告を受ける船長ネルネル。
「なるほど…そうか。ふふっ…面白い…♪」
 不気味なドクロのグラスで、人間の血で醸造された赤ワインを口に含み、不敵な笑みを浮かべるネルネル。
 当初は謎だったヒナタレンジャーの存在…だが、あの色鮮やかな戦士たちを指揮するのが、一年前、けやき星から亡命して生き延びていた佐々木久美だと考えると、全てに合点がいく。
「ふふっ…どうやら、あの女…一年前、私たちに完敗して仲間を失い、故国を滅ぼされたことを、相当、根に持っとーみたいねぇ…?」
 当然といえば当然…いや、むしろ、その復讐の念を、この一年間、こうして温め続けていたことに感心する。
 とはいえ、こちとら、それからの一年間でさらに勢力を拡げ、いよいよ本格的にこの広大な銀河を手中を収めんとする強大な組織。
「よかよか…あの女の故国、けやき星に続いてこの日向星も我々が滞りなく征服するか、それともあの女の復讐心が勝り、ネズミがトラを相手に奇跡を起こすのか…ここ最近、面白みのない一方的な侵略に飽き飽きしとったところやけん、一興として丁度よか…♪」
 と余裕の笑みを浮かべるネルネル。
 このあどけない笑みで目的は銀河征服というのだから、女は見かけによらないものだ…。



 ……

 ヒナタベース。
 五人で出動した戦士たちは、三人になって帰還した。
 操られ、モンスターの手先となってしまった美穂と鈴花。
「どうしたら二人を元に戻せるんだろう…?」
 ここに戻ってくるまでの間、それをずっと議論をしていた三人だが、結局、ここに着くまで答えは出なかった。
 そんな苦悩する三人を尻目に、帰還するなり、メインルームに入る前に書物庫へ寄ると言った久美。
 少し遅れてメインルームに戻ってきた彼女の手には「生物大辞典」と書かれた分厚い図鑑が握られていた。
「隊長。それは…?」
 と聞く好花に、
「さっき、あの場にいたモンスター…あの外見は、おそらくコウモリの遺伝子を持った怪人に違いない…」
 と口にする久美は、手早く図鑑の中からコウモリのページを開き、その生態に黙々と目を通し始めた。
 その真剣な目つきに、それ以上の問いかけを憚られる好花。
 待つこと数分…。
 読破して顔を上げた久美が、
「…みんな。これはあくまで仮説だけど…」
 と話し始めた彼女なりの推理…。
 それを聞いた三人が口を揃えて聞き返したのは、

「催眠音波…?」

 きょとんとする三人に、コウモリという動物が餌となる昆虫を飛行中に的確に捕らえられるのは超音波を利用しているからだという生態を説明し、
「コウモリの超音波は、通常、人間の耳では聞き取れない。それと同様、さっきの戦いの場でも、みんなに聞こえないような超音波で、二人が操られていたとしたら…?」
「な、なるほど…!」
 さすが久美、頭が冴えている。
 説得力のある推理に押し黙って感心してしまう三人。…とはいえ、当然、疑問も出る。
「でも、それだと、あの場にいた私たちも同じように操られていてもおかしくないんじゃ…?」
「なぜ、美穂と鈴花だけが…?」
 と首を傾げる菜緒と愛萌。
「んー…確かに…」
 再び考える久美だが、ふと、メインルームのテーブルに置かれた二本の美容液が目に留まった。
 確か、美穂と鈴花がパトロールの帰り、献血に協力して貰ってきたものだ。
 それを凝視していた久美が、ふと、

(献血…?献血ということは血…血…吸血…吸血コウモリ…!)

 まるで連想ゲームのようにコウモリへと繋げたヒント。
 思い立ったように立ち上がり、二人が貰ってきた美容液の成分解析を始める久美。
 結果はすぐに出た。
 中身は美容液でも何でもなく、ただの水…。
 つまり二人は、美容液をプレゼントという文句に騙され、まんまと血を採られたということだ。

「もし、その献血車があのコウモリ怪人の罠で、それに嵌まった二人が、そこで何か、催眠音波を受信する“受信機”のようなものを取りつけられていたとしたら…」

 襲われた直後、
(平然と振る舞え…)
 という催眠音波を受ければ、何食わぬ顔で帰還してきたのも納得できるし、ガーナ兵との交戦の真っ最中、あるところで、
(仲間を襲え…)
 という催眠音波を受ければ、さっきのように、突然、同士打ちが始まったことも納得できる…!
「それですよ、隊長ッ!」
「それ以外、考えられないっ!」
 と声を大きくする好花と愛萌。
 そうと分かれば、街で美容液プレゼントで協力者を集う献血車…これを追えば、自然とあの怪人に辿り着くだろう。
 早速、作戦を立て、飛び出していく菜緒たち。
 果たして…。

……

 手掛かりは「協力者に美容液プレゼント」と謳う献血車。
 そして、それは、すぐに発見できた。
 何食わぬ顔で駅前のロータリーを間借りし、白衣を着たスタッフが街頭で勧誘しているのを物陰から監視する菜緒と愛萌。
 そして、スタッフというのが…。
「あれは美穂…!」
「鈴花も…!」
 なんと、それなりにサマになる白衣を着せられ、スタッフとして働かされているではないか。
 そしてそこへ、彼女らと同様、美容液に釣られた若い女性が現れ、手早く問診票を書き終えて車内へ案内されていく。
 邪魔が入らないようにするためか、一度、献血車のドアは閉じられ、そのドアの前を美穂と鈴花が番人のように固める。
「あれじゃ、そう簡単に突破できないね…」
「それどころか、中に入った女性を人質にされたら元も子もない…」
 と小声で言い合う二人。
 突撃したい気持ちもあるが、立ててきた作戦に基づいてここは我慢…。
 そして数分、ドアの前を固める番人たちが退き、ドアが開いて女性が出てきた。
 遠巻きに見るかぎり、乗車前と何ら変わりはないが、実際は何かが起きた筈だと確信している。
 車内で、あのコウモリの怪人が女性の血を吸い、代わりに催眠音波の受信機となるモノを取りつけたに違いない。
 美容液と称した水を嬉しそうに手に持ち、献血車を後にする女性。
「行くよ…!」
「うん…!」
 女性の後を尾ける二人。
 だんだん駅から離れ、そして人の来ない路地に入ったところで、後ろから駆け寄って一気に距離を詰め、
「ごめんなさいっ…!」 
 と一言、先に謝りながら手刀を浴びせる菜緒。
 気絶し、ぐったりした女性の身体をしっかり受け止める愛萌。
 そこにタイミングよく、好花が運転するヒナタジープが到着し、素早く女性を後部座席に積み込む。
 こんなところ、誰かに見られては誘拐犯だと思われるだろう。
 正義の戦士としては少し後ろめたいやり方だが、これも催眠音波のカラクリを解くためだ。
 菜緒と愛萌も乗り込み、何食わぬ顔で発進するジープ。
 ヒナタベースへの帰路、気絶した女性の身体を素早く見て回る愛萌が、
「…あった!」
 と指差した細い首筋には、よく見ないと気付かない噛みつきの痕があった。
 これがあのコウモリ怪人による吸血の痕…おそらく鈴花と美穂の首にも同様の痕があるに違いない。
 そしてヒナタベースに帰還し、運んできた女性を医務室へ運ぶ。
 打ち合わせ通り、医務室には船医の上村ひなのが準備万端で待機していた。



 早速、作業にかかるひなの。
 作業とは、吸血の際に注入された怪人の唾液の採取である。
 見た目はおっとりだが船医としての腕は一流のひなのにかかれば、要した時間は5分足らず。
 手際よく首筋の噛み痕から採取した唾液をプレパラートに挟み、顕微鏡にかけて眺めるひなのは、
「これは…おそらくビールスですね」
「ビールス…?」
「はい。おそらく吸血の際に怪人の牙から注入される唾液に含まれるもので、この潜伏したビールスが、後々、怪人の放つ催眠音波に共鳴し、体内で活性化して宿主を言いなりにするんだと思います」
 と淡々と言ってのけるひなの。
 怪人の牙から注入されるビールス…聞いているだけでおぞましい話に菜緒も少し気分を悪くしながら
「それで…そのビールスを分解する薬は作れるの?」
 と、おそるおそる聞くと、ひなのはあっさり、
「ええ。見たところ成分自体は人体に何ら害はないもので、中和の血清も、半時間もあれば作れますよ」
 と答えた。
 そして、本当に半時間で怪人のビールスを中和する血清を作り出したひなの。
 さすが船医…頼れる仲間がいて安心だ。

……

 早速、完成した血清を持ち、再び駅前に戻った三人。
 恐怖の献血は、まだ今も何食わぬ顔で行われていて、鈴花も美穂も、スタッフとして働かされていた。
 意を決し、二人に接近を試みる三人。
 このまま、不意打ちででも血清を打てる距離まで近づければよかったが、そうはいかず、ふと目が合った瞬間、二人の顔が鬼の形相に変わり、その途端に美穂が首から提げていた笛を吹き鳴らした。
 ロータリーに鳴り響く笛の音。
 その瞬間、献血車の上にガーナ兵が10体ほど召喚され、
「イーッ!」
 と、お決まりの奇声とともに現れた。
(くっ…!)
 身構える三人。
 そこに献血車の車内から採血医師が下りてきて、
「ケケケ…バカめ。まんまと罠に嵌まりおったな、ヒナタレンジャー!貴様らが仲間の奪還に来ることなどお見通し!ここが貴様らの墓場となるのだ!」
 そして人間体のまま、翼を揺するような素振りを見せると、次の瞬間、怪人の姿に早変わりして正体を見せるコウモリ怪人、バット。
「やれっ!」
 と号令を出すと、献血車の上から飛び降りてかかってくるガーナ兵たちに続いて美穂と鈴花も乱戦に加わってくる。
「やぁッ!とぉッ!」
「えいッ!」
「てやぁッ!」
 ガーナ兵を一掃するのはお手の物。
 問題は美穂と鈴花だ。
 前哨戦の時と同様、菜緒が鈴花と、そして好花と愛萌が美穂と対峙する構図。
 胸ポケットにしまってある血清…これをどうにか二人に打ちたいが、矢継ぎ早に攻撃を仕掛けてくるせいでタイミングがない。
 一方、いつの間にか献血車の上に立ち、交戦の様子を眺めるパット。
「ケケケ…さぁ、戦え!かつての仲間と、どちかが死ぬまで戦い続けるがいい!」
 と高笑いしている間にも、絶えず二人を操る催眠音波が発せられているに違いない。
「くっ…このッ!」
 耳障りな笑い声に苛立った好花がバットめがけて献血車に飛び移ろうとするが、それを美穂が邪魔する。
 美穂の鋭く重い蹴りが好花にヒット。
 悲鳴を上げて地面を転がる好花を庇う愛萌も、美穂の突進を食い止めるので精一杯で、血清どころではない。
 菜緒も、鈴花の肩越しにチラチラ苦戦する二人が見えて気が散って集中できない。…と、その時!

 キィィィっ!

 ドリフトするような猛スピードで、選挙カーのようにスピーカーを搭載した車が交戦中のロータリーに乱入してきた。
 チラッと目をやった菜緒は、フロントガラス越しに運転手の顔を見て、
「た、隊長ッ!?」
 戦士たちに負けじと見事なハンドル捌きを見せてロータリーを暴走気味に周回する佐々木久美。
 そして、ふいに車上のスピーカーから、
「菜緒っ!好花っ!愛萌っ!少しだけ辛抱して!」
 と声が飛んだかと思うと、次の瞬間、そのスピーカーからけたたましいサイレンの音が響き渡った。
 ロータリー中にこだまする、耳が痛くなるような声量に、
「きゃっ…!」
「うわっ…!」
 思わず耳を塞ぐ三人。
 これにはバットも、
「えーい!やかましいッ!いきなり現れて何のつもりだ、貴様ッ!」
 と激怒する騒音レベルの大音量だが、それと同時に鈴花と美穂の動きが鈍ったのを菜緒は見逃さなかった。
(そ、そうか…!)
 サイレンの大音量で催眠音波が無効化されている…!
 それに気付き、今がチャンスとばかりに胸ポケットから血清の注射器を取り出し、立ちすくんだ美穂に、そして鈴花にも、それぞれの首筋にある噛み痕の上めがけて打って回る菜緒。
 そうとも気付かず、
「えーい!いいかげんにしろっ!」
 と額のランプから走り回る車めがけて怪光線を発射するバット。

 ドカァン…!ドカァン…!

 巧みなハンドル捌きで直撃を間一髪でかわし、なおも爆炎の中をサイレンを鳴らして駆け回る久美。
「お、おのれッ!ちょこまかと…!くらえっ!」
 次に放たれた怪光線が車の前タイヤに命中。
 爆発とともにハンドルが利かなくなり、街路樹に突っ込む久美。
「た、隊長ッ!」
「大丈夫ですか!」
 慌てて駆け寄ろうとする好花と愛萌に、ヨタヨタと運転席から這い出てきて、
「私は大丈夫っ…それより、早くあの怪人を倒しなさい…!」
「よーし…!」
 久美に喝を入れられ、専用武器である緑色の鞭、グリーンウィップを手に取り、ぶんぶん振り回して勢いをつけて、
「てやぁっ!」
 と威勢よく放つ好花。
 空気を裂いた鞭は見事にバットの腰に巻きつき、捕らえる。
 それをそのまま、
「えいッ!」
 と、おもいっきり引っ張れば、バットは、
「うぉぉッ!?」
 と慌てた声を上げ、バランスを崩して献血車の上から落下した。
 ドスンっ…!とアスファルトに叩きつけられ、
「ぐっ…お、おのれ…!」
 とヨロヨロ立ち上がるパットの前に並んだ三人。
 息を合わせて、

「ハッピー…オーラっ!」

 と腕をクロスすれば、閃光が走り、菜緒はヒナタレッドに、好花はヒナタグリーンに、そして愛萌はヒナタピンクにそれぞれ変身。
 その強化スーツを纏った姿を見て、
「チッ…変身されてしまったか!まぁ、いい!変身したところで、貴様らの相手は仲間であるこの二人だ!かかれっ!」
 と指示するバットだが、その指示を受けた美穂と鈴花の放ったハイキックは三人ではなく、バットの背中にクリーンヒット。
「んがぁッ…!」
 つんのめって倒れるバット。
 慌てた様子で額のランプをチカチカ光らせるも通じず、
「ど、どうしたことだ…!なぜ言うことを聞かんっ!?」

「なるほど…その額のところからタチの悪い超音波を出してたってことね!」
「よくも好き勝手に操ってくれたわね。今から万倍にして返してあげるから覚悟しなさいっ!」

 と啖呵を切る美穂と鈴花。
 さっきまでの感情が死んだ表情から一変、生気の宿った顔色…血清によってコウモリのビールスを中和、分解し、二人も正気に戻った!
「行くよ、鈴花!」
「オッケー!」
 と息を合わせ、二人も、菜緒たちに続いて、

「ハッピー…オーラっ!」

 美穂はヒナタブルーに、そして鈴花はヒナタパープルに変身完了。
 この瞬間、一気に形勢逆転した戦況。
「お、おのれっ!いでよ、ガーナ兵っ!」
 と、新たに召喚されたガーナ兵もレッド、グリーン、ピンクが難なく片付け、苦境のバットに援護なし。
 そして万策尽きたバットと対峙するのは、当然、操り人形にされた怒りに燃える二人。
「くっ…!勝負はお預けだ!」
 と、コウモリらしく翼を振るって飛び立とうとするのを、
「そうはいくか、このコウモリ野郎っ!」
「そう易々と逃がしてたまるかッ!とぉッ!」
 と地を蹴って宙を飛び、コウモリの両翼めがけてライダーキックばりの華麗な飛び蹴りを見舞って撃墜するブルーとパープル。
「ぐぉっ…!お、おのれ…よくも俺の翼を…!」
 自慢の翼を破られ、もんどりうって地面に叩きつけられたところに、
「ブルーナックルっ!」
 と叫び、いかつい棘のついた真っ青な球体を拳に装着したブルーの強烈なパンチングラッシュ!
「おらおら!どした、どしたぁッ!」
「ぐぉぉぉっ…!」
 まるでケンシロウの北斗百烈拳…目にも止まらぬ速さでノックアウト寸前まで叩き込まれた怒りの連打ですっかりフラフラのバット。
 とどめは怪人に絶望感を与える紫色の大斧、パープルアックス。
 それを手に、空高く飛び上がったヒナタパープル。
 華麗に宙返りし、手にした斧を振り下ろしながら急降下。
「覚悟ぉぉぉッ!」
 と叫びながら脳天から一刀両断して着地するパープルの一撃必殺「薪割りダイナミック」が炸裂。
 額の催眠音波を発するランプから真っ二つに割かれ、あっけなく爆発四散したバット。
 さすが、仲間内でも一、二を争うパワー系戦士の二人。
 この二人が、一時とはいえ敵に回ったのだから菜緒たちにすれば厄介なことこの上なかっただろうと改めて思う。

……

 勝利後。
 再び五人でヒナタベースに帰還し、大団円。
「何だぁ…美容液じゃなかったんだ。最悪〜…」
 血を吸われ、操られるリスクまで冒して手に入れた美容液がただの水だったと聞かされ、落胆する鈴花に、
「だからさ。欲しけりゃ、試供品に頼らず、ちゃんと自分で選んで買えってことだよ」
「そうそう。女の美しさってのは投資だよ?一円も出さずに美しくなろうなんて、そんなの無理、無理…」
 とたしなめる菜緒、好花。
「そっかぁ…そうだよねぇ…」
 と苦笑いの鈴花を、
「でも、よかったじゃん。それも含めて勉強になったでしょ?」
 と、一件落着した手前、戦士たちに混じって安堵の様子の久美。
 今回の戦いは久美のアシストがターニングポイントとなった。
 幸い、街路樹に車ごと突っ込んでも突き指で済んだ様子。
 すると、そこに、
「ただいま戻りましたぁ〜」
 と、濱岸ひよりがパトロールから帰ってきた。
「おかえりぃ♪…ん?」
 何やらボトルのようなモノを小脇に抱えて戻ってきたひよりに、
「あれ?ひよたん、何それ…?化粧水?」
「そうそう。これね、商店街を出たところで献血やっててさ。協力した人に無料プレゼントっていうから、つい釣られて行ってきたんだよねぇ♪」
「け、献血…?」
「そう。私、人生で初めて献血したんだけど、全然、痛くなかったし、何だかいいことした気になるね、アレ。機会があればまた行こっかなぁ…♪」
「……」
 得意満面に語るひよりとは対照的に、

(ま、まさか…?)
(も、もう大丈夫だよね…?)

 と怪訝そうな目になり
自然と後ずさりして距離を取る今回の事件の経験者たち。
 この日からしばらく彼女たちは街で見かける献血車はもちろん、何かと目につく「無料プレゼント」という誘い文句まで全て疑いの目で見るようになった。


(つづく)


〜次回予告〜

相次ぐ怪事件!
スキューバダイビングを楽しむ若者が、次々に海中から行方不明になった!
悪巧みのニオイを嗅ぎ、自ら囮となって海に潜った菜緒に襲いかかったのは、ヒラガーナが送り込んだ強敵タコ怪人…!
絡みつく触手地獄…!
果たして菜緒は、無事に陸に戻ることが出来るのか…!
次回、『危うし菜緒!死のスキューバダイビング!』に、ご期待ください!



鰹のたたき(塩) ( 2022/12/10(土) 00:22 )