太陽戦隊ヒナタレンジャー ―虹色の戦士たち―
















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episode-13 『イグチ魔女のラストチャンス!再生怪人軍団、総攻撃!』
後編
 そして翌日。
 指定された正午を目前にして、出立準備を進める戦士たちも気合十分。
「では、行ってきます」
 と告げれば、久美からは、
「昨夜も言ったけど…決して正々堂々とした決闘だとは思わない方がいいわ。ヤツらのことだから必ず何か罠がある筈よ。気をつけて」
「はい。気をつけます」
 決して空返事ではなく、菜緒自身もその疑念はちゃんと持っている。
 そして、
「…よし。みんな!行くよ!」
 菜緒の掛け声でメインルームを後にした一同。
 廊下を行進するような隊列でメカニックルームへ行けば、おなじみの森本茉莉と山口陽世に加え、来月からメカニック担当への異動が決まった竹内希来里の姿も。
 自分のマシンに跨がり、
「じゃあ、行ってくる」
 と声をかけ、
「お気をつけて」
 と送り出された菜緒たち。
 飛び出したヒナタベースから次々と道路に折れて走り出せば、まるでカラフルなマシンを駆る走り屋集団のよう。
 それでも当然、信号は守り、赤信号で停車すると、ふいに好花がバイクを隣につけてきて、
「なぁ、菜緒。昨日のひなのの首にあった噛み痕のことなんやけど…前にも同じようなことあったん、覚えてない?」
 話しかけてきた好花に目をやり、菜緒も頷いて、
「あれでしょ。前に私たちが倒したコウモリの…私も思ってたよ」
「な?やっぱりそうやんな?」
 菜緒が自分と同じことを考えていたと知り、安心した様子の好花。
 以前、ヒラガーナが送り込んできたコウモリのモンスター…標的に噛みつき、吸血と同時にそこからビールスを注入。
 そのビールスに感染した人間を超音波によって意のままに操るという特殊能力によって、実際に美穂と鈴花がまんまと操られたということが以前あったが、昨夜のひなのの行動は、まさしくその時と酷似していた。
「でも…あのモンスター、倒したやんな…?」
「うん。間違いなく倒した。…いや、確かに倒した筈…」
 あえて言い直し、含みを持たせたのは、他の答えが思いつかないから。
 そして信号が変わったので、再び走りだす戦士たち。
 みるみる都会を離れ、山間に。
 天気もよく、ツーリングとしては最高だが、あいにく目的はそれではない。
 そして、しばらく進めば進行方向の左手に、

<⬅ひなた採石場 (関係者以外、立入禁止)>

 と書かれた看板が見え、脇道が出現。
 もちろん関係者ではない一行だが、今回はそこに用があるため、構わず次々に道を折れていく。
 そして上り坂を進めば、やがて、パッと視界が開け、砕石が山のように積み上げられた採石場へと到着。
 先頭の菜緒の停止を合図に、次々にマシンを停め、降り立つ。
「みんな、気を抜くなよー?」
 と、さすがは体育会系、サブリーダーらしく男前な口調で注意喚起を入れる美穂。
 そして、ぞろぞろと足を進め、砕石の山の裏へ回り込むとそこには、
「な、何これ…?」
 一同、怪訝な表情を浮かべて困惑の色…そこにあったのは円(サークル)を作るようにして建てられた不気味な計九基の十字架…。
 それぞれに色がつけられており、赤、青、黄、緑、ピンク、紫、オレンジ、黒、白…。
「…なるほど。ご丁寧に私たちの墓標まで作って待っててくれてたってワケね」
 と美玖がボソッと呟くと同時に、
「みんなッ!あそこッ!」
「陽子たちだッ!」
 愛萌と丹生が声を上げ、仲間たちの視線を砕石の山の上に向かせると、そこには失踪した一般隊員たち…正源司陽子、平尾帆夏、平岡海月、山下葉留花、清水理央、小西夏菜実の六人が、
「んーッ!んーッ!」
 全身を糸でグルグル巻きにされた芋虫の状態で、猿轡を噛まされて折り重なるように倒れていた後輩の一般隊員たち。
 それを確認するや、その砕石の山を駆け登ろうとする美穂と鈴花だが、そこに、

「フフフ…ようこそ墓場へ!ヒナタレンジャー!」

 その場に轟くように発せられた憎きあの声に、すかさず周囲を見渡す戦士たち。
 すると、ふいに宙に現れた火の玉がユラユラと横たわる陽子たちの元へと飛来し、たちまち、その火の玉がヒトの形に燃え上がるとともに、
「出たわね!イグチ魔女!」
 砕石の山の上に姿を見せたイグチ魔女に対し、自然と臨戦態勢の目をなる一同。
 そして菜緒が、
「イグチ魔女!ひなのを操っていたのはやっぱりアンタたちね!」
「望み通り、決闘に受けて立つわ!」
「さっさと降りてこい、このッ!」
 陽菜、ひよりも続く。…が、当のイグチ魔女はフッと鼻で笑って、
「あいにく…私が出る幕じゃないわ。だって、私が相手をしたら一人で完勝しちゃうからねぇ…♪」
「何ですって?」
 ムッとした顔になった美玖に構わず、
「お前たちの相手はちゃんと用意してある!生意気なクチは、まずはそいつらを倒してから言ってちょうだいッ!」
 そう言ってイグチ魔女が右手を上げると、その手の平に煌めいた光が9つに分かれ、さらのその9つの光がユラユラと菜緒たちの前に建つ十字架の元へ。
 そして、その光がそれぞれ十字架の支柱に溶け込むようにして降り注ぎ、消えたと同時に、

「ンガァァ…!」

 採石場に轟いたいくつかの咆哮とともに、十字架の前にモンスターの群れが登場。
「くっ…!」
 反射的に戦闘態勢に入る菜緒たち。…だが、中には困惑してしまう戦士たちもちらほら…。
 それもその筈。
 現れた計9体のモンスターは、どれも見覚えがある者ばかりだったからだ。

 ゴリラの怪人・コング
 クモの怪人・スパイダー
 コウモリの怪人・バット
 タコの怪人・オクトパス
 ケムシの怪人・キャタピラー
 エイの怪人・スティングレイ
 ヘビの怪人・スネーク
 アリジゴクの怪人・アントリオン
 ナメクジの怪人・スラッグ



 その9体がゾロゾロと横一列に並ぶのを見て、
「た、倒した筈のモンスター…!」
「蘇ったのねッ!」
 そして、
「さぁ、お前たちッ!一度やられた恨みを、思う存分、晴らしてやりなさい!」
 採石場に響き渡ったイグチ魔女の声を合図に、
「ンガァァッ!」
 再生されて復活した代償は声と感情を失うこと。
 イグチ魔女の命令に従うだけの傀儡と化したモンスターたちが、望むところとばかりに吠え、一斉に襲いかかってくる。…が、それで怯む菜緒たちではない。
「みんなッ!私たちも行くわよッ!」
「おぅッ!」
 威勢の良い返事とともに、

「ハッピー…オーラっ!」

 まるで完璧に振り入れされたダンスのように、寸分狂わず九人が一斉に手首をクロスすれば、それぞれのブレスレットから色とりどりの光が放たれ、強化スーツを纏った姿へ変身完了。

 ヒナタレッド、小坂菜緒
 ヒナタブルー、渡邉美穂
 ヒナタイエロー、金村美玖
 ヒナタグリーン、松田好花
 ヒナタピンク、宮田愛萌
 ヒナタパープル、富田鈴花
 ヒナタオレンジ、丹生明里
 ヒナタホワイト、河田陽菜
 ヒナタブラック、濱岸ひより

 そして変身完了と同時に、
「とぉッ!」
 ブラック、ブルー、オレンジが地を蹴り、宙返りで勢いをつけて先制のジャンピングキック!

 ドゴォォっ!

「ンガァッ…!」
 見事に直撃したスネーク、キャタピラー、スパイダーが尻もちをつくように倒れれば、続いて駆け足で一気に距離を詰めたグリーンとイエローが、それぞれパンチとチョップで、スティングレイとバットを押し返す。
 こうして採石場は再生怪人軍団とヒナタレンジャーによる大乱闘へと発展。
「とぉッ!」
「やぁッ!」
 パープルとピンクが揃ってオクトパスとアントリオンを担いで空へと放り上げれば、見事、空中で交錯し、もつれ合うようにして地面に落下。
 これだけでも多少のダメージは与えただろう。…が、その二体もすぐ起き上がって反撃!
「きゃッ…!」
 アントリオンのショルダータックルで弾き飛ばされるピンク。
 そしてパープルには、

 シュルルルっ…!

「くっ…!」
 オクトパスの伸ばした触手に右腕を絡め取られ、そのまま、

 グイっ!

「わぁッ!」
 お返しとばかりに宙に放り上げられ、砕石の山へ身体を打ちつけるパープル。
 幸い、宙で上手く身体を翻し、受け身の体勢をとったのでダメージは最小限。
 それよりも、
「くっ…は、離せ!このッ…!」
 依然、腕に絡みついて離れない触手に四苦八苦のパープル。
 そして、そのパープルの様子をチラチラと横目に気にしながら戦っていたのがスネークと戦っていたホワイト。
「えいッ!やぁッ!」
 とチョップの連打を浴びせて優勢だったこともあり、
(さっさとコイツを蹴散らして、鈴花に加勢してあげないと…!)
 そんなことを頭に浮かべながら戦っていたその慢心が今から思えば命取りだった。
「とぉッ!」
 と、ハイキックで蹴り上げ、しりもちをつかせたところで、
「鈴花!今、助ける!」
 タコ足で絡め取られて劣勢のパープルの元に向かおうとしたホワイトだったが、ムクッと起き上がったスネークが、突然、

 パシャッ…!

「…くっ…!な、何これッ…!」
 スネークの目が、突然、赤く光ったのを見たのと同時に、駆け出した足が止まり、その場に立ち尽くしてしまうホワイト。
 懸命に、
「くっ…くっ…!」
 身体を動かそうとするも、なぜか手足は鉛のように重くなり、動かせない。
 以前も苦戦を強いられたスネークの特殊技、目が合った相手を金縛り状態にする「ヘビにらみ」だ。
 動けなくなったホワイトに、よくもやってくれたなと言わんばかりに襲いかかるスネーク。

 ドゴッ、ドゴッ…!

「んぐッ…!」
 ガードできずに無防備の土手っ腹に打ち込まれたワンツーパンチからの体当たりで、あっけなくその場に倒されたホワイト。
 そこに、さらに、

 …パァン!

「くっ…!」
 別のところから飛んできたハンドボール大の白い球が地面に這いつくばったホワイトの上で弾け、中から飛び出した蜘蛛の巣ネットが、ただでさえ動けないホワイトをさらに雁字搦めに。
 その状態で、
「ンガァッ!ンガァッ!」
「ぐっ…うぅッ…!」
 スネークにドカドカを踏みつけられるホワイト。
 さらに、その蜘蛛の巣ネットを発射した張本人、スパイダーも、同じようにネットで雁字搦めにして捕縛に成功した足元のブラックをガシガシと踏みつけ、そのブラックも、
「くっ…くっ…!」
 一瞬の不覚でまんまと絡め取られ、身体から離れない蜘蛛の巣ネットに大苦戦。
 一丁上がりどころか、二丁上がりといったところか。
 そこに、
「とぉッ!」
 と飛び蹴りで割って入ったレッド。
 連続して繰り出すキレのあるキックでスパイダーを遠ざけると、
「ひよたん!大丈夫!?」
 と、足元でネットに絡まるブラックを助けようと手を伸ばすも、
「…くっ!この蜘蛛の巣、粘着性が…!」
 迂闊に触ってみてから気付くネバネバ。
 そして、さらに、

 キィィィン…♪

「はうぅッ…!」
 ふいにマスクの上から頭を押さえ、小さく呻き声を上げたレッド。
 同じように横でコングと交戦していたブルーも、
「ぐッ…!」
 と頭を押さえて倒れ込み、
「な、菜緒…これは…」
「う、上…!あのコウモリの仕業に違いない…!」
 そう言われて頭上に目をやると、いつの間にか宙を舞い、その翼を羽ばたかせて華麗に旋回飛行をしているバットの姿が目を入り、
「ちょ、超音波か…!くそっ…」
 そして、頭の痛みを堪えて立ち上がろうとしたブルーの足元に、突如、

 ゴゴゴゴ…!

「くっ…!」
「わッ…!」
 突然、地面が陥没するようにへこみ、そのまま、すり鉢状の蟻地獄へと変化。
 その斜面にまずブルーが滑り落ち、続いて横にいたレッドも、
「きゃッ…!」
 仲良く滑り落ちるレッドとブルーを穴の底で待ち受けているのは、この蟻地獄を作った張本人のアントリオン。
 早く下まで落ちてこいと言わんばかりに両手のハサミをチョキチョキと動かして待ち構えている。
 そこに、

 シュルルル…!

 どこからともなく飛んできて、滑落するブルーの手首に巻きついた緑色のムチ。
 それを見ただけで、
「こ、好花…!」
 グリーンの専用武器、グリーンウィップ。
 それをブルー自身も拳で掴み、さらに、
「菜緒!つかまって!」
 と隣のレッドに手を差し出し、レッドが掴んだと同時に、
「とぉッ!」
 引っ張り上げるグリーンウィップにも力を借りる形で蟻地獄から飛び上がって脱出。
 そんな穴から出てきた二人の確認し、ホッとするグリーン。…だったが、だからといって戦場で油断は禁物。
(…!)
 ふと背後に気配を感じ、振り返ると同時に、

 シュルルル…!

「ぐっ…!」
 たった今、自分が蟻地獄の中に投げた鞭のように首に巻きついてきたスティングレイの触手。
 そして、それがギュッと締まった瞬間、

 ビリビリビリっ!

「うぁぁぁッ!」
 触手を伝って流された高圧電流に悲鳴を上げ、たまらず片膝をついてしまうグリーン。
 止まらないピンチの連鎖…連鎖の発端だったパープルも、いつの間にか右腕だけでは終わらず、全身をオクトパスに絡め取られ、その軟体によってホールドされる形で砕石の山肌に倒れていた。
「ぐっ…ど、どけっつーの…こ、このぉッ…!」
 何とか押し返し、引き剥がそうと奮闘するパープルだが、四肢を全て絡め取られているせいで上手く力が入れられない。
 さらに、
「きゃぁぁッ…!」
 響き渡った悲鳴はピンクの声。
 いつの間にかキャタピラーの吐き出した糸でボンレスハムのようにされた身体を怪力コングに抱き上げられてサバ折りに遭い、さらにそれを助けようとしたオレンジは、

 プシャァァァ…!

「わッ…!わッ…!」
 スラッグの凝固液に狙われて思うように近寄れず、そこに、

 キィィィン…!

「くッ…!」
 またしても頭上のバットが強い頭痛を引き起こす超音波で動きを鈍らせてくる。
 うずくまってしまうオレンジ。
 そして、そのオレンジに改めて照準を合わせるスラッグの右手。
 完全に動きが鈍ったオレンジ…次こそは凝固液を全身に浴びせてやることができるだろう。

 プシャァァァ…!

 と、勢いよくスラッグの右手から噴き出す凝固液だが、わずかに早く、
「くっ!さ、させるものか…!」
 背後から組みついたイエローがスラッグの右手をあらぬ方向へ抜けたことで急死に一生を得たオレンジ。…だが、なおも、
「くっ…あ、頭が割れるッ…!ぎゃぁぁっ…!」
 苦悶の声を上げて地べたを転げ回るオレンジ。
 そして組みついたイエローも、
「きゃっ…!」
 ぶんぶん身体を揺すりだしたスラッグに振り払われる形で砕石の山に激突。
 それと同時に、二匹目の獲物とばかりにオクトパスの残りの足がイエローの身体にも一斉に巻きついてきて、
「くっ…くっ…」
 まるでカメレオンの舌で絡め取られたハエ…パープルに続いてイエローも軟体オクトパスの足から逃げ出せず、劣勢に。
 砕石の山の上から、
「アハハ♪どいつもこいつもあっけないわねぇ!さぁ、あと満足に動けそうなのは誰かしらぁ?」
 戦士たちの苦戦する様子にご満悦で高笑いが止まらないイグチ魔女。
 ひとまず手近なところで、グリーンを電流責めにしていたスティングレイを二人がかりで引き剥がしたレッドとブルー。
 なおもブルーが電流触手を警戒しながら応戦する中、
「好花!大丈夫!」
「う、うん。何とか…」
 倒れたグリーンを抱き起こしたレッドだが、ふと周りを見渡し、
「くっ…だ、誰から助ければ…」
 蜘蛛の巣ネットに絡め取られたホワイトとブラック。
 バットの超音波攻撃でうずくまるオレンジに、コングのサバ折りにされて身動きが取れないピンク。
 イエローとパープルも、二人仲良くオクトパスの軟体の下敷き状態。
 そして、また、

 ゴゴゴゴ…!

「菜緒!アカン!また蟻地獄が…!」
「離れようッ!」
 地面の揺れで再び危機を察し、飛んで離れようとした二人だが、そうはさせまいと襲いかかってくるスネークとキャタピラー。
 二体とも明らかにグリーンだけに狙いを絞っており、左右からグリーンに組みつくと、そのまま団子状態になって、
「きゃぁぁッ…!」
 今度はグリーンが蟻地獄の斜面を滑落していく。
 そして、それを助けようとしたレッドの前に立ちはだかるスティングレイとスラッグ。
「くっ…!」
 劣勢に自然と後ずさりするレッドに、
「さぁ、電撃責めと化石化。どっちがアンタの末路にお似合いかしらねぇ?」
 砕石の山の上から高みの見物で高笑いのイグチ魔女。…だが、そこに、
「むッ…!」

 ブゥゥゥン…!

 採石場に近づいてくる新たな走行音…しかも複数…。
 そして、
「あらあら…♪これはこれは、お揃いで…♪」
 新たに現れた一団、佐々木久美を筆頭とする先代戦士たちの登場に笑みを浮かべるイグチ魔女。



「好花ッ!」
「陽菜!ひよたん!」
 乗ってきたマシンから飛び降りるなり、バラバラと戦場に散らばり、後輩たちに加勢する先代たち。
 手にしているのは護身用の光線銃と、倉庫からとりあえず手当たり次第に持ち出してきた資材…ヒナタレンジャーの面々に比べて、所持している装備は頼りないが、それでも、
「やぁッ!」
「えいッ!」
 先代戦士らしく当時を彷彿とさせる華麗な身のこなしで応戦し、後輩たちに群がるモンスターたちを遠ざけ、

「美穂!しっかり!」
「史帆さん…!」

「美玖!まだまだここからよ!」
「え…!み、美玲さん…!」

「好花!大丈夫?」
「カ、カゲさん…どうしてここに…」

「愛萌!まだ戦えるよね?」
「彩花さん…!も、もちろんです!」

「スズちゃん!ファイトっ!」
「紗理菜さん…?いつの間に…!」

「丹生ちゃん。立てる?」
「はい!メイメイさん、ありがとうございます!」

「陽菜ちゃん。諦めちゃダメ!」
「京子さん…!来てくれたんですか…!」

「ひよたん。まだまだ戦いはこれからやでぇ」
「まなふぃさん…!」

 それぞれ、自身が務めていたモチーフカラーの戦士たちをフォロー。
 そしてリーダーのレッド、菜緒の元にも、
「菜緒!しっかりしなさい!」
「く、久美さん…」
 ダメージの蓄積で片膝をついていたレッドが、久美の肩を支えにして再び立ち上がると、そこに、

 ヒュゥゥゥ…ボカァァン…!

 傍らの砕石の山の上にいたイグチ魔女が火球に姿を変え、二人の前へ降りてくると、再びヒトの姿を見せて、
「あーら…誰かと思えば。久しぶりねぇ、佐々木久美。いいところに来たじゃないの。ちょうど、アンタが手塩にかけて育てた子たちが再生怪人軍団の前に大敗北を喫するところだったのよ」
 意気揚々と声をかけるイグチ魔女。
 そして、
「…で?何の用があってここに?愛弟子たちの惨状を見てられず、かつての負け犬が雁首揃えて我々に降伏の意でも告げに来たのかしら?」
「フッ…まさか…」
 そんなワケあるまいと思わず鼻で笑ってしまった久美。
 そして、
「イグチ魔女!これまでに倒されたモンスターを復活させ、この子たちの戦力を分散させる戦い方をすれば勝てる…そういう狙いでしょッ!」
 そんな久美の指摘を、イグチ魔女は高笑いで返し、
「フフフ…その通り。まさに以前、お前たちが我々に惨敗を喫した『けやき谷の合戦』と同じ状況よ。所詮、お前たちはチームワークでしか戦えない。個々の力だけではモンスターの一体すらも倒せないのよ!」
 けやき谷の合戦…確かに以前、先代の戦士たちは戦力の分散という弱点を突かれ、史帆の計らいで辛くも逃げだした久美一人を除いて全滅を喫した。
 それに味を占め、今回も同じようにヒナタレンジャーの戦力を分散させ、チームワークを封じて一人ずつ始末しようというつもりらしい。
 しかし、その辛酸を舐めた当事者でもある久美は、なぜかクスッと笑って、

「イグチ魔女…どうやらアンタは、一つ、大きな思い違いをしている。確かにあの時、私たちはその作戦でやられた…でも、もうその作戦は通用しないわ!特に、この子たちにはねッ!」

 そんな自信満々の久美の発言に、今度はイグチ魔女が鼻で笑い、
「フッ…何を根拠にそんな大口を叩けるのかしら?現にアンタたちが邪魔しに現れなければ完全に勝負は決していたわ。まともに動けそうなのはレッドだけ、そのレッドも片膝をついていたじゃない」
「くっ…」
 図星だけに悔しそうな声を漏らしたレッド。…だが、その隣で久美が、

「菜緒…そして、他のみんなもよく聞きなさい…!あなたたちは既にかつての私たちの力を超えている。九人の結束はもちろん、個々でもよ。その仲間たちを信じなさいッ!そして自分を信じなさいッ!」

(…!)
 採石場に声高らかに響き渡った久美の叱咤激励…それは端的に言えば、一人一殺に集中しろということだろう。
 確かに、視界の隅で苦戦する仲間がチラつき、それに気を取られた隙を突かれて、あれよあれよと全員がピンチに陥ってしまった印象。
 かつて久美自身が経験した戦局の分かれ目…実際、イグチ魔女も味を占めて再度その戦法を仕掛けてきていた。
 そして、久美に続き、史帆が、
「みんな!やっちゃいなッ!」
 さらに彩花も
「一度は倒したモンスターたちでしょ?勝てないワケないじゃないッ!」
 その声で一気に戦意がみなぎってきたヒナタレンジャーの面々。
 再びレッドの、
「みんな、行くわよ!」
 の声に、
「おうッ!」
 握った拳を見せ合い、それぞれ目が合った目の前のモンスターへと駆け寄って再び乱戦再開。

「とぉッ!」
 長い脚でハイキック一閃、スネークに尻もちをつかせるイエロー。
 
「やぁッ!」
 アントリオンの振り下ろしてきたハサミの手を軽々と受け流し、カウンターでチョップを打ち込むブラック。

「おらおらおらぁッ!」
 威勢の良い声でコングの厚い胸板をものともしないボクサーパンチのラッシュを打ち込むブルー。

「えいッ!やぁッ!」
 複数の触手を操って襲ってくるオクトパスの攻撃を流れるような動きで華麗にかわし、得意の合気道で応戦するピンク。

「とおッ!とぉッ!」
 軽快な身のこなしでキャタピラーを翻弄し、主導権を握っていくオレンジ。

「もう同じ手を食わないわよ!とおッ!」
 安全圏の空へ飛び立ち、再び超音波攻撃を行おうとするバットを逃がさないよう、矢継ぎ早に攻撃を仕掛けるホワイト。

「くっ…なんの…これしきッ!」
 スパイダーの吐き出した糸で左腕を絡め取られるも、逆にその糸を引いてスパイダーを自らの間合いへ引っ張り込んで決定機を窺うパープル。

「行くわよ!それぇッ!」
 スラッグを背負い投げで投げ飛ばし、砕石の山へ叩きつけるグリーン。

 そして、
「とぉッ!とぉッ!」
 スティングレイの帯電触手を華麗に避け、それによって生じた死角の隙をついて攻撃を重ねていくレッド。
 それによって転倒させたり、相手がよろけるのを見るたび、
(久美さんの言う通りだ…!集中して戦えば、どうってことない相手…!)
 と、その場で自信を得て、さらに技が冴えていく好循環。
 たちまち、
「くっ…!お、おのれ…!」
 つい数分前まで高笑いをしていたイグチ魔の顔から笑みが消え、歯噛みへと変わっていく明らかな戦況の変化。
 そして、

「とぉッ!」
 バキィッ!

「…くっ!」
 ブラックに蹴り上げられたアントリオンが自分の元めがけて飛んできたのを身を翻して避けたイグチ魔女は、たまらず、
「えぇいッ…!せっかく蘇らせてやったのに不甲斐ない…!」
 そして、
「いでよ、ガーナ兵っ!」
 と、計20体近くのガーナ兵を召喚し、劣勢の再生モンスター軍団への加勢を命令。…しかし、
「そうはさせないッ!」
 と、そのガーナ兵の集団の前に立ちはだかったのは先代戦士たち。
「私たちが相手になるわ!」
 と意気込む美玲に、
「ウチらかて、日々トレーニングしとんねん!その成果、見せたるわッ!」
 と続く愛奈。
 そしてヒナタレンジャーの面々と同様、

「えいッ!」
「やぁッ!」
「とぉッ!」

 東村芽依の鋭い蹴り…齊藤京子の渾身の平手打ち…高本彩花の華麗な投げ技に、佐々木美玲の放つ光線銃は百発百中…かつての勇姿を彷彿とさせる熟練の身のこなしは後輩たちにも決して引けを取らず、次々と駆逐されていくガーナ兵の群れ。
 せっかく召喚した援軍が機能せず、
「ちぃッ…!」
 と舌打ちをするイグチ魔女。
 やがて、
「みんな!しっかり!」
「今、ほどいてあげるッ!」
 いつの間にか砕石の山を駆け登っていた影山と潮が、陽子たちの身体に巻きつく糸を解体して救出。
 それに気付いて、
「くっ…い、いつの間に…!」
 そして、そんなイグチ魔女の前に、
「イグチ魔女っ!」
「観念しなさいッ!」
 挟み撃つようにして立ち、睨みを利かせた久美と史帆に対し、
「何を小癪な…!生身のお前たちに何が出来るというのッ!」
 明らかな苛立ちとともに手にした愛用のステッキから火球を作り出し、
「焼け死ぬがいいッ!」
「くっ…!」
「わッ…!」

 ボカァァン…!ボカァァン…!

 二人が紙一重で避けるたびに背後で上がる爆炎と砂煙。
 爆発の熱はもちろん、砕かれた小石が身体に当たって意外と痛い…そんな懸命の回避の中、一瞬、
「久美さんッ…!」
 とレッドの声が聞こえた気がしたが、すかさず、

「こっちのことは気にしないで目の前の敵に集中しなさいッ!」
「大丈夫!腐ってもアンタたちの先輩…こんなのでやられるワケないんだから!」

 と声を上げる久美と史帆。
 もちろん強がりだが、とにかく今は余計な手は煩わせない…菜緒たちを過去の自分たちの二の舞にはさせないという思い。
 そして砂煙の中で、
「史帆ッ!久々に“アレ”やるよッ!」
「オッケー!任せて!」
 顔も見えず、お互いの気配だけをうっすら隣に感じる中、二人だけにしか聞こえない声量の短いやりとりで難なくとった意思の疎通。
 久々の“アレ”…かつて自分たちが戦士を務めていた頃に得意にしていたコンビネーション戦法のことだ。
 立ち込める砂煙を目の前に、
「さぁ…次は当てるわよ?どっちから先に仕留めてやろうかしら」
 次の火球をステッキの先に浮かせた状態で待ち構えるイグチ魔女。
 そして砂煙が晴れ、手足の長い長身ゆえ、よく目立つ久美の姿が先に見えたところで、
「佐々木久美!まずはお前から始末してやるわ!そぉらッ!」
 ステッキを振るい、作り置きしていた火球を飛ばすイグチ魔女。
 それを、これまで同様、
「くっ…!」
 転がるようにして回避する久美。…だが、それと同時に長身の久美の背後に重なるように隠れていた史帆が地を蹴ってジャンプ。
「なにッ!」
 と虚を突かれたイグチ魔女めがけ、
「とぉッ!」
 元々、身体能力はなみはずれたものを持っている史帆。
 人間離れした跳躍から、先代…しかも生身の人間体にもかかわらず、後輩たちも顔負けのお手本のようなジャンピングキックを繰り出せば、

 ドカァァッ!

「おぅッ…!」
 見事に肩口に命中し、無様に砕石の山に叩きつけられるイグチ魔女。
 その衝撃で思わずステッキを手放せば、そのステッキは久美の足元へと転がり、それを、
「こんなものッ!」
 力強く踏んづけてやれば、バキッ!と音を立てて厄介なステッキも真っ二つ。
「イグチ魔女!これでもう、アンタの得意の火球攻撃は出来ないわ!」
「ぐっ…お、おのれぇッ…!」
 よろよろと立ち上がったイグチ魔女。
「ふんっ!ステッキなどなくとも、私にはまだまだ能力はある!お前たちを片付けることなど造作も…」
 造作もないこと…と言いたかったのだろう。
 それを言い終わるのを待たずに、ふと、

 ゴロゴロ…ゴロゴロ…

(…!)
 突如、その場にいる全員の注目を引くように轟いた遠雷の音…。
 自然と空を見上げた久美と史帆、そしてヒナタレンジャーの戦士たち。
 その目に留まったのは西の空から凄まじい速さで広がってくる不気味で巨大な雷雲…たちまち、それまで晴天だった採石場が夜のように真っ暗になると、次の瞬間、

 …ドゴォォォン!

「きゃっ…!」
 一瞬の光とともに野太い稲妻が狙いすましたように採石場の真ん中に落ち、地震のように揺れる地面。
 それと同時に、
「ぐぎゃぁぁぁッ!」
 稲妻が直撃し、その顔を醜く歪ませて悲鳴を上げたのはイグチ魔女…。
「がっ…あぁ…うぅッ…」
 言葉にならない呻き声を発している様子から、相当なダメージ…そして膝から落ちるように崩れ落ちたのを見計らったように、

「イーッ!」

(…!)
 どこからともなく新たに現れた二体のガーナ兵。…だが、その二体は、他のガーナ兵と違って何故か体色が金色。
 その妙に特別感のある二体が膝をついたイグチ魔女を確保するように両脇に組みつくと、
「お、お前たちは…ネルネル様の直属の親衛隊…な、何のマネだ…くっ…は、離せ…まだ連中との勝負はついていない…くっ…」
 口では抵抗するイグチ魔女だが、今の稲妻で多大なダメージを受けていて身体が動かず、そのまま抱え上げられる形で立たされ、そして、

 シュンっ…!

「き、消えた…!?」
 瞬間移動のように目の前から消えてしまった二体の金色ガーナ兵とイグチ魔女。
 すると、それと同時に立ち込めていた雷雲がマジックのように消滅し、再び周囲に太陽が射して元の晴天へと戻っていく。
 それと同時に、

「とぉッ!」
「やぁッ!」
「それッ!」

 各所から轟く声高らかな気合の声とともに、次々に宙を舞う再生モンスター軍団。
 まずブルーにフルボッコにされたコングが地面に打ちつけられて横たわると、そのコングの巨体を土台に、オクトパスが、スネークが、さらにスパイダーが…と、どんどん積み重なっていき、やがて再生モンスター軍団によるタワーが完成。
 最後は、そのタワーめがけ、円になって囲んだヒナタレンジャーたちが一斉し、

「レインボーショットっ!」

 キレイに揃った掛け声とともにそれぞれのヒナシューターから放たれた九色の光線により、

 ドカァァァン!

 一体と残さず、ド派手に爆発四散した再生モンスター軍団。
「やった!」
「よしッ!」
 苦戦から一転の逆転勝利に思わずガッツポーズが出る者もいる中、人間体に戻った菜緒と美穂がササッと久美たちの元へ駆け寄り、
「久美さん!イグチ魔女は…?」
 勢い込む菜緒に対し、久美は首を振って、
「もうここにはいない。ネルネルの親衛隊に脇を抱えられて消えたわ」
 それを聞いて、
「くっそー…逃げ帰って、また何か違う作戦でくるつもりね。懲りないヤツ…!」
 と舌打ちして悔しがる美穂だが、それを聞いた久美は、口にはせずとも、

(果たしてそうだろうか…?)

 最後の去り際…突然の稲妻に打たれてダメージを負ったイグチ魔女の前に現れた二人の親衛隊は、決してイグチ魔女の身を案じているようには見えなかった。
 アジトへ連れ帰るというよりは、むしろ強制連行…。
 もちろん、怨敵ともいえる相手なので身を案じてやる筋合いなどない。…が、それにしても妙な胸騒ぎを感じずにはいられなかった久美。
 その理由は、突如、イグチ魔女を貫いたあの激しい稲妻…まるで、誰かから“見限られた瞬間”に思えて仕方がない。


(つづく)


次回予告(※当該メンバーの声で脳内再生推奨)

どうも!胎児の時からワチキはパリピ!富田鈴花です!
再生モンスター軍団を従えても私たちヒナタレンジャーを倒せなかったイグチ魔女。
ネルネルはそんなイグチ魔女を見限り、とうとう彼女を凶暴なモンスターへと生まれ変わらせた!
理性すらも失い、ただ私たちを倒すためだけに猛り狂う女王蜂クイーンビー!
怨念をまとった身体には、私たちの攻撃はおろか、決め技の『レインボーショット』すらも全く効かない…!
次回、『死闘!女王蜂クイーンビー!』…お楽しみに!



■筆者メッセージ
鰹のたたき常設チャットは用途別に三種、下記URLより。
どなたもお気軽に覗いて、お気軽に発言してください。

常設チャットA(坂道グループ限定トーク)

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常設チャットB(坂道グループ以外でトーク)

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鰹のたたき(塩) ( 2025/10/22(水) 23:33 )