1人目・山下葉留花
ヒナタレンジャーの本拠地、ヒナタベース。
その内部には様々な部屋があり、普段、戦士たちが憩いの場としているメインルームをはじめ、戦いに備えた鍛錬を積むためのトレーニングルーム、モンスターの出現や怪事件の発生をいち早くキャッチして情報を伝達する通信室、成分解析や薬品の調合などを行う研究室、膨大な資料を貯蔵している資料室…さらには食事室に医務室と、たいていのことは内部の行き来で賄える。
そして忘れてはならないのが戦士たちの出動時に駆り出すマシンが並べられているガレージと、そこに併設されているメカニックルーム。
この部屋の管理を任されているのは森本茉莉と山口陽世の二人。
いかにも知的に見えるヘッドセットをつけた高橋未来虹が管理する通信室や、白衣をまとった上村ひなのが従事する医務室とは少し毛色が違い、女性らしさを全くと言っていいほど出せない持ち場で、現に二人の服装も、ところどころにオイル汚れのついたツナギの作業着、手には軍手で、足元は動きやすさ重視で運動靴一択。
そして、この部屋での従事において長髪を靡かせているなど御法度ということで、陽世はゴムで束ねた上で後ろ向きに被ったキャップの中へしまい込み、茉莉にいたっては、それすら面倒ということで、先日、髪をバッサリとショートカットにしてきた。
そんな出で立ちで、日々、朴訥と作業することが主という持ち場だが、それはそれで、二人でやりがいを感じている。
戦士たちが駆り出していくマシン…戦いの中では破損など日常茶飯事で、そのたびの修理や改造はもちろん、いざ出動という時にマシントラブルなどもっての他ということで、日々、こまめなメンテナンスも欠かさない二人。
そして、この日も二人で分担してガレージ内の各マシンを細部まで入念にチェック。
タイヤの擦り減り具合やミラーの角度、そして実際にエンジンを掛けてみての排気音チェックなどを行い、
「…はい、オッケー」
「小坂さんのレッドバイクは異常なし…で、次…好花さんのグリーンバイクも異常なし…と…」
日報に書き込んでいく○印。
ヒラガーナの一味が影を潜めてくれている日ほど作業が捗り、そして、
「…よし、終わりっ♪」
「はぁー、疲れたぁ…」
ひとまず本日のノルマは終了。
そして、
「あー、お腹すいた!ゴハン頂いてこよっと…」
と言い、
「行こうよ、陽世」
と食事室に誘う茉莉だが、陽世は、
「ごめーん。私、まだやらないといけないこと残ってんの。ほら、鈴花さんのマシンあるじゃん?あれのカウルの塗り直し、頼まれててさぁ」
「あぁ、言ってたね。でもさ、そんなの、とりあえず紫色に塗っとけば終わりじゃないの?ほら、鈴花さんって紫じゃん」
と簡単に言う茉莉に対し、陽世は声をひそめて、
「それがさ…鈴花さんって、けっこうマシンにこだわりあるじゃん?上の方は濃い紫で、そこからグラデーションっぽく色を薄めていく感じにしてほしいって言われててさ」
「うわー、めんどッ!」
と言った後、慌てて廊下を覗く茉莉。
幸い、本人をはじめ、誰にも聞かれてなかった模様。
「ふー…危ない、危ない…つい本音が…」
と安堵し、
「じゃあ、悪いけど、私、先に行くよ?」
「うん、いいよ。気にしないで」
そして茉莉は優しさで、
「もしあれだったら、陽世のぶん、こっちに持ってきてあげよっか?」
と聞いてくれたが、陽世は首を振り、
「ううん、大丈夫。というか、正直まだあんまりお腹すいてないんだよね」
と言って断った。
こうして一足先にアガリで、スタスタとメカニックルームを出ていく茉莉の背中を見送った陽世。…だが、やがて、その足音が遠のいていき、完全に聞こえなくなったのを確認すると同時に内線電話を手に取り、
「…あ、もしもし。はるはる?悪いんだけど、あと15分ぐらいしてからでいいから、私のぶんの食事、こないだみたいにメカニックルームまで持ってきてもらえないかなぁ?…うん。茉莉のはいらない。私のぶんだけ。…あ、ちなみにさ。はるはるは、もうゴハン食べたの?…まだ食べてない?だったらさ。もしよかったら、はるはるもこっちで一緒に食べない?…うん、私は全然、大丈夫。…オッケー。分かった。じゃあ、待ってる。よろしくね」
そんな、まるで出前を頼むような感覚で、最近、ひそかに可愛がっている一般隊員の山下葉留花に配膳を頼んだ陽世。
お腹が減ってないなんて実はウソ…そして、もっと言えば、まだ仕事が残っていると言ったあれもウソ…。
本当は、ちょうどお腹も減っているし、富田鈴花に頼まれたマシンの塗装も既に終わらせてある。
そして、そんな陽世が、今、思うこと。
(はるはる…何か気になるんだよなぁ、あの娘…)
山下葉留花。
このヒナタベースに従事する一般隊員の一人で、そんな彼女に対し、運命の赤い糸とまでは言わないが、何か妙に惹かれるものを感じている陽世。
キッカケは偶然で、先日、たまたま廊下で遭遇し、少し話しただけ。
普段あまり自分から人に話しかけるタイプでもないわりに、何故かその時は陽世の方から声をかけ、そしてそこで思いのほか会話も弾んだことで少し打ち解けて、それ以来、持ち場は違えど仲良くしている。
そして、そんな二人の距離が急激に縮まったのは3日前。
その日は相棒の茉莉が別件で出払っていたのに加え、今日と違って仕事が山積みで手が離せず、食事室に行って食事を摂るヒマもなかったのだが、その時に気を利かせてメカニックルームまで陽世のぶんの夕食を持ってきてくれて、なおかつ残りの作業を素人ながらに一緒に手伝ってくれたのが山下だった。
ものすごく端的に言うと、その時の彼女の優しさに不覚にもキュンと来てしまったという感じ。
そして今夜、そんな山下を、うまく口実を作ってメカニックルームに呼んだ陽世。
理由は特にない…ただ何となく、無性に会いたくなっただけ。
そして、周りの目を変に意識してしまうタイプゆえ、持ち場が違う山下と仲良くしてる自分を茉莉に見られるのが少し恥ずかしかっただけ。
(…キモいかな?私…)
ふと、我に返ってそんなことを考えてしまったが、何を今さらという感じ。
そして陽世は、この待っている間に、おもむろに室内を物色しだした。
探しているのはニオイ消しに使える何か。
室内に立ち込めるメカニックルーム特有の工場のようなニオイ…自分はずっとここが持ち場だから既に慣れっこだが、これを、先日、山下が手伝いに来てくれた時に、終始、
「すごいニオイですね。この部屋…」
と苦笑いしてたのを思い出したからだ。
それを、陽世なりの優しさで、
(何かなかったかな…芳香剤みたいなの…)
と探し回っていると、ふと、見慣れない香水のようなものを見つけた。
あった場所は、最近、茉莉が勝手に私物化してる棚の上。
(もぉ…いつからこの棚は茉莉のモノになったの?私としては工具とかをここにまとめて置きたいんだけど)
と苦笑いする反面、
(別に茉莉の棚じゃないし…そこに無造作に置いてあるってことは私との共有物ってことでいいよね)
と勝手な解釈でその小瓶を手に取った陽世。
一応、念の為、蓋を開けてニオイを嗅いでみると、甘酸っぱいすごく良いニオイがした。
「何だろう?これ…」
香水か、もしくはアロマ的な何かか…。
(なに、アイツ…こんなの持ち込んで…私の知らないところで、ちゃっかり色気づいてんじゃん…)
と思ったりしつつも、ニオイ消しには充分。
(ちょっと借りるよ)
と心の中で茉莉に断っておいてから、そのニオイを室内にテキトーに振りまいた陽世。
たちまちオイルやガソリンのニオイが充満していたメカニックルームに、少し場違いな良いニオイが立ち込め、そして、ちょうど指定した15分後というのをキッチリと守って、
「失礼しまーす。お食事、お持ちしましたよ。陽世さん♪」
と現れた山下。
「ありがとう。いいよ、入って」
と平然を装ってメカニックルームに招き入れる陽世。
そして、陽世のぶんと自分のぶん、本日の食事をトレイに持って足を踏み入れた山下は、
「あれ…?今日は何か良いニオイしますね。こないだと違う…♪」
「う、うん。ほら…前回、山下がちょっと苦手そうにしてたじゃん?それに、ガソリンのニオイとかしてるところでゴハン食べるのも食欲わかないし…だから、一応、ニオイ消しみたいな感じでやってみたんだけど…」
「あー、なるほど。つまり、陽世さんの優しさですね♪」
「そ、そう。優しさだよ。優しさ…」
そしてトレイを受け取り、本日の食事、ミートローフと春巻きを二人で食べる。
口に運びながら、
「今日のゴハンってさ。誰が作ったの?」
と何気なく聞いた陽世。
目下、現在は、一般隊員たちが持ち回りで食事当番を担当中で、聞かれた山下は、
「今日は…藤嶌と宮地です。…あ、違った。石塚と清水?あれ、誰だっけ?えっと…待ってくださいね。昨日が私と小西だったから…えっと…えっと…」
「も、もういい、もういい…うん…平尾以外なら別に誰でもいい…」
こうやってほどよいところであしらうのが、山下と会話する時によくある風景の一つ。
とりあえず平尾の料理センスが激ヤバということだけは、最近、ヒナタベースに知れ渡っている共通認識。
そして食事を終えた二人は、そこから雑談に花を咲かせ、その中で、ふと、陽世が、
「はるはるってさぁ。髪キレイだよね」
「えー、そうですかねぇ?」
「キレイだよ。だって、ほら…サラサラじゃん…♪
と何の気なしに手を伸ばし、山下の髪を溶く陽世。
よくよく考えれば、こうして他人に髪を触られるのを嫌がる女もいるだろう。…が、幸い、山下はそうではなく、むしろ、
「何か美容師さんみたいですね。陽世さん…♪」
と無邪気で、さらに変なノリで、
「トリートメントお願いしますっ♪」
「こらこら。誰が美容師や」
と松田好花をマネした口調でツッコミつつ、陽世も満更じゃない様子で、山下の背後に回り、
「痒いところはないですかぁ?」
と美容師コントに乗っかって疑似ヘッドスパ。
時々、我に返って、
(こんなところ、万が一、茉莉とか未来虹に見られたら引かれちゃうよ…)
と思いつつ、何だか妙に楽しくて続けてしまう陽世。
山下がそれを嫌がらないこともあり、次でその流れで山下の頬にも手を伸ばし、その手触りに、
「わぁ…♪モチモチだねぇ…♪」
なんてことを言ったりなんかして、完全に変なテンション。
そして、ふと、
(…何だろ…何か…変な気分…)
初めて感じる妙な高揚感と、それに呼応するように、心なしか熱くなってきた身体…。
そして、そう感じているのはどうやら陽世だけではないようで、
「…陽世さん。何か…暑くないですか…?」
「だよね…暑いよね…もしかしてエアコン消えてる…?」
と、一旦、立ち上がり、山下の背後から離れたにもかかわらず、
「おかしいなぁ…エアコンはずっとついてるけど…」
と戻ってきた足で、再び山下の背後に陣取り、しかも今度はさっきよりもさらに密着。
本人的には無意識だったが、気付けば懐に山下を置き、手を回して抱きしめるようにしていた陽世。
やがて、
「暑っつ…ごめん。ちょっと一枚脱ぐわ」
「あ、私も…」
と、身体に宿る謎の火照りで、何も考えずに薄着になる二人。
陽世は着ているツナギの作業着の上をバナナの皮を剥いたように腰まで下ろしてTシャツ姿になるも、そのシャツも既に汗だく…。
そして山下は、その一見おっとりとした見かけによらず、隊員服の下は、なんと、ちょいとセクシーなタンクトップ…。
「何か…恥ずかしいですね…」
と言いつつ、謎の火照りに負けて、出した途端セクシーな両肩とスラリとした二の腕を大胆に曝す山下。
そんな露出の増した山下をなおも懐に座らせて後ろから抱きしめる陽世。
そして、とうとう、妙に頭がぼんやりとする中で、つい、無意識で、
…むにゅっ…♪
タンクトップの上から山下の胸の膨らみを掴んだ陽世の手。
それに対し、山下が思わず、
「んッ…♪」
と声を上げ、ビクッと身体を震わせたのを見て、すぐ我に返り、
「あ!ご、ごめんっ…!ち、違うよッ…?手が当たっちゃっただけで…」
と慌てて手を離す陽世。
思わず、
(な、何してんの。私…!なに、普通におっぱい触ってんの…)
自分でしたことで思わず目が点になる陽世だが、一方で山下は満更でもない様子…。
その嫌がる素振りの無い反応によって、また少し陽世の理性のブレーキが緩み、気付けば、退けた筈の手を再び山下の胸の膨らみに上に置き、しかも今度は左右同時に、
むにゅっ…♪むにゅっ…♪
「んっ…んっ…♪」
陽世を触発するのには充分すぎる山下の可愛い声。
ピクピクと震えるスタイルの良い身体を背後からしがみつくようにして捕獲する陽世。
やがて、どちらからともかく、
ズッ、チュッ…♪ズッ、チュッ…♪
気付けば唇を重ね、夢中で舌を絡め合って吸っていた二人。
(や、山下の口の中…すごく温かい…♪温かいから…舌を突っ込みたくなっちゃう…♪)
と陽世が感じたように、おそらく山下も同じことを思ったのだろう。
互いに、積極的に相手の口内めがけて舌をねじ込む応酬。
さらに、それと同時進行で、いつの間にか山下の手も陽世の胸元に伸びてきていて、自分がしたのと同様に、
むにゅっ、むにゅっ…♪
「んんッ…♪」
慌てて絡めていた舌をほどき、上ずって声を上げた陽世に、
「わぁ…♪陽世さんって、意外に大きいんですね。おっぱい…♪背は私の方が高いのに…」
「な、何それッ…私のこと、チビって言いたいワケ…?」
「い、いや…!そんなつもりはなくて…す、すいません…」
と手を離す山下に、すかさず、
「あッ!やだっ…!やめないで…」
と、遠ざかろうとした山下の手を空中キャッチで連れ戻し、
「ねぇ、続けて…?もっと今みたいにして触って…?」
と、朦朧とする意識に任せ、すっかり甘えておねだりまでしてしまう始末。
すぐに自分で、
(やだ…なに言ってんの?私…)
と思いつつ、してもらうと声も漏れて妙に落ち着く。
こうして、二人しかいない室内で、その二人ともが変な気分になってしまったせいで、行為はエスカレートする一方…。
収まるどころか増していく火照りに耐えきれず、とうとう二人とも上裸…山下は美乳を、陽世は隠れ巨乳をそれぞれ曝し、そこに引き寄せられるようにお互い触り合い。
「んっ、んっ…♪も、もぉ…陽世さんのエッチぃ…♪」
「は、はるはるだって…その変なテクニックみたいなの…どこで覚えたの、それ…あぁッ…んんッ…♪」
門外不出の嬌声が飛び交うメカニックルーム。
やがて、膨らみを揉みしだくだけでは飽き足らなくなり、愛撫の矛先はいよいよ先端の突起へ。
クリクリ…クリクリ…♪
「あぁぁッ♪ダ、ダメぇ…♪んひゃぁッ…♪」
と、ひときわ反応が大きくなったのを見て、
「あっ♪陽世さん、ここ弱いんだぁ…♪ふふっ、いいこと知っちゃったぁ…♪」
と笑みを浮かべる山下だが、そんな自分も、
チュパチュパ…♪チュパチュパ…♪
と、陽世に、母乳の吸う赤子のようにして突起を吸われれば、
「あっ、あっ…♪あっ…♪は、陽世さぁんッ…♪」
「何よ。私だけみたいに…自分だって弱いじゃん、ここ」
とどのつまり、どちらも乳首が敏感だということ。
なおも二人で触り合い。
こうして互いに共通の性感帯を存分に愛撫し合った二人が、それ以上を求めて次の地へ行き着くのはもはや必然。
まず手を伸ばしたのは陽世。
隊員服の上から、山下の股の間を指でなぞると、
「あっ、あっ…♪そ、そこも触るんですかぁ…?じゃあ、私も…♪」
と後ろ手で、陽世にはツナギの上からでお返し。
「んッ…んんッ…♪」
指圧するように指の腹で押された瞬間、じんわりと作業着に滲んだ湿気に、
(ヤ、ヤバっ…!めっちゃ濡れてる、私…!)
と赤面する陽世と、それを声に出して、
「わぁ♪何か湿ってますよ、陽世さん…♪」
「う、うるさいなッ…言わなくていいってッ…!」
と制し、その口を黙らせるようにさらに強く摩擦。
悶々とした夜にたまにする自慰行為の手つきで弄ってやると、山下は、
「あっ、あっ…♪き、気持ちいいっ…気持ちいいです、陽世さぁん…♪」
「だ、だから…いちいち私に言わなくていいってば…!」
と、恥ずかしさのあまり、あしらいつつも、内心は、
(わ、私も…私も気持ちいい…♪はるはるの触り方、すごく上手…♪)
ただ、それを口にして伝えるのは、まだ少し敷居が高い様子。
その後も、止まらなくなった手を仲良く動かし合い、もじもじ身体を丸めたり、脚をクネクネ動かして悶え合った二人。
やがて山下の方が一足先に、
「あっ、あっ…♪やぁっ…は、陽世さんッ…!あぁッ、ダメっ…♪んんッ…んんッ…!」
普段の少し抜けた感じとは一変、しっかりオンナの反応を見せてビクビク震えた山下。
その投げ出した脚の震え具合から、口にはせずとも絶頂に達したのは明らかで、そこでようやく陽世の手も止まる。
「はぁ…はぁ…♪」
まるで長距離走を終えた後のように呼気を乱し、脱力して放心状態の山下。
その倒れてきた身体を、
「わっとっと…!だ、大丈夫…?」
と支えてやる陽世。
ついつい夢中になっていたが、いざこうしてクールダウンすると、何をどうしていいか分からない。
一方、山下は、乱れた息を整えると、
「…あれ?そういえば陽世さんってイキましたっけ…?まだイッてませんよね…?」
「え…?い、いや…あっ!ちょ、ちょっと…!んッ…あぁッ…♪」
支えてやってたにもかかわらず、振り返りざま、あっさりと押し倒される陽世。
「わ、私はいいよぉ…やぁっ…待って…んんッ♪」
構わずに覆い被さり、股ぐらに添えた指を動かしながら乳首を口に含む山下。
「あっ、あっ…♪やぁッ…♪んんッ…♪」
「イク時はイクって教えてくださいね?陽世さん…♪」
「な、何で私だけ…!自分だって言わなかったじゃんッ!あっ♪ダ、ダメっ…んんッ♪」
思うように力が入らなくなっているその小柄な身体なんて、手足の長い山下にすれば抑え込む難易度もゼロに等しい。
そして、
「あっ、あっ…♪イ、イクっ…♪イクぅッ♪んんッ!はぁッ…♪」
先ほどの山下と同様、全身をビクビクと震わせて絶頂に達した陽世。
ただでさえ童顔なのに、恍惚の表情になると目がとろんとして、さらに幼さが増す。
その表情を、まじまじと見つめる山下は、まるでゆりかごで眠る赤子を見ているように、
「すごく可愛いです…陽世さん…♪ずっと見てられます…♪」
「…う、うるさいな…そんなジロジロ見んなよぉ…恥ずかしいって…」
と、我に返ってツンツンしだす陽世だが、なおも山下は視線を逸らしてくれない。
そして苦肉の策で、
「もぉ…!見んなってばぁッ…!」
「んんッ…!」
山下の視界を塞ぐように首を持ち上げてキス。
不意を突かれて驚いた様子はあるが、嫌がる様子はない山下。
そして再び舌を絡め、もつれ合いながら、最良の落としどころを探る二人。
その触れ合う肌の生々しい温かさが、この小一時間の間で急速に縮まった二人の距離を現していた。
……
その後、どうにか落としどころが見つかったようで、起き上がり、乱れた服を着直す二人。
袖を通し、隊員服のボタンを留めながら、
「今日のこと…二人だけの秘密ですね…」
と口にする山下に、
「あ、当たり前でしょッ…!絶対に誰にも言わないでよ?マジで」
と真剣に釘を刺す陽世。
「大丈夫ですって。私、お喋りだけど口だけは堅いんで…♪」
そんな普段ならツッコめる発言にもツッコめず、ぼそっと、
「…た、頼むよ。ホントに…」
と念を押すだけの陽世。
何ともいえない堅い表情で、内心、
(ど、どうしよう…引かれちゃったかなぁ…?)
と真横にいながら少し不安…。
そして、そもそも、
(何でこんなことになったんだろ…?私はただ、一緒にゴハン食べながらお喋りしたかっただけなのに…自分でも予想外すぎて何が何だか…)
それは今も分からない。
本当に分からない。
そして、食べ終わった食器を二人で重ねている時に、陽世は、おそるおそる、
「…ねぇ。はるはる…」
「はい。何ですか?」
「あの…その…」
少し詰まりながらも、
「また次、私がゴハン一緒に食べよって誘ったら、その時も来てくれる…?」
今、あえて聞く必要などなかったことだが、この微妙な気まずさに耐えきれず、つい、間を埋めようとして聞いてしまった。
そして、もしここで期待するのと違う答えが返ってきたらどうしようという不安に包まれる陽世。…だが、幸い、その不安はわずか一秒で消え去った。
「当ったり前じゃないですか♪毎日でも来ますよ、私…♪」
と、満面の笑みが返す山下。
天真爛漫としか表現しようのないその笑顔は疑う余地も一切なくて逆に助かる。
そして、この日以来、陽世が頼めば山下が夕食のトレイを持って現れるというシステムが確立し、それが、のちに「メカニックルーム連れ込み隊」というイジりネタの発端である。
……
そして、その日の深夜。
山下が去り、陽世も立ち去って消灯したメカニックルームに、コソコソ、そしてバタバタと駆け込んできた人影。
幸い、怪しい者ではない。
仮に他の隊員に見つかっても問題がないのは、彼女が、この部屋の管理責任者の一人だから。
消えていた照明をつけ、部屋の隅にある自身が完全に私物化して使っている棚に一目散に足を進めるその女、森本茉莉。
そして、
「あった…!やっぱりここだった…ふぅー、焦ったぁ…」
と、そこに置いてある小瓶を手に取り、ホッとする茉莉。
それは、彼女がひそかに通販で購入したいわくつきアロマオイルで、ただ値が張るだけではない。
女性を官能的な気分にさせる香りを放つという、半分アダルトグッズのようなアロマオイルなのだ。
それをここに仮置きしたまま、持ち帰るのをすっかり忘れていた。
スッとポケットにしまい、再び電気を消してそそくさと退散する茉莉。
(ふふっ…♪女子だって時にはムラムラして気持ちよくオナりたい夜があるのさっ…♪)
しめしめと笑みを浮かべていたが、ふと、
(待てよ…あそこに置きっぱなしだったってことは、もしかして陽世に見られた可能性も…?)
今後も毎日のように顔を合わせる陽世に、万が一でも、そんな如何わしいアロマオイルに手を出したことが知れたとしたら…一瞬ゾッとしたが、再度、ポケットから取り出して一安心。
瓶の表面には何も書いていない。
知らずに見れば、ただの良い香りがするアロマオイルの入った小瓶でしかない。
(まぁ、陽世の性格なら私の私物なんて興味ないだろうし、見てすらないか…)
と都合よく片付けた茉莉。
そのうっかりした置き忘れによって、この数時間前、ちょっといろいろ起きていたことなど知る由もない…。
(おわり)