太陽戦隊ヒナタレンジャー ―虹色の戦士たち―











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episode-8 『駆けろ鈴花!死のモトクロスレース!』
後編2
 その道の先。
 なおも、バイクの走行音とともに、

 ズザァァァ…!

 と土の上を引きずる音…そして、
「うぅっ…ぐっ、あぁっ…!」
 隙を見ては何度も起き上がろうと奮闘するも上手くいかない鈴花と、その様子を、依然、小高い丘の上で愛車に跨がりながらじっと眺めているグラスホッパー。
 どうやら、なかなかしぶとい鈴花が立てなくなるまで弱るのを待っている模様。
 そんなグラスホッパーが、今回、メミーから授かった任務は、腕利きのバイク乗りたちを連れ去り、転生させて『ヒラガーナ殺人ライダー部隊』を作ることにある。
 そして、その部隊のメンバーにふさわしいバイク乗りを選ぶのに最適なのが、こういったバイクレース。
 そこで、いい走りをしている者をマークするため、謎の黒ずくめライダーに変装して予選レースに紛れ込んでいたグラスホッパー。
 そして目に留まったのが、女性ながら予選でトップ通過するほどの腕前を見せていた鈴花というワケだ。
 その卓越したライディングテクニックは、殺人ライダー部隊の一員にもってこい。
 何なら、その部隊の隊長となる予定の自身の一番弟子にしてやってもいいぐらいの腕だ。
 一方、そんなこととは露知らず、なおもバイクで引きずられ、苦しむ鈴花。
 瀕死になろうが、怪我をしていようが、そんなのは転生させれば問題ない。
 グラスホッパーにすれば、とにかく、連れ去りやすいように弱らせるのが先決。
 やがて、それまで何度も立ち上がろうとしていた鈴花が、とうとうそれをしなくなった。
 それを見て、
(…よし。そろそろだな)
 という目をしたグラスホッパーは、そこでようやく、愛車のアクセルを噴かし、けたたましい爆音とともに華麗に斜面を滑走していった。
 その爆音に気付いて減速するガーナ兵たち。
 そして、ようやく止まった時には、さすがの鈴花も、もはや疲弊しきってぐったりと虫の息…。
「…くっ…うぅっ…」
 と呻く鈴花はその白い頬にまで土がついてボロボロ。
 そんな鈴花の真横にバイクをつけ、ガーナ兵たちに、
(乗せろ)
 とグラスホッパーが目で合図をすると、せっせとバイクから降りたガーナ兵たちが、まずは鈴花の両腕に巻きつけたチェーンを外し、抱えてグラスホッパーのマシンの後ろに乗っけようとした瞬間、どこからともなく、

「ハッピー…オーラっ!」

 と声が聞こえ、続いて、
 
「シューターっ!」

 その声とともに赤色のレーザー光線がガーナ兵の片割れを射抜いた。
「イーッ…!」
 崩れ落ちて絶命するガーナ兵。
(…!)
 グラスホッパーが、そして満身創痍の鈴花が、そのレーザー光線の飛んできた方に目をやると、そこには光線銃ヒナシューターを構えるヒナタレッドの姿が。
「な、菜緒…」
 と声を絞り出す鈴花。
 さらにもう一発、レーザー光線が放たれ、もう1体のガーナ兵も倒れた。
 そして、 
「とぉッ!」
 宙返り大ジャンプで一気に距離を詰めたレッドが、なおもヒナシューターを構えながら、
「ヒナガーナの新手のモンスター…!よくも鈴花をこんな酷い目に…!」
 じりじり距離を詰め、そこで牽制している隙に、
「陽世…!今のうちに鈴花を…!」
「は、はいっ…!」
 その言葉とともにレッドの背中からそそくさと現れた陽世が、倒れた鈴花を抱き起こし、背負う。
‎ 小柄ながらそれなりに力はある陽世。
‎ そんな彼女に対し、
‎「さぁ、早く!鈴花を久美さんのところへ…!」
「はいっ!」
‎ ヨタヨタしながらも駆け出していった陽世。
 そして、その一連を、
「…フッ…」
 と鼻で笑う、相変わらず無口でニヒルなグラスホッパー。
 自身に向くヒナシューターの銃口に対し、望むところと言わんばかりに急アクセルで前輪をウィリーさせてロケットスタート。

 ブゥゥゥンっ!

(は、速いッ…!)
 構えたヒナシューターの引き金を引くよりも先に身の危険を感じ、咄嗟に避けると、突風のような風が全身に当たり、目の前にいた筈のグラスホッパーがあっという間に背後まで駆け抜けていた。
(な、なんてスピードなの…あのバイク…!)
 さすがはバイク乗りモンスターの愛車…生身の人間では乗りこなせないであろう恐ろしい加速力を誇るモンスターマシンだ。
 そのマシンの爆音とともに身体を倒して華麗に反転し、再びレッドめがけてバイクごと突進してくるグラスホッパー。

 ブゥゥゥンっ!

「くっ…!」
 それもまた、紙一重で回避。
 その速さ、新幹線の最高速度以上…まるでリニアモーターカーのようなスピードで、万が一、真っ向から撥ねられたら全身の骨が砕けてしまうだろう。
 そんな相手だから、直接攻撃など、ほぼ不可能。
 距離を取って攻撃するにはヒナシューターしかないと再び銃口を構えるレッドだが、いかんせん、その速さだからまともに照準が定まらず、撃っても全く当たらない。
 いや、むしろ、その誤射によって巻き上がる爆炎と土埃がグラスホッパーの超速突進を隠すカーテンとなってしまい、自身のリスクが増すだけ…それもあって、むやみに撃つことすら出来なくなると、たちまち、グラスホッパーの走りに翻弄され始めるレッド。
「きゃっ…!」
 突進を避け、慌てて振り返る頃にはもう次の突進で自身めがけて迫ってきているような状態。
 そして、とうとう、

 ガキィィン…!

「し、しまったッ…!」
 それまで何とか未接触で避けていたレッドだが、とうとう最初の接触。
 当たったのは手に持っていたヒナシューターの先端で、幸いレッド自身にダメージは無いが、今の衝撃で手にしていたヒナシューターが飛ばされてしまった。
 唯一の攻撃手段…慌てて拾おうとしたレッドだが、そこに再び、

 ブゥゥゥンっ!

 待ってましたとばかりに突進が来る。
「…くっ…!」
 拾い上げるまであと一歩のところで泣く泣く横に転がって断念したレッド。
 危なかった…もしも今、そのまま拾い上げにいってたら、突進を避けきれず、モロに撥ねられて致命傷を負っていただろう。
 なおも、
(拾えよ)
 と言いたげに少しだけ泳がせ、レッドが手を伸ばしかけた瞬間を狙って突進を繰り返すグラスホッパー。
 明らかに弄んでいる。
 それに対し、何とか有効打の糸口を掴みたいレッドだが、上手くいかず、それどころか、
(くっ…な、何か…息が…苦しい…)
 何度も避け続けているうちに息が上がったのか?…いや、違う。
 明らかに気管が苦しい。
 やがて、
「ケホッ…ケホッ…」
 と真紅のマスクの下で咳まで出始めると、
(は、排気ガス…!あのマシンの排気ガスに…何か仕掛けが…!)
 気付いても時すでに遅し。
 みるみる動きが鈍っていくレッド。
 このままでは撥ねられるのも時間の問題。…と、そこに、

「シューターっ!」

 別の声で、今度は3方向から緑、白、黒の三色レーザー光線。
 そして、
「とぉッ!」
 と宙を飛んで援護に現れたのはガーナ兵たちを片付け終えたヒナタグリーンを筆頭に、ヒナタホワイト、ヒナタブラック。
 その姿に、
「こ、好花…!陽菜…!ひよたん…!」
 と、それぞれを名を呼んだレッドだが、二言目には、
「気をつけて…あのマシン…それと排気ガス…!」
 それを聞いて、
「…よーし!だったらこれで…!」
 と意気込んでヒナシューターを構え、発射するヒナタブラックだが、レッドと同様、巧みなマシン捌きですり抜けられて当たらない。
 グリーン、そしてホワイトが代わる代わる発射しても同じで、それどころか、

 ブゥゥゥンっ!

「わぁッ…!」
「きゃっ…!」
「くっ…!」
 固まる三人めがけてウィリーで特攻してくるグラスホッパーのマシンに散らばるしかない三人。
 さらにグラスホッパーは、三人の間をすり抜けると間髪いれずにカーブし、三人にレッドを加えた四人を取り囲むようにして目にも止まらぬ速さで高速周回。
 たちまちレッドに続いて、グリーン、ホワイト、ブラックも相次いで、
「ケホッ…ケホッ…!」
 と、むせ始める。
 身を寄せ合うように身を屈め、
「くっ…は、排気ガスが円の中に滞留してる…」
「このままじゃ…」
「円の外に…円の外に出ないと…」
 と分かってはいるものの、気管の苦しさが上回って動けない。
 なおも高速周回を続けて四人を完全包囲するグラスホッパー。
 次第にそのガスのせいで手足も痺れてきた。
 ジャンプもままならず、この鈍った足取りでは目にも止まらぬ速さの高速周回の隙間を縫って脱することもまず不可能。
 劣勢…。
 そして、そんな仲間たちのピンチを、少し離れた傾斜の上で、陽世の肩を支えにしながら見つめる鈴花。
 見ているうちに、いても立ってもいられず、
「くっ…」
 と歩き出そうとするのを、
「ダメです、鈴花さんッ!その身体じゃ、戦えませんっ!」
 としがみついて止める陽世。
 それを振り払うように、
「な、菜緒たちが危ない…アイツのあのマシン捌きには、みんなじゃ太刀打ちできない…私じゃないと…!私が行かないと…!」
 戦士として、いくら満身創痍とはいえ敵前逃亡をしたくないという使命感はもちろん、みすみす仲間の手を煩わせてしまった悔しさもある。
 そんな思いから、無謀にも再びヤツの元へ戻ろうとする鈴花を、
「す、鈴花さんッ…!ダメですって!」
 前に回り、その小さな身体で食い止めるように止める陽世。
 すると、そこに、

「落ち着きなさい!鈴花ッ!」

 その周囲に響き渡る声とともに現れたのは久美だった。
 その姿を見るや、
「た、隊長っ…!止めてくださいッ!鈴花さん、こんな身体で戦いに戻るなんて無茶です…!」
 と訴える陽世だが、それと同時に鈴花も久美に目をやり、
「久美さん…行かせてください…!菜緒たちを…菜緒たちを助けたいんです…!」
「……」
 何も言わず、直訴する鈴花にスッと歩み寄る久美。
 そして、黙って鈴花の手を取り、握手をするように少し強めに握ると、
「あッ…!」
 顔をしかめた鈴花に、すかさず、
「アンタ…折れてるじゃない。指…」
「こ、小指です…こ、これぐらい…戦いに支障はありませんッ…」
 と、強がる鈴花。
 そして久美は、依然、グラスホッパーの作り出す包囲陣の中でガス責めに苦しむレッドたちを見て、
「仮に私が今、アンタにゴーサインを出したとして、あそこへ行って、あのマシンにいったいどうやって対抗するつもり?何か策があるの?」
「…そ、それは…」
 無鉄砲を指摘され、口ごもる鈴花。
 しかし、この間にもレッドたちはどんどんガスを吸わされて弱っていく。
 もはやレッドは完全に地面に突っ伏し、さらに、遅れて駆けつけたグリーン、ホワイト、ブラックまでもが、とうとう地面に膝をついてしまった。
 そんな愛弟子たちのピンチに、久美は、
「…鈴花。本当に戦えるのね…?」
「は、はいッ…できます…!たとえアイツを倒せなくても、せめて菜緒たちは必ず、私が命に代えても助け出しますッ…!」
「…命には代えてほしくないけどね」
 とだけ返し、スッとポケットから無線機を取り出した久美。
 その無線機で、
「こちら久美…茉莉、聞こえる?」
 と呼びかけると、すぐさま、
「はい、こちらヒナタベースから森本。どうぞ」
 と、本拠のヒナタベースで留守を任せてきた森本茉莉の声がした。
 久美は、すぐに言葉を続けて、
「頼んでおいた例のモノ…完成してる?」
 と聞くと、
「はい。おおかた完成しました。あとは制動テストをした上で、追加機能のコマンドを本体にインプットすれば、ほぼ…」
「それは後回しでいいから、今すぐ起動させて」
「い、今すぐですか?」
「そう、今すぐ。菜緒たちが危ないの。急いで」
「は、はいッ…!」
 そんな何とも思わせぶりな会話を交わして交信終了。 
 そして再び鈴花に目を移し、
「鈴花。ヒナタブレスに向かって、こう叫んで…」
 と、何やら言葉を教える久美。
 それを聞いて、
「パ、パープル…?な、何ですか。それ…」
「いいから早く!」
「は、はいッ…!」
 急かす久美に従い、言われた通り、手首に巻いたヒナタブレスを口元に当て、

「パ、パープルチェイサーっ!」

 と教えられた言葉を声高らかに叫んだそのわずか数秒後、丘の向こうから、突然、爆音とともに無人で自走するバイクがものすごいスピードで迫ってきて、鈴花の前まで来て停まった。



(…!)
 ピカピカのボディーに洗練されたフォルム…。
 思わす一瞬、見とれた鈴花が、
「く、久美さん…これは…?」
「本当は、今日のレースで優勝した時のご褒美であげようと思ってたけど状況が変わった。一足先に使わせてあげるからこれで菜緒たちを助けてきなさい」
 と、そこでようやくゴーサイン。
 それを受け、早速、そのマシンに跨る鈴花。
 乗っただけで、
(す、すごい…こんな自分の身体にしっくりくるバイク…初めてかも…)
 そして、いざアクセルを噴かせば、爆音とともに、鈴花自身も、
「わぁッ…!」
 と驚くほどの急加速。
 そのまま土埃を巻き上げて斜面を駆け下り、猛スピードでレッドたちの元へと突っ込んだ鈴花。
 それも、グラスホッパーの目にも止まらぬ速さの高速周回の隙間を縫う速さで、だ。
 それを受け、慌ててブレーキをかけ、停止するグラスホッパー。
 口にはせずとも、その目には、
(俺の走りをすり抜けた、だと…?そんなバカな…)
 という困惑が浮かんでいる。
 そんなグラスホッパーをよそに、
「みんな!しっかりして!」
 と、ガスにやられたレッドたちに声をかける鈴花だが、まだ滞留しているであろうガスに対し、彼女自身は眉をひそめる様子も特にない。…が、それもその筈。
(風が…マシンから風が出ている…)
 パープルチェイサーが備える機能の一つ…マシン各部から発生させるそよ風によって、宙を漂うガスをシートの上の鈴花へ近づけない。
 そして、そんな鈴花をじっと見つめるグラスホッパー。 
 その視線に気付いた鈴花もそちらに目をやり、毅然とした表情で、
「さっきはよくもやってくれたわね!ここからは私が相手よ!」
 と見据えたまま、パープルチェイサーの上で、

「ハッピー…オーラっ!」

 紫色の発光とともに、紫色の戦士・ヒナタパープルに変身完了。
 すると、それを合図に、

 ブゥゥゥンっ!

 と前輪を浮かせて方向転換、パープルめがけて進路を取り、突撃を仕掛けてくるグラスホッパー。
 それに負けじとパープルもアクセル全開で急発進。
 正面衝突寸前でお互いがわずかに身体を避け、超高速の中ですれ違い。
 ともにすぐさま反転し、再びマシン同士で真っ向勝負。
 唸る排気音。
 すれ違いの一瞬に互いに繰り出すチョップも互角。
 そして、グラスホッパーが、 
(ついてこれるものならついてこい)
 と言わんばかりに駆り出せば、負けじと応じて追走するパープル。
 こうして、実質エキシビジョンとなるタイマンでのオフロードレース開始。
 猛スピードで疾走するグラスホッパーのスピードは、普通のバイクならあっという間にぶっちぎられてしまうのだろうが、このパープルチェイサーはそうはいかない。
 肉薄…そして次のコーナーで一瞬の隙をついてインを奪い、とうとう抜いた。
 その抜き去る瞬間、初めてグラスホッパーの口から、
「クッ…!」
 と肉声が漏れた。
 そして、抜かれた腹いせに、マシンのフロント部分から撃ち出されるロケット花火のような小型ミサイル。
 すると、ハンドルを握るパープルの意思とは別に、パープルチェイサー自らが後方からの飛来物を内蔵されたセンサーで感知し、勝手に横に動いてミサイルを回避したではないか。
 そこでもまた、グラスホッパーの口から、
「チィッ…!」
 と悔しがる声が。
 なおも先行して走っていると、ふいにマスク内無線で久美の声が聞こえ、
「鈴花!そこで手元の青いボタンを!」
「青いボタン…了解っ!」
 と返事をして、言われた通り、手元の青いボタンを押すと、マフラーから逆噴射で鎌鼬(かまいたち)が撃ち出され、それがすぐ真後ろを追尾していたグラスホッパーに直撃。

 バシュッ…バシュッ…!

 目の前からの見えない刃に襲われ、
「グワァァ…!」
 呻き声とともにバランスを崩し、転倒したマシンから放り出されるようにして地面へ落下。
 そのまま傾斜をゴロゴロと転げ落ち、あっという間に全身が土だらけのグラスホッパー。
 あのスピードから放り出されての受け身は、いくらモンスターとはいえ、なかなかのダメージがあると見え、立ち上がった足が少しふらついている。
 そして、そこに急旋回で進路を変え、傾斜を駆け下りてきたパープル。
 その最中に、再び久美から、
「鈴花!とどめよ!赤のボタンを押して、そのまま突っ込みなさいッ!」
 と指示が飛び、さっきの青いボタンの隣にある赤のボタンを押すパープル。
 すると、前傾姿勢で身を低くした頭の上にシールドが張られ、ターボが起動してさらに加速。



 たちまち紫色の閃光を纏い、弾丸のように光りながら標的めがけて一直線。
 そして、咄嗟に思いついたまま、
「デリシャスージーアターックっ!」
 と叫んで、ふらつくグラスホッパーにマシンごと突進。

 ドゴォォォっ…! 

「グワァァ…!」
 鈍い衝突音…そして、くぐもった呻き声ともに力強く跳ね飛ばしたグラスホッパーの身体。
 そのまま宙を飛ばされ、きりもみ回転…受け身も取れずに地面に叩きつけられ、フラフラと起き上がると同時に、
「…メ、メミー…サマ…オ、オユルシヲォォ…」
 という言葉を残し、爆発四散。
‎ それと同時に、横倒しになっていたグラスホッパーの愛車も相次いで爆発。
‎ 持ち主の死亡とともに、排気口から撒き散らした神経ガスも効力を失い、レッドたちも間一髪、助かった。
 そして、身体を傾けてマシンを停め、その爆炎を見届けたパープル。
 一息ついてから、
「久美さん!やりましたッ!」
「よくやったわ、鈴花!ナイス!」
 と無線越しに勝利を分かち合う師弟。
 こうして新たに開発された専用マシンを駆使し、ヒラガーナの「殺人ライダー部隊計画」を打ち砕いたヒナタパープルはじめ、ヒナタレンジャーたち。
 戦いはまだ続く。

 ……

 そして、その日の夜。
 ヒラガーナの侵略戦艦内の廊下。
 普段は軽やかな足取りで歩く筈の小悪魔メミーが珍しくヒールを打ち鳴らすような歩き方で、表情も不機嫌そう。…無理もない。
 自身が意気揚々と考案した『殺人ライダー部隊計画』が、計画を授けたグラスホッパーの死亡によって頓挫したからだ。
 そして、そんな彼女とは対照的に、前方から何やら軽やかなヒールの音…。
(この足音…まさか…)
 嫌な予感がしたメミーは、目を伏せて足早にやり過ごそうとしたにもかかわらず、すれ違いざま、
「あーら、メミーさん…♪何だかご機嫌ナナメなようで…♪」
 と鼻につく絡み方をしてきたのは、やはりイグチ魔女…!
 立ち止まれば、ここぞとばかりに、
「あらあら、どうされましたぁ?今日、何か不機嫌になるような出来事があったかしらぁ…?あぁ、そういえば誰かさんの配下のモンスターがヒナタレンジャーにあっさり倒されちゃったんですってねぇ?まぁ、詳しくは知りませんけども…オホホホホ♪」
「……」
 返す言葉もなく、笑顔満面のイグチ魔女をムスッとした顔とうらめしそうな目で睨むメミー。
 そして挑発に乗らないと自分に言い聞かせ、再び歩き出した背中に、なおもしつこく、
「これに懲りたら、身の程をわきまえておとなしくしておいてもらいたいですわねぇ♪一つの舟に船頭さんは一人で充分…意気揚々と割り込んできて、結果このていたらく…こんな見立ての甘い人と共同担当なんて私も先が思いやられますもの…♪オーッホッホッホ♪」
「……」
 廊下に響き渡る耳障りな高笑いとともに、立ち去るメミーの足音が一段と大きくなった。


(つづく)


〜次回予告(※当該メンバーの声で脳内再生推奨)〜

ヒナタレッド、小坂菜緒です。
突如、街に発生した無数の蟻地獄…人が、車が、そして建物までもが次々に沈んでいく…!
自由自在に蟻地獄を作り出す新怪人アントリオン。
そして、そのアントリオンの罠で、とうとう京子さんまで蟻地獄に引きずり込まれてしまった…!
懸命の救出作戦…私たちの救いの手は京子さんに届くのか…?
次回、『恐怖の蟻地獄!地底への招待状!』…お楽しみに!





■筆者メッセージ
※今話以降における追加の補足設定

・富田のみ専用バイク『パープルチェイサー』を支給(※昔の仮面ライダーによくある変身前は普通のバイク、持ち主の変身とともにバイクも変形という感じ。使用頻度は未定)

・次回予告をメンバーによる仮想ナレーション風に変更
鰹のたたき(塩) ( 2024/03/18(月) 00:30 )