岡田奈々の場合
1.殺し屋の秘密
「おら、いつまで寝てるんだ!起きろ!」
「…うっ…」
 二、三回、乱暴に小突かれて、その女、岡田奈々は目を覚ました。
 全身、真っ黒のレザースーツで身を包み、ショートカットの金髪が眩しい。
「テメーだな?最近、柴崎さんの周りをチョロチョロしてる女ってのは」
「━━━」
「どこの誰だ?柴崎さんを狙う目的は?」
 矢継ぎ早に質問を浴びせる只野だが、手を吊られた奈々はそっぽを向いて答えようとしない。
「黙ってねぇで何か言いやがれっ!」
 と只野が凄んでも、眉ひとつ動かさなかった。
 それどころか、急に顔を上げたかと思えば、
「ぺっ!」
 と、只野に唾を吐きかける始末。
「こ、この野郎っ!」
 逆上し、奈々の金髪を掴んで捻り上げる只野。
「くっ…離せっ!汚い手で私に触るなっ!」
「チッ…気に食わねぇ女だ。上等じゃねぇか。その態度、あとで後悔させてやるぜ!」
 と、只野は言って、手を吊られて動けない奈々の背後に回り、ゆっくり、レザースーツのラインに合わせてボディタッチを開始する。
「ちょっ…!触んなっつってるでしょ!」
「うるせぇ!チェックだよ!物騒なモノを持っていないとも限らないからな」
 と只野は言って、やけに盛り上がった胸に手を当てるとニヤリと笑い、
「おい、これは何だ?胸じゃねぇな?固いぞ?」
「さ、触んなよ…!」
「そうはいかん。怪しいモノは、全部、出してもらおうか!」
 只野はハサミを取り出すと、奈々のレザースーツを切り裂き、胸元を開いた。
 露わになる黒いブラジャーとともに、胸に忍ばせていた武器が床に落ちる。



「おいおい、こりゃ大変だ」
 只野は苦笑しながら、床に落ちた拳銃、ベレッタを拾い上げ、
「この日本で拳銃を持ち歩いてる女とは、やはりただ者じゃねぇな。さては、お前、殺し屋か?」
「━━━」
「へへへ、図星かよ。こりゃあ、詳しく話を聞く必要があるな」
 と笑う只野。 
 そして、さらに、もう一つ、拳銃と一緒に床に落ちたものがある。
 只野は、奈々のはだけた胸元から落ちた一枚の写真を拾って見たが、
「何だ、こりゃ?」
 と首を傾げた。
 それは、奈々とはまた別の女性の写真だった。



 黒髪にロングヘアー、あどけない笑顔が可愛らしいが、姉妹にしては顔が似ていない。
「おい、こいつは誰だ?」
「お、お前には関係ないっ!」
「ほぅ。何だかよく分からねぇが、胸元に忍ばせていたぐらいだから、相当、大事な物らしい」
「か、返せ…!」
「…まぁ、誰の写真だろうと、俺には知ったこっちゃねぇがな」
 只野は笑って、写真を床に捨てた。
 その瞬間、
「き、貴様ぁっ…!拾え!早く拾えよぉっ!」
 その写真を粗雑に扱われ、なぜか激怒する奈々。
 さすがに只野もワケが分からず、苦笑して、
「そんな写真より、お前自身の心配をしたらどうだ?このまま、すんなり帰れると思ってるのか?」
 と、再び背後に回り、おもむろに奈々のブラをたくし上げた。
「あっ…!」
「へへへ。何だ、こりゃあ?貧相な胸だな」
「う、うるさいっ!」
 只野は、奈々のその小ぶりな胸をもみくちゃにして、
「さぁ、尋問開始といこうか。素性を話すまで続けるぞ」
「あっ…!や、やめろっ!んんっ…!」
 ジャラジャラと鎖を揺する奈々。
「へへへ。殺し屋のわりに、なかなか可愛らしい乳首をしてるじゃねぇか。摘まんでやろうか?こうやってよォ」
「んんっ…は、離せ…!あぁっ…!」



「やめてほしかったら全て話すんだな。それとも、この際、しっかり楽しんでいくか?へへへ」
「こ、この変態ヤロー…!」
「さて、こっちはどんな具合かな?」
 レザースーツの隙間に潜った手が股ぐらを目指して降下すると、奈々は血相を変えて、
「や、やめろ!その手を止めろ!さ、触るなぁぁっ!」
 と叫んだ。
 あまりの剣幕に、只野が苦笑してしまうほどだ。
「そんなに嫌がるってことは、何か隠しているな?さては下の毛がツルツルのパイパンとか、そういうことか?」
「だ、黙れっ!やめろっ!やめろぉぉっ!」
 首を振り、金髪を振り乱す奈々。
 しかし、抵抗むなしく無情にも只野の手は奈々の股ぐらへ…。
「…ん?」
 ふと、首を傾げる只野。
「…気のせいか?」
「や、やめろっ!触るなっ!」
「おいおい…ウソだろ…?」
 只野はレザースーツから手を抜き取ると、思わず笑みを浮かべて、
「そうか。なるほど…だから、そんなに嫌がってたのか。どうりで…」
「━━━」
「へへへ。せっかくだから、自分の口で説明してもらおうかねぇ?」
「くっ…!」
 只野は、奈々の顎を掴み、持ち上げて、問う。
「おい、殺し屋さんよ。これはどういうことだ?何で、お前、女のくせに股に“チンポ”がついてんだよ?」


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2020/07/18(土) 00:33 )