ペチッ、ペチッ…

「…てください、先輩。ねぇ、起きてってば〜！」
　頬を打つ音と痛み、そして今泉の声で目が覚める。
　目を開けるとベッドの上だった。
　依然として全裸で、次はベッドの四隅に手足を繋がれていた。
「…くっ…！」
　当然、拘束は外れないし、身体を揺する五郎自身にも力がない。
　寝起きというのもあるが、身体が気だるいのは、先刻、小林のオナホ手コキで精子が枯れるまで何度もイカされてしまったからだ。
　最終的に気を失ってしまったので、その後、どれだけ眠っていたか分からない。
　当の小林に、
「目覚めはどう？よく寝てたわよ。金玉カラッポにしてあげたから、だいぶすっきりしたんじゃない？」
　と笑いながら言われて、五郎は返す言葉がなかった。
「さぁ、先輩。次は私の番ですよ」
　今泉は楽しそうに言うと、いきなり五郎の唇を奪った。
「うぅっ…！？」
　身柄を拘束される直前まで仲間だと思っていた女にキスをされて戸惑う五郎。
　しかも今泉は、その童顔な顔立ちとは裏腹に、けっこう激しく舌を動かしてくる。
「ほらぁ、もっと舌出してくださいよぉ」
「や、やめろよ…うぅっ！」
　ベッドに「Ｘ」の字に寝かされた五郎の上に、まるで蜘蛛のように覆い被さり、ジュルジュルと舌を吸い上げる。
　その様子を、いいものを見ているような表情で傍観する小林。
　無理やり舌を絡めとられる傍ら、五郎に伝わるもう一つの感触。
(む、胸が…当たってる…！)
　小柄なわりにえらくボリュームのある今泉の胸が、キスをして動くたび、五郎の胸板に擦れ、その柔らかな感触がダイレクトで伝わる。
　それを当の今泉は、気にならないのか、それとも気づいていないのか、何事もなくキスを続ける。
　次第に五郎も上の空になり、ねぶられる舌よりも、その擦れる胸の感触の方に神経を集中させてしまう。
(や、柔らかい…こ、小柄なのに胸は大きいというのが、また何とも…)
　この状況でも、ふと、そんなことを考えてしまう。
「先輩、乳首も触ってあげますね」
　と言って身体を傾ける今泉。
　それによってこれまで左右均等に感じていた胸の感触が右半身に寄る。
　柔らかさに乳房２つぶんの重量感が加わり、改めて今泉のトランジスタグラマーっぷりを再確認する。
　そんな五郎の邪念を無視して今泉は、乳首を摘まみ、転がす。
「うぅっ…くっ…！」
「我慢しなくていいですよ。いっぱい声出しちゃってください」
　さっきからずっと一貫して後輩口調の今泉。
　裏切ってもなお、先輩後輩という関係性を変えようとしない今泉のせいで、五郎も、いまいち自分の立場が分からなくなっていた。
(いっそ罵倒して、ぞんざいに扱ってくれた方がこっちも楽なのに…)
　そんなことを考えながら、今泉の攻撃を無抵抗で受け入れる五郎。
　この期に及んで、まだ心のどこかで可愛がって接していた今泉の裏切りを受け入れられないのが男の、というより五郎の甘さだ。
　そして、そんな五郎とは対照的に、その甘さにつけこむように、どんどんエスカレートしていく今泉の責め。
　先ほど激しいキスを堪能した唇が、次は、指先でいたぶって勃起させた乳首を狙う。
　小さく舌を出し、チロチロと乳輪をなぞった後、固くなった乳首に吸いつく。
「んっ、くっ…うぅっ…！」
「気持ちいいですか？先輩」
「う、うるさい…先輩って、言うな…！」
「え〜？何でですかぁ？いいじゃないですかぁ、先輩なんだから」
　計算か、それとも天然か、後輩というスタンスを一向にやめない今泉。
「こっちにも同じことしてあげますね」
　と、反対側の乳首も責められる。
「くぅっ…はぁっ、うぅっ…！」
　同じように責められ、隣に負けじと固くなる乳首。
　左右の乳首を隆起させたところで、
「じゃあ、次は左右同時に指でコリコリしてあげますね」
　と言って身体を下げ、両手を伸ばした。
「うあぁぁっ…！」
　今泉の小さな手で左右の突起を摘ままれて悶絶する五郎。
　それだけではない。
　乳首責めの傍ら、今泉のたわわな胸が下腹部まで下りてきた。
(ち、近い…あとちょっと…も、もう少し下まで来れば、アソコに当たる…)
　邪念が瀕死状態だった肉棒に、再度、血が送り込む。
「くっ…うぅっ…！」
「息が荒いですよ？気持ちいいですか？」
　乳首を摘まんで転がし、五郎の反応を見ることに夢中の今泉。
　目が合うと、顔より、前かがみの奥に覗く胸の谷間が気になる。
(おっぱい…おっぱいが…！)
　見惚れて、つい魔が差した五郎は、今泉の乳首責めで身体が跳ねるのを利用して、わざとらしく腰を動かし、少し自分から当てにいくのを試みた。
　少し先端をかすった。
(や、柔らかい…)
　ある意味、思った通りの感触だった。
(も、もし…この胸に挟まれでもしたら…！)　
　責められながらも、つい、そんなことを考えていると、ふいに傍観している小林から、
「されるがままじゃない。私の時みたいに、もう少し抵抗したらどうなの？それとも、ずーみんにいじめられるのが嬉しいワケ？」
　と野次が飛んだ。
　五郎は我に返り、
「バ、バカを言うな…！喜んでなんかいるものか…！」
　と慌てて強がってみせたが、小林はやけに達観して、
「まぁ、目にかけていた年下の後輩に責められるのは、案外、悪い気はしないかもねぇ。ずーみんは可愛くて、愛嬌がある。それに、小柄なわりにおっぱいも大きいし…ねぇ？」
(…！)
　小林の言葉に全てを見透かされた気がして急に狼狽し始める五郎。
「べ、別に興味はないっ…！」
「そうかしら？さっきからずっと、ずーみんのおっぱいが当たってるのをしっかり堪能してるくせに」
　意地悪な笑みを浮かべる小林から追い打ちのチクり。
「もしかして、あわよくば、ずーみんのおっぱいで挟んでほしいとか思ってたんじゃないの？」
(…！！)
「え〜？先輩、そんなこと思ってたんですかぁ？やだぁ…」
「ち、違うっ…！そんなこと思ってないっ…！」
　顔を真っ赤にして否定する五郎だが、その反応が逆に分かりやすい。
「じゃあ、何でそんなに勃ってるの？」
「そ、それは…コイツが…ち、乳首を…責めるから…」
「へぇ…乳首を責められただけでこんなに勃つの？変態なのね。でも、おっぱいに興味のない変態なんて果たしてこの世にいるのかしら？」
　小林の追い込みは終わらず、
「途中、自分から腰を振って当てにいってたようにも見えたけど？」
「…うぅ…」
　痛いところを突かれ、思わず唸り声を上げる五郎。
「ほら、正直に言いなさい。ずーみんのおっぱいが気になって仕方ないんでしょ？」
「━━━」
　核心を突かれ、黙ってしまう五郎。
　この状況で黙る、イコール、それは認めたも同然だ。
「先輩、そんなに私のおっぱい見たいんですか？」
　今泉本人に問われて、五郎は返す言葉もない。
「お願いしてみたら？見せてくださいって頼めば見せてくれるかもよ？」
　と、小林がニヤニヤしながら煽る。
　裏切り者の後輩にそんな情けないお願いをするなど言語道断、そんなのはプライドも何もない負け犬のすることだ。
　それに、五郎は、何とかこの場を脱出し、逆に、この二人を捕まえなければならない立場。
　そんな人間が、拘束されて辱しめを受けた上、裏切り者に胸を見せてくれなんて言える筈がない。
　口が割けても、絶対に言ってはならない言葉なのだ。
　…だが、しかし。
　実際に目の前にある魅惑の膨らみと谷間。
　大きいというのは一目で分かるし、彼女のように童顔で小柄なのに胸は巨乳というところも、無性に男心を駆り立てる。
(見たい…でも、言えない…！)
　葛藤する五郎。
「ほら、恥ずかしがってないで早く言いなさいよ。ずーみんが待ってるわよ？」
　追い詰めてくる小林。
　ふいに今泉の小さな手が、五郎の肉棒に添えられた。
「んんっ…！」
「すごい…さっき、ゆいぽんにあんなにヌカれたのに、もうビンビンになってる…」
　今泉は、ゆっくり、とてもゆっくり上下に動かしながら、
「このチンポ、どうされたいんですか？私のおっぱいに挟まれたいんですか？」
　と問う。
「ほら、本能に従って素直に言いなさいよ。さっき私にあれだけイカされて気絶した時点で、今さら面子も何もないでしょうに」
(た、確かにそうだ…)
「ほらぁ〜。どうなんですかぁ？」
　とどめとばかりに、コスチュームを引っ張り、谷間を見せつけてくる今泉。
　もはや目を背けることもしない。
　その谷間を、ただただ、羨望の眼差しで凝視する五郎。
「正直に言ってくれないと、このまま放置しちゃいますよ？」
(ほ、放置…！？嫌だ…放置は…やめてくれ…ここでお預けなんて…こんな目の前で見せつけられてるのにお預けなんて辛すぎる…)
　そう感じた瞬間、あっさり折れた脆い心。
「…み、見せ…て…くれ…」
　途切れ途切れ、言葉を吐く五郎。
「え〜？何ですか〜？よく聞こえないです。もっとハッキリ言ってくださいよぉ」
「み、見せてくれ…」
「何を？」
「お、おっぱいを…」
「誰の？」
「い、今泉の…」
「繋げて言ってください」
「い、今泉…！お、おっぱいを見せてくれ…た、頼む…！」
　何とも情けないお願いだ。
「ウソ…ホントに言った…。信じらんないんだけど、コイツ…キモッ！」
　散々、煽っていたくせにドン引きしている小林。
「へぇ〜…そんなに見たいんだぁ…どうしようかなぁ？」
「た、頼む…お願いだ…も、もう我慢できない…おっぱいを…おっぱいを見せてくれ…！」

　本能に負け、とうとう口にしてしまった五郎。
　この瞬間、インターポールという人も羨む肩書きの上に「ド変態」というレッテルが貼られ、五郎のステータスは直滑降で地に落ちた。
　輝かしい功績は過去のものとなり、今、彼女らの前に横たわるのは、目の前の後輩の巨乳が見たくて股間を隆起させているただの助平野郎だ。
　そんな助平野郎に向けて、今泉は、
「仕方ないなぁ…そのかわり、たっぷり私を楽しませてくださいね…？」
　と言って、静かに笑った。