欅共和国の罠 ― 捕らわれた男たちの記録 ―

















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<番外編>同姓師弟の秘め事
2.小悪魔の造反
 どれだけ眠っていたか分からない。
 目が覚めた時にはアイマスクで視界を奪われており、さらに、両手、両足も自由に動かせないように固定されていた。
 拘束された体勢から察するに、おそらく地下室にある捕虜拷問用の分娩台だろう。



 茜自身、何が起きたかよく分かっていないし、なぜ自分が眠っていたのかも覚えていない。
 もしかすると敵の奇襲で催眠ガス弾か何かを打ち込まれ、それを吸って迂闊に眠ってしまったところを捕縛されたのかと思ったが、何の喧騒も聞こえないところを見ると、そうではないらしい。
 それで少しホッとした。が、身動きをとれないことに変わりはない。
「くっ…!くっ…!」

 ガシャ、ガシャ…!

 力任せに四肢を揺するも、固い拘束はびくともしない。
(な、何のマネ…?いったい誰がこんなことを…?)
 悲鳴を上げることはせず、あくまでも自力での脱出を試みるが、うまくいかない。
 そのうちに、遠くから、ガラガラ…とキャスターを転がすような音が聞こえ、茜は無駄な抵抗をやめた。
 キャスターの音はどんどん近づき、それとともに、コツコツ…とヒールの足音も。
 やがて、キィィ…と部屋の扉が開く音がして、キャスターとヒールの音が、おそらく目の前1メートルほどのところまで来た。
 鼻につく甘い香水の匂い。
(こ、このニオイは…麗奈ちゃん?…)
 日頃、よく隣で嗅いでいる香りだ。
 茜は探るように、
「れ、麗奈ちゃん…?麗奈ちゃんなの…?」
 と、その目の前にいる誰かに向かって聞くと、
「あ、すご〜い♪声も出してないのに、よく分かりましたねぇ♪」
 と、麗奈の笑みを交えた甘い声色が返ってきた。
「目覚めはどうですか?よく眠ってましたね。その分娩台に乗せるのも私一人だから苦労しましたよ」
 と苦笑する麗奈だが、当の茜は困惑しっぱなしで、
「こ、これは、いったい…?」
「ふふっ…♪」
 麗奈は笑みをこぼし、
「私、茜さんのこと、大好きなんです。本当に尊敬してるし、まだまだ見習わなきゃいけないところもいっぱいあって…」
「そ、それは嬉しいけどさ…くっ…!」
 …ダメだ。
 いくら力を込めても拘束が外れない。
 もがく茜に対し、麗奈はクスッと笑って、
「茜さん、ちゃんと最後まで聞いてくださいよ。私、茜さんのこと大好きです。でも、あまりに好きすぎて、最近、だんだん、茜さんのことを、自分だけのものにしたくなっちゃったんです…♪」
「え…?」
 アイマスクをしたまま、きょとんとする茜。
 麗奈は、そんな茜の髪に手を伸ばし、指で溶き始めた。
「ちょ、ちょっと…!」
 ふいに髪を触られ、首を振るう茜。
 それでもなお、麗奈は、茜の髪を溶きながら、
「私は、茜さんの強いところしか知りません。指揮を執ってるところ、後輩を指導するところ、捕虜を尋問するところ…でも、茜さんだって人間だから、きっと弱い部分もある筈なんです。誰にも見せてないだけで」
「━━━」
「だから今日は、その誰にも見せない弱い部分を、私にだけは見せてほしいなぁ…って♪」
「れ、麗奈ちゃん…!何を言って…あ、ちょっ、ちょっと…!?」
 茜が慌てる。
 纏ったバスローブのお腹の帯が、急にほどかれたからだ。
 はだけたバスローブは、だらんと垂れ、そのメンテナンスの行き届いた美しい素肌を覗かせた。
「はぁ…♪いつ見ても綺麗です。茜さんの身体…♪」
 と、うっとりした口調で囁き、はだけたバスローブの前をゆっくり開いていく麗奈。
「な、何するの…!や、やめてよ…!」
 パンティは穿いているが、ブラはまだ着けていなかった。
 バスローブがずり落ちると同時に、ぶるんっ…と弾んだ白い柔肉に、思わず、
「わぁ…♪」
 と、麗奈の眼が輝く。
 ともに捕虜を嬲り殺しにする中で、もう既に何度も目にしているが、決して慣れはしない。
 何度見ても目を奪われる美乳。
 意外に豊かなサイズ感に、ツンと前を向いたお椀型…そして何より、触れなくても分かる柔らかさを示す弾み。
「ほら、茜さん…おっぱい出ちゃいましたよ♪」
 と麗奈が笑うと、茜は、
「れ、麗奈ちゃん…!今すぐ、この拘束を外しなさい…!今ならまだ冗談で許してあげる…!」
「あれぇ?もしかして怒ってます…?」
 耳に息を吹きかけ、
「まだ、いつもの茜さんのままですね。どうすれば、普段は見れない部分を見せてくれるんだろうなぁ…?」
「くっ…!」
 ふいに、ナメクジのような感触が頬を伝った。
 麗奈の可愛らしい舌が、茜の頬を這う。
「や、やめてよっ…!」
 と、髪を振り乱す茜。
「…ねぇ!い、いいかげんにしないと怒るよ!ホントに…!」
 と、凄む茜だが、茜の強さの象徴は何と言っても相手を射抜くその眼力。
 アイマスクをつけたままでは迫力も半減以下、ただの強がりにしか聞こえない。
「やぁっ♪怖いなぁ…どうしよう…♪」
 と口では言いながら、怖がっている様子など一切ない麗奈。
 いや、むしろ、挑発している。
「じゃあ、こんなことしたら、もっと怒られちゃいますよね?…ね?怒りますよね?茜さん…♪」
 と言いながら、茜のセクシーな唇に口づけをする麗奈。
「んっ、んぷっ…!や、やめろっつってんでしょ…!いいかげんに…くっ…!」
 と次第に語気が強くなる茜。
 だが、いくら凄んでも、ほぼ裸で分娩台に座らされ、自由に動けないのが実情。
 一方的なキスの傍ら、脇腹を細い指が這い、その指がゆっくりと乳房を目指す。
「ちょっ、ちょっとぉっ…!」
 ガシャ、ガシャ…と手足を揺するも、びくともしない。
「ふふっ…暴れても無駄ですよ。おそらく最初はすごく抵抗するだろうと思って、両手、両足とも、固めに繋いでますから♪」
 と得意げに笑った麗奈は、唇を離すと、分娩台の後ろに回り、背後から手を回し、いよいよ、その胸の膨らみの麓から周囲を象るように円を描き、そして、ゆっくりと全体を覆う。
「んっ…!」
「うわぁ♪すごーい!」
 その手ざわり、柔らかさ、弾力に思わず感激する麗奈。
「茜さんのおっぱい…♪私…初めて触りました♪」
「あ、当たり前でしょ…!新入りのくせにっ…!んっ…は、早く外しなさいっ!ね、ねぇっ!話を聞きなさいよ、ちょっとは…!んっ…!ちょっ…コ、コラぁっ…!」
 意外に良い反応。
 麗奈のソフトな触り方がハマったのか、それとも、案外、敏感なのか…。
「ほら、茜さん…♪もっとキスしましょうよ♪」
 と、肩越しに首を回し、再び口づけを仕掛けてくる麗奈。
 次は、さらに大胆に、可愛らしい舌を緩んだ唇の間から口内へ。
「んっ…!ちょ、ちょっと…!」
「なに逃げてるんですか?嫌がらないでくださいよぉ♪」
 と、顔を背ける茜を追尾し、唾液の交換を迫る。

 ズッ、チュッ…ズッ、チュッ…

(わぁ…♪茜さんの口の中、あったかい♪…あ、可愛らしい舌、見っけ♪吸っちゃおっと…♪)
 と楽しげな麗奈。…と、その時!
「痛った…!」
 甘いキスから一転、突然、茜を突き飛ばすように分娩台から離れる麗奈。
 口が離れた隙に、
「はぁ…はぁ…」
 と、慌てて酸素を取り込む茜。
 麗奈は、そんな茜にムッとした眼を向けて、
「な、何するんですか、茜さん…!何で噛むんですかぁ…!?」
「いいかげんにしろって言ってるでしょ!?いいから、さっさと外しなさいっ!再教育決定よ!こんなつまらないイタズラ、倍にして返してやるわっ!」
 と、ついにキレた茜。…だが、結局、麗奈が拘束を解かないかぎり、逆襲に転じることはない。
「へぇ…♪この状況で、まだそういう態度とるんだぁ…?さすがですねぇ…♪」
 麗奈は、感心するように微笑み、
「…でも、残念。倍にして返されるのは茜さんの方ですよ…!」
 舌を噛まれて、さすがに少しイラッとしたのか、麗奈の眼が、甘い視線から挑戦的な視線に変わった。
「ひとまずキスは後回しにしますね。もう少し素直になるまで…♪」
 と、再び分娩台に近づくと、先ほど聞こえたキャスターの音の正体…茜の理性への刺客として、欅ハウス中を駆け回って集めてきた様々な淫具を並べたワゴン。
 その中から、ローションのボトルを手に取り、早速、それを茜の身体に振りかけた。
「んっ…!つ、冷たい…!」
 と、嫌がる茜だが、急にクンクンと鼻を鳴らし、
「え…?こ、これって…」
「ふふっ♪さすが、茜さん。…そうです。茜さんのMyローションですよ。確か、ご自身で調合して香りもつけてあるんですよね?」
 茜のお気に入りのバニラのような甘い香りが立ち込めるが、茜は何故か慌てた様子で、
「くっ…な、なに勝手に使ってんのよ…や、やめっ…」
「え〜?なに焦ってるんですかぁ?」
 麗奈は、茜の胸の起点に、鎖骨、お腹、脇腹と塗り込みながら、耳元で、
「私、知ってますよ…茜さんのローションって、媚薬成分も入ってるんですよね…?これで男を責めながら、自分も気持ちよくなれるように…♪」
「くっ…!」
 麗奈の言う通りだ。
 媚薬成分の入ったローションを捕虜のイチモツに塗りたくり、自慢の美乳で挟んだり、素股をしたり、騎乗位で跨がって犯したり…それをしているうちに自分も媚薬の効果で徐々に火がつき、欲を発散していた。
「だから、いつも、茜さんの騎乗位って、あんなに激しいんですね♪自分も気持ちよくなっちゃってるから…♪」
「う、うるさいわね…!そんなの別に、みーちゃんや理佐だって媚薬入りのを使ってるわよ!私だけじゃないから…!」
 と、性欲の強さをバカにされたと思ったのか、少し顔を赤くしながら反論する茜。
 その剣幕に、思わず麗奈も、
「あ、別に、そのことで茜さんを馬鹿にしたりはしてませんよ。私だって、どうせヤルなら気持ちよくなりたいですし」
 と理解を示した上で、再度、茜の耳元にすり寄り、
「でもぉ…♪媚薬入りにしないと満足できないぐらい…それぐらい気持ちよくなりたい日が、茜さんにもあるってことですよねぇ…?」
「べ、別にいいじゃない…!それが何なのよ…!」
「いえ、そういう時もあるって知れただけで大丈夫です。あとは、麗奈がそのお手伝いをするだけ…♪」
「お、お手伝い…?」
 と聞き返してから、この状況に、
「な、何を考えてるの…!?まさか、アンタ…!」
 もはや名前も呼ばず、アンタ呼ばわり…明らかに警戒している茜に対し、麗奈はニッと笑って、
「えぇ♪今夜は私が、茜さんのこと、たっぷり気持ちよくさせてあげますよ♪全身とろけてキャラも変わっちゃうくらいに…♪」


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2021/08/03(火) 18:03 )