1.地下牢
「…以上です」
と言って、松田里奈は静かに動画を停止させた。
「……」
沈痛と憤怒が入り交じった複雑な表情でイヤホンを外す菅井友香、そして守屋茜。
ツートップの二人が苦虫を噛み潰したような顔で視聴した動画は、昨晩、某動画サイトにアップされたアーカイブ動画…。
アップしたのは『鮫<シャーク>チャンネル』という開設して間もないチャンネル。
<欅共和国解体プロジェクト第一弾!あの“狂犬”小林由依を調教して雌犬にしてみた!>
という聞き捨てならないタイトルがつけられたその動画には、予告編のダイジェストカットではあるものの、この欅共和国の建国期からの盟友である由依が身の毛もよだつ性拷問にかけられ、泣き叫びながら陥落していく模様が収められていた。
そして最後には
「会員登録募集中!会員になればアップ動画は全編視聴可!プレミアム会員は、動画見放題に加え、今後、第二弾、第三弾にて現場観覧のチャンスも…!?」
というアナウンスも。
「まさか由依までも…!」
と、その身を案ずる菅井と、その横ではっきりと殺意を滲ませる守屋。
そんな二人に、松田は、言いにくそうにしながら、
「同じく、小林さんに同行した田村とも、一向に連絡がつきません。もしかしたら田村も同じ目に…」
言い終わるのを待たずに、
「解析チームを構成し、ただちに、この動画が撮影された場所を特定。ならびに、この動画チャンネルの開設者についても情報開示を要請。これを、すぐに取りかかるよう、葵や唯衣ちゃんに伝えて」
と捲し立てるように指示する守屋。
「は、はい…!」
守屋の指示は、早速、行動に移された。
そして、方針会議を終えた三人は、その足で「欅ハウス」内の、捕虜が収監される地下牢へ向かった。
渡邉理佐、そして小林由依と、統治メンバーにおける飛車、角を相次いで失ったダメージはあまりにも大きく、その穴を埋める補填も急務となっているからだ。
そこで白羽の矢が立ったのは、最近、新たに統治メンバーに加入したばかりのフレッシュな六人…。
まだ時期尚早な気もするが、これを有事と判断し、前線に上げることも検討すべきだろう。
電磁ロックを開け、地下牢へ。
独房は6つ、A独房からF独房まで。
現在、空きはなく、6つの部屋から、それぞれ、捕虜の男の呻き声が聞こえてくる。
「ふふっ…やってるじゃん」
と、一言、呟き、不敵に笑う守屋。
そのそれぞれの部屋では今日も“新芽たち”が拷問の腕を上げるため、鍛練に励んでいた…!
(つづく)