4.再会
「んぐっ…んごぉっ…」
「ほら、もっとちゃんと咥えなさいよ」
ペニスバンドを巻いて膝立ちの女と、その眼下にひざまづき、四つん這いで口を突かれる男。
「ほら、もっと!」
小林が、掴んだ鮫島の後頭部をぐっと引き寄せると勢いよく奥まで突き刺さり、鮫島は思わず、
「ぐぇぇっ…!」
と、えずいてペニスバンドを吐き出した。
その様を嘲笑いながら見下ろす小林。
「アンタもよく女に、こうやって無理やり咥えさせたりしてたんでしょ?それがどれだけ辛いことか分かった?」
「━━━」
「さぁ、続けて?」
「くっ…ふ、ふざけるな…いいかげんに…!」
「あら?なに?何か言った?」
生意気な口答えには制裁を。
手に持った小さなリモコンをオンにすると、
ブィィィン…
という振動音とともに、
「うぉぉっ…!?」
と鮫島は声を上げた。
左右の乳首と睾丸に貼りつけた飛びっこローターの振動が刺激を与えて黙らせる。
「…分かった?アンタはもう私に逆らえないの。ほら、自分の立場に理解したらさっさと舐めなさい!」
と、再度、掴んだ頭を引き寄せ、無理やり咥えさせる。
「んぐっ…んぐっ…」
「ふふっ、情けないわねぇ…今まで泣かせてきた女の子たちが見たらどう思うかしら?」
(く、くそっ…!)
「どう?たっぷり濡らした?」
小林は腰を引いて引き抜き、ペニスバンドが唾液まみれになったのを確認すると、
「さぁ、それじゃあ、そろそろ…」
と、四つん這いの鮫島の背後に回り込んだ。
「くっ…!」
自ずと、犬のように四つん這いで逃げ出す鮫島だが、すぐに追いつかれ、尻を掴んで引き寄せられる。
「ふふっ、どこに行くつもりだったの?」
「は、離せ…!」
「逃げようとした罰も、あとでプラスしてあげるわね」
と小林は言って、ピタピタと、ペニスバンドの先端を鮫島の尻に打ちつける。
「さぁ、覚悟はいい?たっぷり犯して、しつけてあげるからね」
「くっ…よ、よせっ…!」
「…いくよ?」
「や、やめろっ!やめろぉぉっ…!」
遂に、ヒクヒクと息をするアナルへ密着させてあてがわれたペニスバンド。
そして、いよいよ小林が腰を前に突き出し…!っと、その時だ。
「そこまでよっ!」
と部屋に響いた女の声。
挿入寸前の腰を止め、声のした方に目をやった小林は、思わず、
「…なっ!?」
と声にならない声を上げた。
目に映った光景…それは、猿轡を嵌められ、関有美子に羽交い締めにされた上に、長濱ねると渡邉理佐に短剣を突きつけられた保乃の姿だった。
「ほ、保乃っ!?」
「んぐぐぐっ…!」
猿轡の奥で何かを言っている保乃。
(なぜ保乃が捕まってるの!?何で、理佐やねる、関ちゃんが保乃を…!?)
これまで一貫して余裕だった小林に初めて浮かぶ狼狽の色。
たまらず、最も付き合いが長く、親友でもある理佐に目を移し、
「理佐…!これは、いったい…!?」
「ふふっ…久しぶりね、由依。それに保乃も」
理佐は不敵な笑みを浮かべ、
「二人も、ご主人様の調教を受けに来たのかしら?」
「ご、ご主人様…!?」
親友の口から出た言葉に、思わず耳を疑う小林。
それは、わずか数分前の出来事…。
鮫島の口を割り、捕らわれた仲間を救出するために地下牢へ向かった保乃。
難なく隠し扉を発見し、地下牢に辿り着いた。
捕らわれていたのは渡邉理佐と長濱ねる、そして関有美子。
鉄格子を蹴破り、三人を脱獄させようとした矢先、突然、理佐から不意打ちを食らって昏倒した。
…そう。
捕らわれて以来、連日、復讐兵団お抱えの娼婦同然の生活を強いられていた三人は、次第にそれが当たり前になり、そしていつしか、快楽に依存し、彼らの下を離れられない身体になってしまっていたのだ。
身体を捧げるのは曜日ごとの当番制。
月曜日と木曜日は理佐。
火曜日と金曜日はねる。
水曜日と日曜日は有美子が、それぞれ、男たちの性欲処理の相手を務める。
そして日曜日は三人が一堂に会し、特製の媚薬投与で高められた身体を鮫島の巨根で失神するまでイカせてもらう至極のハーレムナイト。
こうして三人は、いまや、毎週末を心待ちに一週間を過ごすだけの、組織の公認ダッチワイフへと成り下がっていたのだ。
そうとも知らずに迂闊に飛び込んだ保乃は、あわよくば週末を待たず、ご褒美にありつこうと考えた三人によって、まんまと捕獲され…。
「…由依?私たちね、もうどうでもよくなっちゃったの。女としての威厳やプライドなんかよりも、毎晩、男に抱かれて、週末にはご主人様から最高に気持ちいいことをしてもらう生活の方が生きた心地がするようになっちゃったの」
「り、理佐…!それ、正気なの…!?」
親友の腑抜けた姿に、愕然とする小林。
そして…。
「クク…ククク…」
足元から漏れる悪魔の笑み。
「でかした…!でかしたぞ、お前たち!この褒美は、あとでたっぷりとくれてやる!」
「くっ…!」
起き上がろうとする鮫島に身構える小林。
だが…!
「動かないでっ!由依っ!」
と理佐の一喝が轟き、
「保乃がどうなってもいいの?」
と、人質にした保乃の首筋に、より鋭角に短剣を突きつける。
「私たちは本気よ?この疼く身体を静めてもらえるなら、たとえ仲間が相手でも手段は選ばないわ」
「━━━」
保乃の身を案じて動きが鈍った小林。
そこに…!
(…!?)
ドスッ…!
小林のみぞおちに、起き上がった鮫島の余力を目一杯に込めた渾身の拳が入る。
「んぐッ…!」
顔をしかめ、お腹を押さえて思わず前屈みになった小林の髪を掴み、
「ククク…よくも好き放題やってくれたなぁ?ナメるなよ、このクソ女がぁっ!」
「あうぅッ…!」
さらに、もう一発、モロに拳を喰らい、ふらつく小林。
その間に鮫島は、身体に貼りつけられた飛びっこローターをまとめて払いのけ、小林が腰に巻いたペニスバンドも引き剥がして、まとめて向こうへ放り投げた。
そして、
「よくも…よくも俺様をコケにしてくれたなぁ!?女の分際で!こんな屈辱は初めてだ!このっ!このっ!」
「うぅっ…ぐぅっ…」
床に崩れ落ちた小林の細い身体を、なおも足蹴にする鮫島。
そして最後は床に突っ伏した小林の背中を踏みつけ、腹心たちが囲む保乃にも目をやると、今一度、悪魔と形容された冷たく鋭い目つきになって、
「覚悟するんだな、貴様ら!これまでの散々な仕打ち…この恨みを何倍にもして返してくれるわ!ただでは済まさん!骨までしゃぶってやるからな!!」
と部屋に響くほどの声で、形勢逆転を告げた…!
(外伝、田村保乃の章へ続く)