3.下衆ゲーム
女捜査官のくせに意外にプライベートは性に貪欲…。
そんな耳寄りな情報を得たことで、観衆たちのマスクの下から覗く目が好奇一色に変わり、俄然、盛り上がりを見せる客席。
小上がりのステージ上にて、その客の下卑た視線を扇状に浴び、みるみる顔を紅潮させる麗乃。
奔放な性事情を次々に暴露する進行役を睨みつけるも、その心は怒りよりも動揺が遥かに上回っている。
頭の中で必死に辿るリーク元。
動揺しすぎのせいで灯台もと暗し、最も身近な金川紗耶の存在をすっかり忘れ、ただただパニックが増すばかり。
そして、こともあろうにアナルセックス好きをバラされた麗乃に対し、
「ハハハ!ケツの穴が好きとは驚いた。私が囲う愛人の中にも、そこまでスケベな女はいないぞ!」
と嘲笑う者もいれば、
「まぁまぁ、そう言ってあげなさんな。女捜査官といえど、所詮ただの女。気持ちいいことが好きなのも人間味があっていいじゃないか」
と偉そうに説く者もいる。
それらの言葉を無粋に投げつけられた麗乃にしてみれば、罵倒の前者より、女性蔑視ともとれる後者の方が苛立つ。
(所詮ただの女ですって?このッ…!)
その聞き捨てならない一言を放った男に目を向ける麗乃。
猿轡で塞がれた口も明らかに何かを言いたげだ。
だが、怒りに任せて飛びかかろうにも、後ろ手に縛られた両手首、その縄をしっかりと掴む背後の男のせいでステージ上から一歩も動けない。
そして、進行役の男が、
「さぁ!長々と喋ってしまいましたが、私からの紹介はこれぐらいにしまして、そろそろショーを始めていきましょう!」
と盛り上げ、
「では、お願いします!」
と麗乃の背後の男に声をかける。
コクリと頷く不気味な男…片桐が寄越したベテランAV男優。
彼がチラッと舞台袖に目をやると、ADに扮した若い舎弟たちが数人がかりで、何やら準備を始める。
ガラガラとキャスターに乗っけて運び込まれるギロチン台、そしてモニター。
(な、なに?何をする気…?)
と困惑する麗乃に対し、客たちには聞こえない、彼女にしか聞こえない小声で、ぼそっと、
「これがお前さんの処刑台だ。若い連中が材木を掻き集めてDIYで作ったらしい。そこまでしてもらえるなんて羨ましいねぇ」
と不敵な囁き、続けて、
「心配するな。悪いようにはしねぇからよ…」
(━━━)
ニヤニヤしながら吐き捨てられた下卑た発言が何とも胸糞悪い。
そして男たちは、麗乃の身体を力ずくで押さえつけ、無理やり前屈みにして麗乃の首、そして一旦は縄を解いた両手首をすぐさま掴み上げ、そのままギロチン台にセットした。
カチッ…カチッ…
(くっ…!)
留め具をつけられ、動かせなくなった首、そして両手首…。
そこから見える景色は奇妙なマスクだらけの客席。
逆に、客たちは、麗乃の首から後ろが一切見えない。
それに気付いて、
「おいおい!俺たちには顔しか見せてくれないのかい?」
と早とちりで野次る客に対し、モニターの画面をつけることで返答する男優。
そこに映し出されたのはギロチン台の後ろの画…首を固定されて後ろ手に尻を振る麗乃のバックショット。
そして男優はニコッと笑うと、またすぐにモニターを消し、
「今宵はショータイム。ここで一つ、彼女の表情だけ見て、今、後ろで何をされているか…それを当てるクイズをするというのはいかがでしょう?」
と提案すると、客席は、すぐさま拍手喝采。
「なるほど!そりゃ面白いっ!」
「もしかしたら後ろでハメている可能性もあるワケですな!」
「よし、絶対に当ててやるぞっ!」
と意気込むマスク軍団に対し、
(くっ…!じょ、冗談じゃないッ…!私を何だと思ってるの!?人を見世物にするのもたいがいに…!)
と血相を変えて髪を振り乱したところ、
「ぐっ…!」
ADの一人に、乱暴に髪を掴み上げられ、
「じっとしてりゃいいんだよ、テメーは。…あと、顔はずっとこの位置で上げてろ。気持ちいいからって俯くんじゃねぇぞ?表情がお客様に見えねぇからよ」
(だ、黙れっ!この…!)
ニヤニヤ笑うADが掴んだ手を離すと、早くも髪はボサボサ。
そのやり取りの間に、両脚の間に鉄パイプまでくくりつけられ、舞台裏では尻を突き出して開脚状態。
「さぁ…それでは、まず、軽くデモンストレーションと行きましょうか!」
とギロチン台の後ろに身を潜めた男優が声を上げ、早速、仕掛ける。
「…んっ…んっ…」
鋭い睨みから一転、猿轡の下から小さく漏れ始める声。
不気味なマスク越しの客たちの視線が、一斉に麗乃の顔に集中する。
「んん?何だろうなぁ?」
「まだ序盤も序盤、いきなりマンコを触っているとは思えんがねぇ」
「おい、もっと顔を上げさせてくれ。よく見えん」
と声が飛び交う客席。
再び近づくADが、再度、麗乃の髪を掴み上げて客席に表情を晒す。
(くっ…くっ…)
むず痒そうにして、時折、眉をひそめる麗乃の顔をジロジロ眺めて、
「はいっ!胸を揉まれている!」
「はいっ!脚を舐められている!」
「はいっ!電マを当てられている!
と次々に手を挙げ、回答していく男たち。
中には、
「はいっ!大好きでたまらないアナルを指でほじくられているっ!」
と叫ぶ者もいて、客席は爆笑、ステージ上の麗乃一人が赤面することに。
そして、ギロチン台の裏から、男優がクスクスと笑って、
「これはこれは…皆さん、気が早いですねぇ。言っておきますが、まだ服すら脱がせてもいませんよ」
「えぇーっ!?」
「明らかに感じてる顔をしてたぞ!?」
「いったい裏で何が行われてるんだぁ!?」
観衆たちが思わず身を乗り出すようなドキドキとワクワク。
下衆な遊びだと吐き気がしそうな麗乃とは裏腹に、演者とギャラリーの一体感が確実に構築され始めている。
そして、
「さぁ…それでは、答えを見ていただきましょう。正解は、こちら!」
と男優の声とともに、別のADがモニターをつける。
映し出されたのは、なんと、男優が、強制開脚された麗乃の脚の膝裏とふくらはぎをただくすぐっているだけの画。
「なにーっ!?」
「くすぐりだけで、あの思わせぶりな表情はナシだろー!」
「おいおい、感度がバグってるぞぉ!」
と苦笑とともに飛び交う野次。
そんな冷やかしの言葉の矢に晒され、
(う、うるさいっ…しょうがないでしょ、くすぐったいものはくすぐったいんだからっ…!)
と声が出せないので目で反論するしかない麗乃。
そして、男優が、ギロチン台の上部からひょいと顔だけ出して、
「まぁまぁ…今のはあくまでもデモンストレーションですから。…にしても、お客様も言われた通り、思った以上に感度良好でしたねぇ。ただのくすぐりだけであんなにもがいて…やはりヤリマンは全身どこでも感じやすいんですねぇ…♪」
(くっ…コ、コイツ…絶対あとで殺すっ…!)
と悔しそうに猿轡を噛む麗乃だが、むしろ、いつ殺されてもおかしくないのは麗乃の方。
「さーて…もう一問ぐらい、デモンストレーションしておきますかねぇ…♪」
と、男優は突き出していた頭をスッと引っ込め、
「では、デモンストレーション第二問!この娘が、すこぶる感度良好ということも念頭にお考えください!」
と、楽しげに叫び、固定された麗乃の身体に新たな刺激が送られる。
(んっ、くっ…!や、やめろっ!こ、こらぁっ…!)
表情を動かす麗乃を眺め、
「おやっ?これは…」
「さっきと違って、少し嫌悪感があるようですねぇ…」
「何だろうなぁ…」
シンキングタイムとなった客席を、
「皆さん、想像を目一杯はたらかせてくださいよぉっ!まさか、と思うようなことをしてるかもしれませんからねぇっ!」
と煽る男優。
その間も、麗乃は嫌がるような表情で揺すっても無駄な首を右へ左へ捻るだけ。
「尻をスパンキングしている!」
「足の裏をくすぐっている!」
「今度こそ胸を揉んでいる!」
などと客席の予想する声に耳を傾けるも、なかなかドンピシャ回答は出ない。
「残念。…では、正解を見ていただきましょう!こちら!」
と、男優が言ってモニターに映し出されたのは、いつの間にやら服の上からローションをぶっかけられ、塗り込まれてヌルヌルまみれにされた麗乃のあられもない姿。
「かぁー、そうきたかぁ…!」
という顔をする者もいれば、
「いや、もしかしてそうじゃねぇかと思ってたんだよなぁ!」
と言う者もいて、それに対して、
「いやいや、それは後出しでしょうが!」
「それが通るなら私もそうだと思ってましたよ」
と言って皆で仲睦まじく笑う。
麗乃だけを取り残し、すっかりいい雰囲気が出来上がりつつあるフロア。
そして、
「…さぁ!デモンストレーションはこれぐらいにして、いよいよ本格的に始めていきましょうか!」
と声高らかに告げられる恥辱クイズ大会の開会宣言。
ギロチン台の裏で怪しく光る麗乃のパンスト美脚。
そして、彼女はまだ気付かない…手っ取り早く好き者の本性を引きずり出すため、その塗り込まれたローションには例の強力媚薬がふんだんに練り込まれていることに…!
(つづく)