乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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第四部 第十一章・堀未央奈、再び…
8.陥落マグニチュード


 樋口日奈と星野みなみによる快楽エステ、感度破壊コースからようやく解放された未央奈。
 アイマスクとヘッドホンのせいで、結局、最後まで自身の体を這い回った二人ぶんの手の平がかつての仲間の手だったとは気付かないまま、いいように嬲られた。
 既に何度も絶頂に押し上げられて疲労困憊だが、一味の手に落ちた以上、安息の場はない。
「おらっ、立て!」
 拘束を解かれると同時に手首を強く捕まれ、そのまま施術台から立たされて、部屋から引っ張り出された。
「くっ…ど、どこへ連れて行く気…!」
 引っ張られた際にヘッドホンは外れた。が、依然として残るアイマスクのせいで視界は暗闇。
「へへへ…いいから来るんだよ」
 とだけ言われて手を引かれ、次に未央奈が連れ込まれたのはセックスルーム。
 セックスルーム…いわば陵辱部屋で、捕らえて拷問にかけた獲物に引導を渡すための場所だ。
 余計な調度品は何もなく、殺風景にマットレスが置かれただけの簡素なレイアウト。
 入室と同時にアイマスクを剥ぎ取られ、
「そぉら!」
 と、満身創痍の華奢な身体を放り投げられた未央奈は、踏ん張りが効かずにそのまま処刑台のマットレスに沈んだ。
「くっ…」
「へへへ…さぁ、どう料理してやろうか…」
 じりじりと近寄る男たちを目にし、快楽漬けにされた今でも反射的に、
(に、逃げなきゃ…)
 と抵抗の思考が頭をよぎるも、肝心の身体が動かない。
(ダ、ダメだ…もう動けない…ヤ、ヤラれる…また、あの時みたいに…)
 絶望が漂う未央奈の脳内。
 媚薬に冒された身体が熱い。
 たちまち男どもに飛びつかれ、この火照りと疼きに翻弄されながら輪姦される運命。
(じゅ、純奈…絢音…ごめん…二人の仇、とれなかった…)
 そんなことを思いながら、茫然と天井を見つめる未央奈。
(だ、誰から…?誰から始めるの…?)
 やるならさっさと、手っ取り早く…既にそんな諦めムードでいる未央奈だが、そこで耳に入った男たちの言葉は意外なものだった。

「おいおい。なに、あっさりと諦めてんだ?まだ終わらせねぇぞ?」

(…?)
 一瞬、ポカンとした未央奈だが、次の瞬間、男たちが四方から一斉にマットに足を掛け、体重をかけた。
 グラグラと揺れるマットに、
(…!?)
「ひ、ひぃぃっ♪」
 目を見開くとともに嬌声再開。…だが、不思議なことに、誰一人、彼女の身体に触れてはいない。
 未央奈自身も、
「ひぃっ、な、なにっ!何これぇっ!?」
 と戸惑いを隠せない。
 四方を陣取る男たちが巧みに体重をかけ合うことで、地震のように揺らされるマット。
 その揺れのせいで立つこともままならないまま右へ左へ翻弄される未央奈だが、そこに何故か快楽が付きまとってくる。
 たまらず、
「あっ、あっ…♪や、やめてっ!揺らさないでぇぇっ!」
 と絶叫するも、当然やめない男たち。
(な、何これ…!マ、マットの上で弾むだけで感じちゃうッ…!)
 疲労を忘れてのたうち回る未央奈に、
「ガハハ!どうだ、驚いたか!」
「お前のような敏感体質のヤツが感度を破壊されたらこうなるんだよ!」
「ほら、誰も触っちゃいねぇぞ!マットが揺れてるだけだ!」
「起き上がってかかってきたらどうだ!」
 四方から浴びせられる野次。
 だが、未央奈は身体を襲う刺激に翻弄され、不安定なマットの上で立つこともできない。
「ひ、ひぃっ…♪」
 ゴロゴロと転びながら嬌声を漏らす未央奈は、やがて、
「あぁっ、ダ、ダメっ!イクっ…イクぅぅっ♪」

 ビクッ、ビクッ…!



 なんと、こんなことが…とうとう、マットの揺れだけでイッてしまった未央奈。
 自分でも信じられない。
(バ、バカな…そんなワケない…確かに私は敏感肌だけど…触れられてもないのにイクなんて…そんなこと出来る筈がない…)
 だが、現に身体は痙攣し、快楽の高波に飲まれるとともに頭が真っ白になったことは事実。
 元々の敏感体質に、さらに感度を高めるエステ責め、強力媚薬の投与…そこに執拗な連続絶頂後という条件が重なった末の産物。
 まだ困惑が消えない未央奈に、
「へへへ。どうだ、堀未央奈!誰一人として触れもせず、マットの揺れだけでイカされる。屈辱的だろう?」
「くっ…!」
「嫌なら、さっさとそのマットから下りた方がいいぞ」
 と男が冷やかすと同時に脱兎のごとくマットから離れようと身体を起こす未央奈だが…。
「おっと!そう簡単にゃ逃さねぇぜ!」
 わずかに早く、男たちがマットを四方で足踏みを再開。
「くっ…!」
 ぐらついたマットの上でバランスを崩し、転倒したら最後、
「ひぃっ♪ダ、ダメぇぇっ…踏まないでぇっ…んひぃっ♪」
 再び、揺れるマットの上でのたうち回る羽目になる未央奈。
 足場の揺れだけでイク…まだにわかに信じ難いが、それによって体内の疼きが高まり、波が起きているのは事実。
 周りの男たちは楽しそうに、
「ほれっ!ほれっ!」」
「早く立て!立ち上がって逃げ出してみろ!」
「モタモタしてるとまたイッちまうぞぉっ♪」
「んひゃぁぁっ♪ダ、ダメっ、イクっ!イクっ!うぁぁっ…♪」

 ビクッ、ビクッ…!

 またもや、揺れるマットの上で痙攣を起こす未央奈。
(ダ、ダメだ…ちょっとでも足を取られると、揺れが胸とアソコに響いてきて…体勢を立て直せない…!)
 と状況の把握するのがやっと。
 さらに、
「おいおい、誰が休んでいいって言った!?」
「諦めずにチャレンジしてみろよ、不屈の女捜査官さんよォ!」
「復讐しに来たんだろ?やってみろよ。おらっ!おらっ!」
 と、なおもマットに足を掛け、シーソーのように対角線上で交互に力を加える男たち。
 再度、生まれたての仔鹿のように立ち上がりかけた未央奈を襲う激震。
「くっ、あぁっ、んんっ…!ふぁぁっ…♪」
 ガクガク震える膝は、揺れに翻弄されて折れる寸前。
(転んじゃダメだ…!転んだらまた…イクまで起き上がれない…!)
 と必死に踏ん張る未央奈だが、その間も脚から伝わる震えが胸、そして秘部に、甘い刺激を送る。
「きゃっ…!」
 力尽きて転んだ。
 あとは本人の危惧した通り、
「ひ、ひぃぃっ…♪ダ、ダメぇっ、またイッちゃうっ!イッちゃうからぁっ!きゃはぁッ…♪」
 まるで泥浴びをするイノシシのようにマットの上で悶え狂い、痙攣する未央奈。
「ギャハハハ!こりゃ愉快!マットを揺らしただけでイキまくりだ!」
「さぁ、まだまだしてやるぜ。何てったって、マットの上でただ足踏みするだけだからな。セックスと違って俺たちが疲れることはない!」
「次はハンデとして完全に立ち上がるまで待ってからしてやろうか?ん?ん?」
 と、楽しげな男たち。
 その後も幾度となくマットから降りようとしては揺らされて転ばされ、足踏みだけで繰り返しイカされる未央奈。
 そして…。


「イ、イクぅぅっ!」

 ビクッ、ビクッ…!

「も、もうやめてぇぇっ!嫌ぁぁッ!」

 ビクッ、ビクッ…!

「お、お願いっ…もう揺らさないでぇぇっ!」

 ビクッ、ビクッ…!

「おらおら!どうしたぁっ!」
「誰が諦めていいって言ったんだ、コラ」
「もはやお前にゃ身勝手に戦意喪失する権利すらねぇんだよ。喪失したなら無理やりにでも奮い立たせるまでだ。こうやってよォ!」
「がぁぁっ…!ダ、ダメっ…また…またイクからぁっ♪」

 ビクッ、ビクッ…!

 休息はもちろん、諦めることすら許さない男たちの絶え間ない足踏み。
 立つことを強要してマットを揺らし、そして立ち上がれば転ぶまでマットを揺らす…その繰り返し。
 終わりの見えない地獄のマグニチュードに、ただただ金切り声を上げながら絶頂を極め続ける未央奈。
 たまらず、
「ゆ、許してっ…お願い、もう許してぇっ!」
 と掠れた声で絶叫しても、
「へへへ。これまで連続イキや寸止めに耐えれず、泣きながら許しを請うてきたヤツは何人もいたが、マットを揺らされただけでそうなったのはお前が初めてだよ」
「これの何がダメなんだよ?小さいガキなら喜ぶようなことだぞ?」
「ひ、ひぃぃっ♪ダメぇっ♪もうダメぇっ♪ホント無理ぃっ♪んひゃあぁっ♪」
 無理と言いつつ嬌声を交えるものだから、悦んでいるようにも思えてしまう。
 そして、ようやく訪れた束の間の安定。
 心身ともにボロボロにされ、足踏みを止めた男たちがニヤニヤしながら見守る中、ダンゴムシのように身体を丸めて肩を震わせる未央奈。
 その目にはじんわりと涙が浮かぶ。
(こ、怖い…もう何をされてもイッちゃう…自分の身体が怖い…もう一歩も動けない…)
 すすり泣きとともに、自身の身体のバカになりすぎた感度に恐怖する未央奈。
 それを見て、
「あーあ、とうとう泣いちゃったよ。情けねぇ」
「さっきまですこぶる威勢がよかっただけに拍子抜けだぜ、まったく」
 と容赦なく嘲笑で追い打ちをかける男たち。
「へへへ。ざまぁみやがれ」
 と、その中の一人が、ゆっくりとマットに上がり、未央奈に近づく。
 その際の歩みの一つ一つにも、
「あんっ…んんっ…」
 と反応してしまう未央奈は、そのロングヘアーを乱暴に掴まれ、首ごと捻り上げられて、
「へへへ。ざまぁねぇな、堀未央奈。前回の復讐とやらはこれで満足か?んん?」
「━━━」
 涙を浮かべて唇を噛むだけ…返す言葉もなく完敗を喫した未央奈に、
「さぁて…これからどうするよ?ここらで身の程をわきまえて潔く俺たちの肉便器になると宣言するか、それとも、もう少しオンナの意地とやらを見せてみるか」
「━━━」
 当初の未央奈なら、ここで男の顔にツバでも吐きかけ、威勢のいい啖呵を切っていただろうが、今はもう違う。
(そ、そんなことをしたら…またマットを揺らされる…)
 報復を恐れた時点で、もはや強き女のプライドは砕けたのも同然。
 黙り込む未央奈。
 突っぱねることはしない。が、かといって、こんな男たちに忠誠を誓うこともしない。
「…おい。どうするって聞いてんだよ。黙ってちゃ分かんねぇだろうが」
 と髪を掴んだまま、ゆっさゆっさと揺する男に続いて、
「どうなんだよ?まだ虚勢を張るのか、それとも、そのスケベで敏感な身体を俺たちに捧げるか」
「この期に及んで無視はよくねぇぞ、無視は」
「━━━」
 嵐が去るのを待つかのように黙秘で通す未央奈だが、拷問続行か陥落か…残念ながらこの問いはどちらか口にしないかぎり終わらない。
 そして、黙っていればいるほど、男たちは業を煮やす。
「へへへ。分かったよ。まだそんな態度を取れるのなら、もっと素直になれるようにしてやるさ」
(…!?)
 その一言で強張る表情。
 思わず、
「こ、これ以上、何をするつもり…」
 と震える唇から絞り出した未央奈だが、男たちには届かず、
「おい、ブッチャー!こっち来いよ!」
「お前の巨体の出番だぞ」
 と、声を上げる男たち。
 そして呼びつけられたブッチャーという呼び名の男の登場に、未央奈は思わず、
「い、嫌ぁぁっ!」
 と絶叫する。
 その風体…呼び名の通り、往年の巨漢プロレスラー、アブドーラ・ザ・ブッチャーを彷彿とする並外れの巨体。



 そんな彼がニヤニヤしながらマットに近づくのを、
「ダ、ダメっ…来ないで!無理っ…ホントに無理だからぁっ…」
 と、これから起きる何かを察したらしく、懇願するように繰り返す未央奈。
 もし今、こんな巨体の男がマットに飛び乗り、ぼんぼん飛び跳ねたりしたらどうなるか…。
 恐怖に怯える未央奈だが、男たちは冷酷に、
「何だよ、その顔」
「お前が悪いんだぞ?素直に俺達の肉便器になるって言わねぇから」
「おい、ブッチャー。お前、体重どれぐらいあるんだ?」
「ぐへへ…150キロ…♪」
 と不気味に微笑む巨漢。
「い、嫌ぁぁっ…」
 わずかに残る力を振り絞り、身体を起こして逃げ出そうとする未央奈だが、
「おっと!」
「逃さねぇぜ!」
 と、男たちがすかさず足踏みを再開し、脚がもつれてしまった。
「きゃっ…!」
 とマットにつんのめった未央奈。
 そこに、
「よし、行け!ブッチャー!」
「そのままボディプレスで飛び込んで、気が済むまでマットの上でトランポリンしてやれ!」
「ぐへへ…アイアイサー…♪」
 不気味に笑うとともに、大きく息を吸い、地を蹴って宙を舞った巨体。
 脂肪だらけの手足を大の字に広げてマットに飛び込む様が、未央奈にはスローモーションに見えた。

「い、嫌ぁぁぁっ…!やめてぇぇっ…!」

 断末魔の絶叫、号泣。
 この直後、マット上に震度測定不能の大地震が発生し、取り残されていた女性はポップコーンのように幾度となく弾みながら、奈落の底へと落ちていった…。


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2022/06/15(水) 00:21 )