乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―




























































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<番外編>Member's Private Act ━女捜査官たちの素顔━
高山一実&松村沙友理コンビの素顔 (※分岐点あり)
(※これは、まだ本編にて松村が罠に落ちて囚われの身になる以前の話です)

「ほら、動くなっつってんでしょ!」
「観念しぃッ!アンタら!」
 と声を上げ、凛々しく拳銃を構える二人の女捜査官、高山一実と松村沙友理。



 柴崎一派の一味がねぐらにしていると睨んだ雑居ビルに、若手メンバーを率いて突然の急襲、そして華麗な制圧…さすがベテラン、見事だ。
「く、くそっ…!」
 金庫から拳銃を取り出すヒマもなく、後ずさりで壁側に追い詰められるリーダー格の男。
 その間にも、一人、また一人と手下の男たちが若手メンバーに手錠をかけられて連れ出されていく。
 そして、とうとう彼が最後の一人となったところで、高山と松村が左右から拳銃を突きつけ、
「さぁ、残るはアンタ一人。観念して柴崎の居場所を教えなさいっ!」
「し、知らねぇよ…俺は何にも知らねぇんだ…」
「アンタなぁ…そんな子供みたいなウソがウチらに通じると思てんの?」
 じっと睨みつけ、一歩、前に出る松村。
 その今にも引き金を引いて脳天を撃ち抜きそうな眼に、たまらず、
「ホ、ホントだよ…ここは単なる詰所の一つで、毎日、定時にボスから一方的に電話がかかってきて、用がある時に命令を貰うだけ。俺たちから連絡することもないから連絡先も知らない、というか知らされてないんだ」
「…どう思う?」
 拳銃は下げずに、高山に聞く松村。
 高山も拳銃を構えたまま、幹部の青ざめた顔をしばらく眺めていたが、
「…どうやらウソじゃないみたいね」
 と言って、ようやく拳銃を下げた。
 幹部は既に降伏の意を示し、呆然と立ち尽くしたところを、戻ってきた伊藤かりんと佐々木琴子に手錠をかけられ、両脇を固められて連れ出されていった。
 ほんの数分前まで男たちがたむろしていた部屋が、あっという間に、ぽつんと二人がいるだけの空間に早変わり。
 結果的にヤツらの詰所の一つを潰したのだから成果あり、決してこの突入が空振りだったとは思わない。
 だが、ここにいた男たちは、実質、何も知らされていない捨て駒同然。
 肝心の柴崎の行方も依然として掴めないままで、進展に繋がる収穫したかと言われれば、答えはNOだろう。
「くそぉ…ちょっとは期待してたんだけどなぁ…」
 と悔しそうに舌打ちを見せる高山。
 松村も同調するように頷き、
「またイチから調べ直しやな…」
 と肩をすくめたところで、突然、部屋に備えつけの電話機が鳴った。
(…!)
 顔を見合わせる二人は、目だけで会話をし、おそるおそる松村が受話器を上げる。
「もしもし…」
 と松村が応対すると、相手は警戒したように少し黙った後、急にクスクスと笑いだし、
「…ほぅ。そこの詰所を押さえるとは、なかなかやるじゃないか。君たち」
「…アンタ…柴崎やな…!」
 キッとした顔になって受話器を握り直す松村。
 怒鳴り散らしたい気持ちをグッと堪え、
「アンタ…今どこにおる?素直に教えといた方が身のためやで?」
「ククク…どこにいる?そうだな…この日本という島国の何処かにいるよ」
「くっ…このクズっ!ええかげんに…!」
 嘲笑うような煽りに、ついカッとしてしまう松村だが、だからといって電話越しでは何も出来ない。
 柴崎はバカにしたようにクスクスと笑って、
「あいにく、そこにいた連中が捕まったのならもう結構。では、またの機会に」
 と言い、最後には、
「威勢のいい君も、せいぜい夜道の独り歩きには気をつけたまえ。ハッハッハ…!」
 と高笑いで忠告をされて電話を切られてしまった。
「くっ…!」
 苛立ちに任せ、耳から離した受話器を壁に叩きつける松村に対し、
「まぁまぁ…」
 と、相棒の肩をポンポンと叩いてなだめ、
「手下を何人か失って、ヤツらに多少なりともダメージを与えたことは事実なんだから、ひとまずは私たちの勝ちだよ」
 と、プラス思考に持っていく高山。
「せやけどさぁ…」
 と、まだぶつぶつ言っている松村に、
「とにかく、用が済んだ以上、もうここにいてもしょうがない。一旦、本部に戻ろう」
 と切り替えを促し、そのビルを後にする高山。
 その後に、渋々、松村も続き、本部へ帰還した一行。
 秋元真夏に経過を報告すると、
「…了解。ご苦労様。あとの処理はこっちで引き継ぐから、二人はここで上がってオッケー。ここ最近、二人とも休み無しだったでしょ?だから明日はゆっくり休んで」
「いや、でも…」
「ウチらは全然…」
 まだ休むワケには…と言いかけた二人を制すように、真夏は、
「一実にも沙友理にも、きっとまた大きな負担をかけてしまう時が必ず来る。だから二人は、それがいつ来ても大丈夫なよう、休める時にはしっかり休んでおいてほしい」
「…分かった」
「ありがとう、真夏…」
 別にそういう堅苦しい仲でもないが、しっかり今後を見据えた真夏の優しい気遣いに、つい、ペコリと頭を下げ、部屋を後にする二人。
 廊下ですれ違う後輩たちからも続々と、
「お疲れ様です!」
「ゆっくり休んでくださいね」
 と労を労われながら、帰り支度のために更衣室に入る二人。
 そしてロッカーから私物ケータイを取り出して画面を確認した二人は、それぞれ新着ラインに気付く。



<一実、今晩、会えない?>

<沙友理、今夜もし空いてたらゴハンでも行こうよ>

 ともに、付き合ってまもなく半年になる恋人からデートのお誘い。
 幸い、今日の勤務はこれで終わり…今から待ち合わせするにもいい時間だ。
 そして二人は、それぞれ自分の恋人に対し、オッケーの返事を送る。
 ここからは、仕事のことは少し忘れ、久々に彼とのデート。
 さて、あなたはどちらのデートが気になる?

 ↓

・高山一実 → 「NEXT」で「高山一実、久々のデート」へ


・松村沙友理 → 「INDEX」に戻って「松村沙友理、久々のデート」へ


(※)
 惰性で「NEXT」を押すと必然的に「高山一実」編に進みますので、「松村沙友理」編を希望の方は、焦らずに落ち着いて、一度「INDEX」に戻ってください。

鰹のたたき(塩) ( 2022/07/09(土) 00:57 )