乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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第四部 第十章・山下美月、みたび…
5.生殺し生ライブ
(れ、怜奈さんっ…!怜奈さんッ!)
 詰め込まれた覗き部屋の中で必死に呼びかける美月だが、依然、注射による舌の麻痺が治らず、声が出ない。
 マジックミラー越しでは気付いてもらえる筈もなく、こちらに見向きもせず、助監督らしき男と何やら演出について話し合うことに夢中の怜奈。
 嫌がる様子は微塵もなく、
「はい…はい…なるほど、分かりました…はい…」
 と、言われたことに従順に頷く始末。
 そして、そこに、
「監督、入られまーす!」
 と、再びADの声が上がり、ひょこひょこと松葉杖をついた男がスタジオ入りした。
 それを見た瞬間、覗き部屋の美月は、
(か、片桐…!何でコイツがここに…!)
 と驚愕した。
 その驚きは、前回、専属女優契約堕ちした時の怜奈と全く同じだ。

 かつて花田組の幹部だった男、片桐。
 捕らえた怜奈を手にかけ、口を割らせて得た情報で本部を襲撃、二代目指揮官に着任して間もない白石麻衣を拉致したまではよかったが、あと一歩のところで救援に駆けつけた橋本奈々未にライフルで脚を射抜かれ、捕縛されて留置場に送られた男。
 その男が、なぜこうして、のうのうとシャバに戻っているのか…?
(無罪放免…?いや、そんな筈はない…!この男は、怜奈さんへの暴行、本部襲撃、そして白石さんを一時拉致した現行犯…期間短縮どころか仮釈放すらありえないっ!)
 …が、現に、今、アクリル板越しのところで自由にしていることが現実。
 声が出ないまま、頭がこんがらがる美月。
 この時点では、まだ誰も、ひそかに柴崎にある弱みを握られ、圧力をかけられた本部長が裏で片桐の釈放に一役買ったという衝撃の真相を知る由もないし、それを疑うこともない…。

 カツ…カツ…と松葉杖をついて歩く片桐。
「どうぞ、こちらへ」
 と監督椅子へ案内し、
「首脳会議、お疲れ様でございました」
 と機嫌を取るAD、もとい、舎弟。
 それに対し、
「うるせーよ」
 と、舎弟の気遣いを一蹴し、
「そんなことより、すぐに回せるんだろうな?少しでも不備があったらブチ殺すからな」
 と、このご時世、一発アウトのパワハラ発言が飛び出すなど、かなり苛立った様子の片桐。
 無理もない。
 この日は、昼間、美月が潜入したオーディションを途中までモニタリングした後、六本木のホテルへ移動して首脳会議、そして慌ただしくこのスタジオに駆けつけて怜奈の新作撮影というハードスケジュール。
 片足が不自由で松葉杖の状態だから、身体にくる疲労は尚更だ。
「先に言っておくがダラダラするなよ?ほぼ完パケで行けるようにしろ。分かったな!」
 と、蓄積した疲労から、とにかく不機嫌な片桐だが、一方で、助監督と打ち合わせをしていた怜奈が片桐の到着に気付き、小走りで駆け寄ってペコリと頭を下げ、
「よろしくお願いします」
 と挨拶をすると、
「うむ…」
 と、そこはちゃんと頷いて返す。
 裏ではすっかり愛人のような関係になった二人だが、こうして撮影がある日には、撮る監督と撮られる女優、その関係をキッチリ保つ。…が、やはり、片桐も一人の男。
 チラチラと周りを見て、他のスタッフが撮影準備に取りかかって背中を向けているのを確認すると、その隙に、スッと怜奈の頭を抱き寄せ、キスをした。
 それに対し、嫌がる様子も見せずに受け入れる怜奈。
 ネチョネチョと淫靡に舌を絡めて少しだけリラックスした後、スッと背中を押して送り出す片桐。
 そんな、人目を忍んでイチャイチャする恋人同士のような二人の姿を、このスタジオで、唯一、直視していたのは覗き部屋の中の美月だった。
(れ、怜奈さん…何で…!何でそんなヤツと…!)
 自分の身体を凌辱した因縁の男の筈。
 そんな男にキスをされて受け入れている怜奈の心情が、美月には理解できない。
 そして、いよいよ撮影が開始。
「よーい…アクション!」
 と、すっかり様になった片桐の掛け声とともに、スタジオのカメラに「録画中」を示す赤いランプが灯る。
 まずは怜奈が一人、ソファーに座った状態で導入のインタビュー部分から。
 時々、笑みも交えながら答える怜奈。
 密閉された空間の中で、さすがに声までは聞こえないが、今のところ、怜奈が抵抗する様子や逃げ出す気配は一切なく、まさに今から撮影に挑むAV女優そのもの。
 やがて男優が現れ、怜奈の隣に腰を下ろす。
 そして、いよいよ、二人は抱き合い、カメラの前でキスをし始めた。
 男優の肩越しに見える怜奈の眼はうっとりとして、美月がずっと抱いていた知的な先輩というイメージは完全に消え失せていた。
(怜奈さんっ…!ダメです!抵抗しなきゃ…!でないと、そのまま、いいようにされちゃいます…!)
 と壁の中から必死に念じるも、届くことはない。
 いや、むしろ、キスの夢中の怜奈のナイトガウンがはだけて脱がされ、白い美肌を晒されても隠す様子もなく色っぽい眼をして、上半身が裸になったその身体を男優が抱きしめ…と、どんどんカラミが進んでいくスタジオ。
 そして、その光景を眺めている美月も、次第に、
(ハァ…ハァ…)
 と呼吸が荒くなり、時折、
「ごくっ…」
 と息を飲む。
 そんな美月の興奮は、男優が怜奈の背後に回り、胸を揉み始めたあたりから、さらに急角度で上昇していった。
「んっ、あんっ…♪」
 と甘い声を漏らす怜奈に合わせるように、
(あっ…んんっ…♪)
 と触られてもいないのに脳で感じてしまう美月。
 普段、夜な夜なオカズにしていたアダルトDVDのサンプル動画。
 それが目の前で実演されているに等しいこの状況は、お堅い女性ならともかく、快楽依存の美月に対しては効果抜群だ。
(ハァ…ハァ…♪ヤ、ヤバい…こんな状況なのに…オ、オナニーしたくなっちゃう…!)
 と、いつの間にか、その密閉空間ですっかり自宅気分になってしまい、いつものように胸に、そして股間に手を伸ばそうとして、
(…!)
 唇を噛み、眉をひそめる美月。
(…くっ…!て、手が…使えない…!)
 両腕をパイプ椅子に縛りつけられていたことを思い出して歯噛み。
 その間にも目の前のカラミはどんどん過激さを増し、
「あぁん、んんっ♪はぁっ、あぁっ…♪」
 と、怜奈のそそる喘ぎ声がいよいよマジックミラー越しでも聞こえるようになった。
(くっ…!くっ…!)
 鏡の裏側でジタバタ身体を揺する美月。
 拘束を解いて逃げ出すためではない。
 拘束を解いてオナニーをするためだ。
 そんな中、監督椅子に座る片桐は、目の前の模様を、直視ではなく、真横に置かれたモニターを通して眺めていた。
 画面が4分割されているモニター。
 左上が1カメの映像で、右上が2カメの映像、そして左下が3カメの映像で、それぞれ、正面、右、左の三方向から怜奈と男優のカラミを映しているが、今日、このスタジオに入る撮影カメラは以上3台のみ。
 では、残る右下に映るのは何かというと、こちらは撮影カメラの映像ではなく、セット裏の覗き部屋の天井に取りつけたCCDカメラの映像だ。
 こんな序盤のカラミなど、既にデビュー三作目となる怜奈なら、いちいち確認せずとも一発OKを出してくれるだろう。
 それよりも右下の映像、パイプ椅子を揺すって悶える美月の隠し撮りを見て、ほくそ笑む片桐。
(ククク…コイツぁ、怜奈の時ほど手間がかかることはなさそうだな…)
 映像で見てもオナニーをしたがっているのは明らか。
 そのうち狭い個室の壁に身を打ちつけて悶えるに違いない。
(さぁ、山下美月…その狭い空間の中でもっともっと興奮してもらおうか!)
 そんな不敵な微笑を浮かべながら、真横で身を屈める舎弟ADの肩を合図代わりにポンと小突く片桐。
 それを受けて手にしたスケッチブックをめくり、カラミを続ける二人に示すと、チラッと確認した男優が、怜奈の身体を向ける位置をズラす。
 向けた方向はもちろん、美月がいる鏡向き…。



「んっ…んんっ…んぷっ♪」
 背後から美乳を揉みくちゃにされながらキスをされ、甘い声でよがる怜奈。
 それを目の前で見せつけられた美月は、
(そ、その揉み方…絶対に気持ちいいヤツじゃん…ず、ずるいよ、怜奈さん…)
 と、当初の目的も薄れ、マジックミラー越しに羨望の眼差しを送ることしか出来ず、さらに身体に火がつく。
 そして、男優の指が乳首を摘まんで転がすと、
「んひゃぁっ♪」
 と腰を浮かせて仰け反る怜奈。
 同じようにしたい…自分も同じ手つきで乳首を転がして快楽に浸りたい…。
 それを頭で考えれば考えるほど、美月も、自身の乳首が衣服を突き破る勢いで固く尖り始めているのが分かる。
(は、外れろ…!外れて…お願い…どっちか片方だけでいいから…!)
 ガシャガシャと拘束具を揺する動きが激しくなるも、無駄な抵抗。
 その間に男優の手は怜奈の股ぐらにも伸び、パンティの中に潜り込む。
「…ふふっ、しっかり濡れてるじゃん…♪」
「恥ずかしい、やだぁ…♪あっ、んんっ…んんっ…♪んぷっ♪ふぁぁっ♪」
 振り向いてのキスを続けながら、次は手マンで喘ぐ怜奈。
 パンティの生地を押し上げ、ぐにょぐにょと動く男優の卑猥で淫靡な手つき。
 陰毛を掻き分けて割れ目をなぞり、愛液を纏わせた中指をその亀裂に押し当ててビラビラを割るように埋めて、中に覗く秘肉を擦りあげている…と、官能的な興奮で脳が研ぎ澄まされている美月は、透視能力でも身につけたように、男優の指の動きがハッキリと見えていた。
(ハァ…ハァ…ヤバい…ヤバいって、それは…)
 もはや一点集中凝視。
 血走ったような眼で怜奈の股間を責める指を見つめ、唇に涎を溜める始末。
 当然、自身の股ぐらも熱くなり、おもらしに似たような感覚で股に広がる湿りも実感。
 一瞬、
(…ダ、ダメだ…私ったら何を考えて…)
 と我に返り、目を伏せた。…が、ならばと耳に飛び込む、
「あんっ♪き、気持ちいいっ…んんっ、あぁっ♪」
 という怜奈の嬌声に、結局、怖いもの見たさでおそるおそる顔を上げてしまう。
 やがてノッてきた怜奈は、膝立ちになり、手マンを続けてもらいながら、男優の股間にスッと手を伸ばし、スリスリ…。
 かたどるような手つきで、だんだん浮き彫りになってくる男優のイチモツをなぞる怜奈。



 そんなものを見せられては、今の美月に我慢など出来っこない。
(ず、ずるい…ずるい、ずるい…一人だけずるいですよ、怜奈さぁん…!)
 と、羨望の眼でジタバタと拘束された手足を揺すり、狭い空間で身悶える美月。
 生ライブによる焦らし…これぞまさしく究極の“生殺し”だ。
 そして、とうとう、
「あっ、あっ、イ、イクっ…イクぅっ!んっ、んっ…♪」
 と、男優の指テクで一足先に絶頂に達する怜奈。
 膝立ちのまま、ピクピクと震える様子に、一瞬、頭が真っ白になった快感が見事に表現されている。
「…イッちゃった?」
「…う、うん…♪」
 と囁き合う二人。
 再度キスをした後、男優が、
「じゃあ、身体もほぐれたところで、いよいよやっていこうか。今作の本題、“初アナル体験”…♪」
 と耳打ちしたところでシーン1が終了。
「…はい、オッケーイ!」
 と片桐がカットをかけると同時に、ドタバタと舎弟ADたちがスタジオに入り、ソファーを移動させ、キングサイズのマットレスと入れ替え。
 その間に、ティッシュを取り、すっかりジュクジュクになった股ぐらを、一度、軽く拭き取る怜奈。
 美乳を放り出したまま、パンティ一枚だけの姿で次のシーンのスタンバイ完了を待つ堂々とした姿には、早くも貫禄が窺える。
 そんなインターバルの中、
(つ、次は…?次は、どんなシーン…?)
 と、すっかり前のめりの美月。…と、その時。
 ふいに背後の立て付けの悪い戸がガタガタと音を立てて開き、男が二人、美月の肩をガシッと掴んだ。
(…!)
 ハッとしたが時すでに遅し。
 うっとりした羨望の表情を元に戻すのが間に合わず、
「あーあー、もうすっかり腑抜けてやがる」
「興奮したろ?えぇ?おい」
 ニヤニヤ笑う男たちは、美月を拘束したパイプ椅子を、一旦、覗き部屋から担ぎ出すと、おもむろに手足の拘束を解き始めた。
「…ごくっ…」
 息を飲む美月。
(やっと…これでやっと手足が自由に…)
 逃げるという発想はもはや皆無。
 じっと様子を伺い、まず右手が自由になった瞬間、彼らの目も気にせず、とにかく乱暴に揉みたくてたまらない自身の胸へ…!
 …が、しかし。

 ガシッ…!

(…!?)
「おっと…!何やってんだよ。まだダメだよ、お前」
 まるでその動きを予知していたかのように、胸に向かった美月の右手を素早く掴み上げ、頭上に持ち上げる男。
(くっ…!くぅっ…!)
 振り払おうともがくも、男の握力の前に為す術なし。 
「おらっ、こっちもだ」
 と続いて拘束が解かれた左手もあっさり捕獲されて頭上に上げられる。
(な、何で…!ねぇ、何でよぉっ!)
 やっと拘束は解かれたのにまだオナニーをさせてもらえず、不満顔の美月。
 そして両足も自由になると、すかさず、
「おら、立て!」
 と、腕を引っ張り上げられ、立たされる。
 折り畳まれて片付けられたパイプ椅子に代わって次に用意されたのは、なんと木馬…!
「さぁ、乗れ!」
 と、美月を押し出す男たち。
(きゃっ…!)
 押し倒される形で木馬の背中に倒れ込んだ美月の手足を、すかさず再び拘束しにかかる男たち。
 幸い、馬の背は、ハードなSMプレイで使われるような鋭角ではなく、革張りのもので痛みもなくて助かったが、それでも、しがみつくような体勢で拘束されて屈辱、恥辱に変わりはない。



「へへへ。さぁ、次はその体勢で見学するがいい」
「秀才の先輩がケツの穴でアンアン悶えるところ、しっかり見届けろ!」
 と言って、美月の乗る木馬を覗き部屋に押し込む男たち。
 担いで出し入れされたパイプ椅子と違って、下にキャスターがついているので押すだけで動いて手軽。…などと言ってる場合ではない。
 さっきよりもさらにキチキチ…より圧迫感が増したところで、再び後ろの戸を閉じられて施錠をされ、幽閉された美月。
(くっ…!)
 モゾモゾと身体を波打たせ、顔を上げると、いつの間にか次のシーンのスタンバイも終了し、マットレスの上にちょこんと座ってスタートを待つ怜奈の姿があった。
 そして、木馬拘束に変わった美月が見つめる中、
「…よーい…アクションっ!」
 と、再び片桐が声を上げ、撮影はシーン2、『山崎怜奈、初めてのアナル開発』へと差しかかる…!


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2022/02/16(水) 01:17 )