乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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<番外編>堕ちた女たちの流刑地 ━捜査官ソープ『N46』泡姫━
西野七瀬への挑戦 (プロローグ)
 ソープランド「N46」。
 この店で1、2を争う人気嬢、西野七瀬は今日も予約に次ぐ予約で引っ張りだこだった。
 その美貌、スタイル、儚げな表情と笑顔のギャップ、関西弁…好かれる理由を挙げ出せばキリがない上、ましてやこれでSっ気まであるというのだから、それはそれは、世の男たちが虜になるのも納得だ。
 そして、そんな彼女と相対し、楽しんだ後に、ふと、
(この娘と過ごせるのは、このプレイ中だけ…)
 と現実を思い知るのが世の常。
 そんな虚しい現実をどうにか打開しようと、

「ねぇ、七瀬ちゃん。もしよかったら、この後、おじさんと飲みに行かないか?」

「最近、この近くで美味しいお店を見つけたんだ。どうかな?」

「いつもお世話になってるからさ。たまにはご馳走させてくれよ」

 などと、ひと回り以上も年下の七瀬に媚びるように機嫌を窺い、店外デートに誘ってくるのは主に中年の男性に多い。
 それ自体はよくあることで、当の七瀬も愛想笑いで上手くかわすのだが、困るのは、時折、その“デートしたい欲”に熱が入りすぎてプレイの開始前からフライングで口説いてくる客がいること。
 もちろん簡単にOKするワケにもいかないが、かといって、そこで断ると、その後のプレイがぎくしゃくしてやりづらい。
(そういうお客さんへの対応の仕方も考えんとなぁ…)
 と思っていた七瀬だが、最近になって、やっと上手く立ち回る良い案を思いついた。
 それは…。


「ねぇ、七瀬ちゃん」
 すっかり太客となった常連客が、プレイルームに入室早々、馴れ馴れしく名前を呼び、
「こないだ言ってた件、考えてくれた?」
「こないだの件…?」
 と、しらばっくれてみると、男は苦笑して、
「相変わらず意地悪だなぁ、七瀬ちゃん。終わったら飲みに行こうって話、ずっと前からしてたじゃないか」
「あぁ、そういえば言ってたっけ」
 と笑って誤魔化す七瀬だが、男は真剣で、
「ね?今日こそいいよね?今さら嫌だとは言わせないぞ〜!」
 と口調こそ冗談まじりにしながらも完全に本気の目で迫ってくる中年。
 冷めた目をして軽くあしらうのは簡単だが、そうすると嫌われて人気が落ちる。
 人気が落ちるのは嫌だ、他の娘に抜かれるのは悔しいという妙なプライドが芽生えているのは、それだけ七瀬がこの世界に染まったということか。
 七瀬は、ローションを用意しながら、
「でもなぁ…ウチのお店、店外デート禁止やねん」
「そんなの、黙ってたら分からないよ。ね?お願い…!」
 と、手まで合わせる男。
 七瀬は肩をすくめ、折れたような素振りで、
「…分かった。じゃあさ…♪」
 七瀬は、男に抱きつくと耳元に顔を寄せて、

「今から10分、ナナの責めに耐えて射精我慢できたらデートしてあげてもええで…♪」

 と囁いた。
 耳にした瞬間、ごくっ…と息を飲んだ男は、一瞬、
(じゅ、10分…?む、無理だよ…七瀬ちゃんのテクニックに耐えられる男なんか、この世に誰も…)
 と思ったが、至近距離での上目遣い、関西弁での囁き、その後のとびきりの笑顔とウインク、押し当てられた細い身体とそこから香る匂い…いろんな要素が相まって、言葉を失う。
 七瀬は、さらに、
「我慢できたら、ご褒美に、デートの後、エッチもさせたげるで…?」
 と付け加え、そして、とどめの一言。

「ナナ…実は、お店の外ではMやねん…お仕置きとかされたいかも…♪」

 この囁きで奮起しない男などいる筈もない。
「わ、分かった…頑張ってみるよ…」
 と、まんまと乗せられ、その気になる男。
 七瀬はしめしめという表情でローションを洗面器で溶く。
(が、頑張るぞ…!)
 意気込む男。
 だが、すっかり舞い上がった彼は、七瀬にしてみれば難なく罠にかけることに成功したに過ぎない。
 甘い言葉にはご用心。
 店の外ではM…?
 そんなものは嘘八百。
 西野七瀬…彼女は店でも外でも“ド”のつくほどの生粋のSである…。
 結局、いざ始まれば10分どころか5分ももたずに伝家の宝刀、高速ローション手コキで撃沈…。
 そして、ゲームに敗れた彼を待っていたのは七瀬にあの手この手でカラッポになるまで搾り取られるお仕置きタイムだ。
「んぎゃぁぁっ…!」
 絶叫してのたうち回る彼に、なおも執拗な亀頭責めを続ける七瀬。
「アハハ!ほらっ、まだ出るやろ?なぁ?出るやんなぁ?」
「で、出ないっ!もう出ないよっ!た、助けてぇっ!」
「助けて?なに言ってんの?ナナとデートしたかったんやろ?こんな早漏ヘタレチンポでナナのことオトせると思ってたん?甘いわぁ」
「ひ、ひぃぃっ!?」
「さぁ、いい機会やから鍛え直したるわ!ほらぁっ!」
 と、ローション漬けにしておいたパンストで射精して間もないイチモツを包み、グジュグジュに揉みしだく。



「おほぉぉっ♪」
 トリップしたように虚ろな目で悶絶、絶叫する男。
 結局、この日、挿入はなかった。
 勃たなくなるまで前戯のみで翻弄され続けた彼。
 最後は、死人のようにぐったり倒れた彼に、

「どう?分かった?ナナと店外デートしたかったら、まずはこのゲームに勝ってからやで♪」

 と突きつけるように言い放つ七瀬。
 彼だけではない。
 口説いてくる客は片っ端からゲームへといざない、そしてヌキ倒す。
 こうしてひそかに、勝てば天国、負ければ地獄の『西野七瀬ルール』が生まれた。
 七瀬にすれば、本番をする手間が省け、自信の責めたい欲も満たされて一石二鳥。
 そして、あれだけコテンパンにやられてもなお挑戦者が後を絶たないのは、それだけ七瀬が魅力的な女だということだろう。
 そして、また今宵も挑戦者…七瀬に取りつかれた男が店を訪ねる。


 指名を受けて待合室に顔を出し、番号札「1」を握りしめているのが彼だと分かると、西野七瀬はニヤリと笑って、
「…また来たん?懲りひんなぁ…♪今日も挑戦する気?」
「あ、当たり前じゃないか…!今日こそは絶対に耐えて、七瀬ちゃんとデートさせてもらうからね…!」
 と、緊張気味に言うその客に対し、七瀬も負けじと、
「へぇ…♪自信満々やなぁ?そんなこと言って、また“こないだみたいに”立てなくなっても知らんで?」
「な、ならないよ…!あの日は、その…一杯飲んでから来たから、酔いのせいでああなっただけで…」
 と下手な言い訳をする男に、
「へぇ〜…じゃあ、シラフやったら耐えれるってこと?それは楽しみやなぁ…♪」
 と不敵に笑う七瀬。
 そして、プレイルームに消えた二人。
 半時間後、男の悲鳴と七瀬の笑い声が廊下にまで轟いたのは言うまでもない。
 いまだ勝者の現れないこのゲーム。
 果たして、七瀬の痴女責めに耐え抜き、夢を見ることが出来る男はいるのだろうか…?


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2021/12/12(日) 00:17 )