乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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<番外編>堕ちた女たちの流刑地 ━捜査官ソープ『N46』泡姫━
樋口日奈と星野みなみと遠藤さくらの控え室 (プロローグ)
 会員制ソープランド『N46』。
 そこは媚薬と女体拷問で快楽漬けにされた女捜査官たちの流刑地であるとともに、裏社会の重鎮たちの憩いの場として名を馳せていた。
 今時の若者言葉でいう“バズっている”ということか。
 連日、目一杯の予約で部屋は常に満室。
 倍率は依然として高水準をキープし、時には同じ裏社会の住人の中でも優先順位をつける、いわゆる「お得意様トリアージ」が必要になるほどで、オーナーの柴崎にとっては嬉しい悲鳴である。
 元々、閑古鳥の鳴いていた古いソープランドを買収、改装したことで、構想から開店まではかなりのスピード感を持たせた。
 とにかくオープンさえすれば経営が軌道に乗ることが確実というウハウハの裏事業だったのだが、いざ蓋を開けてみると思っていた以上に人気が出てしまったワケだ。
 そして、その大成功は、皮肉にも、柴崎の当初の思惑との乖離を生む。
(そこまで目立ちたくはないんだ…話題になりすぎて変な虫がついては困る…!)
 これはあくまでも裏ビジネスであり、新たな密輸入ドラッグを買い漁るための資金調達の一手に過ぎない。
 注目されすぎるのは、かえって動きにくくなるだけだ。
 世間の目と、そして何より、在籍する泡姫の調達先と位置付けている捜査官集団「乃木坂46」の連中の目。
 これに気付かれると非常に厄介だ。
 先日も、伊藤純奈、鈴木絢音の捜査官二人が開店前の控え室に、突如、乗り込んできたという案件を聞いた。
 この件について、柴崎は強く問題視し、経緯について事細かに聞き取りをした。
 幸い、奇襲ではなく、開店前の待機中に買い物に出た在籍泡姫の一人・岩本蓮加を、偶然パトロール中に見かけた二人が後を尾けて迷い込んできただけだったので、すぐに捕らえ、制裁を加えた後に、催眠術士・中元日芽香の催眠術で肝心な部分の記憶を消し、口封じをして放り出した。
 この時はこれで済んだが、また、いつ同じことが起きるか分からない。
 二度と同じことが起きないよう、泡姫たちには余計な外出の禁止を厳命した。が、それはそれで年頃の女はストレスも溜まるらしく、そのせいで、最近、プレイが雑になってきているメンバーもちらほらいるらしい。
 そんなのが続くと、次第にサービス低下で客離れが始まり、肝心の資金調達にも支障が出かねない。
(難しいな。若い女の管理ってのは…)
 と頭を悩ませるオーナーの柴崎、そして現場を仕切るマネージャー。
「何か、アイツらのストレス発散の方法についても考えないといけません。」
 というマネージャーからの報告に、
「ストレス発散ねぇ…」
 と知恵を巡らせる柴崎だが、そもそもが想定外の案件のため、そんなすぐに良案は思いつかなかった。


 その三日後。
 店で、ちょっとした事件が起きた。
 予約していた人物と別人の来店…いわば替え玉である。
 店では、オープン以来、一貫してオーナーの柴崎が承認した会員のみが予約、入店できるシステムをとっていた。
 そのため、店には、承認した会員のプロフィールが、その都度、柴アから送られてきて管理している。
 その中の一人、黒田という男。
 柴崎とは以前から裏社会で繋がっている男で、この男が、この日、秘書を連れた二人で利用の予約をしていたのだが、いざ来店した黒田が、柴崎から貰ったプロフィール写真と顔が全く違ったのである。
 ひとまず何食わぬ顔で控え室に通したその裏で、すぐに柴崎に連絡すると、ものの数分で配下の屈強な男たちを引き連れて現れ、控え室で油断していたところを急襲し、数人がかりで殴りつけて二人を捕らえた。
 そこからは思わず目を覆うような地獄絵図。
 縛り上げ、殴る、蹴るの暴行に加え、水責めに火あぶりまで…容赦ない尋問の結果、すっかり怖気づいた彼らは次々に口を割った。
 彼らの正体はスパイ。
 この「N46」の運営実態を探ることを使命に、柴崎が承認した本物の黒田を監禁し、入れ替わって彼とその秘書になりすまして来店したという。
 柴崎が重要視したのは、いったい誰から依頼を受けてきたのか、だ。
 もしそれが警察関係であれば厄介だし、一番の最悪は「乃木坂46」から依頼されたスパイという場合だ。
 こうして目をつけられた以上、すぐに店を閉めてケムに撒かないといけない。
 当然、資金調達に遅れが発生し、証拠隠滅も無駄な労力だ。

「ワレ、どこのどいつの差し金じゃ!」
「答えんかい、コラァ!」

 ガラの悪い男たちがドカドカと蹴りを加えると、
「か、勘弁してくれよぉっ…」
「い、言う…!言うから、もう乱暴はやめてくれぇ…!」
 とブルブル震えながら掠れた声を上げる二人。
 柴アは、そんな二人の前にテープレコーダーを構え、
「ウソをついても、ちょっと調べればすぐに分かる。命が惜しいなら正直に喋ることだな。さぁ、雇い主は誰だ?言えっ!」
 と、録音ボタンを押し、男たちの口に押しつけた。

「お、俺たちに依頼したのは『ミッドナイト妻』っていう風俗店のオーナーだ…名前は大田垣…さ、最近…この店が出来てから自分のところの客が減って困ってて、何か、この店の弱みを見つけてこいって言われたんだ…!」

 録音を止め、
「おい。すぐに調べろ」
 と部下に命じる柴崎。
 裏社会の力を駆使すれば、この界隈のことは、半時間もかからずに分かる。
 調べた結果、確かにこの通りの中に「ミッドナイト妻」というふざけた名前の人妻嬢専門風俗があり、オーナーの名前も大田垣で、聞き出した名前と一致した。
 さらに、別にそこまで知る必要もないその店の落ちぶれた経営状態まで分かり、軌道に乗った我が店を妬む理由は充分だということも。
 そこでようやく安堵の色を浮かべる柴崎。
 どうやら危惧していたほど重大なことではなく、単なる同業者の潰し工作だったらしい。
 柴崎は血の気の多い幹部にテープレコーダーを手渡し、
「これを持って、早速、その姑息なオーナーのところへ挨拶に行ってきたまえ。侘びの印に、小指二本か現ナマで1億、好きな方を選ばせてやれ」
「どっちも拒否されたら…?」
「そん時は奥多摩の樹海までドライブした後、土の中でおねんねだ。殺る時は手袋を忘れるな」
「分かりやした…!」
 ニヤリと笑って、意気揚々と出ていく幹部。
 そして、今の会話で、さらに恐怖を感じた様子の用済みスパイたち。
「さて…」
 と声をかけただけで、
「た、助けてくれぇー!」
「命だけは!命だけはぁぁ!」
 と泣き叫ぶ。
 マネージャーは、そんな二人の髪を捻り上げ、
「安心しろ。お前たちは生かしておいてやる。こちとら、ちょうど二人ほど人手が欲しかったところだ。いい時に来てくれたもんだぜ」
 と言うと、不気味に笑って、
「アニキ。コイツらを与えりゃいいでしょ?アイツらには」
「そうだな。こんなヤツらでもストレス発散には充分だろう」
 と同調する柴ア。
 そして…。

 ……

 翌日…。
 『N46』の嬢たちの控え室。
 内線電話で、
「中田、与田、西野、岩本。指名だ」
 と言われ、四人が部屋を出ていった。
 残されたのは残念ながら今晩の客のお眼鏡にはかなわなかった樋口日奈、星野みなみ、齋藤飛鳥、遠藤さくら、寺田蘭世の売れ残り五人。
 いつもなら落ち込んだり、不貞腐れたりして、お通夜のようなムードになっているところだが、マネージャーの計らいで、今日からは指名されなかったメンバーも暗くなる必要はない。
 なぜなら、この控え室に「手が空いた時のテクニック磨き用」として“男が二人”備え付けられたからだ。
 …そう。
 潜入に失敗したスパイの末路…それは、彼女たちのストレス発散の道具になることだった。
 壁に磔にされたパンツ一丁の二人。
 道具に声など必要ない。
 猿轡を噛まされ、首から提げたプラカードには、

<ご自由にお使いください>

 の文字。
「ねぇ、みなみ。せっかくだから使ってみようよ♪」
「そうだね。やっちゃお♪やっちゃお♪」
 と、早速、興味津々に歩み寄ったのは樋口、星野。
 そして少し意外だったのが、その二人に続いた遠藤さくら…!
「樋口さん…星野さん…私も一緒にいいですか…?今日、指名してもらえなかったからムラムラしちゃって…♪」

 果たして、女捜査官たちの男嬲りの腕は如何に…!?


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2021/06/23(水) 00:50 )