乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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第四部 第六章・松村沙友理の場合
-after story-  妬まれた北野日奈子 (前編)


 深夜の山中を走る車。
 その行き先は、すっかり寂れて人っ子ひとりいないキャンプ場。
 そこに、見かけたら思わず目を逸らしてしまうような、いかついヤン車が二台、連なってやって来て、停まった。
 都内から約一時間。
 ここが真夜中のドライブの終点だ。
 サイドブレーキを引くと同時に、ぞろぞろと前の車から降りてくる見るからに風体の悪い男たち。
 そのまま後続の車に向かい、後部座席から拉致してきた女を引っ張り出す。
「…んんっ!ぐぅっ…!」
 車から降ろされ、ヘッドライトの前に立たされる北野日奈子。
 拉致されると同時に口にはボールギャグ、そして両手首に革バンドをつけられたせいで、ろくに抵抗できず、そして声も出せない。
(だ、誰なの、コイツら…!?な、何のつもり…?)
 一人たりとも見覚えのない若者の集団。
 戸惑い、もがく中、明かりに照らされる日奈子を数人がかりで押さえつけると、一人の男がどこからともなく用意したロープを手に、まず手首を固める革バンドを通す。
「よし、こっちだ」
 まるで手に縄をかけられて連行される容疑者。
 男が引っ張られ、キャンプ場の隅にそびえ立つ大木の方へといざなわれる日奈子。
 男は上を見上げ、ひょいとロープの先を投げた。
 一回目はそのまま落ちてきて失敗。
 二回目でうまく太い枝に架かったのを確認すると、すぐさま落ちてきたロープの端を固く縛り上げた。
(くっ…!ちょ、ちょっと…!)
 これでもう日奈子は、万歳をしたまま大木の前から逃げられない。
「…よし、オッケー!」
「これでもう動けないな」
「もう離しても大丈夫そうだ」
 と一斉に手を退ける男たち。
 彼らの言う通り、いくらもがいても、もうその場から動けない。
 木に吊るされ、晒し者同然の日奈子。
 それを見て、車の中から、
「アハハ!見て、あれ!最高なんだけど!」
「マジでいい気味!せっかくだから写真撮っちゃお!」
 と嘲笑し、スマホを向ける女たち。
 その笑みに反応し、反射的に車内に目を向けた日奈子は、
(あ、あの娘たち…!よくクイーン様のショーに来てる常連…!)
 周りの男たちは初めて見る顔ばかりだが、車内でせせら笑う女たちには、かすかに見覚えがあった。…が、その二人が、クイーンの側近という日奈子の立場を疎ましく思い、この若者たちを焚きつけ襲わせたとまでは、まだ理解が追いつかない。
 そんな矢先、男の一人が女たちに向かって、
「おーい!コイツ、ホントにヤッちゃっていいんだな?」
「いいよー♪」
「さっさとヤッちゃって♪」
 と、華やかな声色で恐ろしいことを言ってのける女たち。
「…だとよ」
「女の妬みってのは怖いねぇ」
 と同情するようなことを言いつつ、
「ちと可哀想だが…この身体を目の当たりにしちゃ、俺たちも我慢できねぇな」
 と、万歳をすることで、より一層、強調された日奈子の胸のボリュームに目をやり、思わず舌なめずりの男たち。
 ニット生地を押し上げる、はちきれんばかりの膨らみ。



 その舐め回すような視線に、たまらず、
(や、やめて…!見ないでッ!)
 と叫んだ声はボールギャグに消され、手を下ろして隠すことも出来ない。
 この一団以外、人の気配がないキャンプ場に、
「どうやら今晩は俺たちの貸切のようだな」
「いい塩梅になってきたら、口のコレも外してやるよ」
「遠慮はいらないぜ。せいぜいデカイ声で鳴いてくれよな」
 と言いながら、早速、日奈子の身体に伸びる男たちの手。
(んっ!ちょ、ちょっと…!嫌っ…!)
 服の上からベタベタと触る手、痴漢のように撫で回す手、そして、無防備と化した腋の下のくすぐるようにすり抜ける手。
(や、やめっ…!やめろってばぁっ!このっ!)
 たまらず、その引き締まった脚で群がる男たちを蹴り飛ばす日奈子。

 ドカッ!ドカッ!

「痛ってぇ…!」
「ぐっ…ちくしょう…!」
「足癖の悪い女だ…!」
 半円を描くようにサッと離れる男たちと、そんな男たちを眼で牽制する日奈子。
 少しでも近寄ったら蹴り飛ばす!…そんな眼をしていたが、所詮、自由に動くのは脚だけ。
「バカ野郎!こっちは何人いると思ってやがる!」
「うりゃっ!」
「それっ!」
 と左右から同時に突進してきた男たちに為す術もなく足首を掴まれ、あっさり唯一の抵抗手段だった脚も封じられてしまった。
「いいぞ!そのまま左右それぞれ、ロープで隣の木にくくっちまえ!」
 と誰かが言って、膝元にぐるぐると巻きつけられるロープ。
 それを男たちが左右に引っ張り、それぞれ隣の木の幹にくくりつけると、あっという間に、強制がに股立ちの出来上がり。
 すかさず、また女の声で、
「見て見て!ヤバくない?あのカッコ!」
「あの立ち方、マジでウケる!」
 と嘲笑が響き、さすがの日奈子も、これには、
(くっ…!)
 と頬が赤らむ。
 動かすどころか閉じることも出来なくなり、万事休すの日奈子。
「よし…これでおとなしくなったな」
「まったく、お前が暴れるからだぞ?」
「じゃあ、再開だ」
 と、再び男たちからのボディタッチが始まる。
 やはり興味を集めるのはニットを大きく盛り上げる巨乳。
「こいつはたまんねぇな。早く拝みてぇよ」
「まぁ、待て。焦るな」
「お楽しみはじっくりとな」
 と不穏な会話を交わしながら、日奈子の身体を、まずは服の上から吟味する男たち。
「…んっ!んんっ…!」
 ニットの上から胸を揉む手に思わず息を乱すと、すかさず、
「おぉ?感じてんのか?」
「早いなぁ、反応が」
(う、うるさい…!)
 と、キッとした目を向けるが、一方で身体は正直だ。
 クイーンに調教され、いまや、同性のしなやかな手つきで優しく触られただけでも声を上げてしまうほど感度が増した身体が、男たちのやや乱暴な触り方に眉ひとつ動かさずに耐えられる筈がない。
 次第に、
(あっ、あっ…♪やぁっ、ダメぇっ!)
 と、反応、表情ともに色っぽいものへと変わっていく日奈子。
 ここ最近ずっとクイーンの支配下に置かれていた反動…久々の男からの愛撫は想像以上に高い波、スマトラ級の津波となって日奈子の理性の塔へ打ち寄せ、いとも簡単に傾けた。
 そのまま薙ぎ倒し、快楽の底へと浚う気だ。
「んんっ!んんっ…!」
 唯一、動く腰をクネクネとくねらせ、悶える日奈子。
 その様子がヘッドライトに照らされ、見世物のように静寂の暗闇に晒される。
 悩ましい腰振りは男たちの欲をさらに駆り立て、そして女たちには絶好の笑いのタネ。
「ねぇ、やばくない?あの腰つき…エロいんだけど」
「元々ヤリマンなんじゃないの?女より男の方が好きでしょ、絶対」
「だったら尚更、クイーン様の一番弟子みたいな顔してるのが気に食わないわね」
「この際、本性をちゃんと見せてもらわなきゃね…♪」
 と、ニヤニヤしながら男たちに嬲られる様を車内から鑑賞する。
「さて…」
 と、男の一人が声を上げ、
「そろそろ素っ裸に剥いちまうか」
「よしきた!」
「任せろ!」
 と、勢い込む二人の男たちがどでかい裁縫ハサミを手に、日奈子に近づく。
 その月光を反射して光る刃に気付き、
(くっ…な、何をするつもり?ま、まさか…や、やめてっ!嫌っ!切らないでっ!)
 と我に返るも、抵抗はできない。
 ザクザクと切り刻まれていく日奈子の私服。
 たちまち下着姿になり、そして、それすらも冷徹にハサミが入れられる。

 チョキ…チョキ…

 刃の重なる音とともに、ブラジャー、そしてパンティが締め付けを失って、あっけなく足元の土へと落ちた。
 途端に、
「んんーっ!んんーっ!」
 と、一層、大きくなった日奈子の呻き声。
 それもその筈。
 深夜とはいえ、野外で、大木に両手吊り、がに股で縛りつけられた状態で全裸を晒す…女性にとって、こんなに恥ずかしいことはない。
 そして、まるでその裸体を際立たせるかのように眩しいヘッドライトで照らされていることも、さらに恥じらいに拍車をかける。
「ギャハハハ!こりゃいい!」
「自慢のおっぱいも、下の毛もよく見えてるよ」
「夜中でよかったな、おい!」
 男たちの容赦ない冷やかしに俯く日奈子。
 そんな日奈子に、先ほど、頭上の枝にロープを架けた男が、再びロープを手にして近寄る。
 ニヤリと笑った不気味な笑み…。
 そして男は、手にしたロープで日奈子のむっちりとした肉感的な裸体を縛り始めた。
 首に掛け、一度クロスして谷間を通り、乳房をなぞるように脇腹へ。
 そこで一周して交差するようにして首の後ろに戻り、弛みの中を通すと再び背中を下り、お尻、そして股の間を通って前に出てくると、そこで、

 ギュッ…!

「んんっ…!」
 股に食い込んだロープに、思わず声を漏らす日奈子。
 さらにシュルシュルとロープが走ると、股をすり抜ける摩擦に思わず仰け反ってしまう。
 そんな日奈子の反応に構わず、時折、
「えっと…ここをこうだったかな?…いや、違うな。あっ、こうか…そうか、こうだな。こっち側を通して、こうするんだ…」
 と、一人でぶつぶつ言いながら、着々と縛りプレイの定番“亀甲縛り”を作っていく男。
 完成に近づくにつれ、みるみる締まり、股にも食い込む。
 そのたびに、
「んんっ!んぐっ!」
 と、ボールギャグの穴からくぐもった声を上げるも、その声は綺麗な星空の下に虚しく響くだけ。
 やがて、
「…よし、出来上がりっ!」
 と男が言うと、
「おぉ!いいじゃねぇか!」
「さすがSMビデオマニア!」
「素人がやったにしては上出来だよ」
 と仲間たちから快哉を浴びる。
 彼らの言う通り、ところどころ粗さはあるものの、それなりに形になっている亀甲縛り。



 ボンレスハムのように日奈子の肉感的な身体を締めつけることで、そのむっちりした肉付き、そして巨乳が強調される。
 改めて、緊縛美によって強調されたボディラインをまじまじと眺められ、顔を背ける日奈子。
 真夜中の野外縛りプレイ。
 それを、まるで美術館の展示作品のごとく、スポットライトのように照らすヘッドライトが羞恥に拍車をかける。
 突き刺さる視線から逃れようと、
「んんっ…!んんっ…!」
 と、懸命に身体を揺する日奈子だが、無駄な抵抗。
 男の一人が、ヘラヘラしながら、
「無理だよ。もう自分の力では絶対に逃げられない」
 と現実を突きつけるように言う。
 さらに、
「動けば動くほど締まるぞ」
 と、また別の誰かの言う通り、恥じらって身体を揺するたびに、股の間を通ったロープがみるみる固くなり、股に食い込む。
(やぁっ…ほ、ほどいて…!こんなの…こんなの恥ずかしいよぉっ…!)
 と脳内で絶叫する日奈子。
 亀甲縛り自体は、以前、クイーンにされたことがある。
 その時と何が違うか…野外、スポットライト、相手が男、複数人の視線、同性からの嘲笑…。
 いろんな要素が相まって、日奈子の羞恥心がチクチクと刺激される。
 高潮することで高まる体温。
 そして、しっとりと濡れる股ぐら…これは本人にとっても予想外のことだった。
(な、何で…何で濡れてくるの…!こんなことされて…恥ずかしい筈なのに…!)
 すっかり忘れていた自分の癖(へき)。
 あの日、捕らわれてクイーンの手によってレズビアンたちの前で公開レズ調教を施され、見世物にされた時以来の、衆人環視による凌辱。
 裸を見られることで興奮してしまう体質は、クイーンの手先になっても変わっていなかったようだ。
 そして、そんな日奈子の股ぐらへ差し向けられる男の指。
「さぁ、どんな具合か確かめさせてもらおうか」
(…!?)
「これでもし濡れてたら“見られたがりの露出狂”確定だからな」
(い、嫌っ!やめてっ!触らないでぇっ!)
 くぐもった声が焦りでさらに大きくなった。


(つづく)


鰹のたたき(塩) ( 2021/12/12(日) 00:15 )