乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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第四部 第六章・松村沙友理の場合
4.リクエスト
 ぐにゃぐにゃと歪み、ぼやける視界…。
 目眩に襲われ、後ずさりする松村に、じりじりと迫る万理華。
 その不敵な笑みは、まるで張り巡らされた糸の罠に引っかかったアゲハ蝶にしめしめと近寄る蜘蛛のようだ。
 ガシッ…と手首を掴まれ、再び引っ張られる。
 踏ん張って耐えた先ほどと違って、足に力が入らず、されるがままに引き寄せられると、そのまま、小柄な万理華にあっさりと組み伏せられてしまった。
「くっ…!」
「さぁ、マツ。どうする?」
 ニヤニヤする万理華は、素早く体勢を変え、うつ伏せにした松村の脚を持ち上げ、腋で抱えた。
 そして、ゆっくり腰を沈めると、足元から、
「い、痛ぁっ…!くっ…がぁっ…!」
 と松村が苦悶の声を上げる。



 サソリ固めでのたうち回る松村。
 さらに万理華は、その抱えた脚を離したのも束の間、鈍痛で起き上がるのが遅れる松村を仰向けに変え、スムーズに4の字固めへと移行する。
「あぁっ!くっ…うぅっ、ま、万理華ぁ…!」
「なに?もしかして、もう降参?そんなワケないよねぇ?」
 日頃、クイーンの下では従順なレズ奴隷のM女となっていた反動か、今日の万理華の笑みは悦に満ちている。
 まるで、いたぶる楽しさを覚え、その優越感に取り憑かれたようなその表情。
 たまらず、頭上のロープに手を伸ばそうとする松村。…だが、その目元にスッと影がかかる。
(…!?)
「ふふっ♪辛そうですねぇ、松村さん…!」
 何と、いつのまにかセコンドの日奈子もリングに上がり、痛がる松村を不敵な眼で見下ろしていた。
 そして、ロープに届きかけた松村の白い指をスッと掴み上げ、
「ダメですよ。捜査官たるもの、ちゃんと自分の力で振り払わないと」
 と、抱えるように固める。
「くっ、ひ、日奈子っ…!んあぁっ…あぁっ!」
「ほらっ!もっと体重かけてあげる!どう?痛い?」
「ぐっ、がぁっ!?あぁっ…!」
 日奈子に右手を握られたまま、万理華に脚を固められ、呻き声を上げて暴れる松村。
「ほーら、暴れちゃダメっ♪」
 とケラケラ笑う日奈子だが、この痛み、じっとしていられる筈がない。
「んっ、くぅっ…!」
 目眩も続く中、固められた脚を浮かせ、どうにか反転を試みる松村。
 手を取られていて踏ん張りが利かない中、必死に遠心力をつけて裏返ろうとすると、
「へぇ…!4の字固めの返し方、知ってるんだぁ…?さすが松村さん♪」
 と感心する日奈子は、
「でも…こんなことされた状態でも返せますかぁ?」
 と、突然、そのむっちりした腕で松村の首を絞め上げた。
「んぐっ…!」
 たまらず、唯一、自由な左手で首を絞める日奈子の腕をタップするも緩めてくれない。
 ぐらぐらと揺れていた身体が収まり、松村の表情に浮かぶ苦悶の色が濃くなるにつれ、
「アハハ!ヤバイわよ!そのまま、あっけなくオトされちゃうんじゃないのぉ?愉快、愉快♪」
 と楽しそうなクイーン、そして観衆たち。
「く、くぅっ…!」
(い、痛い…!苦しい…!)
 みるみる額に汗の粒が滲み、声が掠れてくる。
 細い首に食い込む日奈子の逞しい腕。
 そして日奈子は掴み上げた松村の右手を踏みつけ、手を空けると、
「さて…それじゃあ、そろそろ松村先輩の公開ストリップといきますかぁ♪」
 と、弱らせた松村の着る服のボタンに手をかけた。
(くっ…!)
 とっさに暴れる松村だが、すぐに、
「あうぅッ…!」
 と苦悶の声が漏れる。
 余計に首が絞まり、さらに万理華が固めた脚の上にグイグイ体重を乗せてくるのだ。
「なに恥ずかしがってんの?マツ…!いいじゃん、裸ぐらい。任務のためなら」
 と固められた脚越しに笑う万理華。
 その間も、パチッ、パチッ…と一つずつボタンが外されていく。
「い、嫌やっ…!ひ、日奈子っ!アンタ、いいかげんに…!くっ…!」
「あー、もうっ!」
 もがく松村のせいで上手くボタンが外れず、苛立った日奈子は、おもむろに松村の服を掴み、その顔に似合わない馬鹿力で強引に引っ張った。
「あっ…!」
 ブチブチっ…!と音がして弾け飛んだボタン。
 シャツの隙間から覗く白い肌とブラ、そのはだけた胸元が露わになった途端、観衆のボルテージが一気に上がった。

「いいよー!」
「やれやれー!」
「そのままブラも取っちゃえ!」

 と声が飛ぶ。
 そして、ふいにリング上に投げ込まれたハサミ…。
 投げ込んだのは、もちろんクイーンだ。
(何をまごまごやってんの?これを使って、とっとと脱がせなさい…!)
 と目で合図を送ると、日奈子は、その転がったハサミを拾い上げ、
「それじゃ、いきますよー♪」
 と松村のはだけた服にハサミを入れた。
「や、やめっ!うぁぁっ!?痛ぁッ…!」
 抵抗させまいと、グッ、グッ…と固めた脚に体重をかけ、動きを封じる万理華。
 すっかり転けたマネキンと化した松村の服が、みるみる切り刻まれていく。
 そして、とうとう上半身はブラのみの状態に。
「さぁ、どうします?松村さん。これも、ひと思いにいっちゃいますかぁ?」
 と、松村のブラ紐を指で引っ張ってニヤつく日奈子。
 たまらず、
「んっ、くぅぅっ…!」
「あっ…!しまった…!」
 恥じらいが火事場の馬鹿力を呼んだのか、精一杯の力を振り絞り、どうにか万理華の4の字固めをはねのけた松村。
 すぐにハサミを持つ日奈子の手を止め、首を絞める腕も外して、くるん…と受け身をとって立ち上げる。
「はぁ…はぁ…!」
 まだ脚に残る鈍痛と、上半身ブラ一枚の姿を晒す恥じらいが息を乱す。
「あーあ…いいとこだったのにぃ!…もうっ!万理華さん!ちゃんと押さえといてくださいよォ!」
 と膨れる日奈子に、
「ごめん、ごめん。ここぞという時のマツの馬鹿力を忘れてた」
 と苦笑いの万理華。
 やりとりに余裕があるのは、依然、優勢ということ変わりがないからか。
「くっ…!」
 1対1というルールはあっさり撤廃され、まるで鯨の追い込み漁のように、ふらつく松村を隅へと追い込む二人。
「ひ、卑怯やで…!二人がかりでくるなんて聞いてないッ…!」
 と抗議するも、
「卑怯?マツはベテランなんだから、これぐらいでちょうどいいでしょ?」
「ハンデですよ、ハンデ♪」
 と悪びれる様子もなく、左右から掴みかかってくる二人。
 そのままコーナーポストに押しつけられ、次は万理華、日奈子と、交互にチョップの雨を降らせる。

 バシッ…!バシッ…!バシッ…!

「んっ、ぐっ…くっ、うぅっ…!」
 その容赦ない攻撃に、白い肌がみるみる赤く腫れ、抵抗力を失っていく松村。
(な、何とか脱出を…!)
 と考えるも、目眩が邪魔で、頭が回らない。
 ふいに髪を掴んで放り投げられ、そのまま足がもつれてリング中央に倒れ込んだ松村。
 しめたとばかりに寄ってきた二人は、倒れた松村の左右の脚を持ち、ヒールホールドを決めにかかる。



 まず右脚…そして左脚…そして、とうとう…。
「んあぁっ…!」
「アハハ!情けないカッコになってますよ、松村さん♪」
「こんなリング上で大股開きして恥ずかしくないの?マツ!」
 二人にしっかりと固められた左右の脚は、もはや使い物にならず、起き上がることもままならない。
 そして、再びハサミを手にとり、
「さぁ…それじゃあ、そろそろこっちも…♪」
 と、無防備に開かれた股ぐらを切っ先でなぞる。
「や、やめっ…!うぅっ…!」
「危ない!ヘタに動いたら怪我しますよ?松村さん」
 と日奈子は忠告し、その馬鹿力で松村のスーツパンツを半ば無理やりに裂いていく。
 白いパンティが見え隠れするたび、

「おぉー!?おぉーー!!」

 と盛り上がるリングサイド。
 やがて、あられもない、お腹から股のラインに沿って腰まで、半円を描いて真っ二つにされたスーツパンツ。
 その両端を掴み、それぞれ、ズルズルと脚から抜き取っていく二人。
「い、嫌っ!や、やめてっ…!」
 と制止する声も虚しく、白いパンティの全貌と、むっちりとした太もも、そしてそこからスラリと細くなるふくらはぎが公衆の面前に晒されてしまった。
 戦利品のスーツパンツの残骸をリングサイドに放り投げる二人。
「さぁ、そろそろ仕上げといきましょうか♪」
「マツ、覚悟はいい?」
 と、二人が痛めつけた美脚を離したのも束の間、まず日奈子が、
「ほら、いつまで寝てるんですか?起きてくださいよ、松村さん」
 と、先輩である松村の髪を容赦なく掴み、膝立ちにさせる。
 もはや言いなり状態の松村に、
「情けないですね、先輩のくせに。ほら、いつもみたいに偉そうに指示でも出したらどうですか?フフフ…♪」
 と生意気な眼をして嘲笑う日奈子。
 そして、その隙に背後に回った万理華が、松村の無防備な左右の膝の裏を踏みつけ、そのまま腕を掴み、引っ張り上げながら自分はリングに背中から寝転んだ。
 そうすることで必然的に持ち上げられる松村の身体。
(…!?)
 四方から視線を浴びて赤面する松村。
「い、嫌っ!こんなん嫌やぁっ!や、やめてぇ…!」
 少し背中を反った状態で、神輿のように担がれたまま身動きのとれない屈辱的な形…ロメロスペシャル。



 それを、よりによって観衆の目の前で、それも下着姿で食らうことで、恥じらいは何倍にも増幅した。
 そんな松村をさらに追い込むように少し脚を開いて、松村の股間を観衆に見せつける万理華。
「嫌っ!お、下ろして…!万理華っ!早よ下ろしてってばぁっ!」
 という声を無視して大きく開脚してやれば、それにより、松村の白いパンティの股ぐらにキレイなマン土手がくっきりと浮き彫りに…!
 そして、そこに、不敵な笑みを浮かべながら近寄る日奈子。
 リングのど真ん中で吊り天井で持ち上げられる松村に対し、手術医のような位置に立った日奈子の手元から、突然、鳴り響いた振動音。

 ブィィィィン…!

(…!?)
 慌てて目をやると、いつのまにか、日奈子の手には電マが二本、握られていた。
 思わず、
「バ、バカっ!」
 と口走った松村に、
「んー?バカぁ?誰に向かって言ってるんですかぁ?松村さぁん…♪」
 と、そっと脇腹から責める日奈子。
「んっ…!」
 振動を感じて身を固くした松村に、
「ふふっ♪すごいですよね、この振動♪」
 と笑みを浮かべる日奈子は、得意げに、
「これはクイーン様が愛用されている特製の強化電マ。回転数をカスタムされているから市販のモノとか比べ物になりませんよ?試してみますか?」
 と、普段、自分たちがヒィヒィ言わされている神器を授かったことで笑いが止まらない様子。
「さぁ、どんどん行きますね♪」
「くっ、嫌っ!や、やめて…!」
 持ち上げられたまま、グラグラ揺れる松村。
 だが、小柄なわりにしっかりした強度を誇る万理華の支柱は決して崩れない。
 脇腹からゆっくりお腹へ上り、そして、狙いを定めたように二本の電マが松村の身体を這っていく。
「ひ、ひぃっ…!」
「アハハ!お腹の肉がぶるぶる震えてますよ!可愛い〜♪」
 と茶化して無邪気に笑う日奈子だが、肝心の責めに関しては無邪気さなどなく緻密そのもの。
 まるで松村の反応を全て把握しているように、確実に声が上ずる方へ、上ずる方へと振動する先端の丸みを向けていく。
 そして、とうとう円を描いて包囲された二つの膨らみ…!
「さぁ、どっちから当てよっかなぁ…♪」
 と、いたぶるように笑みを浮かべる日奈子。
 スッ、スッ…と坂をなぞり、
「こっち…?」
「んっ…!」
「それとも、こっち?」
「ひゃっ…!」
 そして…。
「ん〜…じゃあ、両方いっぺんに!」

 ブィィィィン!

「んあぁっ…!?」
 二つの膨らみを押し潰すようにグリグリと押しつけられた電マ。
 その強振動が、布越しに、膨らみの先端にある突起ごと、松村の乳房に地震を起こす。
「うぁぁっ…あぁっ、あっ、あっ…!」
 一段と増す松村の身体の揺れに対し、
「ほら、じっとしなよ。マツ!」
 と下から檄を飛ばし、さらにグッと手足を掲げる万理華。
 巻きついた脚が外せない…!降りられない…!
「アハハ!声が出続けてますよ、松村さん!胸だけでアンアン言っちゃって!そんな調子で、こっちは耐えられるんですかねぇ?」
 と、浮かせて胸から離れた振動がサッと内ももに移り、また、ゆっくり上り始める。
「ひぃっ!?ダ、ダメっ…!」
 まだ大事なところには当たってもいないのに、声を上げる松村。
 振動だけのせいではない。
 これに乗じて、なぜか身体が妙に敏感だ。
(くっ…お、おかしい…な、何で…?)
 そんな松村の狼狽を察し、ニヤリと笑みを浮かべたクイーンに日奈子、そして万理華。
 バーで松村に出したカクテル…ただ目眩を起こすだけのカクテルと思ったら大間違い。
 そこに溶かしておいた遅効性の媚薬も、ようやく回ってきたようだ。
「さぁ、楽しくなってきた♪」
 と、嬲り殺しにかかる日奈子。
 身体の内側に熱を宿して悶える松村に逃げ場はない。
 電マを構えた日奈子が、
「あれぇ…?」
 と、わざとらしく声を上げ、松村のパンティを覗き込みながら、あえて観衆にも聞こえる声量で、
「松村さ〜ん?ここにある、この“シミ”みたいなのは何ですか〜?」
「う、うるさいっ…!」
 かァッと顔を赤くする松村だが、クソガキ日奈子の意地悪は止まらず、
「ほら〜。ここですよ、こ・こ♪シミになってるじゃないですかぁ♪」
 と指先で円周をなぞる。
「んっ…!んっ…!」
 むず痒い刺激を与えられ、小さく声を漏らす松村。
「ほらぁ、せっかくだから会場の皆さんにも見てもらいます〜?」
(み、見てもらう…!?)
 ハッとした松村の顔に眩しい光が…いや、正確には、これまでずっと消えて真っ暗だった壁の巨大モニターに、突然、スイッチが入ったのだ。
 それと同時に、
「はーい。それじゃ、お客様にも見えるようにして差し上げますねぇ」
 と、いつのまにかCCDカメラを手にしたクイーンもリングに乱入し、持ち上げられて動けない松村の股間にレンズを向ける。
「やぁっ!?や、やめてよぉっ!嫌ぁっ!」
 そこで映した画…自身のパンティの股間部分のアップが会場の巨大モニターに大々的に映し出され、慌てふためく松村。
「ほら、閉じないのっ!」
 と、万理華にさらに脚を開かれ、隠しようがない。
 盛り上がった土手を舐めるようにCCDカメラに収めるクイーン。
 パンティの淵から飛び出した数本の陰毛やマンスジなど、陰湿なカメラワークを展開した後、いよいよ、そのシミの部分をアップで捉える。

「きゃー♪濡れてるぅ♪」
「生意気な顔して案外スキモノなのかしら?」
「プロレス技かけられて感じちゃったのぉ?やらし〜ッ!」

 と沸き上がる歓声。
「うぅっ…!」
 リング上、大股開きで担がれたまま、羞恥に唇を噛んで耐える松村。
 そして、そんな晒し者の松村の股間に、ついに恐怖の振動が牙を剥く…!

 ブィィィィン…!

「ひゃはぁッ…!」
 接触の瞬間、甲高い声とともに、ピクッと反応を見せた松村の肢体。
「すごいっ!聞きましたか?皆さん。今の声!」
 と、その愉しさを観衆と共有しようとする日奈子に対し、

「聞こえたー!」
「可愛すぎてキュン♪」
「最高ぉー!」

 と、すっかり一体感が生まれたリングサイドから歓声が上がる一方、そのうちの何人かが、

「聞こえなーい!」
「もっと長くー!」

 と注文をつける。
「…聞きました?松村さん。もっと聞きたいって人がちらほらいますよ♪」
「く、くぅっ…!」
「人の声を地道に聞いて回るのが松村さんの捜査のやり方ですよね?それなら、あーゆー声もちゃんと聞いてあげないと…!」
 と人を食ったような日奈子の言い草に、とうとう、
「ひ、日奈子ッ!アンタ、いいかげんにしぃや!さっきから…!あとでどうなるか分かってんの!?」
 と怒りを露わにして凄む松村。
 だが…。
「えー?どうなるんですかぁ〜?」
「んひぃっ!?」
 ふいに股間めがけて押し当てられた振動。
「ひ、日奈子ぉっ!?ま、待って!やめっ、んあぁっ!?」
「え〜?あとで何されるか分からないから、そう簡単には離せないですぅ♪」
 高圧的な態度は、かえって逆効果。
 今、このリング上の全権は、唯一、自由に動ける日奈子にある。
 日奈子は、もう一本も追加してダブルで股間にあてがい、
「松村さ〜ん。いったいいつまで先輩ヅラしてるつもりですかぁ?今の状況、分かってますぅ?叱ってるヒマがあったら素直に降参でもした方がいいと思いますよぉ?でないと…」
「あぁっ!?んんっ、くっ、はぁぁっ!」
「このままイカせちゃってもいいんですかぁ!?こんな大勢の前でっ!」
「んあぁっ!?ひ、日奈子ぉっ!離してぇっ!あぁっ!」
 巧みに操る振動で、松村の反抗意欲を、みるみる削ぎ落としていく日奈子。
 普段、クイーンにいいように弄ばれているばかりの日奈子から徐々に現れ始めたSっ気。
 それは、観衆たちの心を一気に掴み、同調するように乗せ、そしてアゲていく。

「やっちゃえ、やっちゃえー!」
「イッちゃうところ見せてー!」
「泣け!泣け!」

 と盛り上がる観衆たち。
 媚薬で感度も上がり、振動が強すぎて堪えようがない。
 四面楚歌の松村に為す術なし。
 そして…。

(んっ、ダ、ダメ…!こ、こんなの…!あぁっ、イ、イッちゃう…!やだっ、イカされる…!あぁ、ダメっ!ダメぇぇぇっ…!)

 ビクン…!ビクン…!

 小刻みに、二度、震えた松村の太もも。
 なおも震える振動に、
「んっ、くぅっ…!」
 と堪え、急にスッと押し黙る松村の髪を捻り上げる日奈子。
(な、なに…?)
 と澄ました顔をするも、いくら松村でも、それはさすがに無理筋というもの。
「松村さーん…♪ズルはダメですよ、ズルは…今、イッたでしょ…?」
「は、はぁ?イ、イッて…ない…イッてないし…!そんなワケ…ないやろ…!」
 顔を背ける松村に対し、
「へぇ〜?イッてないんだ?本当かなぁ?」
 と、不敵な笑みを浮かべる日奈子。
 ふと、クイーンが、
「あなた、松村さん…といったっけ?野球とか、興味ある?」
「や、野球…?」
 突然の質問にポカンとする松村に、
「今、プロ野球に“リクエスト”っていう制度が出来てるの、知ってる?」
「……?」
 本当に野球に興味がなく、ふるふると首を振る松村。
 クイーンは笑って、
「だったら教えてあげる♪リクエスト制度っていうのは、微妙な判定があった時、問題のプレーをビジョンにスローで流して再確認する制度よ。私のショーでも、野球に倣って、この制度を取り入れてるわ。…この意味、分かる?」
「…ま、まさか…!」
 ゾッと背筋が凍り、嫌な予感がしてきた矢先、

「今の松村さんのイッたかイッてないかの判定にリクエストぉ♪」

 と日奈子が声を上げ、その瞬間、観衆が一段と盛り上がった。
「やぁっ、ひ、日奈子っ!バカっ!」
 と赤面する松村を無視して、手際よく、およそ1分前からの映像がスローで巨大モニターに映し出された。
 吊り天井の体勢で電マ責めに遭う松村。

「んひいいいっ!?んおぉあぁぁぁぁ…!」

 とスロー再生によって松村の喘ぎ声まで伸びてしまっている。
「や、やめて!見やんといてっ!」
 と、ひとり喚き散らす松村だが、日奈子にクイーン、そして観衆たちは、終始、ニヤニヤしながらモニターを見つめ、今か今かとその瞬間を待ちわびている。
「ほら、そろそろ来ますよ、問題のシーン!」
 と日奈子が言ったところで、顔をくしゃくしゃに歪ませて悶える松村の疑惑のシーンの引きの画が流れる。
 くもった声を上げながら、白い太ももを明らかに、ビクッ、ビクッ…と小刻みに震わせるシーンが映り、

「いやいや、これはイッてるよー!」
「絶対イッた!間違いない!」
「こんなにビクビクしてんじゃん!」

 と明らかな絶頂に笑いが起きるリングサイド。
「け、消して!モニター消してってばぁ!早くっ!ねぇっ!」
 と赤面したまま絶叫する松村だが、皮肉にも、その反応こそが何よりの判断材料といえるだろう。
 そんな松村に顔を近づけ、
「松村さん、残念…♪今のは満場一致でアウトみたいですよ」
「く、くぅっ…」
「あーあ…マツ、負けちゃったねぇ」
 ようやく下ろされる松村。
 立ち上がる力もなく、ぐったりとリングに腕をつくところに、
「どう?敗北の感想は?」
「意外とあっさりでしたねぇ、松村さん…♪」
 と言葉を浴びせる万理華、日奈子。
 松村はキッと睨み、
「ひ、卑怯者…!二人がかりは反則やし、クスリも使った…!道具も…!こんなん勝負ちゃうっ!や、やるならもっと正々堂々と…!」
 と当然の抗議をするが、二人は聞き入れず、いつの間にやらクイーンから受け取ったロープ、そしてアイマスクを手に近づく…!
「くっ…い、嫌っ!やめっ…ちょ、ちょっとぉっ!」
 襲いかかる二人とジタバタと格闘する松村。
 そんな三人がもつれ合う醜い乱闘を背中に、クイーンは、

「さぁ、皆様。まもなく次のショーを始めさせていただきます!ただいま準備中ですので、その場で今しばらくお待ちください!」

 と観衆に呼び掛け、喝采を浴びた。
 準備が整い次第、敗者の儀式が執り行われる…!


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2021/06/25(金) 18:54 )