乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―




























































小説トップ
第四部 第四章・鈴木絢音と伊藤純奈の場合
1.プロローグ
 都内ソープ街。
 その一角に店を出す会員制ソープ「N46」は、この激しい抗争の中で罠に嵌まり、女体拷問にかけられて陥落、敗北した女捜査官たちの流刑地となっていた。
 その顔ぶれは、日に日に増す柴崎一派の勢力を示すように多岐に渡る。
 中田花奈、樋口日奈というベテラン勢から岩本蓮加、与田祐希といった若手。
 さらには既に一線を退いた西野七瀬や齋藤飛鳥の姿も。
 挙げ句の果てには、先日、まだ訓練生から昇格して間もない遠藤さくらまでもが、先輩の寺田蘭世とともに快楽漬けの状態で送り込まれ、新たに泡姫の仲間入りをした。
 嬢が増えれば客も増え、既に一ヶ月先まで予約でいっぱいの状態。
 当然、売上増によって収益もぐんぐん伸びており、いまや、この秘密の店は、柴崎一派にとって切っても切れない重要な資金源、金の成る木と化していた。
 そして、ここで得た資金で新たに強力な媚薬や淫具を海外から密輸入し、生意気な捜査官たちをさらに追い詰め、また別の女を堕として泡姫に仕立てて送り込むことで、さらに収益を増えるというワケだ。
 もし、このソープの経営が下降線を辿るとしたら、それは「乃木坂46」が壊滅し、新たな泡姫の入荷が出来なくなった場合だろうし、彼女らを壊滅させた時点でこの抗争は終焉を迎える。
「そのフィナーレを飾るのは、当然、あの女、白石麻衣だ。まずは性奴隷にして堪能し尽くした後、最後の泡姫としてデビューさせ、その自慢の身体で稼がせた金で盛大なパーティーを開いて有終の美といきたいね」
 というのがオーナーの柴崎の最近の口癖。
 一時は捜査官でありながら恋愛に揺らいだ和田まあやにつけこみ、彼女を唆してまんまと罠に嵌めて捕らえることに成功した。
 そして意気揚々と拷問にかけたものの、すんでのところで桜井玲香、若月佑美の名コンビが揃って戦線復帰してきたことによって邪魔をされ、取り逃がした。
 それ以降、味わい損ねたあの白い女体への未練が消えない。
(あの極上ボディーには、必ず、もう一度ありつく…!)
 そう思って、日々、白石が匿われている病院を調べてはいるのだが、それがヤツらにとっても最後の砦というだけあって、一向に掴めない。
 先日、寺田蘭世と遠藤さくらを拷問にかけた幹部にも聞き出すように命じたが、いくら問いただしても二人からは聞き出せないと回答があった。
(となると、おそらく…)
 組織の中でも箝口令が敷かれているのだろう。
 一部の、特定の階級以上の者しか把握していないということか。
(そうなると、当然、秋元真夏…確実に知っているのはコイツなんだが)
 同じく、組織内でいわゆる飛車、角のような存在になっている高山一実と松村沙友理、そして戦線復帰した桜井玲香に若月佑美。
 少なくとも、この五人は情報を共有しているに違いない。
 よって、この中から誰か一人を捕らえ、拷問にかけて口を割らせればいいのだが、この五人に関しては、拷問にかけて口を割らせることよりも、まず捕らえること自体が難しい。
 簡単な罠にひっかかるマヌケな捜査官とはワケが違うベテラン揃い。
 ヘタな罠は見破られ、かえって形勢逆転のチャンスを与えてしまいかねない。
(さて、どうしたものか…)
 煙草を咥え、渋い表情で今後の展開を占う柴崎。
 ああでもない、こうでもないと様々な作戦を考えているうちに、電話が鳴った。
 相手は「N46」の営業を一任しているマネージャーで、毎週日曜の定例となっている報告だった。
 その週の売上や次週の予約状況、顧客からの要望、そして働かせている女たちの様子や人気の変動などが次々に報告され、最後に、
「例の“新しいサービス”ですが、予定通り、明日の営業から開始します」
「うむ。何か不備があれば言ってくれ。こちらで早急に対応する」
「了解」
 と、そこで会話は終わった。
 今の会話にあった“新しいサービス”とは、いったい…?


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2021/03/28(日) 11:44 )