乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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★第三部と第四部の間の短篇集★
堀未央奈のその後…
「98…99…100…!」
 ジムで腹筋をして汗を流す一人の女。
 引き締まった身体に精悍な顔立ち、知らない者が見ればスポーツ選手と思うかもしれない。
 彼女の名前は堀未央奈。 
 性犯罪撲滅組織「乃木坂46」に属する女捜査官で、女を食い物にする男は許さない、そんな輩は叩き潰すのが信条。…だった。
 そんな彼女ですらも、先日、まんまと罠にかかり、女体拷問にかけられて凌辱されてしまった。
 あの日のことは、もう忘れた。…いや、思い出さないようにしていると言った方が正しい。
 下衆な男たち…自身が最も憎むような男たちの汚い手で身体中を嬲られた。
 それだけに留まらず、悪趣味なハケ水車による責めで失禁させられた上、最後は女性器に媚薬を塗られ、巨根で貫かれた。
 その後、精神が壊れ、自ら男に跨って失神するまで腰を振ったこと、そして、その行為の一部始終をビデオに録られ、裏に流されたことは、未央奈にとって人生最大の汚点であり、最低の黒歴史だ。
 心身ともに打ちのめされた未央奈は、自堕落になり、悩み、塞ぎ込んだ。
 一時は捜査官と言う職から身を引くことも考えてた。
 だが、熱心に見舞いに訪ねてきては励ましの言葉をくれた先輩の秋元真夏と同期の新内眞衣、二人の支えによって、少しずつ忌まわしい過去の呪縛から解放され、戦線復帰の希望が見えてきた。
 特に決め手となったのは、最近になって、同期の山崎怜奈、北野日奈子、伊藤純奈までもが相次いで被害に遭ったと聞かされたこと。
 北野は、目下、行方不明。
 山アと純奈は、まもなく復員するというが、未央奈同様、心に大きな傷を負ったことは間違いない。
 自分だけでなく、同期の仲間まで蹂躙された怒りで、ようやく失った闘志を取り戻した未央奈。
(絶対に許さない…!一人残らず叩き潰してやる…!)
 女を食い物にする男は許さない…その信念が蘇り、過去の記憶を断ち切った。
 本格的な現場復帰は二日後。
 そこに照準を合わせ、今日まで、毎日ジムに通って自主トレを続けてきた未央奈。
(やってやる…!)
 ラスト一時間、トレーニングに、より一層、熱が入った。 


 トレーニング終了。
 シャワーで汗を流し、着替えてジムを後にする未央奈。
 外は、すっかり夜だった。
 家路を急いでいると、ふいに一人の男に声を掛けられた。
「サインください」
 一見、学生らしき男は、そう言ってCDケースとペンを未央奈の前に差し出す。
(サイン…?)
 さては、誰か芸能人と間違えてると思い、無視すると、伴走するようについてきて、
「サインください」
 と繰り返す。
「いや、私、一般人なんで…」
 と、やんわりあしらったつもりだが、男は、なおもしつこく食い下がる。
 さすがに少しイラッとしてしまって、未央奈は足を止め、
「何なんですか?ついてこられても困ります!」
 と口頭で注意をした。が、男は、
「サインください。お願いしますよ」
 と、まだ言っている。
「だから、さっきから言ってるでしょ!?私は一般人だからサインなんか書く理由が…」
 書く理由がない、と言いかけたところで、未央奈の顔色が変わった。
 男が差し出したCDケース…ケース自体は透明だが、中のディスクの盤面に、

<女優:堀 未央奈 ハケ水車、失禁、快楽堕ち>

 と刷られた字が見えたからだ。
(…!!)
 思わず絶句する未央奈。
 男はニヤリと笑って、
「堀未央奈さん…ですよね?僕、貴女のファンなんですよ。この裏ビデオを見て好きになりました」
「━━━」
 黙り込む未央奈に対し、男は、
「とりあえず静かなところ…あそこの公園にでも行きましょうか」
 と声をひそめて提案し、続けて、
「応じてくれないと、この裏ビデオ、何十枚と複製して、明日、大学でばら撒きますよ?」
 と言った。


 夜の公園。
 上下スウェットでジョギングする若い青年が通り過ぎると、再び、木陰から、ジュポ、ジュポ…と音が漏れ出した。
 ひざまずき、男のイチモツを咥えて奉仕する未央奈。
 男は満足そうな笑みを浮かべ、フェラチオをする未央奈を見下ろしている。
 未央奈は、やはり我慢ならず、たまらず口を離して、
「も、もういいでしょ…?」
 と聞くが、男は苦笑して、
「何を言ってるんですか。こんな中途半端なところでやめられちゃ、ビデオは返してあげませんよ?」
 と言った。
 仕方なく、再び、開いた口でイチモツを包む…。

 前回、凌辱された際に撮影された裏ビデオ。
 秋元真夏いわく、出回ったものは九割がた回収して処分したそうだが、人づてに流れた残りの一割は追跡困難だという。
 それでも被写体にされた自分の名誉のために奔走してくれたことに感謝していたが、ここにきて、その一割の人間に出くわすとは、何という神のイタズラ…。
 しかも、その男は、
「頼みを聞いてくれればビデオは返しますよ」
 と言った。
 裏を返せば、それは、れっきとした脅迫だった。
(これをばら撒かれたら、私、もう生きていけない…!)
 戦線復帰を二日後に控えて意気込む未央奈に水を差すような最悪の偶然。
 そして、男は未央奈を公園に連れ込み、ジョギングコースの隅の木陰へ誘導して、そこで自らズボンを下ろすのだった…。

「んぐっ…んぐっ…」
「あぁっ…気持ちいいですよ。堀さん」
(う、うるさい…!気安く呼ばないで…!)
 眉をひそめながら、あくまでも事務的に奉仕に励む未央奈。
 また、すぐ横をジョギングランナーが通りがかる。
 慌てて口の動きを止める未央奈だが、次は男が自ら腰を振り、
「止めないでくださいよ」
 と注意をした。
(や、やめて…!見つかる…!)
 必死に唇を締め、音が漏れるのを防ぐ未央奈。
 その甲斐あって、何とかバレずにランナーは走り去っていった。
 ホッとしたのも束の間、男は突然イチモツを引き抜くと、素早く、ひざまずいた未央奈の背後に回り、二人羽織のような体勢で服の上から胸を鷲掴みにした。
 鷲掴みといっても、お世辞にも豊かとは言い難い未央奈の胸。
 乱暴な揉み方に、思わず、
「やぁっ…!い、痛いっ…!やめて…!」
 と小声で制止する未央奈に対し、男は、
「堀さんがいけないんですよ。人目を気にして真面目にやらないから」
 と言って、脚で脚を固め、開かせて、無防備となった股の間に手を這わせる。
「ダ、ダメっ…!んっ!」
 夜の公園、木陰で尻もちをついたまま、モゾモゾと動く二人。
 男の手は、大胆に、パンティの中に侵入する。
「ちょ、ちょっと…!あぁっ!んっ…」
 陰毛を易々と通過し、割れ目をなぞった指に、思わず声を漏らした未央奈。
「堀さん、もしかして野外プレイは初めてですか?」
 ニヤニヤしながら問う男。
「い、いいかげんににして…!あっ、ダメっ…!人、来る…!」
 近づく足音に表情が強張る。
 次は、いい雰囲気の男女が手を繋いで通りがかった。
 他愛もない会話で談笑しながら通り過ぎる。
(くっ…!ひ、人の流れが読めない…!)
 誰かに見られることを懸念してしまって、思うように抵抗できない未央奈。
 それをいいことに、男の指は、ますます図に乗り、まだ受け入れ態勢の不完全な膣へ無理やり侵入する。
「い、痛いっ…!ま、待って…!」
 ジタバタとかかとを地面に打ちつける未央奈だが、背後から脚を絡められて、動けない。
「んあぁっ!?」
 生まれつきの敏感体質は、こんな乱暴な愛撫にすら声を上げてしまう。
 男はクスクスと笑って、
「嫌がってるわりには、すごい濡れてきましたよ?興奮してるんですか?」
「ち、違うっ…!ほ、本当にいいかげんに…!」
(…!)
 言葉を止めて、押し黙る未央奈。
 次は、犬の散歩をする人が通りがかった。
 背にしている木の向こう、数メートルまで迫る。
 ふと立ち止まる散歩の住民。
 もしかしたら犬が吠えるのでは…と、そんなことまで不安になってしまう未央奈に対し、男の指は止まる気配がない。
 必死に息を殺す未央奈。
(な、何してるの…?早く行ってよ…!)
 立ち止まったまま、なかなか動かない飼い主は、愛犬の小便が終わるのをじっと待っている。
 その間も途切れることなく続く指責め。
(あっ…ダ、ダメっ…!こ、こんな状況で、イ、イカされる…!んあぁっ…!)
 血が出るほど固く口を結び、絶頂寸前で身体を硬直させる未央奈。
 敏感体質の未央奈にとって、オーガズムを声を出さずに乗り切るのは、まさに至難の技だ。
 声は出なくとも、荒い息が漏れる。
「よし。ゴン太、行くぞ!」
 飼い主が声をかけ、愛犬のリードを引いて再び歩き出した。
 それに安心したことで気が緩んでしまったか、未央奈は、
「んっ、あっ…イ、イクっ…!」
 と小さく声を上げ、夜の公園の木陰で、びくんびくんと身体を震わせた。
 同時にパンティから沁み出て地面に漏れる大量の液体。
 男は感嘆として、
「すごい…ビデオと同じだ…!堀さん、気持ちよすぎて、またお漏らししてますよ?」
「はぁ…はぁ…」
「こんなに漏らしちゃって…さっきの犬と、どっちかたくさん出たかな?」
 男は、ニヤニヤしながら未央奈の羞恥心を抉る。
「━━━」
 股ぐら全体に広がる湿り気に放心状態の未央奈。
 男は未央奈の華奢な身体を抱き上げ、膝の上に乗せると、
「こんなグショ濡れの下着、もう意味ないでしょ」
 と言って、ズルズルと脱がせ始めた。
「い、嫌っ!恥ずかしい…!」
 赤面して顔を覆う未央奈。
 同時に、ふいに公園内が騒がしくなった。
 原付バイクをフカしたヤンチャな少年たちが四、五人、現れては、向こうのベンチで輪になってたむろし始めたのだ。
 大きな声で話し、何かを誇示するように原付バイクをフカす。
 夜の公園で、迷惑この上ない集団だが、唯一、それを好都合と捉えたのはこの背後の男だ。
「これなら、少々、声を出しても大丈夫ですね」
 と笑い、
「堀さん。僕、もう我慢できないです…」
 と言って、おもむろに抱き抱えた未央奈の割れ目に、自身の固くなったイチモツをあてがった。
(…!!)
「ダ、ダメっ…!こんなところで…!」
「こんなところだからいいんじゃないですか。いきますよ?」
 聞く耳を貸さず、未央奈の細い腰を掴み、ぐっと引き寄せる男。
「んはぁぁっ…!」
 ヌルッと先端が押し込まれたイチモツが、そのまま3分の2ほど埋まる。
 そのまま背面座位で下から突き上げられると、未央奈は、小さく、
「んっ…んっ、んっ…!」
 と声を上げる。
「あぁ…この締まり、最高だ!ビデオを見て何回もヌイてた人と、今、実際にヤッてるなんて、たまらない!」
 と一人で浸る男に対し、未央奈は、
(ダ、ダメっ…!声が…!声が出ちゃうっ…!)
 と、思わず自身の手首を噛んで声を抑えた。
 ヤンキー少年たちの空ブカシに隠れて、夜の公園で脅されてセックス。
 そんな屈辱的な状況が、未央奈の立ち直りかけていた精神を再び痛めつける。
 そして、次第に自身でも気づく違和感。
(な、何なの?この感覚…?何で、私、こんなことされてるのにゾクゾクしちゃうの…!?)
 誰かに見つかるかもしれない。
 誰かに聞かれているかもしれない。
 外でこんなことをするなんて、恥ずかしさしかない筈…それなのに…。
「どうですか、堀さん?初めての野外セックス、けっこう興奮するでしょ?」
 と問われ、ぶんぶんと首を振る未央奈だが、男は笑って、
「そんな強がらなくても分かりますよ。マンコは大洪水だし、さっきから、キュッ、キュッ…って僕のチンコを締めつけてますからね」
「━━━」
 男は、バウンドする未央奈の耳元に顔を近づけ、
「犯されてるのにスリルを味わっちゃって…ホント、ド変態ですね。堀さん」
(ち、違うっ…!私は…変態なんかじゃ…ない…!)
 頭の中では必死に否定するが、実際、男の言うことが的を得ているのも事実。
「んっ、んっ、んっ…!」
 声が漏れる間隔が小刻みになってくる。
(ダ、ダメっ…!イ、イクっ…!)
「んひゃぁぁっ…!」
 絶頂の瞬間、噛んだ手首を吐き出し、つい、声を出してしまう未央奈。
 幸い、ヤンキーたちの談笑とカブって気付かれた様子はないが、果てた未央奈は男の身体から飛び上がり、そのまま力無く木陰に寝そべるように倒れた。
 それと同時に、
「うぅっ…!堀さん…!僕もイキます…!」
 と呟いた男の勢いよく発射した精液が虚ろな目をした未央奈の顔面に降り注ぐ。
「はぁ…はぁ…」
 下半身を放り出したまま、荒い息をして宙を見つめる未央奈。
 一方、男は意外と淡白で、少し余韻を味わった後は、そそくさとズボンを履き、さっさと立ち上がった。
「約束通り、これは返しておきますよ」
 と男は言って、寝転がる未央奈の身体の上にCDケースを置き、そのまま、どこかへ消えてゆく。
 なおも呆然として立ち上がれない未央奈。
 足音は遠ざかり、やがて耳に聞こえるのは向こうで大声で話すヤンキー少年たちの声だけになった。
 そして…。
「悪りィ!ちょっと立ちションしてくるわ」
「あ、俺も行く」
「俺も」
「どこでする?」
「んー…向こうの木陰とかいいんじゃね?」
「よし、そうしよう!」
 そう言って、ぞろぞろとこちらへ近づいてくる少年たちの足音…。

 こうして、未央奈の戦線復帰は、また少し延びたのだった…。

鰹のたたき(塩) ( 2020/07/26(日) 09:13 )