4.拉致
帰宅ラッシュの主力、通勤快速。
だが、その満員の車内では、今まさに、女捜査官・岩本蓮加が地獄に堕とされようとしていた。
地獄といっても、痛めつけられる地獄ではない。
性の地獄、快楽地獄の方だ。
すし詰めの車内で、四方を痴漢たちに囲まれた蓮加。
男たちの高身長も相まって周囲の目からの防壁となる一方、その結界の内側で何が行われているかも外からは見えない。
そして、その内側では、はだけたブラウスに膝までずり落ちたスカート、両手首には手錠を掛けられ、パンティの中にローターを入れられた蓮加が小刻みに震え、悶えていた。
「んんっ…んっ、くっ…」
防壁の男たちにしか聞こえない程度の声が絶えず漏れている。
ついさっき、こんな満員電車の車内で、よりにもよって痴漢たちの手によって、人生初めての絶頂を味わった。…いや、味わわせられた。
その余韻がまだ残っているし、媚薬クリームの効果も一向に収まらず、とにかく股が熱い。
レールの繋ぎ目を拾う音に紛れながら、再び、きゅっとパンティを持ち上げられ、無理やり食い込みを作られると、そのはずみで、またしても中のローターが、熱を帯びた男知らずのウブな秘肉に密着する。
「んっ、くぅぅっ…!」
頭を真っ白にするような刺激に呻くような声を上げ、思わず内股になる蓮加。
それでもなお男の手がパンティを引っ張るせいで、蓮加の股間は、まるで、前はTフロントのような状態になり、若い恥毛が数本、食い込みの左右から覗いた。
ローターの振動音と列車の走行音の絶妙なコラボ。
悶絶する蓮加の頭上のスピーカーから、
「まもなく○○、○○です。出口は左側です。お乗り換えのご案内をいたします。地下鉄R線△△駅方面は降りたホームの向かい側、1番乗り場。E鉄道をご利用のお客様は━」
と、大きな駅に到着する際に特有の、長々とした車内アナウンスが流れた。
本来なら、このアナウンスが蓮加の救いとなる筈だが、今回は違った。
ホームに滑り込むまでに、何とかして、もう一回イカせようとする男たちのラストスパートが始まったのだ。
ブラの上から胸を鷲掴みにする男。
お尻を官能的に撫でる男。
内ももに指を差し込み、相撲取りの“まわし”と化したパンティの上から“蟻の門渡り”を指でなぞる男。
そして、ローターをインしたまま食い込みを作り続ける男。
四方からの合わせ技と媚薬の効果により、蓮加は、列車の減速に反比例して絶頂へ向けて加速していった。
(ダメっ…!ダメぇぇっ…ま、また…イッ…ちゃう…!)
我慢も空しく、人生二度目の絶頂。
まだ女の快楽に慣れない身体は、ビクビクと震えると同時に、どっと疲れて力が抜け、だらんと崩れて正面の痴漢の胸に顔を埋めた。
その身体をニヤニヤしながら支え、無理やり立たせる男たち。
列車がブレーキを軋ませてホームに滑り込むと同時に、周りの乗客も、それまで読んでた本を閉じたり、網棚の上の荷物に手を伸ばしたり、一斉に動き始める。
結界を作る四人の一人が、
「このまま、ここで降りてもらおうか」
と蓮加に耳打ちした。
同じ頃、そのわずか数メートル先で、先輩の星野みなみも蓮加と同様、集団痴漢に遭っていた。
脅し文句もほぼ同じで、騒げば蓮加を殺すと言われ、仕方なく反撃できずにいる。
ただ、みなみが蓮加と違うのは、今なお必死に抵抗を続けていることだ。
「や、やめて…」
ボソボソと抵抗する声を上げ、常に牽制する。
スカートの中に潜り込む手は、掴み上げて引っ張り出す。
ブラウスに伸びる手は、腋を締めてガードしつつ叩き落とす。
なすがままに二回も絶頂に押し上げられた蓮加とは対照的に、声が出せない状況の中では善戦しているといえる。
だが、その善戦したことで、かえって、男たちが強行に出た。
駅に侵入する際のミュージックホーンに紛れて、バチバチと火花の散るような音がした。
改造スタンガン。
苦悶の表情を浮かべ、ぐったりとするみなみ。
そのみなみの身体を、こちらは男三人が囲み、支える。
ほどなくして電車が減速し、ホームに滑り込んだ。
線内でも指折りのターミナル駅。
到着し、ドアが開くと同時に、すし詰めだった乗客の一角が崩れ、それをキッカケにドアを目指す人の波が出来る。
男たちは、スタンガンで失神させたみなみを急病人に見立て、肩を貸す形にしてその波に乗った。
ホームに降り立つと、心配して、
「どうされたんですか?」
と善意で声をかける周囲の乗客に、ぬけぬけと、
「ただの貧血ですよ。少し横になればすぐに治るでしょう。我々が看病するので大丈夫です、行ってください」
と返す男たち。
遅れて、蓮加を取り囲んだ別班も降りてきた。
目配せをして、お互い、
(作戦成功!)
と称え合う。
そのまま男たちは改札を出ると、待たせておいたワゴン車に二人を押し込んだ。
正体なく後部座席に寝転がるみなみ。
そんなみなみを心配する余裕もなく、股間に仕込まれたローターに、終始、悶絶する蓮加。
手錠も掛けているし、抵抗する様子はない。
「よし、出せ」
と、運転手に命じる男。
二人を乗せたワゴン車が、ゆっくり発進した。