9.欲か恥か (田村真佑)
獣の巣窟と化した旧音楽室。
椅子に縛りつけられた筒井あやめ。
そして、その目の前で男二人に襲われる田村真佑。
既に防具は上下の下着のみ、白い肌のほとんどが露わになっている。
「おら、おとなしくしろよ!」
「暴れたら、あっちのガキがどうなるか…分かるだろ?」
「くっ…い、いやっ!やめてっ…!」
左右から伸びる男たちの手が真佑の手首を掴み、抵抗力を奪う。
思っていた展開と違った。
我が身と引き換えにあやめを逃がすつもりだった。
だが、姑息な男たちの計略に嵌まり、あやめを逃がすどころか、むしろ人質に取られ、さらに自分が、これから見せ物にされようとしている。
「は、離してっ…!」
必死に身体をよじる真佑。
あやめが人質にされている手前、会得した護身術で薙ぎ倒すことも出来ず、それをいいことに男たちは図に乗る。
男は、筒井に向かって、
「さぁ、小娘。よく見てろよ?今からこいつを素っ裸にしてやるからな」
「うぅぅ…うぅぅ…!」
口にテープを貼られたあやめが、いやいやをするように首を振る。
手首を固めている隙に、片方の男が、真佑のブラのホックを外した。
締め付けがなくなり、浮き上がるパッド。
それを男が一気に捲り上げると、秘められていた白い膨らみが一気に飛び出し、先端の桃色の突起が揺れた。
「や、やだっ…やめて、見ないでっ…!」
顔を覆うことすら出来ず、みるみる紅潮してくる白い頬。
「さぁ、一気に行こうか。次はこっちだ」
「ダ、ダメっ…!」
パンティの淵を掴まれ、絶対に下ろされまいと慌てて内股になる真佑。
だが、相手は屈強な男、しかも二人がかり。
内股のガードなど無視して、力任せに引っ張り下ろされてしまう。
年相応にしっかりと生え揃った陰毛が露呈すると、真佑は、その恥ずかしさで掴まれた手首を振りほどき、すぐに胸と股間を覆い隠した。
そして、そのまま、じりじりと後ずさりしつつも、不届き者の下衆たちにはキッとした眼で睨みつけて牽制をする。…が、結局、それ以上のことが出来ない。
男たちもそれが分かっているから余裕綽々で、
「…どうするんだ?戦うのか?」
「そんな、両手を使って恥ずかしいところを隠してるヤツが、どうやって戦うんだ?」
「おら、観念してこっち来いよ」
「くっ…」
すぐに部屋の角まで追い込まれる真佑。
「どうする?恥を捨てて、マンコ丸出しでキックでも繰り出すか?」
「俺たちは口だけでケンカはまったくだからよ。それ一発でやられちまいそうだ」
「ただ、そんなことをすると…」
あやめの方を指差す男。
目をやると、あやめを見張る男が、彼女の細い首筋に手をかけていた。
その男が少しでも力を入れると首が絞まって、あやめは息が出来なくなり、そのまま…。
「さぁ、どうする?お前が決めていいぞ」
ニタニタと笑う男。
(くっ…!)
こういう状況では正義はきまって不利になる。
結局、非情になることが出来なくて手を出せないまま、真佑は再び、元の場所、あやめの目の前に戻された。
「ほら、手を退けてこのガキにもっと大人の発育しきった身体を見せてやれよ」
「や、やだっ…!」
どうしても反射的に身体を、特に大事なところを手で隠してしまう。
だが、男たちは構わず、
「やだ、じゃねぇんだよ。その手を退けろって言ってんだ」
「気が変わるぞ?それに、俺たちは別にこっちのガキでも楽しめるんだ。試してやろうか?」
男の手が、縛られたあやめの胸元に伸びる。
恐怖で顔が引き攣るあやめ。
「や、やめてってば…!その娘には何もしないでよ…!」
「だったら早く手を退けろ。もう言わねぇぞ?」
「━━」
従い、恥じらいながら手を下ろす真佑。
同期の仲間、それも最年少のあやめの前で全裸を見せつけさせられる屈辱。
あやめも、目のやり場に困って顔を背けている。
「よし。そのまま脚を開いて腰を突き出せ」
(…!)
男の命令に対し、何か言いたそうに睨みつける真佑。
だからといって反抗は出来ない。
仕方なく、真佑は、言われた通り、肩幅ぐらいまで脚を開き、膝を折って腰を少し前へ…。
(い、嫌っ…恥ずかしいよ、こんなの…!)
傍から見れば、その光景は、あやめに向かって秘部を見せつけているように映る。
胸よりも下よりも、今は顔を覆いたい気持ちだ。
あやめは、依然、顔を背けたままだ。
「おいおい。全然、見てくれねぇぞ。アピールが足らねぇんじゃねぇのか?」
「もっと腰を振ったりしろよ。好きな男の前ではしてるんだろ?」
「し、しない…そんなこと…!」
男たちが嘲笑うたび、真佑の顔はみるみる赤くなる。
「仕方ねぇなぁ…」
ふいに男が真佑の背後に立ち、突然、真佑の股間に手を伸ばした。
そして、閉じた割れ目を無理やり左右に拡げた。
「い、いやっ!やめてよっ、ちょっと…!」
あやめの目の前でサーモンピンクの秘肉を剥き出しにされて絶叫する真佑。
男が、真佑の割れ目を開いたり閉じたりすると、時折、ヌチョ、ヌチョ…と音がする。
それに対し、真佑は赤面、男は笑顔だ。
「少し濡れてるな。見られて興奮したか?」
「そ、そんなワケないでしょ…!」
「ほぅ…シラを切るか。それじゃあ、俺の指で確かめてやる」
「や、やぁっ…」
割れ目の縦線に男の指が触れ、そのまま擦りあげるように上下する。
「んっ…あっ…!」
息を乱す真佑。
そして、男が指を離し、ゆっくり持ち上げると、その指を伝って一筋の糸が伸びる。
重力に負けて途中で切れてしまったが、男はしてやったりの顔で、
「澄ました顔をしてるわりにはマン汁の粘りが強いな。ちょっと触っただけで感度も凄いし、もしかして、最近、ご無沙汰か?」
「う、うるさいっっっ!!!」
思わず怒鳴りつけるような声を上げる真佑だが、その声量がかえって図星と言っているようなもので、男たちにとっては願ってもない餌だった。
「何だ、溜まってるのか。だったら早く言えばいいのによ」
「発散させてやるぜ!」
「や、やぁっ…ち、違うから…!ちょっと…んんっ!」
いよいよ本格的に牙を剥く男たち。
胸を揉まれ、割れ目を弄られると、たまらず真佑の口から甘い声が漏れる。
さっきまでの気丈な態度と裏腹に、真佑は、男たちの愛撫に早くも翻弄され始めた。
「んんっ…あんっ、やぁっ…くっ…!」
(ダ、ダメっ…二人がかりで…そんなことされたら…!)
痛いところをつかれた…と、内心、思っている。
欲求不満じゃない、といえばウソになるだろう。
同期の中で最年長。
最年少のあやめと比べれば、当然、経験の数も多いし、それによって性欲が発散させることも心得ている。
人手不足によって訓練生から緊急昇格して以来、真佑は、捜査でほとんどの時間を忙殺されていた。
今は恋人もいないし、連夜、泊まり込みばかり。
狭い仮眠室で、同期の仲間や先輩と交代で睡眠をとるという状況では、普段のように落ち着いて自慰行為も出来ない。
(せめて、もうちょっと、自分一人の時間があれば…)
ここ数日は特に、そういった、ひそかに悶々とした日々が続いていた。
そして、そんな矢先、不意に訪れた絶体絶命の危機。
幸か不幸か、相手は、抑えつけていた性欲を呼び覚ますような攻撃を仕掛けてくる。
一人だったら流されてしまったかもしれない。…だが、今は違う。
「ほら、よく見て勉強しろよ?」
見張りの男が、顔を背けるあやめの額を掴み、無理やり視線を上げさせる。
…そう。
今、目の前には仲間がいる。
それも最年少の同期だ。
(な、流されるワケには…いかない…!)
そんな姿を見せるワケにはいかない。
唇を噛みしめ、必死に欲を鎮める真佑。
「さぁ!耐えきって仲間の前で面目を保つか、それとも溜まった性欲に負けてガキの前で恥を晒すか…どうなるか楽しみだなぁ?」
と告げる男の声。
こうして彼女は、望まずして、性欲と自尊心を天秤にかけた戦いを強いられるのだった。