7.新たなる地獄
美波は目を覚ました。が、目を開けても視界が暗い。
アイマスクをつけられているとすぐに分かった。
そして、まだ自分が丸裸のことも。
拘束は少しだけ緩くなっていた。といっても、まだ四股の自由は利かず、さっきの大の字から少しだけ遊びが出来た程度に過ぎない。
「気がついたかな?」
忌まわしい男の声が聞こえた。
「ち、近寄るな…!」
美波は、アイマスクで相手がどこに何人いるかも分からないまま叫んだ。が、その声は無視され、代わりに、
「始めろ」
と、すっかり聞き慣れた指示の声が聞こえた。
(…くっ!)
男の声と同時に、美波の裸体に無数の手が伸びてきた。
一人や二人ではない。七、八人はいる。
先の拷問で嬲られた乳房や乳首、秘部はもちろん、耳、腋、脇腹、鼠径部、太ももにまで、見えない手が這い回る。
「や、やめろぉ…くっ、あっ、んっ!」
(ま、まだ身体が熱い…少しは時間が経った筈なのに…!)
そんな美波の心を読み取るかのように、男は、
「お前には飲ませたあの媚薬、即効性の上、持続性も高くて、三日間は身体の疼きが収まらない代物だ。よかったな」
と意地悪く笑った。
うごめく無数の指が的確に性感帯を捉える。
先程のような乱暴な責めとは違って、撫で回すような優しい責めが逆に、散々、絶頂を極めた後の敏感な身体には効果てきめんだ。
抵抗しようにも視覚を奪われていて、どこから手が伸びてくるかが分からず、対処のしようがない。
それどころか、
(んんっ…あっ…す、すごい…乳首を擦られて…ア、アソコも触られてる…!ク、クリにも太い指が当たって…あんっ!)
美波の身体は、次第に快楽を受け入れ始めていた。
何度も我に返ろうとしたが、それも全身を覆う刺激に邪魔をされてままならない。
「おら、どうした?抵抗しないのか?鍛えた身体を下衆な男たちに嬲り物にされてるんだ。突っぱねてみたらどうだ?今のままじゃ、触られて喜んでいるようにしか見えないぞ」
男が嘲笑を交えながら美波の自尊心を傷つける。
さっきまでとは違う、ゆっくりしたペースで蓄積されていく快感に、美波は完全に飲まれていた。
(あぁ、ダメ…き、気持ちいい…ま、また…またイッちゃう…イ、イク…)
「おっと、今度はそう簡単にはイカせないぜ」
男の声とともに、身体に触れていた手が一斉に引く。
「…え?ど、どうして?」
「おいおい、何だ?その言い草は。もしかしてイカせてほしかったのか?さっき、あれだけイカせてやったんだ。もうイクのは充分だろう?なぁ?」
「くっ!…んあっ!はぅっ!」
その後も、同じような責めが延々と続いた。
全身を撫で回し、絶頂寸前まで追い詰めておきながら、あと一歩のところで手を止め、焦らすのだ。
「んっ、んっ、ああっ!ひゃああぁっ!……くそっ!」
手が離れていくたび、美波は、もどかしさで唇を噛んだ。
遊ばれているのは分かっている。
だが、身体は徐々にその先を求め始めていた。
(あとちょっと…あとちょっとなのに…!)
しかし、また、寸止め。
「お、お前ら…い、いいかげんに…!」
「分かった分かった。そんなに欲しいなら触ってやるよ」
そしてまた責めが再開される。
「あっ、んっ…はぁ、んんんっ!」
「おら、だんだん声がデカくなってきているぞ!気持ちいいなら素直に気持ちいいって言ってみろ!」
「ち、違ッ、んんっ!ひゃぁぁ!あんっ!はぁっ!」
「どこが違うんだ?乳首はビンビン、マンコもトロトロじゃねぇか。物欲しそうにヒクヒクしやがって。さっきみたいに奥まで指を入れてほしいのか?腰を浮かせていやらしい女だ、まったく」
(こ、こいつ…!さっきからいちいち大きい声で言いやがって…)
「おら!おら!また腰が浮いてきたぞ?何の真似だ?おい!触ってほしいのか?…残念、触ってやらねぇよ。へへへ」
主導権を握っている確信からか、男の口調が荒くなってきている。
「おら、イキたいならイキたい、イカせてくださいとお願いしてみろ!」
「あっんっ、はぁっ…だ、誰がお前たちなんかに…んんっ!」
「ほぉ、そうかい。じゃあ、やめだ。面と向かってお願いも出来ねぇヤツと遊んでも楽しくねぇからなぁ」
「き、貴様…!いったいどこまで…」
「じゃあ、言うか?グショグショのオマンコいじくり回して私をイカせてください。ほら、言ってみろ。あぁ?聞こえねぇぞ、おら!」
「い、言わない…絶っ対に言わないっ…!くぅっ…!あっ!うぅっ!」
まだかすかに残る自尊心で美波は必死に抵抗を続けた。
だが、しかし、そんな崖っぷちの美波を見て、男はニヤリとほくそ笑む。
(そうだ、何度でも自我を取り戻せ。やがてそれも出来なくなって自ら快楽を求めるところまで堕ちた時、この調教は完成するのだ!)
その男の目は、今、サディスティックに満ちていた。
(つづく)