乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―




























































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第二部 第八章・桜井玲香の場合
10.エピローグ
「くっ…!あっ、うぅっ…!」
 苦悶の声を漏らす玲香に対し、クスクスと笑みを浮かべる鮫島と衛藤。
 脅迫による強制自慰から始まり、媚薬責め、感度チェックでの連続絶頂地獄、レズ責めに鞭打ち、そして最後には犯して生中出しと、心身ともにたっぷりと玲香を痛めつけた二人。
 最後は、敗者の玲香を三角木馬に乗せ、見せしめとして目の前に置いた。
 股間の痛みと羞恥によって、馬の背で思わず前のめりになる玲香。
 足首に重りをつけてやると、苦痛の声がさらに増した。
 その様を満足そうに眺める鮫島は、積年の恨みを晴らした充実感が溢れている。
 そこに寄り添う衛藤も同様に満足げな笑みを浮かべ、煙草を差し出して、
「ねぇ。これからどうする気?」
「そうだなぁ」
 鮫島は、差し出された煙草を口にくわえて、
「ひとまずコイツを堕としたことで俺の目的は達した。あとは、いわば消化試合のようなものだが、それでもまだコイツの部下は何人かいるからな。危険な芽は摘んでおくに越したことはない」
「勝算は?」
「なに、リーダーのコイツの身柄はこっちの手にあるんだ。人質を盾に誘い出して、あとは芋づる式に一網打尽にすればいい」
 と鮫島は余裕を見せた。
 リーダーを欠いて空中分解している組織など、もはや恐れるに足らず、だ。
(手始めはナンバー2の秋元真夏かな?)
 いや、じゃじゃ馬の伊藤純奈の生意気な顔を屈辱に染めるのも捨てがたい。
 岩本蓮加のような小娘の幼い身体を開発してやるのも一興だ。
 そんなことを考えていた時、ふいに下から人の気配がした。
「…誰か来たわ!」
 途端に笑顔を消し、張りつめた顔をする衛藤。
「妙だな。ヤツらがこのアジトに気づく筈はないんだが…」
 と鮫島は首を傾げるが、侵入者の足音は確実に近づいてくる。
 二人は、同時に、懐に隠し持った小型拳銃に手を添えた。
 ドアが開く。
 相手は捜査官ではなく、翻意にしている花田組の組長、花田肇と、その舎弟数人だった。
「あ、兄貴でしたか…」
 鮫島は慌てて拳銃に添えた手を取り出した。
 花田は、三角木馬の上で悶える玲香をちらっと見て、ニヤリと笑い、
「コイツは、お前が言ってた女だろう?いい気味じゃねぇか」
「はい。俺に楯突いたらどうなるかってのを、たっぷり教えてやりましたよ」
「なるほど。目的は果たしたワケだな?」
「ええ。兄貴のバックアップのおかげです」
 と鮫島は言ってから、
「ところで兄貴、今日は何の用で…?」
「うむ…」
 花田は、それまでの笑みを消し、声を低くして、
「これは噂なんだが、近々、インターポールの特命捜査官が派遣されてくるらしい」
「特命捜査官…?」
「それも、先にフィリピンを経由してから来るそうだ。フィリピンは先日までお前が潜伏していたところ…。となると、向こうの狙いはお前という可能性が高い。おそらく今頃、いろいろと裏を取ってるんだろう」
「チッ…誰かが根回ししやがったな!」
 鮫島は、声を上げて、
「その捜査官は男?女?」
「女らしい。それも、相当やり手の女捜査官だそうだ」
「なるほど。相手にとって不足はないということですね」
「うむ。そこで、だが…」
( …!!)

 パァァァァン!

 花田の舎弟の放った弾丸が鮫島を射ち抜いた。
 鮮血を撒き散らして倒れる鮫島。
 突然の出来事に衛藤は悲鳴を上げる。
「あ、兄貴…何を…?」
 地面に突っ伏して花田の顔を見上げる鮫島。
 花田は、その前にしゃがみこむと、ニヤリと笑って、
「察しろよ。お前はもう用済みなんだ。それに、インターポールにマークされるようなヤツを匿うのは、少々、リスクが高すぎる。足手まといは組に迷惑がかかる前に消えてもらおうか」
「う、裏切る…つもり…か…!」
「裏切る…だと?」
 花田は、笑みを消し、本来のヤクザの顔になって、
「いつまでも寝ぼけてんじゃねぇよ。俺は、ただ、都合よくテメェを利用していただけだ。お前みたいなゴロツキと手を結んだつもりなんてハナからねぇ」
「く、くそっ…」
「まぁ、そう恨むなよ。たかがゴロツキでも、温情で、せめてお前が目標を達成するまでは始末するのを待ってやっただろ」
 花田は、ちらっと三角木馬の玲香に目をやってから、
「ああやってやりたいことも出来たようだし、これでもう思い残すこともねぇだろ」
 花田は、倒れる鮫島に拳銃を突きつけた。
(…!!)
「安心しろ。お前が仕入れて保管してる非合法の媚薬やら何やらは、全て、ウチの組で引き取らせてもらう。それに、女を堕とす快楽拷問のノウハウも学ぶことができた。あとは俺たちで楽しくやるからよ。それに…」
 花田が目で合図を送ると、舎弟の男たちが数人がかりで衛藤を身体を押さえつけた。
「な、何をするの!?…いやっ!離してっ!」
 連れていかれる衛藤。
 花田は、倒れる鮫島に向き直り、
「愛人か何か知らねぇが、あの女も、ウチの組で引き取らせてもらう。…まぁ、そう悲観するな。女は殺さねぇ。モルモットとして、お前の遺産の媚薬の実験台に使って、果てはウチの組員の肉便器として楽しい余生を送ってもらうさ」
「ち、ちくしょう…!」
「さて…そろそろお別れの時間だ。あの因縁の女に看取られながら安らかに眠れや」
 銃の引き金に指をかける花田。
 そして…。
 
 パァァァァン!
 パァァァァン!
 パァァァァン!

 銃声が三発、部屋に轟いた。

 ……

 秋元真夏たちが駆けつけた時、その部屋には花田組の人間は一人もいなかった。
 いたのは三角木馬に跨がる玲香一人だけ。
 そして、その足元には、これまで幾人の捜査官を食らってきた恐ろしい悪魔の屍が無惨に転がっていた。


(つづく)

鰹のたたき(塩) ( 2020/02/04(火) 11:15 )