乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―





























































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第二部 第八章・桜井玲香の場合
3.処刑台
 秋元真夏は、徐々に異変を感じていた。
 玲香がどこにもいない。
 誰も行き先を聞いておらず、いつのまにいなくなったかも分からないという。
(おかしい…!)
 多少、猪突猛進なところはあるが、だからといって行き先を告げずに一人で勝手に出かけるタイプではない。
 ましてや、この切迫した状況で、だ。
(まさか、一人で乗り込んだ…?)
 そういえば、最近、抗争の収束を焦る姿は、しきりに見受けられた。
 そのたびに真夏は制止し、説得して宥めてはいたが、もしかすると、焦るあまり、突っ走ってしまったのか?
 真夏は、その不安を、すぐ、今野本部長に相談した。
 話を聞いた今野も慌てて、
「連絡はつかないのか?」
「何度かけても、携帯電話は電源が入ってなくて繋がりません」
「他の連絡手段は?」
「ありません。無線の類を持ち出した形跡もありません」
 と真夏は正直に答えた。
 今野は渋い顔になって、
「君の考えを聞こう」
「二つ、考えられます」
「一つは?」
「事件の収束を焦り、単身、鮫島のところへ乗り込んだパターンです」
「なるほど。桜井くんの性格を考えると、なくはないか」
「ただ、それなら事前に誰かに相談している筈ですし、別に、私たちに秘密にして行くことはないと思います」
「うむ…。そうなると、もう一つの線か。そっちも説明したまえ」
「もう一つ考えられるのは、鮫島から密に呼び出され、それに応じて一人で出かけていったというパターンです。それなら、私たちに黙って出かけたことも納得できます」
「しかし、二人は、どうやって連絡を取り合ったんだ?」
「これは、あくまで想像なんですが━」
 と真夏が話しかけた時、後ろで二人の話にずっと聞き耳を立てていた向井葉月が、突然、
「真夏さん!ごめんなさいっ!」
 と声を上げた。
「葉月…?どういう事?」
「実は、昨日━」
 葉月は、昨日、踏み込んだラブホテルの部屋で玲香宛の封筒を見つけたこと、それを玲香に渡して口止めされたことを話した。


 真夏は、すぐに、残っている捜査員を全員召集した。
 もちろん向井葉月も、だ。
 唯一、玲香の行動を知りながら口止めされて黙っていたことを今さら悔いる葉月に対し、真夏は、
「落ち込んでるヒマなんてないわよ。葉月も力を貸して!」
 と励まし、檄を飛ばした。
 すぐにミーティングが開かれた。
 議題はもちろん、玲香の行き先について、だ。
「葉月は、その問題の封筒の中身は見てないワケ?」
 と、伊藤純奈が聞く。
「はい…中身を見ずに玲香さんに渡しました。そうしたら玲香さんは中の便箋に目を通して、すぐにポケットにしまいました。だから内容までは━」
 こうなれば自ずと予想合戦になる。
 しかし、密会する場所など、都内に限らず、この本部の周辺だけでも山ほどある。
「こんなの、キリがないよ」
 と、北野日奈子は匙を投げる始末だ。
 そんな中、樋口日奈が、
「そもそも、なぜ鮫島は、玲香を呼び出したんだろう?」
 と、根本的な疑問を挙げた。
「そりゃ、対決するためでしょうよ」
「でも、玲香だって丸腰で行くほどバカじゃない。拳銃ぐらい持っていた筈でしょ。それに過去の因縁もある。一筋縄ではいかない相手だというのは鮫島自身も分かっている筈なのに、どうして突然そんな真っ向から…?」
 樋口の疑問は、もっともだった。
 鮫島はプライドの高い男だ。
 万が一でも負けることは許されない。
 それにもかかわらず、自信満々に玲香に宣戦布告し、呼び出している。
「鮫島には必ず勝てる自信があった…ということになるわね」
 と真夏は結論づける。
 となると、次は、その自信の根拠は何か、という議題に移る。
 これまでの傾向から察するに、鮫島が優位に立つ絶対条件は、ずばり“人質をとっていること”だ。
「でも、捜査員の中で、現在、失踪中の人間はいない筈…」
「とすると、あとはOB…?」
 松村沙友理が首を捻る。
 確かに現役メンバーではないとすると、残るはOB、離職者ということになる。
(ありえない話じゃない)
 と真夏も思った。
 現役の面々は本部で顔を合わせるから分かるが、OBの安否までは確認できていない。
 真夏は、自分も含めて部隊を三つの班に分け、手分けしてOBの安否の確認に走ることにした。
 それがアタリかどうか分からない。が、何も手がかりの無い今は、少しでも可能性があることを地道に潰していくしかない。
「どうも嫌な予感がする…みんな、急いで取りかかってちょうだい!」
 と、真夏は発破をかけた。

 ……

 玲香は下着姿のまま、四つん這いに拘束された。
 鉄製の拘束具が痛いぐらいガチガチに身体を固め、その屈辱的な体勢から微動だに出来ない。
「ククク…いい気味だ」
 と、玲香の前に立ち、ひれ伏す姿を見下す鮫島。
 玲香は、逆に、そんな鮫島を見上げて、
「い、言う通りにしたでしょ…!早く若月から手を引いて…!」
「いや、まだだ。若月の安全は、お前自身が堕ちることと引き換えだ」
「くっ…貴様、どこまで腐って…!」
 目の前の外道な男に怒りに満ちた眼を向ける玲香。
 その眼前に差し出される、また何やら怪しい器具。
 中に液体が入っていて、一見、子供が遊ぶ水鉄砲のように見える。
「な、何よ、それ…?」
「ククク…これはな、お前のために特別に調合した強力媚薬さ。今までお前の部下たちに使ってきた数々の媚薬の中でも断トツの効き目がある。それに…」
 鮫島は、玲香の後方に回り、突き出した尻を叩いて、
「コイツはケツの穴から注入するタイプの即効性だ。飲ませるタイプとは身体に回る早さが違う」
(…!?)
「さて…それじゃあ、まずケツの穴を見せてもらおうか
「よ、よせっ…!」
 パンティにかかる手を必死に振りほどこうとするが、拘束のせいで何も出来ない。
 無抵抗のまま、ずり下ろされた下着。
 露わになる尻肉、そして花弁。
 鮫島は、その尻をペンペンと叩きながら、
「なかなかいいケツしてるじゃねぇか」
「や、やめてっ…!ちょっと…!」
 鮫島の手が尻肉を掴み、ぐっと開く。
「いやぁっ!」
「ククク…アナルもマンコも丸見えだ。ざまぁねぇな。ほら!」
「んんっ!」
 まだ先ほどの強制自慰を余韻が残る秘部を、鮫島の指がサッと撫でる。
「なかなかキレイなアナルじゃないか。シワが何本あるか数えてやろうか?」
「こ、この鬼畜め…!んっ!さ、触るなっ…!」
「ククク…このまま、じわじわ嬲り殺しにして泣かせるのも楽しいが、お前は特別だからな。一気に堕ちてもらおう!」
 玲香の菊穴に、その器具の先端があてがわれる。
「やめてっ!いやっ!くっ…!」
 埋められていく先端。
 そして、次の瞬間、液体が体内に流れ込んでくる嫌な感覚が玲香の身体を包んだ。
 鮫島は媚薬の注入作業を終えると、
「溢れ出てこないようにしないとな」
 と言って、再びパンティを戻し、再度、その器具を玲香の目の前に突きつけた。
 先ほどまで入っていた液体はカラになっている。
「さぁ、強力媚薬が全て体内に注入されてしまったぞ。捜査官のリーダーは果たして耐えられるかな?」
 こうして、いよいよ、鮫島一派と抗争を続けてきた独立組織「乃木坂46」の室長、大将である桜井玲香への快楽拷問が始まった…。

鰹のたたき(塩) ( 2020/01/26(日) 15:04 )