乃木坂抗争 ― 辱しめられた女たちの記録 ―




























































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第一部 第一章・山下美月の場合
4.宴の始まり
「これはまた、いい女じゃないですか」
「スタイルも抜群、きっとお顔も可愛いんでしょうねぇ」
「この衣装がたまらなくそそりますよ」
 男たちが口々に言いながら、美月の元に集り、その身体を撫で回す。
「…っ!……っ!」
 美月は、猿轡だけでなく、五分ほど前に打たれた注射で舌が痺れて声が出せなくなっていた。
 もちろん手足も動かせない。
 よって、今の美月に出来ることは、唯一、自由に動かせる腰を右へ左へ揺するだけだ。
 しかし、その艶かしく動く腰は、かえって男たちを余計に焚きつける。
「おぉ、いやらしい動きをしますなぁ」
「どうやら首筋が敏感なようですね」
「まぁ、じっくりといきましょう。時間はたっぷりある」
 男たちの手は止まらない。
 今、美月が直面する問題は二つあった。
 一つはアイマスクで視界を奪われ、どこから手が伸びてくるか分からなくて対応が追いつかないこと。
 そして、もう一つは、身体の異変だった。
(か、身体が…熱い…!)
 気付いたのは数分前、だが、その時は気のせいだと思っていた。
 しかし、時間が経つにつれ、その熱は明らかに美月の体内に宿っていた。
(あれだ…!)
 さっき無理やり飲まされた妙な液体、あの飲み物の仕業に違いない。
 そんな美月の困惑を感じ取り、ニヤリと笑った支配人は、
「では、そろそろ次へ行きましょうか」
 と言ってハサミを取り出した。



 男たちが歓声を上げる。
 その声も、目隠しをされている美月にとっては何を喜んでいるのか分からない。
(……!!)
 誰かの手がレザースーツの袖を引っ張った。
 そして耳に聞こえる、チョキチョキという音。
 だんだん、右腕が涼しくなってくる。
(ふ、服を切られてる!?…嫌っ!やめてっ!)
 そう叫びたい。が、声が出ない。
 そうしてるうちに左腕も風通しがよくなった。
 さらに右足、左足と、どんどんスーツが切り裂かれていく。
 やがて美月は、スーツを抜き取られ、ブラジャーとパンティだけの姿にされた。
「おぉ〜!」
 色白の美しい肌に男たちが、ひときわ大きい歓声を上げる。
「では、まず、上から披露してもらいましょう」
 男の手がブラの肩紐を引っ張る。
「っ!…っ!」
 まだ声が出ない。
 急に、肩紐の引っ張る力がなくなった。
 もう片方も。
 そして、突如、胸の谷間に触れる冷たい鉄の感触。
「さぁ、皆さま、ご覧ください。ご開帳です!」
(嫌っ!や、やめて!見ないで!)
 抵抗むなしく、チョキン、という音とともに胸の圧迫感が取り払われた。


(つづく)

■筆者メッセージ
☆作者の後日談☆

変態オヤジの魔の手が迫る…というシーンでした。

読み返し、まだ四話にして早くも、小出しすぎてウザイですね(苦笑)

おそらく、ぎゅっとしても、後の短篇集の一話にすら及ばないほどのサクサク展開。

読者さんにとっては、これぐらいの方が読み進めやすいのかもしれませんが、書いてるこっち(※関西出身、貧乏性の気あり)としては、「中身がぎっしり詰まってるほどお得!」というクリームぱん理論で、今から思えば、この頃は一話を贅沢に使ってる感覚です。
鰹のたたき(塩) ( 2019/12/04(水) 09:58 )