2.不覚
目を覚ました時、美月は店内のド真ん中で仰向けに寝かされていた。
(ここは…?)
起き上がろうとしたが、身体が動かない。
そこで初めて、今、自分の身体がテーブルの上にあることに気がついた。
両手足は四隅の脚に繋いで固定されているため、「X」の字で寝かされている格好だ。
振りほどこうと暴れてみたが、拘束具は外れそうもない。
逆に、揺れる鎖の音に気付いて、男たちが部屋に入ってきた。
「気がついたか?女スパイさん」
「くっ…!」
「まったく大胆な女だ。危うくデータを抜き取られるところだったぜ」
リーダー格の男はそう言うと、おもむろに美月の胸の谷間に手を突っ込んだ。
「や、やめろよ!変態!キモいんだよっ!」
と美月は罵ったが、男を無視をして隠してあったメモリースティックを抜き、
「残念だが、これは返してもらう。大事なお客様の個人情報だ。我々にも守る義務がある」
「気取ったことを言うな!悪趣味なパーティーのくせに!」
「ほぅ。どうやら我々のことを少しは知っているようだな」
男は不敵に笑い、
「だが、別に悪趣味でも何でもないぞ。楽しいパーティーだ」
「ウソをつけ!楽しいのはアンタたちだけでしょ!」
「ふふふ。ならば実際に確かめてみるか?」
「な…に?」
美月は、その言葉に、一瞬、戸惑って、
「ど、どういう意味よ?」
「言った通りさ。お前さんも俺たちのパーティーに参加すればいい。まぁ、参加といっても、お前はメインディッシュの方だがな。ふふふ」
男の言葉で、美月はハッとした。
コイツらが裏で輪姦パーティーを開いているという噂のこと。
そして、今、店内のテーブルの上で拘束されている自分の状況。
(ま、まさか、私を…!?)
「ふ、ふざけるなっ!」
美月の顔色が変わり、暴れようと身体を揺する。が、四股を拘束する鎖はびくともしない。
「では、そろそろ準備に入ろうか」
男はそう言うと何やら液体の入ったショットグラスを取り出した。
見慣れない色の飲み物だ。
掲げられたグラスを訝しげに見ていると、男は、何も言わずに、突然、その飲み物を美月の口に流し込んだ。
「んっ、ぷぁっ!」
慌てて吐き出そうとする。が、男がそうはさせまいと手の平で口を覆う。
出口を失ったその飲み物は残る唯一の道である喉奥へと流れ込んでいく。
口の中が空になったのを確認してやっと男の手が離れた。
「げほっ、げほっ!」
美月は激しくむせる。
「安心しろ。別に飲んで死ぬようなものじゃない。まぁ、我々からのウェルカムドリンクとでも思ってくれ」
男は、はぐらかすように言い、
「さぁ、パーティーの準備だ。楽しい夜にしようじゃないか」
と笑った。
(つづく)