冒険
04
約束していた日曜日になった。部活が終わるとすぐに自宅に戻り、その汗臭い体をシャワーで流し花見の準備をした俺は優子さんの家へと向かった。色々と肯定的には考えられないが、形的にはこれもデートなのではないかと勝手に思ってはしゃいでいたのも事実だ。
彼女の家につくとすぐに彼女は出てきた。今日は家に上がることもなくすぐに出発した。
「普段はお花見なんていってなかったんだけどさー。なんか今年は行っておきたくなったんだよね。」
「僕はお花見始めてですよ、あまり時間もなかったし来ようなんて言う人も回りには居ませんでしたしね。」
そこまで言うと優子さんはちょっと目を細めて振り返った。
「陸君さー、いつまで僕とか使ってるわけ?そんな堅苦しい態度じゃこっちまで疲れちゃうよ。」
いかにも気だるいと言った表情と態度をしている彼女はそのまま歩き続ける。
「すいません、部活の規則で目上の人には僕って言わなきゃいけないんで、つい癖になってしまってて…」
「ねえ、私たちに目上とかそういう上下関係は要らないよ。」
「えっ、でも優子さんは年上ですし。」
「分かった、じゃあ私も陸って呼ぶから。お互い君づけとかさん付けとかなしで、フランクにいこうよ。」
そう言いながら笑う彼女はとても魅力的だ、なぜ自分がここにいることができるのかが少し奇妙でしかたがなかった。
「そうですね、ちょっと堅いですもんね。じゃあ少しずつタメで話せるようにしていきますか。」
「いやまず今の話何一つ敬語抜けてないから!」
崩れながらツッコミをいれる彼女を見て、表現力豊かな様にますます魅力を感じる。一緒にいて飽きないとはこう言うことを言うのだろう。
「最初は無理で、無理だよ。こんな風に詰まっちゃいますもん、そのうちきっと自然に話せますよ。」
「意識しなきゃ治せないと思うけどね。」
そう言って笑いながら歩いていると、気づけば花見の会場に入っていることに気がついた。もう今にも日は落ちようとして辺りは色づいたオレンジの太陽とその色には劣る提灯のオレンジ、そして反対の空は夜桜の白を映えさせる薄紫の空が広がっていた。

愛生 ( 2014/07/26(土) 16:29 )