三毛猫
05
彼女の家に着くのは容易だった。なにもストーカーなんかじゃなく昨日拾い上げたカード類の入った財布のようなものに住所のわかるものが入っていたのだ。マップアプリで検索して彼女の家に向かう。しかし昨日死のうとしていた人間だ、家についてからその命を絶つ可能性もある。そう考えると早くいかなければと思う気持ちの中にどこか恐怖も感じていた。
そして彼女の家の目の前についたのだが、現に躊躇って動き出せない自分がいた。思いきってチャイムを鳴らしたのだが物音ひとつしない、いよいよ怖さが現実味を帯びて体にまとわりついてきてどうしていいか解らなくなっていたときだ、
「えっ、昨日の君だよね!なんでいるの?」
不意に彼女が二階の窓から声をかけてきた。少しビクついて声を出せないと
「あ、もしかしてストーカーとか…?」
「あ、その、違います!この落とし物を…」
そう言いながら急いで証拠となる財布を見せた。
「なんだ、ストーカーかと思ったのにー」
唇をすこし尖らせてからかうように笑みを見せる彼女は少しも自分の訪問気にしている様子はなかった。
「まぁいいや、上がってよ!」
そういうと彼女は下に降りてきてドアを開け、この身元も知らぬ訪問者を快く家に招き入れた。こんなに警戒心がなくていいのかと思ったが、言われるままに彼女の家に上がった。

愛生 ( 2014/06/22(日) 22:54 )