05
「ここが俺たちの研究室だ」
フォーゼシステムの説明とこれからの作戦について話し合うために、二人は高橋家へと連れられていた。巨大な一軒家へ入り、大きな本棚の仕掛けを動かすと、地下への階段が現れる。それを降りると、古風な家の内装とはかけ離れた、近代的で科学的な内装が広がる研究室へとたどり着く。
「こんな漫画みたいなこと、ホントにあるんだな…」
「なんだかよくわからないものがいっぱいあるよ…」
驚き、開いた口が塞がらない二人。それに対し、慧は手をパンと叩いて二人を我に返す。そして、二人のことも考えて手早く終わらせるために、早速説明へと入る。
「まずはフォーゼシステムの説明だ。さっき睦月に渡したものがフォーゼドライバーと呼ばれる変身アイテムだ。睦月、ドライバーを出してくれ」
慧の指示通りドライバーを取り出す睦月。それを手に取って説明を始める慧を、睦月と奈和はじっと見つめている。
「ここに填まっている四つのスイッチ。これはアストロスイッチというものだ。このスイッチをオンにすると、モジュールというそれぞれのスイッチによって違う装備が展開される。ちなみにスイッチは装着者から見て右から右腕、右足、左足、左腕に対応している。そしてこの順番で○、×、△、□とスイッチのマークが決められていて、同じマークのスイッチしかドライバーに入らないようになってるんだ。」
「えっ…と、じゃあその四つ以外にもスイッチはあるってこと…?」
「そうだ。古畑の言う通り、フォーゼシステムには全40のスイッチがある。まぁ、今使えるのは八つ目までだが。調整が終わり次第、使えるようになる。」
「なるほどな。それを駆使して、あのゾディアーツとかいう化物と戦うわけか」
納得しながら頷く睦月の様子が面白いのか、朱里はクスクスと笑い声をあげる。またバカにされているような気がして、睦月はムッとした顔で朱里を見る。
「何がおかしいんだよ」
「いや、お気楽だなぁって思っただけ。見たでしょ?ゾディアーツの恐ろしさ。死ぬかもしれないんだよ?というか、そもそも私たちがいなかったら死んでただろうしさ。君は死ぬのが怖くないの?」
「怖くないわけないだろ。ただ、目の前で誰かが傷つく方がもっと怖い。助けられる人は誰だって助ける、これが俺のモットーだ」
「やっぱり面白いね。君は普通じゃないよ」
朱里の言葉にカチンときた睦月は思わず怒りを露にしようとするが、慧がそれを制する。そして二人に向かって呆れつつ言葉をかける。
「こんなことしてる場合か。今は古畑のことの方が大事だろ。とりあえず、睦月はできる限り古畑の側にいてくれ。できるなら学校外、つまり帰宅や登校の時もだ」
「わかった。できる限り…」
「慧はやっぱり頭が固い。それには大きなミスがあるって。彼女が家にいるときに襲ってこないとは限らないでしょ?大体、それじゃあいつが襲ってこなくなるから、倒せなくなるし。だから、君はむしろ一緒にいなくていい。彼女を餌にするの。」
「おい!それじゃ古畑が危険だろ!」
「離れたところにタカツクンを待機させれば問題ないでしょ?本当に彼女を守りたいなら、早くゾディアーツを倒すべきだと思うよ」
奈和を危険な目に遭わせるのにはあまり乗り気ではない睦月だが、朱里の言葉に渋々と頷く。そして、奈和へ断りを入れる。
「絶対に守るから、この作戦に乗ってくれ」
真っ直ぐ自分を見つめる瞳にドキドキしながは、奈和はコクンと頷く。睦月のおかげか、不思議と不安な気持ちは沸いてこなかった。