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「みんなが二年生に進級した初日ですが、なんと!このクラスに転入生が来ました!」
教室に響く担任教師、松井玲奈の声。その言葉にクラスの生徒のほとんどが騒ぎを始める。男子なのか女子なのか、男子ならばカッコいいか、女子ならばカワイイか。中にはテンションの高い玲奈に対する男子の茶化しも混じっている。
教師になってからまだ二年ほどの玲奈だが、このような騒ぎには意外と慣れっこであった。ふざけた男子の言葉は無視し、収拾がつかなくなる前に手を叩き、素早く騒ぎを鎮火させる。
「はいストップ。そろそろ転入生の子が待たされて可哀想だからね?さてと、じゃあ入ってきて!」
ボソボソと声が残る教室の雰囲気を一蹴するように、扉が勢いよく開かれる。スライド式のドアのため、その音もかなりのものだった。
そんな彼の行動で教室には一瞬の静けさが訪れたが、すぐに騒がしさを取り戻す。入ってきたのは男で、顔面偏差値が高いのか、女子からは黄色い声の混じった会話が広がる。男子からも嫌悪の声はなく、どのような人間かを期待する声が少なくない。
そんなざわつきの中、転入生は教卓にドンと手をつき、教室を静まらせて口を開いた。
「俺の名前は高津睦月!これから一年間よろしくっ!」
三度騒々しくなる教室。誰とでも気軽に話せそうで、物怖じしないその雰囲気は、早くもクラスメートの心を掴んだようだ。