04
いつの間に眠りについてしまったのだろうか。真斗が目を開ければもう山の奥から太陽が半分以上顔を出していた。
ふと、顔を上げればさっきまで見ていたはずの深夜の漫才番組は朝のニュースに代わっていた。
太陽の光が爽やかに身体を包み、フレッシュな若手の可愛らしいアナウンサーがニュースを読む声が聞こえる。普通なら、このような朝は気持ちよく一日がスタートできることだろう。
しかし次の瞬間、真斗の視界には気持ちの良い朝を覆す程の最悪の物が飛び込んできた。
真斗の周りには白濁色の液体や涎が垂れたゆりあのグラビア雑誌が散乱していたのだ。
おまけに下半身を見ると衣服類は一切身に付けておらず、剥き出しになった陰部には雑誌と同じ液体がへばりついていた。
真斗「あぁ、なんで俺って自滅するようなことばっかりするんだろう」
もう起床して1時間が経とうとしているのに未だに真斗の目にはその光景が広がっている。
普段、車を運転して酔うことなど滅多にない真斗だが今日は吐き気がする。
真斗には寝ぼけが酷いという悩みがあった。
寝ているときは記憶が無いのだがおそらく自慰をしていたのだろう。
実際に無意識の内に寝ぼけながら自慰をしていることもしばしばあった。
そういう時は大抵、ムラムラと溜まっているときが多い。
しかし何故だろう、昨晩は性欲よりも孤独感に蝕まれ、そんな気分ではなかったはずだ。
真斗「こんなんで、ゆりあにどんな顔して会えばいいんだよ…」
しかし、いくら言い訳したところで、やったことに変わりは無い。
一時の興奮と快楽を追い求め、その興奮と快楽を手に入れた先にあるのはどうしようもない虚しさだけ。
真斗だけに限ったことではない。世の男なら誰もが経験したことがあるはずだ。
ふと我に帰ると、真斗はゆりあの部屋の前に突っ立っていた。
ここまでどんな道を通り宿舎まで辿り着いたのか、真斗はほとんど覚えていなかった。
運転中もずっと虚しさや自責の念、グラビア雑誌に笑顔で写るゆりあの顔だけが真斗の頭をぐるぐると支配していた。
真斗「仕方ない。いつも通りにしてればそれでなんとかなるだろ」
だが、いつまでも扉の前にいる訳にはいかなかった。
この後にはドームライブという重要な仕事が控えている。そんな時に遅刻などしていられない。
真斗は腹をくくり、ノックをして思い切ってドアを開けた。
ゆりあ「あっ、おはよう。ちょっと簡単なメイクだけして行くからもうちょっと待ってて」
久しぶりの大きいライブということもあり張り切っているのだろうか、ゆりあはいつもより早く起きていた。
テーブルの上には小さな鏡が置いてあり、手にはメイク道具が握られていた。
真斗「あっ、ああ。まだもう少し余裕があるから全然大丈夫だぞ」
真斗は少しゆりあに罪悪感を感じながらも、部屋のベットに腰掛けた。