第四章
03

真斗「シャワー気持ちよかった。やっぱりちょっと汗かく程度の野球は楽しいよな。久しぶりだから、明日に肩が痛くなるのは厄介だけど」

真斗はゆりあをAKBの寮に送り届けた後、自分で借りたアパートにいた。
風呂から上がり、布団にダイブすればそれは数少ないプライベートな時間。
ホテルでも事務所の宿舎でもない自分の部屋。
真斗はこの瞬間が好きでわざわざ値段が高くてもアパートを借りた。

もちろんメンバーだけでは無く、マネージャー専用の寮も都内にはあるのだが真斗は寮に入る事を嫌がった。
確かに寮なら借りる値段も安く済みメリットも多いのだがどうも心から落ち着ける気がしなかった。

どこにでもある1Rのアパート。ユニットバスがあるものの室内は狭かった。
物も布団、その上に散乱する雑誌、テレビ、冷蔵庫、エアコンしかない。
男一人暮らしなら、必要最低限のものしかいらないのだ。

真斗「さてと、そろそろ散らばりまくりの雑誌でもまとめるとするかな」

真斗はテレビをつけ、自分の体の周りにある雑誌を片付け始めた。
枕元、シーツの下にまで広範囲に渡って雑誌が次々に出てくる。
それも、全てゆりあのグラビアの表紙かゆりあのポスターやクリアファイルなどのおまけ付きのものばかりだった。

自分の愛おしくて仕方ない初恋の相手が載っている雑誌。
それを必死に掻き集める自分。
今の自分の姿はどれほど醜いだろうか。真斗の脳裏にはそんな考えが浮かぶ。

今までいくらでもこんな気持ちを体感してきた。
いくらもがいだってその辛さは軽くならない。その事を真斗はよく知っている。

真斗「ん、この雑誌何年前のやつなんだろう?」

ふと真斗は、まだ押さない顔立ちのゆりあが表紙のグラビア雑誌を手に取った。
おそらく今から五年程前のデビュー当時の頃だろうか。
よくその雑誌を見るとSKEが初めて雑誌の表紙を飾った時のもののようだ。

真斗「へぇ、こんな頃もあったけ?」

そこには、端の方でビキニではない、スポーツブラのようなお子様水着を着たゆりあが写っていた。
それが現在の雑誌の表紙を見てみればどうだろう。
カメラに向かってポーズを決め、大人の色気を漂わす大人なゆりあへと成長していた。
水着もセクシーなビキニを着ているし、胸元だって昔に比べれば随分と膨らみを増していた。

でも、真斗はその画像を見ても自然と興奮しなかった。
どちらかと言えばゆりあが急に恋しくなってしまったのだ。真斗の目からは涙が落ちていた。
しかし、真斗にはなぜこんなにも寂しく、孤独感が募っていくのか分からなかった。


■筆者メッセージ
明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします。

とは言いつつ、相変わらず亀更新がやめられない今日この頃です(笑)
珠推しくん ( 2016/01/04(月) 01:15 )