01
史上最強と言っても過言ではないくらい暑かった今年の夏。
もう10月に差し掛かろうとしているのに未だに日差しは強かった。
真斗「はぁ、明日からは忙しくなるだろうな。それにこの暑さもだるいな」
ゆりあ「そんなこと無いよ。夏の野外ライブに比べれば全然だし、ドームライブはやっぱ楽しいよ」
真斗とゆりあは二人揃って今日、久しぶりの休日をもらっていた。
理由は翌日から秋の東京ドームでのライブ始まるからだった。
賢太「なんだ、またライブかよ。それにドームで歌うなんていつの間にゆりあは大スターになったんだか」
相変わらず、賢太が経営するバーは閑散としており、客が来そうな気配がなかった。
もう夜の9時にもなろうとしていて、本当なら一番店が忙しい時間でもおかしくはない。
真斗「そうだよ。ゆりあは国民的人気アイドルだぞ」
賢太「確かにな。それは認めざるを得ないだろうな」
つい10年程前までは、いつも田舎で日が暮れるまで三人仲良くつるんでいた。
その様は血は繋がっていないものの、本物の兄弟そのものだった。
だが、今はたかが寂れたバーの店長と国民的人気アイドル、そのマネージャーという立場である。
誰が見たってその差は明らかだった。
ゆりあ「いや、賢兄はやっぱり凄いよ。アイドルやってるより自営業としてお店やってる方が大変に決まってるじゃん」
賢太「そう言ってくれるのはゆりあだけだ。それに比べて嫁さんや真斗からは馬鹿にされてばっかだ」
賢太は少し拗ねながら、自分で作ったカクテルを傾けた。
賢太の喉が音を立てて動く。
南那「こら、賢ちゃん!あんまり店のお酒に手を出さないでって言ってるじゃん」
すると、店の奥から南那が出てきて、賢太の手からカクテルを奪った。
そして、賢太が出した酒を棚に片付けていく。
ゆりあ「ねぇ、真斗。あの人が賢兄の奥さんなの?」
真斗「ああ、そうだ。お前会ったこと無かったんだっけ?」
ゆりあ「ないよ。賢兄が結婚したって話しか知らない」
どうやらゆりあは南那とは面識がなかったようだ。
だが、南那はゆりあの顔を見るなり直ぐにゆりあに近づいてきた。
南那「もしかして、この顔はゆりあちゃん?私、SKE好きだったの、会えて嬉しいよ!」
南那はゆりあの手を取るといきなり抱きついてきた。