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竜司「はぁ、沖縄は暑過ぎる。やっぱりここは涼しいな」
朱里「本当だよ、グラビアの撮影なら都内の浜辺で充分だよ。なんの為に沖縄まで行かなきゃならないだか」
どうやら、この2人は沖縄まで撮影に行っていたようだ。
それに明日もここ、名古屋でロケがあると言うことでこの宿舎に泊まりに来たらしい。
真斗「でも良いじゃねえか。俺なんか一日中ずっとロケして公演、それに移動だぞ。どうせ、沖縄ならバカンスし放題だろ」
南国の沖縄。竜司の言う通り時期が時期のため、確かに暑いかもしれない。
でも、グラビアの撮影ならば恐らく綺麗なビーチで行われるに違いない。
エメラルドグリーンの透き通る海に太陽に反射して輝く砂浜。
想像するだけでも、全てが魅力的に感じる。
竜司「そうだな、まぁ暑いこと以外は真斗の言う通り快適だったな」
朱里「確かに、かき氷とか海でも遊んだし楽しかったのは言えてるかも」
2人はニヤニヤしながら、お互い顔を合わせる。
どうせ、沖縄でカップルがすることなど分かりきったことだ。
真斗「それで、チューの一つや二つ出来て幸せだったてことか」
竜司「おっ、さっすが真斗。長年の付き合いなだけあって分かってるな。大正解だよ」
そして、朱里と竜司は真斗の目の前でキスをした。
その姿からはお互い、幸せオーラが滲み出ていた。
真斗「ごほん、ここに他人がいることを忘れるなよ」
真斗の咳払いを聞き、二人は名残惜しそうに唇を離す。
竜司「もう、カップルなんだからキスぐらいするのは当たり前だろ。そんなに羨ましいしいならゆりあに告ればいいんだよ」
朱里「本当だよ。ゆりあちゃんは多分真斗のこと嫌いじゃないと思うよ。それに幼馴染みなら勝算は高いんじゃないの」
真斗「ほっとけよ。これは俺の恋愛なんだからよ」
実は竜司と朱里にはもう数年前にこのことが知れていた。
真斗はどうしても辛くなったとき、いつも竜司に相談に乗ってもらっていた。
そのこともあって真斗は竜司にゆりあのことを相談したことがあったのだ。
竜司「ほっとけってなんだよ。ずっと前、俺にこの恋愛が辛いって泣きそうな顔で相談してきたのはどこのどいつだ?」
真斗「それは、そうだけど…。とにかくまだゆりあに告白するのは早い」
真斗にはまだ覚悟か決められないでいた。
告白して玉砕したときが怖くて仕方なかった。
今まで幾度ゆりあに告白しようと試みたことか。
しかし、その度に振られたらどうしよう。その考えだけが真斗の脳裏によぎってしまうのだった。
竜司「全く、そんなことだからいつまでも前に進めないんだ。このままの関係をずっと続けて何になるだよ」
朱里「そうだよ。このままなら真斗がしんどいだけだよ。好きなのに、愛してるのに近くにいるだけで何も出来ないなんて辛すぎると思うけど」
朱里は竜司の腕に抱きついた。
その姿からは二人が深い愛で結ばれているのがよく分かった。
真斗「もう、言われなくても分かってるよ。そのうち告白するさ。
じゃあ俺は部屋に帰るわ」
真斗もこれ以上この空間にいるのは落ち着かなかった。
幸せなカップル、かたや片想いから前に踏み出せない情けない男。
どう考えても不釣り合いである。
竜司「じゃあな、次はお前の横にゆりあがくっついてることを祈ってるわ」
真斗「ああ、そうなってればいいんだがな。じゃあお二人はアツアツの時間をお過ごし下さい」
そう言って真斗は扉を閉じた。