03
ゆりあ「うーん、やっぱりアイスの王道はガツンとみかん以外あり得ないね」
真斗「うん、久しぶりに食べたけどこの美味さはやめられねぇや」
ゆりあと真斗はいかにも幸せそうな笑顔でアイスにかぶり付いていた。
この暑さなのだから、確かに冷たいアイスは誰にだって美味さが滲みるものだろう。
真斗にはその上、意中のゆりあが自分の買ったアイスを喜んでくれていると言う優越感もある。
当然の事ながら普通のアイスであっても美味さは倍増する。
真斗「でもさ、ゆりあ最近甘いもんばっかり食べまくってるけど体重大丈夫か?」
しかし、そんな幸せな真斗にも一つだけ悩ましい問題があった。
それはゆりあの体重の件にあった。
ゆりあは比較的、太りやすい体質で上層部の指示で水着撮影などが多い夏になると糖類や炭水化物を制限されることになっていた。
その為、グラビアの撮影前は必ずきちんと食事制限を守れているかという体重測定がある。
ゆりあ「そうだ、まぁまぁマズイね。もうすぐでヤンジャンの表紙のグラビアがあるって先週ぐらいに言ってたもんね」
真斗「もう…てっきり忘れてたじゃねえかよ!これじゃまた上から俺が怒られる…」
ゆりあはここの所、カラオケや真斗の甘やかしによってスイーツや唐揚げなどの揚げ物も大量に摂取していた。
真斗もなるべくゆりあの体重変動を起こさない範囲で食べさせようとしているが、つい食べさせ過ぎてしまう。
真斗からすると好きなゆりあがさっきのようにねだってくるのだ。
当然のことながら男である真斗にそれを振り退けられる理性などある訳がない。
真斗「でもさ、来週までに今日も含めて3回ぐらい公演あるからそこで頑張ればなんとかなるさ。それに今日で思いっきり踊ればイケるぞ」
SKEのダンスと言えばAKBグループの中でも屈指の難易度も高く、より激しいダンスが代名詞となっている。
そのため、ゆりあもSKE時代は多少今のように食べ過ぎたところであまり体重変動を起こさなかっのだった。
ゆりあ「でも、今日はAKBとは訳が違うじゃん。こんなに暑い日にあのダンス思いっきり踊たら多分倒れるよ」
ゆりあの性格上と体力上、普段公演ではゆりあはあまりはしゃがないタイプだった。
別に1公演だけなら体力は持つのだが、それではその後のハードスケジュールがこなせなくなってしまう。
真斗「でもゆりあ、2、3日でいいから、だーすーとか西野未姫ちゃんみたいに頑張れよ。ほら今日だってまさにゃとか結構踊るメンバーもいるだろ?」
しかし、そんなメンバーの中でも西野未姫やSKEでは須田亜香里や大矢真那のように劇場公演のダンスで世に名前を発信したメンバーもいる。
それらのメンバーはいつか首が折れるという噂もファンの間で囁かれている。
さすがにそこまでしろとは言わないが、もう少し彼女らを見習って欲しいものだ。
ゆりあ「いや、まさにゃさんは次元が違うよ。それにだーすーとか未姫ちゃんはチーム違うし」
真斗「屁理屈は要らねえよ。もうちょい頑張れば痩せる上にファン層も増えるかもしれないぞ?」
ゆりあ「でも、この暑さに劇場のライトは地獄だよ」
確かにゆりあの言い分にも一理あった。
公演の密室にライトなどの照明の暑さはより一層体力を奪おうとする。
タクシーの運転手「お客様、劇場に着きましたよ」
すると、どうやら劇場の裏口についたらしい。
SKEのルール上、関係者は道の混乱を避けるため裏口から入ることになっている。
真斗「まぁ、とにかく倒れない程度で頑張れば痩せるだろう」
真斗とゆりあは裏口の階段を登って、劇場内に入っていった。