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真斗「ふぅ、それにしても暑いな。ゆりあも公演中、倒れ無いように注意しとけよ」
ゆりあ「もう、そんなこと言われなくても分かってるわよ、いつまでも小学生じゃないんだから」
真斗とゆりあは駅前のタクシー乗り場でうちわで顔を扇ぎながら、打ち合わせをしていた。
本当なら真斗は駅の中の冷房の効いた待合室などで打ち合わせをするつもりをしていた。
しかし、この暑さで待合室は仕事帰りのカッターシャツの男たちがごった返していたので、こんな状況になったという訳である。
真斗「公演は9時から10時までがゆりあの出番だ。本来の公演は8時から始まることになってるからもうすぐ劇場は開演ってところだろう」
真斗が腕時計を確認すると時刻は7時50分を少し過ぎていた。
真斗は修二郎から出演の30分前には必ず劇場入りする様に言われている。
ゆりあ「もうそこまで言われたら分かった。どうせ出演30分前に劇場入りしろってことでしょ?」
ゆりあもこの業界に長くいるだけあり、大体の目星はついていた様だ。
たが、時間まで正確に言い当てることなどマネージャー業に従事する真斗でも難しいことである。
真斗はゆりあのアイドルとしてのプロ意識の高さを実感した。
真斗「さすが、この道5年のことはあるな。パターンまで覚えてるなんてよ」
ゆりあ「えへっ、そう?すごい?ならさ、ご褒美っていうかアイス奢ってよ」
ゆりあは真斗に手を合わせてウインクしながらアイスをねだってきた。
《うわっ、このゆりあ可愛いかも…!》
真斗は身体のなかで心拍数や脈拍が速くなるのを感じた。
そして、心の中で落ち着く様に自分の興奮を収めようとするが、どうもその欲望に蓋をすることは出来ない。
真斗「しょうがねえな…。いつものやつでいいんだろ?」
ゆりあ「へい、いつもので!真斗さんゴチになりやす!!
ゆりあは上機嫌でコンビニに向かう真斗に手を振っていた。
でも、その一方で真斗はゆりあの笑顔で顔がふやけていた。
まぁ、大好きなゆりあにとびきりの笑顔とウインクでお願いされたら、当然真斗だって動かずにはいられない。
それに丁度こんな暑さのときはさっぱりとしたものが食べたくなるものだ。
真斗「ええっと、俺はいつものようにガツンとみかん♪ゆりあもいつもの通りガツンとみかん♪」
真斗はゆりあ同様、上機嫌でさっと買い物を済ませると、暑さなど気にせずスキップでタクシー乗り場へともどっていった。