第二章
13
ゆりあ「ねぇ、真斗はさっき何を中村マネージャーと話してたの?」

ロケ車の中でゆりあはいつものように、仲の良いメンバーとLINEをしながらおもむろに真斗に尋ねる。

真斗は修二郎に挨拶をしに行くだけだと言っていたが、それにしては、やけにロケ車に帰ってくるのが遅かった。
まぁ、それは気のせいかもしれないが、ゆりあは仲の良い先輩、後輩関係の修二郎と真斗の会話の内容が単純に知りたかっだと言うこともあったのだろう。


真斗「いや、単純に仕事の話をしてただけだよ。
ほら、今日も夜は劇場公演だろ。その打ち合わせみたいなもんだ」

真斗はゆりあの問いにとっさに嘘をついた。
当然のことながら、本当の話などゆりあの前では口が裂けても言えないことである。

ゆりあ「ふーん、でもなんか怪しいな。大体打ち合わせって現地でも出来るし、今じゃなくてもいいでしょ?」

真斗「いや、ラジオ収録が終わって公演はすぐたぞ。しかもゆりあは公演中の特別ゲストだから、俺たちが劇場着いた頃にはマネージャーはみんな忙しいんだよ」

真斗は自分で言うのもなんだが、上手く言い逃れ出来たと心の中でガッツポーズをした。
この嘘なら、頭の切れる人物ならともかく、ゆりあのような馬鹿にバレることは、まずありえない。

ゆりあ「あっ、そう。でも話は違うけど、中村マネージャー、彼女か奥さ んでも出来たんじゃない?なんか服とかおしゃれになってるし」

真斗「そうかな…?俺の知ってる所にはいなさそうだけどな」

そう言って真斗がすっと、後ろを振り返ろうとすると、真斗の目の前にゆりあの顔があった。
なんと、ゆりあは真斗の知らぬ間にLINEを辞め、シートの上に顎を置いている状態で真斗と話していたのだ。
真斗は一瞬、ゆりあの顔の前で固まってしまった。

ゆりあ「もう、顔近すぎだし。ほら、それによそ見してたら信号が変わった事にも気付かないし、事故っても知らないよ」

ゆりあが前方を指差すと、赤だった信号が青に変わっていた。
幸いなことに後ろに車は止まっていなかったのでクラクションを鳴らされることもなかった。

真斗「悪いな。ちょっとボケッとしてさ、寝不足みたいだな」

ゆりあ「もう真斗ってそう言う抜けてる所が多いんだから。寝不足なら、私の収録の間とか移動の新幹線で寝るとかしないと倒れるよ」

真斗「ああ、ラジオ終わったら新幹線で一眠りするわ」

真斗はゆりあの顔を見た瞬間に固まってしまった原因は寝不足だと言ったが、これもまた嘘だった。

本当は先程の修二郎との会話の内容を思い出したことにあったのだった。




■筆者メッセージ
ドライブ中に彼女が後部座席から顎をシートに乗せて喋りかけてくる。

あの後ろからひょこっと首を出してる姿。
恐らく彼女のことがえげつなく好きになってしまうでしょうね(笑)
珠推しくん ( 2015/11/20(金) 01:37 )