第二章
12
修二郎「ふぁ、お前は分かり易すぎるんだよ、この野郎」

修二郎は空になったコーヒー缶の角で真斗の頭を軽く小突いた。

真斗「いや、分かり易すすぎるってどう言う意味なんですか?俺、しゃ修二先輩になんかしました?」

しかし、真斗はしどろもどろになりながらも、なんとか惚けようとする。

これは絶対にバレてはいけないのだ、マネージャーが担当しているメンバーに恋しているなどバレたらしゃれにならない。
仕事だって止めさせられる可能性が大である。
それに、ゆりあが週刊誌に叩かれて、アイドルが続けられなくなることもあり得なくは無い。

外見では冷静を装っているつもりの真斗だが、心の中では色んな恐怖が渦巻いている。
その証拠に唇はカラカラに乾き、顔も青白かった。

修二郎「もう、いつまで惚けるつもりなんだよ。別に真斗が仮にゆりあが好きだとしても、俺には関係ないしな、チクリはしないよ」

ここでようやく、修二郎が真斗のゆりあに恋している本心を知っていることが明白になる。
真斗も修二郎がこの件とは別のことを話しているという可能性を信じて来たが、その望みもとうとう絶えた。

真斗「本当にすいません!ですけど、ゆりあには罪はないです。俺なら首切りの覚悟は出来てます…」

真斗はもう全てを修二郎に話すことにした。
今更、隠した所で隠し切れる訳がないのだ。
そう思った真斗は素直に白旗を揚げる。

修二郎「だから、チクリらねぇよ。俺はただ忠告しようとしてるだけだ」

真斗「わ、分かってます。次にゆりあに近づいたらクビでふよね。本当ありがとうございます」

真斗は動揺の激しさから言葉も噛み噛みだ。それに動悸で心臓が今にも止まりそうで張り裂けそうだった。

修二郎「全く、しっかりしろよ真斗!俺はクビの話なんかしてないぞ。
それに、お前みたいな柔な男はどんな女からも相手にされねぇぞ」

真斗「はひっ!もっと身体の硬い男になります」

修二郎「はぁ、遂に言葉の意味も通じねぇや…。こんなんじゃゆりあには振り向いてもらえないだろうな」

柔(やわ)を身体の柔軟性と勘違いするとは修二郎には考えられなかった。
だがそう思いながらも、修二郎はそんな小心者で単純な真斗を、まるで自らの弟のように感じていたのだった。





■筆者メッセージ
この小説を書いていて思うのですが、実際に好きな人が友達や親にバレたらどうするでしょうね?

多分、誰でも真斗君みたいな感じに動揺するんでしょうね。僕なんかもっとヤバそうです(笑)
珠推しくん ( 2015/11/18(水) 02:02 )