06
今となっては、街中で見かけることなどまず有り得ないビンの自動販売機。
この当時ですら、田舎だから存在したものの、都会ではあまり見かけなかった。
あれから十年。真斗がゆりあとの思い出深い自動販売機も現在は撤去され、その自動販売機が撤去されて以来見た事がない。
それだけ、現代の時代の時の流れは速いもとだと感じさせられる。
公園から徒歩で五分の位置にある自動販売機で真斗はゆりあと自分のコーラを買う。
そこで、コーラのビンの蓋を開けようとする真斗だがここである事に気づく。
真斗「うわっ、しまった…。俺は開けてすぐに飲めるけどあいつは俺が移動する間に炭酸が抜けちまうじゃねえかよ」
大体、この部類の自動販売機には栓抜きが設置されており、そこで蓋を開けてから飲むというのがメジャーではないだろうか。
しかし、ここから公園までは走っても3分は掛かる。
その間にずっと開けっ放しにしておけば炭酸による刺激が半減し、コーラそのもののおいしさも台無しである。
その相手が単なる友達なら真斗とてそんなには気にしないだろうが、今の相手はゆりあである。
別にゆりあも細かい事は気にしないだろうが、真斗のプライドがそれを許さなかった。
真斗「くそっ!せっかくゆりあを抱き寄せられると思えば起きるし、その雰囲気は最悪だし、挙げ句の果てにこのザマかよ」
真斗は歯がゆさのあまり、近くにあった小石を塀に向かって蹴り飛ばした。
しかし、思ったよりも石の手前を蹴ってしまいは石は少ししか飛ばず、靴だけがコンクリートに削られてしまった。
ゆりあ「真斗ぉー!キックってのはこうやってやるものだ!」
《ドスッ、ガサッ》
その瞬間、真斗は後ろからゆりあの強烈な蹴りを入れられた。
真斗「うわっ、痛い…。お前、空手技を素人に使ったら反則だろうが」
ゆりあ「だって、ゆりあが唯一真斗に勝てる事と言ったらキックしか無いしね〜」
実は運動音痴のゆりあだがこの頃から空手を習い事として初めており、その中でも彼女は蹴り技に関してはピカイチと言われていた。
他のスポーツは出来なくとも小さな体から繰り出される蹴りは外見とは異なり強烈である。
ゆりあ「でも、炭酸が抜けたコーラを飲まそうとした真斗が悪いんだからね」
真斗「ああ、ごめんごめん俺が悪かったよ。
ほら、これは今買ったばっかりだから」
そう言って真斗がゆりあに対し、コーラを手渡そうとすると…
《プルルルル〜、プルルルル》
ゆりあのスカートのポケットからいきなりアラーム音が鳴り出した。
これはゆりあが昔に、親の帰りが遅くなることが多いからとゆりあの母親が買い与えたキッズ携帯である。
キッズ携帯にはキティーちゃんのキーホルダーがついており、そこに”ゆりあ”と名前が入っていた。
ゆりあ「あっ、携帯鳴ってるじゃん」
ゆりあがスカートからキッズ携帯を取り出すと、”ママ”と表示されているトップ画面が見えた。