第一章
05
いつものようにジャングルジムからは西の空に傾きかけている夕陽が見える。
おそらくゆりあにつられて眠ってしまった真斗は昔の夢を見ているようだ。
それを眠って居ながらも真斗は自分が夢の中にいるということに気がついていた。

ゆりあ「うーん、おなか、すいたにゃ…ケーキに、ぷぁふぇ、チョコ…」

そして真斗の隣にはカラオケボックスと同じような体勢で真斗に寄りかけながら眠る幼き日のゆりあがいた。
気持ち良さそうに眠る彼女は相変わらず寝言で好きなスイーツの名前を呼んでいる。
しかし、未来の19歳のゆりあとは違い、可愛らしいキャラクター物のTシャツにはOO小学2年木崎ゆりあと書かれた名札を着けている。
真斗もふと自分が着ているシャツをみると仮面ライダーが描かれており、その胸にはゆりあと同じように名札が付けられていた。

そして、さっきまでのように真斗は眠るゆりあを抱き寄せようと回そうとしたその時…

真斗「うわっ、ヤベッ!」

真斗の手はゆりあの肩を掴みきれず、ゆりあの首が垂れ、体がバランスを崩してしまったのだ。
そりゃ、誰だって寝ているときにいきなり体を触れたら首が垂れることもあるだろう。

恐らく数十メートルも高いところにあるジャングルジムから落ちたら、骨折どころでは済まないこともあり得る。

真斗はまだ小さな腕に精一杯の力を込めてゆりあの体を受け止める。

ゆりあ「うん?おはよう。ってなんで真斗がゆりあのこと抱っこしてるの?」

危機一髪、ゆりあを落とさずに済んだ真斗だがゆりあがいきなり起きてしまった。
しかし、とっさにゆりあを抱き寄せた為お互いの顔の距離はかなり近い。

真斗「あ、いや、その…ゆりあが寝てたのはいいんだけど、いきなり倒れそうになって…んでそれを支えてようとしたらこうなって…」

ゆりあ「へぇー、ありがとね!
でも、ただそれだけなのに真斗はなんで焦ってんのよ?」

真斗「いや、ゆりあがもし落っこちたりでもしたらと思ってびっくりしたんだ」

ゆりあ「それならいいけどさ」

実のところを言ってしまえば真斗はこの時相当焦っていた。

もう小学生にもなった真斗はゆりあのことが好きだったのだ。
そんな恋心を抱く相手の顔がおでこが当たりそうなところにあり、しかも真斗が抱っこしているシチューションである。
平然とゆりあの問いに答えたくもついしどろもどろになってしまった。

真斗「そんなことより寝てて喉乾いてるだろうし、ジュースでも買って来るわ」

ゆりあ「えっ、それなら一緒についてくけど?」

真斗「いや、そんなの悪いし、ゆりあはここでゆっくりしてて」

ゆりあ「まぁ、別に何でもいいけどさ。ゆりあコーラがいい」

真斗「いや、ゆりあはいつもコーラだし分かってるさ」

そう言って真斗はジャングルジムを降り始めた。
本当のところはゆりあへの気遣いではなく、なんとなく真斗が気まずかったのだ。

ある程度の高さのところまで降りると真斗はジャングルジムから飛んだ。
これはゆりあへのカッコよさアピールの為に毎回していることだ。
ゆりあは運動神経が良くない為、そんなことができる真斗を凄いと良く褒めてくれる。
真斗はそれがとても嬉しかった。

ジャングルジムから飛び降りた真斗は、その姿をゆりあが見てくれていることを願いながら、自動販売機へと走って行った。


■筆者メッセージ
昨日も寝落ちしてしまった…

最近はどうも眠たくて小説を執筆しながらも寝ぼけていることもありがちな今日この頃(笑)
珠推しくん ( 2015/10/11(日) 08:21 )