第一章
01
車内の窓からは路上にできた水溜りに雨が波紋を広がっている様子が見える。
車のボンネットにも雨が叩きつけられ車内に流れる音楽を掻き消そうとしていた。
この様子なら明日も雨が降り続けるのだろうか。

ゆりあ「はぁ、今日も1日疲れたなぁ〜。
ちょっと真斗、ホテル入る前スイーツ買いたいからどっかコンビニ寄って」

真斗「またか?別に俺はいくらでも寄ってやるよ。でもあんまり食いすぎんなよな、また事務所にバレて怒られるのは俺なんだからさ」

ゆりあ「うん。でもこんな働きまくりの生活じゃ甘いものにも頼りたくなるものなの」

確かにゆりあの言う通りなのかもしれない。
今日だって朝に横浜でロケをしてから、休む暇なく東京のスタジオでラジオ収録。それからテレビ局に移動し1時間仮眠を取ったあとクイズ番組を2時間半ほど収録したのだ。
ちなみに前日の睡眠時間は3時間である。
そんな生活をしていたら当然好きな仕事だとしても辛いはずだ。

ゆりあにとって仕事で溜まったストレスや疲れの癒しはスイーツなどの甘いものであった。
だから、本当は事務所から禁止されているスイーツも真斗はつい、ゆりあにだけは許してしまう。

真斗「まぁ、それはそうと明日のスケジュール確認な。
明日は昼の1時から昼の情報番組があって、そのあとでラジオ収録。そのまま名古屋に入ってskeの劇場公演にサプライズ登場って感じだな」

ゆりあ「ふーん、って明日朝はオフってこと?」

真斗「まぁ、そう言われたらそうだけどな」

この業界では朝にオフという事はとても珍しい事であった。
ましてや今や国民的アイドルグループに成長したAKBである。そのグループのリーダー格にあたるゆりあからしたら1ヶ月に一回あるかぐらいのことなのだ。

ゆりあ「なら今から、久しぶりに2人でカラオケでも行かない?」

真斗「えっ、今からカラオケ行くのか?」

真斗が腕時計を確認すると時刻は夜の11時。
普通に考えればこのままホテルに帰って寝るというのが妥当な時間である。

真斗「いや、俺はいろんなとこで寝てるからいいけど、お前は昨日も寝てないし、明日も新幹線でしか寝れないぞ。
そんなんで身体大丈夫か?」

真斗としては何よりもゆりあの身体が心配だった。

自分の心理としては好きな相手からカラオケに誘われているのだ。もちろん普通なら嬉しいと思う。

しかし、今のゆりあの仕事は多忙なアイドルである。
そんな彼女を容易には連れ回せない。

ゆりあ「別に私は全然大丈夫だよ!多少寝なくても2日は持つし、それよりストレスを発散したいのよ」

真斗「いや、でもさ…」

ゆりあ「もう、行こうよ!別に真斗だって身体がきついわけないでしょ?
多分私に気を使ってるだけだし」

もうゆりあにここまで言われると真斗もそれに従う他なかった。

真斗「分かったよ。その代わり俺が帰ろうって言ったら直ぐ帰るぞ」

ゆりあ「うん、それでもいいから。早く行こうよ」

そして、真斗はゆりあに言われるがまま、カラオケ店へと降り止まない雨の中、車を走らせた。







■筆者メッセージ
ノーベル賞日本人が獲得ですか。

やはり日本人というのは凄いですね。微生物であんな発見が出来るなんて僕からすれば驚きでしかないですね。
珠推しくん ( 2015/10/06(火) 00:28 )