夢への軌跡
第1GAME
嵐の前の静けさ
翌日の放課後。
授業の片づけをしていると北斗のいる1-2の教室のドアが開いた。
「お待たせ北斗。行くよ」
奈々未は待ちきれない表情だ。
昨晩の自らの了承をいまだに納得してないながらもどうせ一度限りだろうと腹をくくり奈々未の後ろを追いかける。
すると
「あれ?北斗、どっかいくの?」
そう声をかけてきたのは同級生にして同じ全中三連覇を果たした戦友深川拓斗だった。
拓斗はバスケは中学までで今は姉の麻衣さんが経営している食堂の手伝いをしていて将来は料理人を目指している。
「よ。姉貴に女バスの練習一回見てほしいって頼まれて。」
「あはは。奈々未さんの頼みじゃ断れないもんな。ま、がんばってくれよな。あと姉貴がまた食べにきてよって言ってたから今度きてよ」
そう言って拓斗と別れ、いよいよ本丸体育館にたどり着いた。
入るとちょうどアップを始めていた女バスが目に入った。
入学式でしか来たことのなかった体育館だがさすがスポーツ名門校だ。
綺麗に整備されていて施設としては文句ない。
キョロキョロ中を眺めていると
「あ、奈々未の弟か、よく来たな」
視線を移すと二人のジャージ姿の女子が立っていた。
「あ、どうも。橋本北斗です。」
「マネージャーの齋藤飛鳥。こっちが星野みなみ。奈々未から話は聞いてるよ。わからないことがあったら聞いて」
「そうそう!先輩がおしえてあげる。」
二人を見た北斗は内心先輩なんだこの人たち・・と思いながらも
「ありがとうございます。早速なんですが、飛鳥先輩今日の練習内容って?」
部員たちは自由に柔軟やパス回しをして体を温めていた。
「飛鳥先輩ってなんだかうれしいな」
「飛鳥!照れてないで答えてあげてよ。」
なんだこの二人漫才でもしてんのか?とツッコミたくなる。
「今日はレギュラーと控え・一年生で紅白戦をやるんだよ。」
なるほど。試合をみてほしいということかと納得した北斗に
「これ試合のメンバー表。なんかあったら言ってね。私たちドリンクとか準備しなきゃいけないから。」
二人は準備に向かい、北斗は体育館の二階から試合を眺めることにした。
「えーっと一試合目は・・」
メンバー表をみると
一試合目
レギュラー
G 桜井玲香
SG 白石麻衣
C 衛藤美彩
SF西野七瀬
PF橋本奈々未

レギュラーメンバーは三年生が占めているようだ。
各自アップを終え一試合目が始まった。
さすが全国常連校だ。基礎的なことは文句ない。
ぼーっと試合をみていると
「どう?うちの先輩たち」
声をかけてきたのはクラスメイトの梅澤美波だった。
「先輩たちにあこがれて入ってきた新入生多いんだよ」
北斗は少し考えてから
「個人のスキルはさすがだな。姉貴もうまくなってる。」
「奈々未先輩は私のめざしている選手だからね。文句のつけようがない選手だからあこがれるの」
興奮気味の梅澤をよそに
冷静に試合を北斗は開始直後から抱いてた違和感の正体に気づいた。
一週間ほど練習をみた北斗は
定期的に行われていた紅白戦がすべて終わったあと
一階に降りて試合を終えた奈々未に声をかけた
「姉貴、とりあえずレギュラーの人たち集めて。」
奈々未の声でレギュラー陣が集まった。
「はじめまして。姉貴に頼まれて練習をみてほしいといわれてきました。」
「気づいたことがあったら言ってほしいって頼んであるんだけどなんかあった?」
部員の目は北斗に注がれた。
軽く深呼吸をして北斗は話し始めた。
「成熟したチームだなって印象です。チームワークも悪くない。」
意外な言葉に部員たちは安堵の表情を浮かべる。
だが、次の北斗の言葉にチームが揺れた。
「何人かポジションが不適正の先輩がいるようですね。このままだと全国どころか東京も抜けられませんよ」


シベリアス ( 2018/12/14(金) 01:05 )