battle1
偽りと仮面
全体練習に復帰してから一週間
問題だった体力低下も工夫された練習により改善の傾向が見られていた。
周りに迷惑をかけないためにも居残り練習もはじめた。
ペナルティーエリア外からのシュート、筋トレ、体幹などコーチにアドバイスを受けながら消化していく日々を過ごしていた。

その日の夜携帯に着信があった。親父からだった。
「もしもし?翼今大丈夫か?」
「大丈夫です。どうかしましたか?」
「実はな明日家族みんなと日本の友達何人かつれてドイツに行こうと思ってる。みんなに会えばなにか思い出せるんじゃないかと思ったんだけどどうだ?」
「そうですね。練習終わりであれば大丈夫だと思います。明後日から遠征なのであまり長い時間とれないかもしれないですけど。」
「わかった。そのまま練習場へ直行するからそこでまた落ち合おう。じゃぁおやすみ」
「おやすみなさい」

電話を切って一つ深呼吸。
おそらく七瀬も白石も鷹山もくるだろう。なんだかんだふと記憶が戻ったと素直に言えば不幸になることもないだろう。
それでも自分で決めたこと。たとえまた彼女を裏切ったとしても・・・・・

物思いにふけていると部屋のドアが開いた。
「遊びにきたよー翼」
互いに合いかぎを渡している仲になった友梨奈が急に部屋に入ってくるのにはもう慣れっこだ。
「おう。友梨奈、明日俺の家族と友達がくるみたいなんだけど」
「そうなんだ。私一緒にいないほうがいいかな?」
「そんなことない。むしろいてほしい。これだけ懸命にサポートしてくれてる人を邪魔者扱いなんてしないさ。感謝してんだぜ友梨奈には。」
翼の言葉を聞いた友梨奈の瞳には涙があふれていた。
「ありがとうっていいたいのはこっちだよ。ごめんね。私のせいで記憶が・・・・」」
「いいんだよ。またサッカーもできてるしそれに・・・友梨奈の一緒にがんばれてる。それだけで十分」
そういうと照れ隠しからか明後日の方向を向く翼をみて友梨奈は笑みを浮かべた。
「私・・・翼のこと好き。記憶喪失になってるときに言うことじゃないかもしれないし日本には彼女もいる。だけど自分に嘘はつけなかった。」
「友梨奈・・・・・」
どのくらいたったんだろうか、互いに言葉は発さず静寂に包まれていた。
「ごめんね・・・・・・」
部屋を出ていこうとする友梨奈の腕をつかみそのまま抱き寄せた。
突然の出来事に驚く友梨奈。
「お願いがある。俺のそばにいてほしい。ただ、俺の記憶が戻った時にもう一度答えを出させてくれないか?今俺が頑張れてるのは友梨奈の看病のおかげだと思ってる。
すべてを取り戻したときもう一度答えさせてくれ。」
「それまでは彼女としていていい?」
「あぁ頼む」
二人は互いの愛を確かめ合い夜を明かしたのだった。

シベリアス ( 2018/07/17(火) 23:37 )