5章
30話
P.M 17:10 家に帰宅した。祐希はまだ家には帰ってはいなかった。僕は自分の部屋で荷物を机に置き、ベッドに腰を下ろそうとしたとき、スマホがズボンの右ポケットで振動し始めた。ポケットからスマホを取り出すと、電話があの人からかかってきた。僕はしぶしぶ通話のボタンを押し、はい、と言って電話にでた。

『あら、海崎君不機嫌?ちょっと話したい事あるからあの場所に今から来てね。じゃあね』

その人は僕に有無も言わせず電話を切った。仕方なく僕はあの人が待つ場所へと向かった。



「遅かったね。電話してもう30分は経つよ?」

「これでも急いできたんですよ」

僕は額から流れる汗を拭いながら答えた。

「まぁ海崎君座ったら」

僕は空いている方のブランコに腰を下ろした。

「で、話ってなんですか?」

「まぁとりあえずその話は置いといて、今日土生さんに平手打ちされたんでしょ?見たかったなぁ。」

僕の顔を馬鹿にしたように覗き込んでくる。

「それは、あなたのせいでもありますからね?」

「まぁまぁ怒んないでよ海崎君」

「これもあなたの作戦の内なんでしょ?白石先輩」

「まぁね」

僕は今彼女に協力している。互いの利害が一致しているから同盟を結んでいる。事の発端は僕が菜緒と口づけを交わした先週の金曜日だ。菜緒と分かれ帰宅していると、今日のように電話がかかってきて、この場所に呼び出された。神社横に辿り着くと白石先輩はすでにそこにいた。そして彼女は僕に詰め寄ってきた。

「海崎君。私はあなたに何も教えてない。それなのになんであの子に関わってるの?誰からその情報を聞いたの?」

「なんのことですか?僕には話がさっぱりわからないんですけど」

「嘘をつかないで!じゃあこれは何なの?」

彼女は僕にはスマホで一枚の写真が映し出されており、その中には僕と菜緒が口づけを交わしているところが収められていた。

「なんでこの写真を?」

「私の知り合いが撮ったのを送ってくれた」

「でもこの写真がなんだっていうんですか」

「私は成瀬に関わるなって言ったよね?なのになんでこの子と一緒にいるの?あなたはどこまで知ってるの」

白石先輩はスマホの中の彼女を指さしながら僕を問い詰める。

「待ってくださいよ。成瀬と小坂になんの関係があるんですか?」

「え!?あなた本当に知らないの?」

「白石先輩は何を知ってるんですか?教えてください!」

僕は彼女の瞳を見つめる。

「わかったわ、私の知ってる情報を教えてあげる」

そこから彼女は知っていることを話してくれた。要約するとこうだ。成瀬は複数の女を誑し込み、そして弱みを握り、脅し金銭を巻き上げているらしい。中には、お金が払えず売春行為をしてお金を稼がされている子もいるらしい。だが成瀬の裏にはヤクザがついているとの噂もあり、白石先輩も下手に手出しはできないらしい。そして、成瀬に弱みを握られている1人が、小坂菜緒らしい。

時は現在に戻る。

「でも、そこまでやらなくてもよかったんじゃない?」

「それぐらいやらないと疑われるでしょ。それに早くしないと飛鳥だって」

「はい、落ち着く。まだ飛鳥ちゃんは幸いにもまだ成瀬の被害にはあってない」

「でもたぶんあいつは、薄々感づいていると思います」

「海崎君の話を聞く限りではその可能性は高そうね。飛鳥ちゃんの身に何か起きるのも時間の問題かもしれないわね」

「海崎君は、小坂菜緒からなんでもいい情報を引き出して。私は私で探るから」

「わかりました」

「またなにかあったら連絡する。じゃあね」

白石先輩は階段を下って行った。飛鳥を守るためにも僕は成瀬と闘う。だから僕は小坂菜緒と交際を始めた。







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アゲハ ( 2019/02/07(木) 15:18 )